2017年1月14日 価値創造・第18夜 「間(ま)」から「ご縁」へ
第17夜(「間」と「創造」)では、間(ま)の成り立ちとイノベーション(新結合)の関係について随想しました。
今回はその実践例を演習事例と「価値創造ダイアグラム(第17夜添付))」を交えてお伝えするのでお付き合いください。
アイスブレークです。
皆さん下記のような「なぞかけ」はご存知と思います。
「ミニスカート」とかけて「結婚式のスピーチ」と解く。
その心は、
「短いほど喜ばれる」。
(3代目三遊亭遊朝の作)
「真(ま)」の二つの片(A「ミニスカート」とB「結婚式のスピーチ」)から共通項を見つける方法です。
この共通項を見つけることが魅力的な「間」を創るポイントです。
5~6人の演習では、最初に自分の好きなモノやコトを二つ上げて貰います。
(この二つは「野球」と「サッカー」のようにあまり近くないほうが好ましい)
例えば、「アート」と「宇宙」の二つを選んだ時に、二つの共通項を無理やり見つけて物語を創って貰います。
そうすると、その「取り合わせ」や「組み合わせ」で今までなかったようなコト(世界)が生まれてきます。
周りのメンバーがそのアイデアに相乗りすることで、さらにワクワクする世界が誕生してきます。
だんだん慣れてきたところで、自分(会社)が悩んでいるテーマをその一片(A)に入れていきます。
もう一片(B)には、トレンドキーワード(6種類)や生活キーワード(6種類)を入れることで思っても見なかった
世界が拡がってきます。これが常識の殻を破る3本の矢の中の一つです。
さて、実際にヒット商品に仕上げた「ピュアモルトスピーカー(写真)」で見てみましょう。
一片(A)には、ウィスキー樽材(サントリー社)が入り、もう一片(B)にはオーディオ(パイオニア社)が入ります。
さて、共通項は何でしょうか?
それは「響(ひびき)」です。
「人と自然と響き合う」を前面に出していた時代のサントリー社は「響」の文字をモチーフにしたロゴマークでした。
パイオニア社は「世界のステレオパイオニア」の「音響」がベースにありました。
この「響」を共通項として、「真」である「新しい樽物語・新しい命」を共に創っていきました。
ウィスキーの樽材は、樹齢100年のミズナラ材を使用しています。
それを10~15年使用すると、リグニン・タンニン等が染み出てきて、あのウィスキーの独特の芳香や色になります。
それを3~4回繰り返す(40年~50年)とウィスキー樽材の寿命となります。
ただ、100年の樹齢なのでまだ「木」としては50年の命が残されています。
それをスピーカーのキャビネットに活用したのが「ピュアモルトスピーカー」です。
バイオリンの「ストラディバリウス」はその木を塩漬けにすることによって、導管が通りあのような響きを奏でるそうです。
ミズナラ材も何も加工しない素材でスピーカーのキャビネットにしてもキンキンカンカン鳴って、スピーカーには不向きなのですが、
40~50年ウィスキー樽材であることで、導管が通り、ふくよかな味わいのあるスピーカーに生まれかわったのです。
まるで、スピーカーキャビネットになるためにウィスキー樽材として使われていたように。
これが「ものがたり」です。「新しい命」です。
人間でいえば、手足、頭、骨、神経、内臓等を合わせた時に必要なのは「命の誕生」です。
バラバラだったピースを紡ぐ「物語」「命」が価値創造には重要なのです。
このことによって、ヒット商品の基盤ができました。
さて、私はこのスピーカーを「ピュアモルトスピーカー」と名付けたかったのです。
でもサントリー社の承諾なしに、勝手に「ピュアモルト」というネーミングをつけるわけにはいきません。
実はその3年前に、パイオニアOBの方の紹介でお会いしたサントリー本社(経営企画関係)の方がいました。
京都を音連れた時に、わざわざ堂島から駆けつけてくれて、「一見さん」では入れない京都祇園の夜を案内してくれました。
彼は自分より若いのですが、互いの気持ちや考えがぴったりと一致してとっても楽しい時間を過ごすことができました。
それから3年後、すぐにその彼が頭に浮かび相談しました。すると、
・その試作品を堂島本社の役員に聴かせて貰えませんか。
・「ピュアモルトスピーカー」のネーミングについては社内で乗り越えなければいけないステップがあるのでそのあとに。
すぐに堂島に持参して高い評価が得られました。関係者とも素敵な交流がありました。
暫くして、赤坂オフィスで佐治敬三さんにプレゼンテーションする機会をいただき、その「場」でトップから「ピュアモルトスピーカー」のネーミングのお墨付きを貰いました。
帰り際に、創業100周年記念ウィスキー「響」をいただきました。我が家のお宝になっています。
これは「ご縁」そのものです。
偶有性(セレンディピティ)とは、偶然の幸運に出会う能力のことをいいますが、そのような意味で、「間(ま)とは良いご縁を創り、継続すること」と想っています。
さてさて今回は、「価値創造ダイアグラム(第17夜添付))」の下半分のエッセンスをお伝えしました。
その両サイドに、
①Problem: 問題・課題は?
②Insight: 大切なコトは?
があります。
ここでは、①は第14夜、②は第9夜に記してあります。
その①②の分母があれば、③を掴み取る可能性は高くなります。
その意識がないと、価値創造の神様の前髪(偶有性)はつかめないと確信しています。
なので、先ずプロジェクトで行うのは、①②の深堀と明確化です。
現在も「ピュアモルトスピーカー」は継続して商品化されていますが、自分は上記「②Insight」を深堀したもっともっと魅力的にした提案を用意しています。