価値創造の知・第26夜 未詳(まだつまびらかでないこと)

2017年2月8日 未詳倶楽部

前職の40歳の時から、異業種コラボレーションをして「連続ヒット商品」をプロデュースしていました。その真っ只中に、「会えば、きっと橋本さんの将来を変える人になると思うのでおつなぎしたい」と知人に云われ、すぐに代官山近くにある事務所に伺いました。

 それが、松岡正剛師匠です。

メディアでは「知の巨人」と云われていますが、それを遥かに超えています。尋常ではなく蓄えられた知識と、それらを縦横無尽に取り扱う編集能力が凄まじいのです。そして、師匠の元に集う方達がとびきり格別で素晴らしい。
さて、ここでいう『編集』について語られていることを著書「知の編集術」より抜粋します。

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私が使う「編集」という言葉は、とても大きな範囲に使われています。普通は、新聞や雑誌の編集者がしている仕事を「編集」というのですが、そういう狭い見方をしていません。たとえば、人々が言葉や仕草でコミュニケーションをすること、その全てに「編集」というものが生きているとみなします。
だから普段の会話にも学問にもエンターテインメントにも、スポーツも料理も「編集」が生かされているわけです。
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当時の自分には、何かと何かをクロスすることで、生まれてくる「新しい性質・効能」、或は、動的には「新しい命づくり」の方法を「編集」と受け止めていました。
現在は当たり前なのですが、20年前に、当時では珍しかった異なる会社同士をつなぎ合わせる、編集する「異業種コラボレーション」、「新しい文化の創造」を使命にしていました。
その縁でお引き合わせしていただいたのだと思っていましたが、そんなに浅いレベルの話ではなかったことが後々わかりました。

事務所に何回か出入りしていると、「未詳俱楽部」という松岡師匠の主宰するプライベートクラブがあることを知りました。
どのようなものなのかも明らかにされずに、一泊二日の「未詳俱楽部」に参加することを許されました。
「未詳」とは、まだ詳しからず、まだつまびらかでないのです。

最初に例會の案内状が届きます。そこには、集合の時間と場所(日本各地)が書いてあるだけです。
そこに集う女性達は、服装がノーマルではなく半数以上が着物でした。男性も何か雰囲気が違い、サラリーマンのような自分がくる「場」ではないと感じました。
そして、集合場所で一枚の次第が渡されますが、プログラムの一切が伏せられたまま進行します。この伏せるふるまいが粋(いき)にもつながっていきます。

会員証(写真)の裏側には、五つの会則が記されていますが、その二つを上げます。

一.会員はかけがえなく、あてどもない気質をそなえている

一.会員はみだりに当倶楽部のことを口外しない

ということで、「みだりに(=これといった理由もなくやたらに)」記すことができません。(笑)

さて、その集合場所からしつらわれた会場に移動します。
そこは、おもてなし(第2夜)の世界です。そのしつらいから皆さんは亭主の趣向を想像していくようなのですが、粋(いき)な人達の中に野暮な自分がいることが判ってきて冷や汗がどっとでてきました。
それから、特別なゲストが登場します。様々なジャンルの「格別で別格な方達」が毎回来られるのです。そのゲストと共に夜のプログラムは進み、夜中を越えて宴は続きます。

そこでは、主人と客は分離されていなくて、毎回「主客一体」「一期一会」となり演じていきます。
「能、大鼓、三味線、謳い、俳句、料理、書、歌、茶道、茶碗(第5夜)・・・・」

それは、「日本という方法」を身をもって体感できる「至福と冷や汗」の入り混じった極上の「場」と「時間」でした。ただ、自分は粋人ではなかったので、いつもスタッフから「イジラレテ」、場を和ませる役どころでした。

最初の例會のその夜に師匠のヒアリングがあり、一人ひとり俳号をいただけます。
自分の俳号は、「耳窓」です。それは奥深いのです。
(そして、それがメールの頭の「jiso」になっています)

さて1998年に入門して以来、一年に2回くらいの「未詳俱楽部」に十数年参加し続けました。
また、そのご縁で、「連塾」「時塾」「椿座」にも連続参加して、「日本という方法」を自分の心と体と脳に刻み付けました。
それらの「極上の場」に、絶妙のタイミングで参加できたことを感謝しています。
さてここまで、「未詳俱楽部」を「みだり」に記したつもりはないのですが、破門だけはお許しください(笑)

前夜(第25夜)にも記しましたが、自分(新価値創造研究所)は、価値創造の肝となる方法を下記「トリニティ(三位一体)イノベーション」にまとめました。

①人を深く読む: 禅、わびさび
②未来を高く読む: 守破離
③広く全体を読む: 間(ま)

①②③それぞれに右側の「日本という方法」を中心に理論と演習を入れて、もう2000人以上の方達に、研修・セミナー・プロジェクトでお伝えしてきました。
それはこの「未詳俱楽部」の実体験が元になって「再編集」したものです。
より多くの方達に「日本という方法」と「ビジネス」を結合・編集したものをお伝えして、恩返ししてゆきたいと思います。

松岡師匠、ありがとうございました。これからも宜しくお願い致します。 橋本元司拝

 

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