価値創造の知・第41夜 二つの脳:察しない男・説明しない女

2017年5月3日 コンセプトメイキング②

多くの企業や自治体が、世の中の変化に対応して「新事業・新業態」に踏み出すことが常態化しています。
その時に問題となるのが、対象の顧客が今までとは違う新規顧客であったり、求めるものや価値観が変わってくることです。
そして、それに合わせて『コンセプト』を再定義して、ミッション、ビジョン、更に組織革新、賃金体系等の経営革新に手を入れていくことが必要になります。

本夜は、上記に関連する“コンセプトのつくり方”の第2段を、首記ベストセラー「察しない男・説明しない女」を交えて綴ります。

すべての事業(戦略)の基本は、
① WHO:  一体どのような顧客に  (誰に)
② WHAT: どのような効能・価値を (何を)
③ HOW:  どのような強みを提供して(どのように)
にあります。

コンセプトは、上記①②③を圧縮したようなものです。
コンセプトは、人間の背骨のようなものですから、それが明確になると、何をすれば良いのかがハッキリ・スッキリします。

さて、皆さんもご存知のように、市場が『業際化』しています。
“業際”とは、異なる事業分野にまたがることを意味します。
今回は価値創造の本丸である『業際に係るコンセプトの再定義』の事例を提示します。

それは今までと異なる風景であり、新価値創造研究所では、それを成長マトリクスで“開際(従来・開発・開拓・開際)”と表現して、顧客価値レベルの高い象限で表してします。
参照:https://shinkachi.biz/ NEW!JQAA寄稿:「顧客価値創造にもとづく経営革新」
さてさて、それでは固い内容ですみませんが、「建設業界の事例」で新展開の実例を観てゆきましょう。

参考: 建設新聞引用(新たな付加価値の源泉・業際ビジネス用)
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『業際』とは、産業の垣根に相当するもので、「そこを超えると異質と感じられる境界領域のこと」である。これまでの事業との連続性と不連続性を併せ持っているため、本業と異なりアイデンティティを形成することは難しい。

しかし異質との接触面であり、最もイノベーティブな組織行動がとられる領域でもある。

業際論争については金融業における銀行、証券、保険のそれぞれでの調整や垣根撤廃が有名であるが、現在では流通企業やメーカーが金融業に進出するなど、業際の拡大活動もしくは既存の業態と異なる業態の融合が活発に繰り広げられている。
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従来(20世紀)は産業の垣根があり、その範囲の中での競争でしたが、現在は、単に「土地に継続的に定着する構築物を作り出す」という従来の建設業の在り方では付加価値を生み出すことが難しくなっており、新たな価値創出の方法や枠組みが求められています。
たとえば、ある大手ゼネコンは不動産投資顧問業や地震・環境汚染のリスク管理事業といった手数料ビジネスに新たな事業展開を試みています。
また、通信工事業者がこれまでに蓄積したノウハウを広く活用するために土木分野に事業を展開し始めています。

さらに、ある中堅ゼネコンは外部から経営資源を調達し、通信工事という専門業者が存在する市場セグメントに参入し、成功を収めている。建屋だけではなく、付随して必要となる検査機器や教育など、建造物の構築以外の業務活動をもまとめて顧客に提供することによって、付加価値を高めています。

つまり、建設業だけでは価値が出せないので、不動産投資顧問業、手数料ビジネス、通信工事、教育等の事業の前後左右の事業分野にまたがってきます。それは、建設業だけでなく、あらゆる業種業態に及んでいるのです。

私のご支援している複数業種の会社も同様です。
それでは、“業際”により、住宅業界に参入した場合の“コンセプト・メイキング”についての事例を上げます。
やはり、一番活用できる方法は、第37夜でご紹介した「バリュープロポジションからのコンセプト化」です。

・異業種からの参入であること
・故に、ハウスメーカーと同様のコンセプトでは通用しないこと
・「新築一戸建て」の場合は、決定者が夫と妻の最低二人がいること

上記の状況で、夫婦双方に添付写真の「察しない男と説明しない女」がコンセプトメイキングにはとても参考になります。その一部を抜粋します。

右脳と左脳をつなぐ脳梁が太い女性は、物事を感情と一緒に記憶しやすく、過去のことも今この瞬間に起こったかのように臨場感を持って思い出せます。
いっぽう、男性は脳梁が細いため、過去の出来事は「すでに終わったこと」として処理をすることが多いそうです。
回路が違うのですね。

担当の方達からお聴きしても、「新築一戸建て」の購入を検討、決定する際に、奥さんと旦那は観ているところがかなり違うと言っています。

・男は世界から認められたい
・女は世間から認められたい

・男は違いがわからない
・女は違いなんかどうでもいい

・男はヤンキー好き
・女はファンシー好き

・・・・
わかる、わかる。笑

コンセプトは、 “二つでありながら一つ”ですから、夫婦が一つで共感、納得できれば効果が倍増します。
上記を編集しながら、バリュープロポジションと誰に(WHO)、何を(WHAT)、どの様に(HOW)を明確にしながら、コンセプトを浮き彫りにしてゆきます。
「誰に」を“夫婦でありながら一つ”にして、価値創造ダイアグラムのコンセプトにまとめるコトがアドバンテージになります。
是非、皆様挑戦されて下さい。

そのような新結合ダイアグラムのスキルを身につけられてから、既存のハウスメーカーの「コンセプト」をチェックするとその会社が何を大事にされて「価値発信」しているのかが透けて見えてきます。
次に、大手企業群はずっと同じ業界の中で競争して練れているので、そのコンセプトは「似たり寄ったりで面白みに欠ける」というのが素直な感想です。

なので、違う業界の多くのコンセプトを見聞きすることにより、対象の業界に新しい視点で「インパクトと話題」を持ち込むことが可能です。

その際に重要なことは、作成した新しい価値観を持ったコンセプトが「先端的な顧客」や「関心のない顧客」にどのように響くのかを自ら“Face to Face”で感じ、掴み取ることです。そこで新しい風景が見えてくることが多いのです。

そのヒアリングからの新風景がワクワクドキドキの瞬間であり、その後の出来不出来にも大きな影響を及ぼします。

そして、その核心、確信のあとは、勇気を持って絶妙なタイミングで「伝え方革新」をするのみです。

第41夜 価値創造から経営革新へ

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