2017年5月9日 住民協働の真の目的から考える
前職の総合研究所・新価値推進センターの所長時代から、「地域創生・住民協働」のご支援をしてきました。ちょうど、平成22年に政府が「新しい公共」を宣言した時と、軌を一にしていたように思います。
その時の政府の「新成長戦略」の中で、
“国民の満足度や幸福度には、所得などの経済的要素だけではなく家族や社会との関わり合いなどの要素も大きな影響を持つ。
「新しい公共」の考え方の下、全ての国民に「居場所」と「出番」が確保され、市民や企業、NPOなど様々な主体が「公(おおやけ)」に参画する社会を再構築することは重要な課題である”
と宣言していました。
何か上から目線が気になりますね。課題であることはわかりますが、この上から目線では上手くコトが回せません。そのことは後述します。
このように新しい公共が重要課題となったベースは、第40夜「新しい時代の価値観」に記した、
①減少社会: 不足
②モノよりココロ: 繋がり
という大きな二つの変化の新結合から捉えるとわかりやすいので是非第40話をご覧ください。
さて、総合研究所の7年前の企業人時代に、ある地域の行政職員と住民&NPOの間に入って「地域課題の抽出と構想・実践」の触媒をお引き受けしました。
参加している皆さんが、それぞれにやりたいことがあり、積極的で前のめりで、初期段階では全体をまとめることがとても厳しい状況でした。
そこで、
・私たちは、いったい何を大切にしているのか?(錨の確認)
・私たちは、何を目指そうとしているのか?(北極星の共創)
を提案して、時間をかけて協議しました。
皆さん仕事の後なのに、夜6時半から10時頃まで熱く語られていました。
そのような会合が毎週1回、2か月半続きました。
結果、それは今でも続く地域のセンターになりました。
とてもいい経験をさせて貰いました。
そして前職を早期に卒業し、独立して、ここ2~3年は「地域創生・住民協働」に複数関わることになりました。
ここで、7年前との違いを半径1.5メートルの中で記します。
やはり、人口減少社会で地域は過疎化が進み、都市でも空き家が点在するスポンジ型になりました。その中で、早期から志・本気で取り組み、花開いて仕組み化、円卓化できている地域Aと思うように進まない地域Bが2極化しています。
友人はそれを「ゆでガエル現象」で説明していました。よく企業経営やビジネスの文脈で使われています。
それは、「カエルを熱湯の中に入れると驚いて飛び出します(A)が、常温の水に入れて徐々に熱すると、カエルはその温度変化に慣れていき、生命の危機と気づかないうちにゆであがって死んでしまう(B)」という話です。
従来、官(役所など)や学(大学など)は、大学入試に見られるように、
「間違えないこと」が求められ、最優先されました。
しかし、未来が不確かなイノベーション時代の現在では、それが足かせになっています。
従来の価値観で成長している時はそれで良かったのでしょうが、上記の①減少社会と②繋がりの複合が進む時代には、従来の価値観では対応できません。
「官」の役割が大きく変わっていることは明白です。
・啓蒙から「共感」へ
・先導から「触媒」へ
・改善から「革新」へ
「住民・NPO・企業・大学」も新しい目的の元に変わらなければいけません。
人口減少や高齢化など社会状況が大きく変化するなか、「地域創生・住民協働」の必要性・重要性は すます高まります。
ただし、「住民協働」はあくまでも手段であることを忘れてはいけません。
・地域創生、地域活性、住民協働はいったい誰のものなのでしょうか?
・どうであったら、住民が、地域が元気になったといえるのでしょうか?
・そもそも「何のために住民協働」を推進するのでしょうか?
という、真の目的や大切な問いを関係者と共に考え、共有することがとても大事なのです。
「やり方」につんのめる前に、上記の「あり方」を共有・共感することがとっても大切です。それは、7年前の地域創生の実践成果とその後、各地の失敗事例を見聴きして実感したことです。
上記の「あり方」から「パッション・ミッション・アクション」の道筋に向けて、下図の「課題・人・場」を三位一体で創造し、具体化し、新成長に繋げていくのが「新価値創造」です。
「価値創造で多くの人を幸せにしたい」
第42夜 価値創造から地域革新へ