価値創造の知・第83夜 『違い』をつくる秘訣は、「抽象化能力-①」

2017年11月16日 「抽象化能力」とは?

前夜(第82夜)では、ビジネスで最も大切なコトは、「違いと共感」を別々にしないで統合して継続して高み(深み)を目指すことを綴りました。
本夜から数夜に亘り、その『違い』をつくる秘訣・方法について記します。

さて、ここで綴る『違い』の範囲・領域について、先ず明確にします。例えば、陸上競技場のトラック(競走路)にたくさんのプレーヤーがいて、ある決められたルール(規則)、一例で「5000メートル走」競技で走っていることをイメージしてください。
たくさんの実力伯仲のプレーヤーで上位になるのは大変です。(ビジネスでは、同じ実力の競合がいっぱいいるとすぐに低価格合戦になる)
でも、そこから抜け出すには、お客さんが喜ぶ「新しいルール」を創り、そのための新しいトラック、違うトラックで一番乗りできるように挑戦することです。

 それは、常識と思われていた世間の「ルール」を逸脱することです。例えば、「アイスクリームは子どものモノ」という常識から、「大人のためのアイス:『大人がって幸せに浸りたい』(ハーゲンダッツ)」。
スターバックスは、「ストレスフルの時代に、コーヒーを売るのではなく、職場でも家庭でもない、『くつろげる第3の居場所』」というように。このような逸脱した共感による『違い』の世界観によって、新しい市場や文化が立ち現れます。

さて、そのような逸脱して共感される『違い』を生む秘訣は、ズバリ、『抽象化能力!』にあります。これからのビジネスパーソンに求められる最も重要な能力と洞察します。
『抽象化』とは何でしょうか?「抽象」の反対は「具体」ですね。「具体的」というのは、あるモノやコトを明確に特定できる表現です。例えば、「iPhone(アイフォン)」と言えば、多くの人たちがそれを思い浮かべますが、これが「具体的」ということです。
次に、「抽象的」というのは、もう一つ上のレベルの表現です。「スマホ(スマートフォン)」といえば、「ソフトバンク」機種かもしれないし、「ドコモ」、「AU」の各機種かもしれません。
このように、モノやコトを見る時に、視点・視座を逸脱(高く・深く・広く)して観ることを「抽象度を上げる」といいます。それは、『モノやコトの本質を少ない情報で表現するコト』です。

それでは、はじめて「iPhone(アイフォン)」が発表される前の状況を想い浮かべてみましょう。
私は仕事柄、情報機器が数寄で、携帯電話・デジカメ・iPod・ボイスレコーダーを持ち歩いていました。それぞれの機器が独立していて、情報(コンテンツ)を移し替えるのに手間がかかりました。
それを「シームレス(seamless:とは、途切れのない、継ぎ目のない、縫い目のない)」にしてくれたのが、iTunes、iPhoneでした。複数の要素が組合さることで、新しい性質・新しい次元が拡がります。(第36夜、第78夜)
そして、世界を席巻しました。

一つ上の概念、次元に昇華したのですね。
この組み合わせから昇華する「広い知」が、『違い』をつくる「抽象化能力」の一つになります。(第78夜・「創発」)
ルネッサンス期の3大発明の1つに、「グーテンベルクの活版印刷」があります。世界を変えたグーテンベルクの活版印刷は、実家の刻印機にワイン農家の使うブドウ絞り機を組み合わせて誕生したものです。
前職に上記の方法でプロデュースした連続ヒット商品(ウィスキー×音楽、ファッション×音楽、・・・)は、全てこの方法です。いま、異業種コラボレーションが盛んですがそれは、この『広い知(=Gestalt)』の型です。(第17夜、第32夜)

ただ、ここで気を付けなければならないことは、この『広い知の抽象化』に行く前に、全て『深い知の抽象化』が行われていることです。
『深い知の抽象化』は、「ミッション」と深いつながりがあります。よく、この「ミッション・深い知」なしで、「何かいいアイデアがないか?」から「アイデア出し」のワークショップを見かけますが、だいたい失敗します。
それは、錨(アンカー)や目指すコト(北極星)の何かがないままでは漂流してしまうからです。この『深い知の抽象化』は、第85夜に綴る予定です

さてさて、「実際のビジネスの場では、『広い知』の抽象化能力を慣れて、習得する具体的ワークショップを行います。そのエッセンスを次夜(第84夜)に綴ります。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ

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