2017年11月18日 「問い」の立て方
第83夜・第84夜の2夜で、『広い知』=「抽象化能力」①を綴りました。
本夜は、その基盤(=船の錨)、分母となる『深い知』をひも解いていきます。
私には二人の娘がいますが、次女は平成元年生まれです。特に、彼女の行動をよく観察していると、「モノ」に対して自分達の価値観とずいぶん変わっていることが分かります。
私は「所有」することが好きで部屋にはモノが溢れていたのですが、家族から「いい加減処分して」という声が高まり、かなり整理してきました。
次女には、下記「インターネット的」価値観が顕著に見られます。
「所有」の時代の背景には、「モノの不足」があり、そこでは何馬力、何ワット、何デシベルというように『性能』が重視されていました。
それが満たされてくると、次の充足は『機能』に移りました。生活空間には、使わない機能でいっぱいの機器が溢れていますね。
現在は、「モノからココロ」へと、よりインナーへの欲求に移っています。
それを表現すると
性能 < 機能 <効能
となります。私たちは『性能』からではなく、『効能』から捉えていく時代を生きています。
そして、前夜(第84夜)に綴った、3つのインターネット的特徴(①リンク、②シェア、③フラット)の浸透により、「所有」しないで、借りる、シェアするという「型」で「使用・体験」する時代になっています。
このような時代には、どのように「違い&共感」を創り出せばいいのでしょうか?
第4次産業革命(インダストリー4.0)は間違いなく進展していくでしょうが、その時に、時代の波に巻き込まれない方法の二つ目が『深い知』=「抽象化能力」②です。
参考の一例として、前職(パイオニア社)の25~20年前の体験を記します。
対象は、「オーディオ」事業です。「オーディオ」のピークは1988年で、そこから衰退の時代に入りました。(もう30年前ですね)
それまでは、『性能』の時代でしたが、一転、低価格競争になりました。もう、ハイファイデリティーという「忠実再生」だけでは経営が難しくなりました。
1992年ですが、「オーディオ活性化」「超高密度メディア」の両委員だった自分には、2005年にCDメディアに代わるパッケージメディア、通信革新、心理革新が点滅してる風景が観えました。
図解(『深い知』=「抽象化能力」②)の『使用』の奥にある『在り様』を探り出す必要性を感じていました。
それは、「オーディオをどうするか?」からではなく、「『「音・音楽と人との関わり』に将来どのような道(可能性)があるのか)」という「問い」を変えることでした。
『問いの立て方』をズームアウト(深く、高く、広く)することで、新しい目的・目標が見えてきます。その時に、技術進化と心理学から、「5つの進化の階段(ステージ)」が浮かびました。
そのファーストステージが、枯れた技術による「ライフスタイル異業種コラボ・連続ヒット商品」(第14夜)です。まだ、その上の複数ステージがあるのですが、「問い」の立て方と共通認識がポイントになります。
これは、「オーディオ」事業に限ったことではなく、殆どの事業・地域に応用できます。
これが、「在り様=Meaning」です。「Meaning」の中には、「Being(在る)」~「Becoming(なる)」が内包されています。
このように説明すると、「ピン!」ときた方達がいるかもしれません。
それは、『所有:色即是空 ⇔ 在り様:空即是色』です。「色即是空・空即是色」(第6夜)に記していますが、
「色即是空」というのは、「現実=色」に問題・課題があるのなら、先ず心を無にして、「大元=空=大切なこと=真心」に戻りなさいと教えてくれているように思います。
そして、「空=大元=真心」に戻って従来のしがらみや常識から解き放たれて、その本質(=コンセプト=核心)を把えてから「現実=色」を観ると新しい世界(=現実=色=確信)が観えるということではないでしょうか。その確信を革新するのがイノベーションであり価値創造です。
もう少し説明します。これは、「第33夜・禅と価値創造③」の内容とダブります。日本人がもっとも得意としているのは「引くこと」。
アルコールフリーのビール系飲料は「ビールからいちばん大事なアルコールを抜いた」ものだし、NHKのアンケートで「見たい国宝」の1位になった長谷川等伯の『松林図屏風』は西洋画のようにびっしりと描き込むことがなく、見る者がその世界に入り込める余白が設けてあります。
龍安寺石庭に代表される枯山水は「水を感じる」ためにあえて水を抜いてある。カラオケもまた「歌=ボーカル」という大切なものを抜いたことで大ヒットし、ひとつの文化となりました。
これらはすべて「禅の思想」。執着や先入観といったものを取り払う、あるいはいちばん大事なものを手放す。そうすることで『深い知』=「抽象化能力」が身につきます。
そうなんです。上記の「Next・オーディオ」も、執着や先入観といったものを取り払うという「オーディオが大事にするもの」そのものを手放すことから、新しい「違い&共感」が見えてきます。
・貴社は?
・クルマは?
・スマホは?
・照明は?
・エネルギーは?
・教育は?人財は?
・政治は?行政は?・・地域は
・資本主義は?
・自分は?
・・・・・
この「問いの立て方」の方法と、そこからの課題解決については、「バリュー・イノベーション・プロジェクト」で基本から応用まで演習とビデオを用意して、誰でも取り扱うことができるようになるようにお伝えしています。
さて、「AIoT・ロボティクス」「少子高齢化」「地方衰退」等が進展する時に、上記の方法がとても重要になります。そこに必要なのが「物語・ストーリー」(第54夜、第69夜、第70夜)になります。それは、第83夜図解の「新しい命・物語」のダイアグラムも同様です。
『深い知』=「抽象化能力」②に興味・関心が湧きましたら幸甚です。
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ