2018年2月7日 『本分(分母)』の再定義実例:ヒット商品緊急開発プロジェクト
前夜(第105夜)では、「事業創生・地域創生」の為には、
『本分』という「分母」を明確にする必要性について綴りました。
依って立つ下半身がグラグラしていては、何を「評価」していいのかもぐらつきます。
自分の前職(パイオニア社)の実例を提示しますので、理解が深まれば幸甚です。
1995年のコトです。
新社長に直訴して、3人で「ヒット商品緊急開発プロジェクト」(第14夜詳細)を立ち上げました。
パイオニア社の『本分』は、「感動を創る」なのでしたが、
実際は、「Hifi(ハイファイデリティー):高忠実再生」が中心にありました。
パイオニアに限らず、「業界」は添付図の縦軸にある「性能」を高めることが中心でした。
それは、オーディオ業界に限らず、20世紀は「**馬力」「**ワット」等、性能を高めていればいい時代だったのです。
オーディオ商品は、性能の高さを軸に、縦軸で「5万円」「7万円」「10万円」と価格付けしていました。
ところが、性能差による差別化がはかれない「コモディティー化(一般化したため差別化が困難となった製品やサービス)」が進行し、
更に、賃金の安い地域(当時は東南アジア)で製造できるというダブルパンチがありました。
そして、10年後の2005年には、CDに代わる次世代メディア(超高密度メディア:今のHDD)や通信の進化が視界に入ってきました。(第10夜・第29夜・第85夜詳細)
さて、ここで『本分』の再定義です。
縦軸の世界(第80夜)の「性能」は、前述のコモディティー化していますので、横軸の世間(第80夜)の「効能」を拡げることに注力しました。
それは、ライフスタイルからの『顧客価値』を創造することです。
ということは、分母を「性能:Hifi」ではなく、「音・音楽」から把えることになります。
・「音・音楽 * ウィスキー」
・「音・音楽 * ファッション」
・「音・音楽 * インテリア」
・「音・音楽 * お風呂生活」
という図式が浮かび、それは、一社だけでは「物語を創れない」ということを意味します。
ヒット商品は、物語から生まれるのです。(第17夜、第18夜、第37夜、第66夜、第92夜~第99夜詳細)
つまり、異業種とのコラボレーション(価値共創1.0:第92夜)がマストなのです。
(なので、結果的に100社との異業種との協議を行いました)
従来の世界(縦軸)では限界があり、世間(横軸)に拡張したのです。それを経営陣に、本夜のテーマである『本分(分母)』として提示・提案しました。
経営陣や対象事業部は、縦軸で成功してきた人達です。
それを発表してから、ある重役から呼び出しがありました。
「そんなコトがうまく行くはずがないじゃないか。・・・」
「・・・」は大叱責です。
まだ、異業種コラボレーションがなかった時代です。
でも、新社長がその『本分(分母)』に納得して任せてくれました。
ただ、想定外は添付図の領域です。
右上の象限(高性能・高効能)を予定していたのに、新社長命令は、右下の「低性能・高効能」でした。
結果的には、連続のヒット商品の創出に繋がりました。
音・音楽には、進化形があるので、それを基盤にすれば、まだまだオーディオのヒット商品は生み出せます。Hifiに拘らなければ、まだまだいけます。
さて、ヒット商品プロジェクトでは、「音・音楽*ファッション(ループマスター)」「音・音楽*インテリア(ハッピーチューン)」の商品群では、従来の縦の価格ラインナップではなく、価格は同じにして、ライフスタイルに合わせて、横展開ラインナップという画期的な商品展開になりました。
ファーストペンギンとして、『本分を再定義』することは大変なのですが、そのことが、今、多くの会社に、地域に、一人ひとりに、そして「日本」に求められている必要性・重要性を確信・核心しています。
一緒に、革新していきましょう。
次夜は、事例(パイオニア社ではない)の第2段をお伝え致します。
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
