橋本元司の「価値創造の知・第111夜」『価値創造イノベーション』の時代

2018年3月4日 「技術のイノベーション」と「価値のイノベーション」

 
 20世紀後半は、『技術(テクノロジー)のイノベーション』の時代でした。
そして、いま21世紀は『価値(バリュー)のイノベーション』の時代です。
 この違いの本質を的確に明確に把えておくことが、皆様の人生や事業創生・地域創生・人財創生に肝要と想っています。
それをこれからひも解いてゆきます。
 
 日本では、イノベーションは、「技術革新」と訳されることが多いのですが、この言葉の提唱者であるJ.シュンペーターは、「新結合(neue Kombination)」という言葉を使っていました。イノベーションとは、技術の分野に留まらない「一見、関係なさそうな事柄を結びつける思考」がその本質にあります。
 
 イノベーションとは、『「モノやコト」が新しく結びつき、それが新しい価値として社会的に受け入れられて、経済が発展した状態のコト』と定義されます。
 
 彼は、イノベーションこそ資本主義の本質であり、イノベーションが起こす劇的な変化が経済発展させるというビジョンを打ち出したのです。
参考に、イノベーションの5分類を記します。
(1)新しい生産物または生産物の新しい品質の創出と実現
(2)新しい生産方法の導入
(3)産業の新しい組織の創出
(4)新しい販売市場の開拓
(5)新しい買い付け先の開拓
 
「技術革新」を大幅に超えた「マーケティングを内包している広い概念」ですね。
 
さて「イノベーションの推移」は、添付図を見ることで分かりやすくなります。
 
① 20世紀後半は、高度成長期の「モノづくり」の時代でした。なので、目に見える「技術革新」でよかったのです。それで、日本は成長しました。
 
② 次に、1985年を境にして、「コトづくり」の時代になりました。ソフトウェア、インターネットという目に見えないものが、「ハードウェア」と新結合しました。
「顧客の経験・体験」「顧客を囲い込む」という言葉がメディアに登場しました。
 
③ そして、2005年を境にして、「ヒトづくり(絆づくり)」の時代に突入しました。
それは、3C(第109夜)の2番目の通信(Communication)が本格化することで、「モノ・コト・ヒト」が繋がれるようになったのです。そして、繋がりの量が飛躍的に増加すると共に「AI・IoT・Industry4.0」が登場してきました。
 
 自分ゴトになりますが、前職(パイオニア社)では、その変遷を全て体験してきました、
元々が「エンジニア」でしたが、技術オリエンテッドではすまない未来・将来が観えてきて挑戦してきました。
・社長直轄「ヒット商品緊急開発プロジェクト」
・社長直轄「新事業創造室」
・総合研究所「新価値推進センター」
 
 そう、20世紀は「技術のイノベーション」で良かったのです。しかし、今はそれでは対応できません。
2003年頃からは、研究所に出入りしていました。同時に、シナリオプランニング関係(第15夜)で数社の異業種の研究所にもお邪魔していました。
 それで分かるのですが、それまでのやり方・考え方では、時代に対応できないことに皆さんは悩まれていました。
 
 ここで、幾つかの異業種の将来シナリオ作成にもご支援をしたのですが、その世界と世間を実践されたかされないかで、その後の経営の明暗が明確になったのが思い起こされます。
 
 「モノづくり」と「モノ・コト・ヒト三位一体づくり」では次元が違います。経営戦略や研究所のあり方を迅速に変えていかないと時代に適合できません。
 「イノベーションのジレンマ」という、成功体験に拘り、留まることで時代に置いてけぼりをくらいます。
 
 抑えるべきポイント・本質は、二つです。
1.今が、「モノ・コト・ヒト三位一体づくり」の時代であり、それが分母であること。
2.「モノ・コト・ヒト三位一体づくり」を分母にした『新結合(neue Kombination)による革新』(分子)です。
 
 「モノ」は客観的ですが、「コト・ヒト」は主観的(第107夜、第108夜)です。その三位一体に登場する中心が、『価値(バリュー)』(第102~105夜)です。『価値』とは勿体であり、主観的です。多くを綴ってきました。
 
改めまして、
21世紀は、『価値(バリュー)のイノベーション』の時代です。
 
 企業の「経営者・経営戦略・事業戦略・研究所・企画・マーケティング」は、大きく変わらなければなりません。
 
 「地域創生」でも「ハコモノ」の従来の延長のコンパクトシティは失敗したのが明らかになりましたね。
「モノづくり」の延長では、時代に、社会に、文化に、国際に、業際に、対応できません。
 
 それではどうしたらよいのでしょうか?
次夜は、上記に対応する『価値創造とイノベーションのあいだ』を綴る予定です。
 
価値創造の知から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
顧客共創三位一体