2018年3月6日『価値創造イノベーション』①
前夜(第111夜)に綴った内容をもう少し抽象化して図解します。
21世紀は、『技術(テクノロジー)のイノベーション』から、『価値(バリュー)のイノベーション』に移行しました。
それは、「技術」が衰退したということではなく、イノベーションの領域、メニューが拡張したということです。
これを「見える化」するために、下記「地(分母)と図(分子)」(第105夜)で表します。
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・発想のための「地」と「図」
情報には、「地」(ground)と「図」(figure)があります。地は情報の背景的なものを示し、図はその背景に浮かび上がっている情報の図柄をさします。
情報を瞬間的にとらえるとき、私たちは情報の図をみていることが多いものです。「地」情報は、漠然としていたり、連続しているいたりするので思考からついつい省いてしまいがちです。地の情報は、見ているようで見ていないのです。
意識して「地」の情報に着目してみましょう。何を地の情報としているかです。
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そう、この依って立つ「地」(分母)の認識がとても重要です。「一体何を前提にしているのか」という基盤がズレていれば結果は違うものになります。
前夜(第111夜)にもお伝えしましたが、複数の会社(研究所)の将来をシナリオプランニング作成する依頼があり、そのナビゲーター、モデレーターのお手伝いを行っていました。
20世紀後半は「技術研究所」でも良かったのですが、21世紀では「技術研究所」では対応できません。
それは、世の中が『1C(Control)』から『3C(脳業)』(第109夜)へ、及び『おもてなし三位一体業(しつらい・ふるまい・心遣い)』(第2夜・第20夜・第93夜:ハードウェア×ソフトウェア×ハートウェア)の時代に進化したからです。
それに連れて、その思考法もコメントに記すように、「二つの思考」の両方が必要になりました。
それが、「合理的問題解決思考」と「プロデュース思考」です。「合理的問題解決思考」の特徴は、「合理的な意思決定によって、効率的に問題解決できる」ことにあり、「プロデュース思考」は、「望まれる未来の姿を設定することによって、取り組むべき問題が特定される」という特徴を持ちます。
21世紀は、「3C」「3I」「おもてなし三位一体」と、高度であり、不確定の時代です。プロデュース思考を使ってこれに立ち向かわなければなりません。
2003年、前職(パイオニア社)では、研究所のトップからの依頼で、本社(新事業創造室)から技術開発本部(研究所)に異動になりました。
上記の時代の変化の認識があったので、それをトップに上申して、「合理的問題解決思考」と「プロデュース思考」を併せた『顧客価値創造法』を各研究室にキャラバンしてお伝えし、そこから選抜した若いメンバー達と一緒に、10年後の会社(研究所)の将来の姿を「シナリオプランニング」(第15夜、第28夜)と「3つの知」でビデオにまとめました。
2006年に作成した「10年後の4つのシナリオ(2017年)」は、以前にも綴りましたが、ほとんど、隆々とした将来像と研究テーマを言い当てていました。『問い』の立て方と洞察力が重要なのです。
そう、良質な「目的と方法と場」があれば、将来を洞察(Sight)し言い当てる可能性が格段に高まります。それを『技術』という枠だけで限定し、その合理的思考で固定することで顧客価値から遠くなってしまうのです。
全ては、顧客価値の本質から把えることから始まります。
その時(2006年)は、下記提言を小さい声で上申していましたが、今は大きな声で言えます。
『全ての技術研究所は、価値創造研究所に進化してください』と。
そうすると、新しい知を持った『プロデュース思考・顧客価値創造思考』できる人財が必要になってきます。イノベーティングとマーケティングを新結合した新価値創造人財が、成長と革新には不可欠です。
その様な人財を学校や会社は創ってこなかった、創ってこれなかったのです。
この様な人財を意識的に育成、活用する地域、会社に成長と成功が訪れます。
現在放送中の、「テレビ東京・カンブリア宮殿」に呼ばれる人達(イノベーター)を是非観察してみてください。
それは、一次産業の農業、漁業を6次産業(素材⇒加工⇒流通)に革新したり、スーパー公務員の実践であったり、逆境から立ち上がった『プロデューサー』達ばかりです。
それは、新しい目的(第28夜、第85夜)と新結合(=イノベーションの本質・第32夜、第36夜、第75夜)から生まれてきます。
文字・言葉だけでは分かり辛いので、どのように考えるかの一例をあげます。
テーマは、『クラブDJ機器の将来像』です。皆さん「クラブ」に行かれたことはありますか?何回か通いました。
『クラブDJ機器』の5年後、10年後を洞察したい、というテーマがきたとします。あなたなら、どう対応しますか?
その時に重要なのは、最初に「機器・ハードウェア」の延長上で見ないという姿勢です。急がば回れ、先ず、「ハードウェア」を外すのです。大事だと思うものをわざと遠ざけるのです。
それは、大事な水を抜いた「枯山水」と同じで、『余白』(第22夜、85夜、86夜)をつくることが重要です。そこに『深い知』とミッションが顔を出します。
次に、
・ソフトウェア(音・楽曲)の視点から観ると、Prepare⇒Performance⇒Promote(第91夜、第107夜)という流れ・舞台(ステージ)があります。料理の流れと一緒です。
・ハートウェア①:DJの側から観ると・・・
・ハートウェア②:オーディエンスの参加性からは・・・
・クラブ経営の箱、演出、人
・メディアの進化は?:①メカ、②PC、③通信
特に重要なのは、「ソフトウェアの一気通貫」「ハートウェアの双方向性」「感動の場面」から世界と世間を掘り下げ、拡げる視点、及び「マネタイズ」です。
その上で、「顧客に囲まれる」に進化するのです。
そうすると、今までと違うハードウェアの輪郭が浮かびあがります。それをシナリオマトリクスと成長マトリクスで見える化、戦略化、プロデュース化する。
「3C・3I・おもてなし三位一体」を分母に置くというのはそういうコトです。上記の舞台(Prepare⇒Performance⇒Promote)という視座から入る。そうすると、そのステージ上には、様々な「新結合=イノベーション」が生まれます。『クラブDJ事業』には、まだまだ隆々とした余白、伸びしろがありますね。
『価値創造イノベーション』の時代には、プロデューサー人財 とチームを意識的に生み出すことと、『方法の厳選』と『場の用意と卒意』が肝要になります。
外部人材を上手く賢く活用する方法もあります。
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ