橋本元司の「価値創造の知・第116夜」『価値創造とイノベーションのあいだ』③インターネットの次にくるもの

2018年3月12日 ストーリテリング&知配

昨夜(第115夜)は、「インターネット」(世界)ではなく、「インターネット的」(世間)」(第80夜)を綴りました。
日本の経済成長が停滞しているのは、この不可逆な「インターネット」「インターネット的」に対応した産業に後れをとっているのが大きな原因の一つです。

そして、第109夜・第112夜で提示しました、3I(AI・IoT・Industry4.0)と3C( Computer・ Communication・Control)がシナジーを持って進展していくのは避けられません。
ここで重要に想うのは、二つあります。

一つ目は、①「インターネットの次にくるもの」を洞察するコト。
二つ目は、②「日本の方法」です。本来、日本が持っている方法(第47夜)を知り、上記の①「インターネットの次にくるもの」と②「日本の方法」を「かさね・あわせ・きそい・そろい」を想像・創造することで独自性を発揮するコト。
過去が豊かにあると、現在と将来が豊かになります。その①と②が不思議に相性がいいことがわかり、新結合(第17夜、第18夜)にして、有機的にストーリーにすることをお薦めしています。

それでは、①「インターネットの次にくるもの」の12章の一行要約(訳者あとがき:398p)から引用します。
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1.Becoming
ネット化したデジタル世界は、結果ではなくプロセスとして生成。
2.Cognifying
世界中が利用して人工知能を強化することで、それが電気のようなサービス価値を生じる。
3.Flowing
自由にコピーを繰り返し流れる。
4.Screening
本などに固定化されることなく、流動化(アップデート)して画面で読まれるようになる。
5.Accessing
すべての製品がサービス化して、リアルタイムにアクセスされる。
6.Shearing
シェアされることで、所有という概念が時代遅れになる。
7.Filtering
コンテンツが増えすぎて、フィルターしないと見つからなくなる。
8.Remixing
サービス化した従来の産業やコンテンツが、自由にリミックスして新しい形となる。
9.Interacting
VRのような機能によって、高いプレゼンスとインタラクションを実現して効果的に扱えるようになる。
10.Tracking
そうしたすべてを追跡する機能が、サービスを向上させるライフログ化を促す。
11.Questioning
問題を解決する以上に新たな良い疑問を生みだす。
12.Beggining
すべてが統合され、著者がホロスと呼ぶ次のデジタル環境へ進化する。
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ここでは、近未来の一日をストーリー仕立て(ストーリテリング)で編集されているのでわかりやすい本になっています。
(「ストーリーテリング」とは、伝えたい思いやコンセプトを、それを想起させる印象的な体験談やエピソードなどの“物語”を引用することによって、聞き手に強く印象付ける手法のこと)
世界各地で翻訳されていますので、貴社・貴地域の将来に関心のある方は是非ご覧ください。

 

さて、ポスト製造業の経営戦略「ミレニアル起業家の新モノづくり論」で著者の仲暁子さんは上記ストーリテリングについて次の様に記しています。
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ストーリーとは、要は「なりたい自分像」や「理想の世界の状態」のことを指す。それは例えば定量的な「体重がXkg」とかではなくて、数値では表せない定性的なもの。だから、ストーリーと言われる。
例えば、
・iPhoneを買う消費者は、別にiPhoneのスペックを購入しているわけではなく「iPhoneを持っている、イノベーティブでスマートなイケてる自分像を買っている。
・シェアハウスに住む若者は、単純にお金がないというだけでなく、(昨今の人気のシェアハウスは一人暮らしよりも高かったりする、「オープンに人と関わり合って進化していく自分像」を買っている。
・パタゴニアで人が働くのは、「品質の高いフリースをつくりたい」からではなく、「自然への敬意・情熱・愛を持っている人たちと一緒に世界環境をよくしていく自分像」を実現するために働いている。
安いとかバッテリーのもちがいいとか、給料が高い、だけじゃもう人は購入しないし、働かない。

ストーリテリング能力とは、こういった背景の物語を組み立てて言語化し、発信できる力のことを指す。

ストーリーはもの不足の時代からマーケティングでは必須だったが、ものが溢れる現代においては一層重要性が増している。
消費だけでなく労働者という観点においても、個々人の心情の変化やAI,ロボットの台頭という外的要因がストーリー重視の流れを加速している。・・・
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多くの会社・地域に、ストーリテリングの力が不足しています。
その能力(背景の物語を組み立てて言語化し、発信できる力)を体得するが、「深い知(第85夜)と高い知(第87夜)」です。

本夜は昨夜(第115夜)を実践する時の補完として、重要な二つのこと(①インターネットの次、②ストーリテリング)を綴りました。
『気配』という言葉があります。
・「気配(けはい/きはい)」とははっきりとは見えないが周囲の様子から何となく漠然と感じられる様子

上記の対として『知配(ちはい)』という造語が浮かびました。
「様々な業種・業態や地域」、及び、上記「過去と未来の情報」等に触れるコト、考えるコトによって、想像・創造の『知配(ちはい)』が高まります。

さらに、「気配と知配」をたかめ、価値創造にフィードフォワードしたいと想います。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
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