橋本元司の「価値創造の知・第117夜」『価値創造とイノベーションのあいだ』④メイク・フィロソフィー

2018年3月13日 メイク・フィロソフィー:「最後の講義『大林宣彦』

NHKドキュメンタリー(3/11)の「最後の講義『大林宣彦』」はご覧になりましたか?
その講義(大隈講堂)を拝聴している若い学生たちの真剣さが伝わってきました。
自分が映画監督・映画作家の大林宣彦さんの大ファンだったこともありますが、心に残る番組でした。

その中心は、「メイク・フィロソフィー(=自分のフィロソフィーをつくる、持つコト)」の重要性です。
「フィロソフィーとは、哲学・哲理、ものの見方、ものの考え方」と理解しています。

さて、「事業創生・地域創生・人財創生」には、この「メイク・フィロソフィー」が不可欠なのです。

・優れた「事業・地域・人財」には、優れたフィロソフィーがある
・優れた「事業・地域・人財」には、中心に「大切にするもの、信念、情熱」がある
・「優れたフィロソフィー」をつくることから、優れた事業・地域が生まれる、創れる

「価値創造」も同様です。それが、サービスや商品からにじみ出てきます。
それを持って、プランから販売、メンテナンスまで一気通貫することが重要です。
新価値創造研究所の価値創造「深い知・高い知・広い知」の「深い知」(第85夜・第86夜、第28夜)がそれに当たります。

さてさて、「最後の講義」のテーマは3つありました。(NHKドキュメンタリーから引用します)
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1.「映画とは“フィロソフィー(哲学)”」
作り手側が“伝えたい哲学”を明快に持って、しっかり表現することが大事であるというお話です。

2.「自分の中の平和孤児」
日本敗戦のとき、大林さんは7歳。敗戦で世の中がひっくり返ってしまい、「平和というものがよく分からなくなった。僕らの世代は平和孤児だ」と、ご自身の経験を踏まえたお話です。

3.「100年後に分かる映画」
大林さんは、ご自身の作る映画のことを“シネマゲルニカ”と呼んでいます。“ゲルニカ”とは、1937年にピカソがスペイン内戦を描いた象徴的表現の絵画です。おばあちゃんの目が真横に並んでいるような描き方です。
大林さんは、「もしあれがリアルに描かれていたらたぶん後世まで残らなかったんじゃないか」「象徴的だからどんな意味があるんだろうと考える」と感じているそうで、だから映画も、「今分かるような映画じゃだめだ。
100年後ぐらいに分かればいいんだ」と思っていらっしゃるようでした。
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大林宣彦「最後の講義」の中心コンセプトは『メイク・フィロソフィー』

何かを創り、生み出すには、『自分が考えているコト、自分が伝えたいコトを明快に持つ』ことが最も大切。
それを伝えたい想いが痛いほど伝わってきました。それは、黒澤明さんから伝わっているのですね。

ここに、自分が綴っている「価値創造の知」も117夜になりますが、

・一体、自分は何を伝えたいのか?
・自分が考えていることは何か?

という哲学・信念についてはブレがないことを再確認しました。

それは、『価値創造』の心得と方法を伝えたいのです。

そこに行きついた理由を少し紐解きます。
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前職(パイオニア社)では、何回か事業に行き詰まりがありました。

・オーディオ事業
・プラズマディスプレイ事業
・総合研究所の次のテーマ

その度に、幾つかのコンサルティング会社の方達がこられ、プロジェクトを支援していただきました。
それらのプロジェクトに参加しましたが、結果的にはうまくいきませんでした。
そこでは、いつも同じ欧米の方法(テンプレート)を使い、それで、不足していることに「気づく」、起爆剤が用意されていました。
しかし、問題点や気づきには届いても、その先の「解決策」、用意されずに届かないものでした。

私は異業種とのつながりが多くあったので、異業種企業のコンサルテーションの中身を見せてもらうとどこも同じようなものでした。
また、大手のコンサルティング会社を訪ねましたが、そこでは、コンサルティングが成功に届かない悩みを持たれていました。

その時に2つの疑問が湧きました。

① これらのテンプレートだけでは、バックミラー的で、未来を切り拓けないのではないか?
② 手段・方法(テンプレート)ではなく、新しい目的の再定義と具体化が必要なのではないか?

そう思った時に、吹っ切れました。新しい時代に役立つものを創ろう、と。

自分の複数の成功体験、失敗体験(師匠、数千冊の書籍、ヒット商品、シナリオプランニング、経営品質、文化経済、等)と新結合して、「価値創造の心得と方法」まとめました。
それを、パイオニア社内で『講座:創造型人材開発』と『バリューイノベーション:事業創出プロジェクト』でお伝えしてきました。

同時に、多くの企業・地域が行き詰まりで悩んでいることを知りました。
現在では、それをブラシュアップして多くの業種・業態にお伝えし、ご支援しています。
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前夜(116夜)に綴りましたが、
『普通』では、もう人は購入しないし、働かない時代です。
そこに求められるのは、素敵な「フィロソフィー」と「舞台(ステージ)」です。

人は、素敵なフィロソフィーのある物語と、そこに自ら参加できる「舞台・場」を求めています。

素敵な将来を、共に気づき、築きましょう。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
メイクフィロソフィー