橋本元司の「価値創造の知・第119夜」『価値創造とイノベーションのあいだ』⑥日本に足りぬものは、「苗代(なわしろ)的思考」

2018年3月16日 「コードとモード」

本夜お伝えしたいキーワードは、「苗代(なわしろ)的思考」と「コードとモード」です。

1998年に松岡正剛主宰の「未詳倶楽部」に入門しました。もう20年になるのですね。そのご縁で、「連塾」「時塾」「椿座」にも連続参加して、「日本という方法」を自分の心と体と脳に刻み込みました。
その倶楽部の中で話された関連するキーワードの二つ①「苗代(なわしろ)的思考」と②「コードとモード」を本夜のテーマにします。

 最初に、「苗代(なわしろ)的思考」を紹介しますが、今の日本、これからの日本、そして、あらゆる会社や地域に有効です。

『いま日本に足りぬものは苗代(なわしろ)。グローバリズムの直植えではありません』

もう10年以上前の未詳倶楽部で松岡正剛師匠が話されていました。 日本は、世界は、「グローバリズムの直植え」で傷みましたね。
今は、「グローバリズム」の反動よる、英国のブレグジット(Brexit)という「EU離脱問題」が発生したり、米国トランプ大統領による「保護主義」の問題等がクローズアップされています。

さて、苗代(なわしろ、なえしろ)とは何でしょうか?
苗代とは灌漑によって育成するイネの苗床である。 もともとは種籾(イネの種子、籾殻つきの米粒)を密に播いて発芽させ、田植えができる大きさまで育てるのに用いる狭い田を指した。
「苗代」は日本特有の文化で、苗を直植えしないで仮の場所で育ててから植え換えをする方法です。

「外来のコード」をつかって、これを日本文化にふさわしい「内生のモード」に編集しなおす、植え換えをするという方法が脈々と受け継がれています。
古代から、 日本は外国から「コード」、いわゆる文化や技術の基本要素を取り入れて、それを日本なりの「モード」にしていく、様式にしていくということが、たいへん得意な国だったのです。

そのような、もともと日本が持っていた「仮置きの文化」や、「苗代」のような小さいエージェントを作る能力が、日本から失われてしまったということ、どうしたら復活できるかということを話されていました。

重要なことは、『外からのコード(基本要素)をそのまま受け取らずに、自分の中で編集してモード(様式)化』していくことが肝要である。

ということを叩き込まれました。

さてさて、自分が経験した実例(第15夜)を記します。

総合研究所のトップから、研究所の二つの顕在的な課題・不足を解決するために異動しました。
①顧客と接触が不足しているコト(=顧客価値の視点)
②将来の構想力が不足しているコト(=将来ビジョンの視点)

ご縁があって、その双方を解決するかもしれないということで、「シナリオプランニング」という方法の第一人者(J・オグリビー氏)を米国から招き、私達のチームに直伝して貰いました。
ところが、そのコード(基本要素)をそのまま使っても、ぜんぜん思うような結果が出ませんでした。それは、自分たちが「モノ発想」から抜け出られていないことにありました。

そこでは、「顧客価値発想」(深い知)、「弁証法」(高い知)、「新結合」(広い知)の各スキルが求められていました。その失敗から、「欧米のその方法(コード)に、『日本流のモード(禅的思考、守破離、間)と『異業種とのヒット商品体験』を組込んだ方法」をまとめあげました。

そう、「苗代(なわしろ)的思考」です。

日本流の方法は、松岡正剛師匠からの直伝です。「編集メソッド」を「ビジネスモード」に変換しました。
「本気」のグループが、課題の「本質」を確信して、次の「本流」を構想・行動・更新していく。続々といい結果を出せました。

そんな「事業創生・地域創生・人財創生」の成長・成功のご支援をしています。

第117夜、第118夜に綴った、巷の「コンサルティング」の失敗は、「直植えのテンプレート」を使うことにあったのです。

是非、皆様も「直植え」せずに、「苗代(なわしろ)的思考」へ。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
「苗代(なわしろ)的思考」