橋本元司の「価値創造の知・第128夜」『価値創造とイノベーションのあいだ』⑯笑われるくらいがちょうどいい

2018年4月5日 マズローの欲求6段階説

「価値創造」に向かうためには、プロジェクトメンバーが周囲から「認められる」「認めあう」ことが不可欠です。

東洋経済オンライン(4/5)に、「期待の新人を辞めさせない、たった1つのコツ」
~新入社員は「認められる」ことに飢えている~
が載っていたので、参考に引用します。
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入社後3年以内に中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が離職するという「七五三」現象はよく知られているが、
企業の採用増と少子化で超売り手市場のいまは、若者の早期離職にいっそう拍車がかかっている。
アンケートなどで離職の理由として上位にあがっているのは、「仕事が合わない」「成長できない」「労働条件がよくない」ことなどである。
しかし、実際には「承認」の不足、すなわち周囲から認めてもらえなかったことが深くかかわっているケースが多い。

バブルのころ、日本を代表する大企業の人事担当者から、つぎのような話を聞いた。
入社間もない若手技術者がつぎつぎと辞めていった。おそらくライバル企業から高給で引き抜かれたのだろうと思われていた。
ところがその後、離職者への追跡調査で辞めた理由を聞いてみると、大半の者が、上司や先輩が認めてくれなかったことを理由にあげたそうだ。
好況で上司や先輩は仕事に忙殺され、新人を認めてやる余裕がなかったのである。

この事実は、上司や先輩が若手をしっかり認めてやれば、早期離職をある程度防止できることを意味する。・・・
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新入社員のことを記していますが、「認められる」「承認される」ことは、家族であれ、夫婦であれ、友人であれ、とても大事なことですよね。
しっかりと向き合うことが重要です。ただ、「褒めればいい」というのとは異なります。
特に、未経験で不安いっぱいのルーキーの場合は尚更です。同期の横のつながりがその不安を解消してくれたりします。
通常のオペレーションで上司や周囲から認められないという状況には辛いものがあります。

皆さんご存知の「マズローの欲求五段階説」というのがあります。
①第1段階・生理的欲求:生きていくために必要な、基本的・本能的な欲求
②第2段階・安全欲求:安心・安全な暮らしへの欲求
③第3段階・社会的欲求:友人や家庭、会社から受け入れられたい欲求
④第4段階・承認欲求(尊重欲求):他者から尊敬されたい、認められたいと願う欲求
⑤第5段階・自己実現欲求:自分の世界観・人生観に基づいて、「あるべき自分」になりたいと願う欲求
⑥第6段階・自己超越欲求:自分のためだけでなく、他の人々や他の者を豊かにしたいという欲求

21世紀に必要なビジネススタイルでは、欲求第6段階の「自己のためだけでなく社会全体を良くしたい、豊かにしたいという欲求がおおもとにあること」が求められています。
世の中の「質・次元」(第124夜)が大きく変わっています。小手先の欲求対応では、事業の持続・継続が難しい時代という認識が求められます。
それが「わかる」ことは、「かわる」ことです。(第8夜)

「次の一手」「次の柱」を検討する時に、是非「自己のためだけでなく、社会全体を良くしたい、豊かにしたいという欲求がおおもとにあること」のステージに立って挑戦してみてください。
そうすると、下記の二つのことが現れます。
1.そのことで「温かい気持ち」が心の中に流れるコト
2.それにより「本質を見極める」ことが必要と感じるコト

上記2.の「モノゴトの本質」を見極め、且つ、価値創造する方法は、下記「3つの知」(第89夜)しかありません。
1.「深い知」
2.「高い知」
3.「広い知」
それは、①「本質」を把えながら、②「常識」から逸脱することです。
そうすることで、「お客様から選ばれる理由」(第37夜:バリュープロポジション)を掘り起こすことができます。

さて、その「3つの知」をバリュープロジェクト・メンバーに習得してもらい、「想像⇒創造⇒構想」を辿っていただきます。
それは、「想像・創造」という、現状の壁を超えて「構想」にいたる舞台です。
その「殻を破る」「常識を超える」時に、メンバーに必要な心得は、

「笑われるくらいがちょうどいい」

ということです。
これを、研修・プロジェクトでは何回、何十回も私がメンバーの方達に言います。

そして、それは全員参加なのですが、「突飛」「突発」な発言には、最初は全員に拍手を強要します。
それが、常識を覆し、「新しい文化」の創造につながってゆきます。それを水先案内します。
そのうちに、自然に全員から拍手がおきます。これは、メンバーから「認められる」「承認される」成果です。

これを繰り返し行うことで、周囲が驚くほどの「アイデア」「企画」「ビジネスシナリオ」が続出します。
「人材」が「人財」に変身する瞬間です。(特に、参加された女性の伸びが著しい)

何故でしょうか?

私もサラリーマン生活が長かったのでよくわかりますが、
発言しても通らない時に、人はだまります。そして、そのまま考えないようになっていく人もいます。

経営陣が従来のやり方・考え方に固執して、時代から取り残されていくのは残念なことです。

前職(パイオニア社)でも何回か経験しました。
・1992年:そんなふうになるわけないじゃないか。(CD⇒通信2005年)
・1996年:それが成功するなんてありえない(ヒット商品プロジェクト)
・2006年:10年後のことなんて意味がない(10年後のパイオニア:2017)

上記のことは、常識という枠を超えて、私たちが想ったように、描いたように実現しました。価値創造がイノベーションになりました。

①世の中に役立つコト、新しい文化を創ること
②モノゴトの本質を把えること

上記①②を「二つでありながら一つにすること」(第33夜)
これが最も重要な方法なのです。

ただ、ここに辿り着く前に、ルーキーのメンバー達を従来の常識から解放させる必要があります。
それが、「笑われるくらいがちょうどいい」から始めることです。
人材を将来の人財にするために。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

マズロー