2018年4月14日 無意味な過去のフレームワークは捨てる
前夜(第133夜)は、「文具店の魅力」から、その本来と将来を綴りました。
それでは、自動車業界についてみてみましょう。
私も前職(パイオニア社)の関係で、「10年後の音楽・カーナビ・クルマ・AUI」絡みで、名古屋・和光・宇都宮に出入りしていました。
さて、ここで自分が尊敬する石倉洋子氏(経営学者 一橋大学名誉教授)がお話しされた内容が参考になると想いますので、その一部を加筆引用します。
それは谷口正和師匠が主宰する「文化経済研究会(2017年)」のゲスト講師としてこられた時のものです。
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スコープ(SCOPE:領域や範囲)が広がると、例えば消滅する業界があれば新しく生まれる業界が出てきます。
自動車も大きく変化しつつある業界の1つです。昔は自動車業界といえば製造業で、パーツが多くありそれを組み立て、ディーラーを通して車を消費者に販売する。
競合はトヨタ、GM、などというように分かりやすかった。
しかし、今やトヨタの最大の競合はGoogleと言われています。それは、求められているのは「車」というハードな製品ではなく、モビリティだからです。
移動の1つの手段が「車」なのです。そうなると都市計画、道路、自動運転など広範囲に考えないと、とんでもないことになります。
「自分たちの業界はこのまま続くだろう」と何となく今までの延長線で考えていると、予想もしていないところから、とんでもない競合が来たときにやられてしまう。
新しい製品やサービスが出てきたときに、「あれは品質が悪い」などと言っている間に顧客を失ってしまうのです。
UberやAirbnbなどのサービスはますます広がっています。以前は「他人の家に泊まるの?」と想像もしなかった、驚くようなことがドンドン広がっています。
Uberは自家用車を持っていても実際は90%以上使っていないのだから、もっと使いたい人に使わせてあげましょうとシェアリングを考えたわけです・・・
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皆さんご存知の通り、自動車業界は変化の時代の真っ只中にあります。
「自動車製造からモビリティ産業へ」
トヨタさん、ホンダさんは、かなり前から、コンセプトを「モビリティ」に変えて事業転換を図っていました。
車の役割が従来の「買って乗るもの」から「移動手段(=モビリティ)」へと変わりつつあることに伴い、各社「クルマづくり」をモビリティサービスの一部として把えています。
そして、 そこに「自動運転」「インダストリー4.0」「電動化」「つながるクルマ」というテクノロジーや生産技術が絡んでいます。その「モビリティ産業」を誰が担うのかということです。
なぜ、従来の境界が消滅したり、全く新しいビジネスモデルの企業が登場するのでしょうか?
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それはテクノロジーによって、瞬時に情報が交換できる、だからそれをプラットフォームで活用できるからです。テクノロジーの進歩がこうした新しい動きの背後にあるのです。
それに加えて、新しいアイデアも盛んに出てきています。最近のAirbnbは部屋だけでなく、「私が持っている経験やスキルを一緒に」と経験もシェアしてしまいます。
このようにいろいろな可能性が出てきています・・・
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自分が新入社員で通勤していた頃、電車の中では、新聞・漫画・雑誌を読んでいる風景でしたが、今は皆さん殆ど「スマホ」を見ています。
どうしてでしょうか?スティーブジョブズ(第6夜)が業界を越境して、横串(第66夜・新結合)を通しました。
新聞の魅力がなくなりましたね。無常です。
新聞 < スマホ < AIコンシェルジュ
これまで通用していた「**業界」という区分けがなくなっています。
20世紀後半は、業界の垣根の中でビジネスを考えていれば良かったものが、そうはいかなくなりました。私が業界の垣根を超えて、「異業種コラボ」したのが1995年でした。
前述の石倉名誉教授のお話しにあったように、自動車メーカーの最大の相手は、同業者ではなく、「Google」や「Uber」になっています。
クルマは、所有する時代から、シェアリング(第40夜、第115夜)する時代に移行しています。
これまでのやり方や習慣がどこで壊れ、崩壊し、形をかえるかを迅速に察知する必要があります。それが、本質を見抜く「洞察力」(第132夜)です。そして、それは「魅了力」(第132夜)と共にあります。
その変化を洞察して、その変化に先立つ「先行力」が必要です。それは、ファーストペンギン(第123夜)になることですが、それを恐れないことです。
さてさて、第20夜・第108夜に、顧客を「囲い込む時代」から、「囲まれる時代」について綴りました。競争の「ルール」が変わっているのです。
そうすると、「ルール・ロール・ツール」(第80夜)も変わります。トータルに取組むことが必要です。
皆さん、「顧客に囲まれる」次の一手を打たれていますか?
私の視点・視座では、自動車業界はまだ「縦割り」の世界から脱していません。「第80夜:世界と世間」で云うと、従来のフレームワークから脱する「世間」の横割り・横串が不十分です。
これから「ハードウェア・ソフトウェア・ハートウェア」三位一体の本格的な「おもてなしの時代(第2夜、第40夜)」です。
つまり、まだまだ余白(第50夜、第89夜)があり、可能性がいっぱいということです。
最後に、谷口正和師匠の言葉を引用します。
「無意味な過去のフレームワークは捨てる。そうした段階に、我々は突入しているのだ」
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ