橋本元司の「価値創造の知・第139夜」:『魅力がなくなるコト』が根本原因 ⑧道徳教科化と新価値創造研究所

2018年4月24日 “道徳教科”成功の核心は、「魅力」&「創造力」革新にある

昨日(4/23)、クロースアップ現代+で「“道徳”が正式な教科に密着・先生は?子どもは?」が放映されました。
そこには、新価値創造研究所のミッションである『価値』という言葉が何回か出てきました。
そう、“道徳”と“価値”はコインの裏表なのです。

“道徳”とは?
--------------
・社会生活を営む上で、ひとりひとりが守るべき行為の規準(の総体)。
・自分の良心によって、善を行い悪を行わないこと

社会の成員によって承認され,かつ実現される倫理的諸価値ないし規範の総体。
その原理は,主観的内面的規制原理として,主体のうちに現れる自然的本能,自保全の欲求,名誉欲,権力欲,所有欲などの利己的,本能的欲求と正義,真理,愛,誠実,信頼,平等,国益などの普遍的ないし社会的諸価値の対立あるいは現実と理想の相克を調整し,社会的成員にふさわしい行為を選択するようにしむける。
さらに道徳は内面に深く関わるものとして実存の重要な構成契機となり,個人の世界観に重大な影響を及ぼす。
--------------

通常の教科が「客観的」であり、「合理性」を扱うのに対して、“道徳”のポイントは、「主観的」であり、「主体性」を扱うことです。
この「価値創造の知」連載の第102夜に、「価格(客観的)と価値(主観的)の違い」を綴りました。同じ構図です。
『価値』とは、その人にとって、どれくらい大切か、役立つか、というものです。
「主観的・精神的」なので評価することが不向きです。“愛”を評価できないのと同じです。

・「価値」とは何か?
・「価値観」の本質
というものを「深く・高く・広く」理解していくことが望まれます。
この“道徳”を教科にすることは、新価値創造研究所として他人事ではありません。

“道徳”とは、「主観的」「主体性」「価値感」を対象にすることを認識しておくことが重要ということがおわかりいただけたでしょうか?

そのような視点で「クロ現代+」を観ると、そこで見え隠れする道徳教科化の目的と大局観に少し違和感がありました。
「こうしたら、いいのに」
という想いが浮かんできたのでそれを勝手に綴ります。

道徳の授業では、教えなければならない「価値」が定められています。「家族愛」「親切・思いやり」「礼儀」「国や郷土を愛する態度」など、その数は22に上ります。
図にそれをアップします。

そもそもなぜ、道徳は教科化されたのでしょうか?
------------
森並慶三郎記者(社会部):道徳の教科化というのは、戦前に道徳的価値を教えていた「修身」という教科が軍国主義的教育の中心となっていたという反省から、戦後一貫して見送られていたんですね。
しかし、全国でいじめによる自殺が相次いだことなどから、国は子どもたちの規範意識を高める必要があるという理由で、方針を転換して、教科化することを決めたんです。
ーーーーーーーーーーーー

“いじめ”をきっかけにして、“子どもたちの規範意識を高める必要がある”という切り口は切実性があると思いますが、もっと違う切り口のほうが得策です。

それは、
・大目的は、「輝かしい将来の自分/社会/日本/地球をつくるため」に置いてみてください。
・「変化が激しい時代をどうやって乗り切っていけばいいのか?」という問題意識。
・ポイントは、「共感性」と「自立(自己の確立)」の両立です。
(ここに、「主観的」と「主体性」がつながってきます)
・“切り口”の中心は、「魅力」&「創造力」です。

少し説明します。
必要なのは、「輝かしい将来(自分/社会/日本/地球)」から考えることです。
あるいは、狭くなりますが、「インバウンド外国人」の目からです。

⇒ 魅力的な日本は?
⇒ 魅力的な社会は?
⇒ 魅力的な自分は?

当事者意識として、魅力的な将来を考えると、“いじめ”はつまらないものに見えてきます。
是非、皆さんも考えて下さい。

「魅力」を考えると横軸の「共感性:いたわり・慈しみ・やさしさ」と、縦軸の「主体性・創造性:価値づくり、イノベーション」が見えてきます。
それを気付いてもらうことがポイントです。
日本政府が実現したい2軸そのものです。
それは、将来に向けた私たちの一番の課題であります。

助け合うという気持ちの元は、人を慈しみ、いたわる、やさしさという感情です。
その根っこの感情が自己の中でしっかり根付くこと。
それをここでは「共感性」と置いておきます。横軸です。

もう一つ重要なのが、「主体性(自己の確立)」です。
共感性(横軸)は、「人にやさしく」なのですが、主体性(縦軸)という、他に依存するのではなく、自分に厳しく社会/日本/地球を良くしていこう、切り拓いていこうという自立・自律の精神です。
それが、一人ひとりが元々持っている「創造性」の掘起しであり、それを花開かせる「創造性」です。
それが将来の「魅力的な自分」を考え、育むきっかけになります。

そのこと(「創造性」)は、この「価値創造の知」で多くを綴ってきました。

「魅力」(横軸)から入り、考えて、「(想像力)・創造力」を伸ばしていく。
それが基盤にあると、通常の教科がまるで違って見えてくることでしょう。

上記の
・「共感性」(横軸)と「主観性」(縦軸)
・「魅力」と「創造力」
の双方を「二つでありながら一つ」(価値創造の知・第33夜)で教科にすることが一石二鳥です。

その意味で、縦軸(主体性・創造性)を組込み、構想することが重要です。
それを手にした時に、「学校」のあり方、「入試」のあり方が変わります。

それを第131~139夜に綴ってきました。
まるで、それを待っていたかのように「道徳教科化」が出てきました。そこには、大きな不足があります。
「本来と将来」から取組みましょう。
今の「道徳教科」を革新しましょう。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
道徳教科