2018年5月17日 「真の企業再生・創生
今週の5月14日(月)に、前職パイオニア社の社長交代の発表がありました。
「また、リストラを繰り返さなければいいのだけれど・・・」というのが本音でした。
・「オーディオ事業」は約30年前の1989年をピークに落ち続けています。
・社運を賭けた「プラズマディスプレイ事業」に失敗しました。
・パイオニア社の進化に必要な「プロSV事業(DJ事業)」を売却しました。
・これから、AI時代(①センシング②プロダクティング③コンサルティングの一気通貫)に向けて、あらゆる業態が新サービス業務に激変します。
1993年の経営会議で、「オーディオ活性委員」「高密度メディア委員」を兼ねた自分が両委員会を統合したある発表をしました。
12年後の“2005年を境にして、「パッケージ系・通信系・放送系」のメディア環境が大きく変わり、当社の「CDメカニズム」を利益の柱とする構造が崩れる。
そのため、2000年までに「次の進化」をまとめる必要がある”
そのシナリオの骨格を提案しました。
そして、先ずその第一弾を「ヒット商品緊急開発プロジェクト」として、異業種コラボレーションによる連続ヒット商品を創出しました。
(詳細は、第14夜:社長直訴そしてヒット商品緊急プロジェクトへ)に綴っています。
2003-2006年に、総合研究所への異動があり、パイオニアの5年後・10年後の将来像(ビジョン)を社内外メンバーでまとめました。
それは、「シナリオプランニング」を分母にしてビジネスチャンスを4象限(シナリオロジック)にまとめ、ビデオ化したものですが、10年後の2017年を殆ど言い当てていました。
2007- には、「プロSV事業(DJ事業)」の5年後、10年後の将来像をシナリオプランニングで監修しました。
(「シナリオプランニング」については、「第15夜:危機意識、不確かな時代を読み解く方法」に綴っています)
何を言いたいのかといえば、社内外のメンバーでまとめた優れた複数の提案があったということです。
そして、重要なことは、それらはすべて「会社再建の方向性」を基盤にしていたことです。
さて、1990年前後に、「真の企業再生のための3つの切り口」を妹尾堅一郎先生が提唱・整理されていましたが、それを加筆引用します。
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「行き詰まりの打破や、新たな成長を目指して、企業再生に取り組む切り口は3つあります。
①リストラクチャリング
「構造」の見直しを意味しますが、企業を縦串で見た時に必要のない部門を削除するものです。
②リエンジニアリング
「機能」の見直しを意味しますが、企業を横串で見た時に必要のない仕事を削除するものです。
③リオリエンテーション
「進むべき方向」の抜本的見直しを意味します。
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①②がDeleteに向かうのに対して、③は「我々はどの方向にむかうべきか」
を問うものです。
これは、新しい時代の企業・事業の意味を問うことであります。
・将来に向けて、何のために事業を行っているのか?
・それには、社会に役立つどのような意味があるのか?
・真の顧客価値に根ざしているのか?
それは、企業・事業の原点に立ち戻り、生まれ変わる(創生・再生)ことを意味します。
さて、前職・パイオニア社のことです。
パイオニアは、ずっとずっと「①リストラクチャリング」をしてきました。そして、「ホームオーディオ事業」「プロSV事業(DJ事業)」を売却しました。
「カー・ホーム・DJ」を新結合(第32夜、第111夜)するだけで、「ヒット商品」「新文化」は生まれたのです。残念ですね。
経営は、縦の事業部に権限委譲していますが、経営の真の力は、将来ビジョンをイメージメントして、外部とそれらを横串して新文化を創る「プロデュース能力」です。
それを行うには、「深い知・高い知・広い知」を伴った企業の“ミッション・ビジョン・イノベーション”の明確化が絶対必要なのです。
そう、新しい経営陣には、「①リストラクチャリング」に安易に走るのではなく、“ミッション(錨)・ビジョン(北極星)・イノベーション(羅針盤)”と、真の企業再生・創生「③リオリエンテーション」が求められます。
真正面から取り組んでほしいですね。
それをナビゲート、サポートできる本物の外部パートナーを上手く活用することです。
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ