橋本元司の「価値創造の知・第155夜」:『真の企業再生・創生』とは? ⑨チャンスは備えあるところに訪れる

2018年6月11日 シナリオプランニングの効能

本夜は、“チャンスは、用意・準備しているヒト/会社/地域にこそ訪れる”その為の心得と方法について綴ります。

フランスの細菌学者、ルイス・パスツールのスピーチに
「… par hasard, direz-vous peut-etre, mais souvenez-vous que dans les champs de l’observation
le hasard ne favorise que les esprits prepares …
(… 偶然だと仰るかもしれませんが、思い出しましょう、観察の分野では“機会は準備のできている精神だけを好む”のです、…)」
があります。

 日本語では、パスツールの言葉として、以下(ウィキペディア引用)のように様々な言い回しが用いられています。
・幸運は用意された心のみに宿る
・偶然は準備のできていない人を助けない
・チャンスは備えあるところに訪れる

この言葉が、これまで以上にメディアに引用されることが増えると洞察しています。
それは、20世紀後半の「工業時代」に比較して、21世紀の「AIoT時代」には、政治・経済・社会・技術の変化が激しく、「不確かな時代」が加速してゆくからです。

天災、テロ/戦争、宗教問題、エネルギー危機、食糧危機、地方衰退、人生100年時代(年金、就労、教育等)、WEBの進化、・・・

“想定外”を東日本大震災を始めとして多く経験してきました。
ゲイリー・ハメル(ロンドンビジネススクール教授)は、「問題は、未来が現在と違うことだ。もし、これまでと違う考え方ができなければ、必ず未来に驚かされるだろう。」と述べています。
“あらゆる産業が、将来に対して不確実というリスクを抱える現代”において、未来についてますます予測が重要な時代になっている。一方、精度の高い予測が困難な時代でもある。・・・

これまでの『やり方・考え方』が通用しなくなっていることを意味しています。

そのために、『将来を洞察すること』そして、『戦略を構想すること』がより重要となっています。
それでは、『戦略』とは何でしょうか?

戦略とは、
1.自分たちの「ゴール」はどこか?(=目的)
2.自分たちの「居場所」はどこか?(=ポジショニング)
3.自分たちは「どのようなルート」で進むのか?(方法)

の3つでできています。

・“2.自分たちの「居場所」はどこか?(=ポジショニング)”が不安定ではありませんか?
・業界/地域が右肩下がりになっていて、危機の兆候が現実化していませんか?
・同様に“1.自分たちの「ゴール」はどこか?(=目的)”が揺らいでいませんか?

いったい、どうしたらいいのでしょうか?
そのために、早く原因に気づいて手を打つコト、決断することの重要性を前夜(第154夜)に綴りました。
そして、一つの分野に限るのをやめる。分野をまたぐ「RHIZOME:リゾーム/地下茎」発想について第153夜に綴りました。

不確実な時代を洞察する最も有力な方法に、「シナリオ・プランニング」があります。
「シナリオプランニング」については、第15夜、第86夜、第126夜に綴ってきました。その使い方を失敗すると手が出しづらいメソッドです。
それはメソッド側ではなくて、「乗りこなす人」の側に問題があります。だいたい「設問(問い)の仕方」が間違っているコトが多いのです。。

2004年に、「シナリオプランニング」の第一人者J・オグルビー氏の直伝を受けて、それを成果が出るように『日本流の知』メソッドを融合しました。「和魂洋才」への変換です。
そして、それを駆使して、社内外の複数のご依頼を解決する中で発見したことがあります。

それは、「シナリオプランニング」の前(Before)には深刻だった課題が、将来を拡張してテームで検討する中で、後(After)には複数の『次の一手』を見出すことで深刻から解放されることです。
チームのネガティブな雰囲気が、ポジティブになり、全員が「クリエイティブ・イノベイティブ」な人財群に変わることです。つまり、「将来洞察」と「人財開発」の良成果がセットになることです。
ただ、そこには「質の高いナビゲーター兼ファシリテーター」が必要です。
「ナビゲート機能のないファシリテーター」のみの「シナリオプランニング・プロジェクト」を見聞きしてきましたが、成果に辿り着く可能性が低いことをお伝えしておきます。
その真因は、ファシリテーターは“結果に責任を持たない”からです。

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一般的に予測とは、業界や事業の構造が現状の延長線上にあるということを前提として、将来を決めるのですが、
「シナリオプランニング」は、「現在の延長線ではない変化が起こると仮定した複数のシナリオ」を想定し、未来への対応策を考察する「思考シミュレーション」なのである。
例えば企業であれば、不確実な未来であることは当然と考え、環境変化に関する複数のシナリオを想定し、それらの変化に耐え得る戦略を検討すること、
さらにその思考方法を組織に埋め込むことにより、想定外の将来の変化にも柔軟に対応できるようになる。携帯電話業界、TV業界やパソコン業界のような変化の激しい業界では、なおさら予測が難しいことは当然だ。
シナリオ・プランニングは、単に複数の未来を予測しようとしているのではなく、このような思考法を組織に埋めこみ、どのような状況にあっても対応できることを重要視していると思う。・・・
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さてさて、本テーマは、“チャンスは備えあるところに訪れる”でした。チームで、「深く・高く・広く」気づき、備えることが、「シナリオプランニング」の真骨頂です。
そして、プロジェクトでは「シナリオプランニング」⇒「成長シナリオ」⇒「BSC」で経営戦略をまとめます。
チームを“燃える集団”にして、“戦略策定・実践”できる人財に変えます。

将来を洞察して、共に、創発して、気づき、備えて、チャンスを掴むことが、『真の企業再生・創生』には不可欠です。
そこには、偶有性(第19夜:セレンディピティ= めったにないことが起こる幸せ)が音連れます。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
シナリオプランニング