2018年7月6日 「Stay hungry.Stay foolish」
本夜から、「ジョブズ氏と価値創造の知」の深い関係を綴りますが、そのことで、イノベーションの本質とリアリティーを感じていただければ幸甚です。
ジョブズ氏の生年月日は、1955年2月24日です。今生きていれば63歳。自分の誕生日とはたった一か月の違いで、色々な意味で親密感を持っています。
前職パイオニア社の時に一回だけですがお会いしました。「イノベーションのカリスマ」・「イノベーションの権化」のオーラがありましたね。
さて、スタンフォード大学卒業式辞には、3つの話があります。
①点を繋げること
いまやっていることが何かに役立つと信じること。その点がどこかにつながると信じていれば、他の人と違う道を歩いていても自信を持って歩き通せる。それが人生に違いをもたらす。
②愛と喪失
自分を、見失わない。あなたも仕事にも恋愛にも愛せるものを見つけましょう。
③死について
死は古き者を消し去り、新しき者への道をつくる。他人の雑音で、心の声が掻き消されないようにしてください。そして、最も大事なのは、自分の直感に従う勇気を持つとこです。直感とは、あなたの本当の求めることを分かっているものです。
この3つの話を通底するものは、「禅の思想」です。ジョブズ氏が「禅寺」に通っていたことは有名です。『禅・ZEN』という視座をもっているかどうかで観え方がぜんぜん変わってきます。
「価値創造の知」連載では、『禅』について、
第6夜:「色即是空・空即是色」
第33夜:禅と価値創造
第76夜:価値創造の秘訣
にて綴っていますので関心のある方は参考にしてください。
それを観ていただければ、下記がつながってきます。
①革新:点を繋げること(イノベーション)
②情熱:愛と喪失
③覚悟:死について
『禅(ZEN)』の修行で一番大切なコトは、“二つでありながら一つ”ということです。(第33夜)
イノベーションの本質は、“新結合”(第32夜:イノベーションと価値創造)ですが同様です。
自分が前職で実践した「ヒット商品プロジェクト」(第14夜:社長直訴そしてヒット商品緊急開発プロジェクト)や企業/地域のご支援の中心・本質がそこにあります。残念ながら、これは机上ではわからないのです。その辛さと痛みと喜びを直接体験しないとわかりません。
その心得が、「②情熱:愛と喪失、③覚悟:死について」です。「情熱と覚悟」は“二つでありながら一つ”です。 現状を革新する「7つの力」(第60夜)は、「価値創造のエッセンスと流れ」を記していますが、その先鋒は、「本気:情熱と覚悟」にあります。
本気⇒本質⇒次の本流
がイノベーションのプロセス・心得(第11夜)です。
本気がなくて、本質・本流はつかむことができません。
さてさて、卒業式辞の最後に、
「Stay hungry.Stay foolish」
が述べられています。
直訳では、「ハングリーであれ、バカであれ」
普通の人はピンときませんね。本質がわからないと表面的なものになってしまいます。
繰り返しますが、頭では、机上では分かりづらいのです。この理解には「禅」の思想、思考と実践知が求められます。
そして、「情熱・覚悟」ゆえの「「痛み、辛さ」そして「喜び」の体験をした人には、直感できるように思います。
自分が意訳すれば、
Stay hungry. =「安泰」でいるな、“不足”を大事にしろ。
Stay foolish. =「良い子」でいるな、“逸脱”を大事にしろ。
となります。
「安泰」「良い子」は「楽(らく)」なのです。試練がないのです。イノベーターではなく、オペレーターなのです。
でも「安泰」「良い子」のままでは、イノベーションのスタートラインにつけません。
日本の教育は、高い処理能力のオペレーターをつくってきたのですね。そのオペレーターは、AI・ロボットの登場でその場を失ってゆきます。
さてさて、情熱・覚悟から『不足』が明確になります。『不足』を埋めるためには、『逸脱』が必要となります。
「不足と逸脱」は、“二つでありながら一つ”です。この「不足と逸脱」の視座が求められます。
その「不足と逸脱」から、「ミッション(使命)とビジョン(新文化/世界)」が生まれます。しかし、その道のりには必ず厳しい試練が訪れます。
それを乗り超えた人が辿り着くメッセージが、
「Stay hungry.Stay foolish」