橋本元司の「価値創造の知・第158夜」:スティーブジョブズ編 ②connecting the dots

2018年7月7日 人生には無駄な経験などなに一つない

前夜(第157夜)に続き、米スタンフォード大卒業式式辞から「価値創造の知」との関係を自分ゴトで綴ります。

本夜は、3つの話の「The first story」です。
そのテーマは、「Connecting the dots=点と点をつなげる」
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将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。運命、カルマ、何にせよ我々は何かを信じないとやっていけないのです。
私はこのやり方で後悔したことはありません。むしろ、今になって大きな差をもたらしてくれたと思います。
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人それぞれに、自分の物語がありますね。今の自分という在り様はそれらの上にあります。
自分ゴトになりますが、会社員時代からを振り返ってみると、

“設計(B2C、B2B)⇒組合(書記長)⇒技術企画⇒開発企画⇒情報企画⇒ヒット商品緊急開発プロジェクト⇒新事業創造室⇒総合研究所⇒新規事業開発⇒新価値創造研究所”

新入社員の時には、想像しなかった推移・人生経験です。
それを項目で切ってみると、
1.「ヒット商品」にご縁
①「設計時代」はちょうどロンサムカーボーイの「爆発的ヒット商品(カーオーディオ)」を担当していました。
②「開発企画時代」は、提案したサウンドスケープ機能を持った初の「2DINモデル」が爆発的ヒットをしました。
③ 上記に続いて、社長直訴して、「ホームオーディオ」と異業種をつなげた「ヒット商品」を連発しました。

2.「新価値・新規事業・人財開発」をプロデュース
① 社内横断、研究所横断の新価値/新事業創造をプロデュース
② 将来シナリオ(シナリオマトリクス/成長マトリクス)の社内外プロデュース
③ 日本流と欧米流をつなげた「創造型人財開発」の社内外プロデュース

そこには、社内外の多くの方達(師匠、異業種パートナー、プロジェクトメンバー、サポーター等)のご縁とご支援がありました。
一見、華やかそうに観えそうですが、従来の殻を破る革新、今までにない挑戦をしてきたので、その分反発・反動は大きいものがあり、その実は辛い想い、痛い体験も多くしてきました。
従来の軍隊型のピラミッド組織にはそぐわない活動にみえたのでしょうね。「守ろう」とする人達からは疎まれましたが、会社を革新したい、開拓したい、次を生きたい人達からはたくさんの支持がありました。

そして、そこには組合時代に体験した自分の覚悟がありました。
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31~32歳の時に、パイオニア社の当時2000人規模のセンター工場で労働組合の支部書記長をしていました。そこに、同じ地域にあるお菓子会社の労組の委員長と書記長が尋ねてこられました。
「会社の経営が危ないので、緊急にお菓子を斡旋していただけないか」と。年末だったのですが、お引き受けしてすぐにチラシを作成して、組合員にたくさん購入して貰いました。

その一年後に、同じ二人が来られました。「昨年は本当にたくさんのご支援、有難うございました。しかし、力及ばず会社は倒産することになりました」
今、私達が悔やんでいるのは、3年ほど前に会社を立て直す機会があったのですが、そのままにしてしまったことです。あの時に本気で労組が再建の行動をとっていたら、このようにはならなかった」

まだ若いその時に、とっても大事なコトを学びました。
「変化に対応できなければ、会社は倒産する」と。
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オーディオ業界は、1989年をピークにしてもう30年右肩下がりを続けています。その構造的問題と次の一手に気づいたのが1992~1993年です。
1993年の経営会議で、2005年以降に重大なメディア変換が起きることを発表しました。実際その通りになりました。
2006年(総合研究所)には、「シナリオプランニング」で10年後の事業にしたい4つの世界(象限)をチームでまとめ、シナリオロジックと動画にしました。2017年の世界は殆ど描いた通りになりました。

ここのポイントは負(マイナス)を背負うことです。
将来は現在とは違うこと(現在の延長線上に未来はない)。現在のモデルは欠けた『不足モデル』だと思うことです。
行き詰った時には、逸脱して『余白』を見つけることです。それを、この「価値創造の知」シリーズで何回も綴ってきました。

さて本題(connecting the dots)です。
将来をあらかじめ見据えて、「労働組合・書記長」になったわけではありませんし、同様に、尊敬する「二人の師匠」の門を叩いたわけではありません。
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自分が独立(58歳:新価値創造研究所)する時になって、これまでの
①100社との異業種コラボレーション:前職ヒット商品緊急開発プロジェクト(プロジェクトリーダー):第14夜
②100社の企業訪問:永田仁先輩の「企業訪問フォーラム」(日本マーケティング協会主催):第23夜
③200社のセミナー:谷口正和師匠主宰「文化経済研究会」「エコロジー研究会」等 :第24夜
④20年に亘る『格別・別格の一流人』との出会い:松岡正剛師匠主宰「未詳倶楽部」「連塾」「椿座」等 :第26夜
⑤前職(パイオニア社)の組合書記長時代の経験とネットワーク :第13夜
等々

で体験してきた様々なモノゴトが、ジグソーパズルの様に一つにまとまったのでした。
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それは、自分にとっては非常に不思議な感覚でした。
「人生には無駄な経験などなに一つない」という言葉をその時に初めて実感しました。

そのため、ジョブズ氏の卒業式式辞は「大共感・響感」あるのみです。

価値創造から、「事業創生・地域創生、人財創生へ」
スティーブジョブズ01