橋本元司の「価値創造の知・第170夜」:Think outside the box(箱を出る)

2018年9月24日 トリニティイノベーション

前夜に引き続いて「コンサルタントの知」について語ります。

前夜のテーマは、「経営アドバイザー」から「経営ナビゲーター」へ。
経営の「不足」を、表面的なつぎはぎという「パッチワーク」手法から、迅速に「価値創造・革新」手法にシフトしましょう、という主旨でした。

何故でしょうか?

◆企業の目的・本質は、「顧客価値を創造すること」(ドラッカー引用)にあります。
「価値の創造」ができていないと、急速に商品・サービス・ブランドの魅力がなくなりますね。それは、顧客からの「対価」がなくなることを意味しています。
ずっと同じ価値では、飽きられてしまいます。時代の変化についていかれないと時代の波に飲み込まれて沈んでいきます。

つまり、「コンサルタントの最も重要な知」は「顧客価値の創造」にあることがおわかりいただけると思います。
これまでのやり方・考え方が通用しない時代では、従来の価値観とは“違うけれども共感される”という「二つでありながら一つ(第33夜詳細)」の新しい価値観の創出が必要になります。
それは、第82夜(ビジネスで最も大切なコト)に詳細を綴っています。

残念ながら、殆どの経営コンサルタント、顧問、企業診断士は、一番重要な「顧客価値の創造」に手を出しません。出せないといったほうが当たっていると思います。ここが問題です。

さて、「違う」とはどういうことでしょうか?
それは「逸脱」することです。

それをスティーブジョブズは、「Think outside the box(箱を出る)」と言っていました。彼の口癖だったそうです。
これまでの価値観の常識・枠をはみ出ることですね。はみ出さないで新しい価値は生まれません。
箱を出て経済が発展することを「イノベーション」といいます。スティーブジョブズは、イノベーションの達人でした。
多くの業界の常識が崩れ淘汰されましたが、それをはるかに上回る文化経済(第24夜)を生み出しました。

さて、ポイントはどの様に「箱を出る(Think outside the box)」かです。
箱を出て「顧客価値を創造する」3つの方法(道筋)をお伝えします。

①深い知(第85、86夜)
②高い知(第87、88夜)
③広い知(第89~99夜)

それぞれ役割が違います。
詳細は、それぞれの連載(価値創造の知)をご覧ください。

それぞれを要約します。、
「①深い知」は、引いて引いて削いで、自社の「存在意義」を再定義することです。
旭山動物園が、それまでの常識である「奇獣珍獣で観客を呼ぶ」ことから、「命の大切さ」をミッションに掲げて、常識を変えました。
日本の枯山水、俳句、長谷川等伯「松林図屛風」、「アルコールフリービール」、前職の「カラオケ」も「①深い知」から生まれました。
足したり(+)、掛け算(×)したりするのではなくて、引いたり(-)、割ったり(÷)することで、新しい需要、市場、文化が生まれます。
それは、存在意義・ミッションを再定義することでイノベーションが始まります。
そして、それは、船における錨(⚓)のようなものです。
「②高い知」は、正反合の弁証法で、過去(正)と現在(反)を「二つでありながら一つ(第33夜詳細)」であると捉えて、将来にジャンプする方法です。
それは、将来像・ビジョンに直結します。時間上の現在・過去のどこに焦点をあてるかが、ベストビジョンを引き寄せられるかのコツになります。
天気の悪い荒波の航海で北極星を見つけることに似ています。
様々な業種・業態で作成・ご支援してきましたが、その成果は絶大なものがあります。
ここに、日本の方法である「守破離」を入れ込むことで、プロジェクトメンバーの目が輝き出します。

「③広い知」は、「②高い知」が時間上の結合(過去・現在・将来)だったのに対して、空間上の横串の結合です。
スティーブジョブズのiPhoneは、iPod・デジカメ・通信等の新結合によって生まれました。
前職での異業種コラボレーションによる連続ヒット商品も「広い知(新結合)」によるものです。
「グーテンベルクの活版印刷」の実家の刻印機とぶどう絞り機の新結合で生まれました。
違うものの組合せで魅力的な「物語(ストーリー)」を創れるかどうかがイノベーションの分かれ道です。
そして、その価値創造は、日本流の「間(ま)」そのものです。日本人が最も得意にしているものですね。

さて、この3つの方法(トリニティイノベーション)が、「Think outside the box(箱を出る)」ための肝(きも)・要(かなめ)です。
そこに、日本の方法がしっかりと息づいているのが分かりますね。欧米との違い、アドバンテージがそこにあります。

トリニティイノベーションを「成長経営ナビゲーター」を目指す方たちに是非身につけて欲しいですね。

そして、このような「発想」「構想」「日本の方法」を小学生、中学生のときにお伝えしたいですね。
なぜならば、「AI」登場で求められるのは、「知識」ではなくて、トリニティイノベーションの「知恵」になることが明らかだからです。

価値創造から、事業創生・地域創生・人財創生へ
橋本元司01