橋本元司の「価値創造の知・第175夜」:価値創造とは何か

2018年10月24日 価値創造とは何か

改めて、価値創造とは何でしょうか。

結論から云えば、
『価値創造』とは、「人に役立つことを先取りするコト」です。

それは、「AI」が苦手な領域です。同時に、学校教育が苦手な領域でもあります。
なぜなら、人々の価値観を扱うからです。常識を疑い、常識を超えるからです。
「価値」は答えが一つではなく、様々であり、不確かなものなので採点できません。
そして、そこには人に役立とうとする、目に見えない「志」、「情熱」、「モチベーション」が不可欠です。

学校は、速く答えに辿り着くテクニックが中心、その土台となる大事な中身を教えて貰っていません。
それは、欧米に追い付き、追い越せのためにあったのですが、もうとっくにその時代ではありません。自らが「価値を創り出す」側に、リーディングエッジに立っているのです。

さて、初期「AI」は答えが判っているものを高速処理するのに適しています。
なので、20世紀の教育で育成してきた高速処理パーソンの「ホワイトカラー」はその仕事が劇的になくなっていきます。
更に、高速処理できるロボット群が「ブルーカラー」の仕事を急激に奪っていきます。

「他人ゴト」ではありませんね。
そのため、イノベーションの元になる「価値創造」という存在が、ビジネス現場でのウエイトを急激に増しています。

それでは、「価値創造」についての自分ゴトの気付きとプロセスをご案内します。
◆『価値』とは、突き詰めれば「人に役立つかどうか」というコトです。

本夜は、皆さんからの関心が特に高い「不易流行(ふえきりゅうこう)」(第34夜)に紐づけながら解いてゆきます。
「不易流行」とは俳聖・松尾芭蕉が「奥の細道」の旅の中で見出した蕉風俳諧の理念の一つです。
不易流行の『不易』とは、時を越えて不変の価値をさし、『流行』とは時代や環境の変化によって革新されていく価値のことを云います。

蕉門に、千歳不易(せんざいふえき)の句、一時流行の句といふあり。是を二つに分けて教え給へる、其の元は一つなり。(去来抄)
「千年変らない句と、一時流行の句というのがある。師匠である芭蕉はこれを二つに分けて教えたが、その根本は一つである」という意味です。

「不易(変わらぬもの)と流行(変わるもの)の根本は一つである」これは、第31夜~33夜でお伝えした“二つでありながら一つ”と同じです。
つまり、不易流行の根本も、言い換えれば「人に役立つかどうか」に繋がってきます。

この世は「諸行無常」です。これは不変です。
iPhoneは、多くの人に役立ちました。iPhone以前に、その統合した価値は存在していませんでした。
常識を疑い、常識を超える未常識(第29夜)に到達すること。
iPhone以降に、更に進化したメディアが登場するのは必然です。その予兆は、いまここに明滅しています。

何を言いたいのかと云えば、今の眼前の現実は「欠けたモデルだ」「途上のモデル」と割り切ることです。
その上で、「余白」(第22夜)、「空」(第85夜)を見つけることで、新しいスタイル、新しい価値が生まれてきます。

『価値』に尽きることはありません。
◆『創造』とは、「未来を先取りする」というコトです。

今、私達に求められている資質(WILL)と能力(SKILL)は何でしょうか?(第1夜、第51夜)
①それは、豊かな未来を創りたいという情熱(PASSION)と
②その本質の発見力(MISSION)と
③周りを巻き込んで実現する行動力(ACTION)にあります。

①を②③につなげるための基本の流れとして、
・模倣的(イミテイティブ)
・創造的(クリエイティブ)
・革新的(イノベイティブ)
を整理しておくことを、「未来を切り拓きたい」と熱意と情熱を持っている方達にはお薦めします。

「クリエイティブ」については、「新しい視点を発見するコト=見方を変えるコト」であり、つまり、「イノベーティブ」の前段で常識の殻を破るという位置づけです。
「イノベーティブ」とは、iPhoneに代表されるように、「新しい世界を創り出すコト=現実を変えるコト」です。
この基本の流れと其々の役割を理解しておくことが、将来のイノベーターを目指す方達にはにはたいへん役立ちます。

さて、クリエイティブ以上の『イノべイティブ』に到達するのに必要なのは、
・第21夜(気立て・見立て・仕立て)の気立てと仕立ての用意と卒意
・第17夜(「間(ま)」と「創造」)のダイアグラム作成 がポイントになります。
是非、「未来の先取り」に挑戦してみてください。

ここで、自分のコトを綴ります。
30年前の1988年、パイオニア社の技術職として、センター工場に勤務(技術企画課)していました。
この年は、振り返ってみると「ホームオーディオ事業」のピークにありました。
それは、従来の「性能」を追求していれば良かった時代の終焉でした。

20世紀は「所有」の時代でした。「所有」の時代の背景には、「モノの不足」があり、そこでは何馬力、何ワット、何デシベルというように『性能』が重視されていました。
それが満たされてくると、次の充足は『機能』に移りました。生活空間には、使わない機能でいっぱいの機器が溢れましたね。
「性能」自身の魅力が薄れていきました。魅力がなくなると、事業は廃れます。

現在は、「モノからココロ」へと、よりインナーへの欲求に移っています。

それを時系列で表現すると
⇒ 性能 < 機能 <効能
となります。

私たちは、機械の『性能』からではなく、生活・人の『効能』という価値から捉えていく時代になってなっていくことが分かりますね。
(現在は、3つのインターネット的特徴(①リンク、②シェア、③フラット)の浸透(第84夜)により、「所有」しないで、借りる、シェアするという「型」で「使用・体験」する時代になっています。さらに、「おもてなし型」へ))

労働組合の書記長を降りて一年後の33歳の時に、一年に一回開催される重要なイベントである「技術発表会」(2000人規模)の事務局長になりました。
『性能から効能へ』という「価値転換」から把える時代になるコト。そして、それまで、発表会にはコンセプトがなかったので、
「新価値創造 NVC(=New Value Creation)」
を中心において、全てのテーマが「新しい価値を創造すること」に置くことを発表しました。

・新価値=「世の中に役立つコト」
・創造=「未来を先取りするコト」

30年前の当時、「価値創造」「新価値創造」という言葉はどこにも使われていなかったので造語です。
もう、「価値創造」が時代の中心になることが観えていました。

その後、すぐに目黒本社に異動となり、
・調査企画(情報企画課)
・開発企画
・社長直轄 ヒット商品緊急開発プロジェクトリーダー
・新事業創造室室長
・総合研究所:新価値推進センター所長(研究企画、シナリオ企画)
・「パイオニア・次の柱」事業創出プロジェクトリーダー
・新価値創造研究所代表
と歩んできました。

今思えば、ずっと30年間、「価値創造・新価値創造」をミッションとして活動してきました。
その途中で、多くの方達との出会いがあり、「価値創造の奥義=トリニティイノベーション」(第67夜、第89夜)を体系化しました。
このトリニティイノベーション(第82~89夜)の中に、『創造』のエキスを注入しています。是非ご覧ください。
突き詰めれば、それは複雑ではなく、日本流のとてもシンプルな方法(第170夜)です。

さてさて、日本の停滞の本質は、「価値創造」が進んでいないことにあります。
逆に云えば、日本の成長の源は、「価値創造」の量と質です。

これからの「AIoT時代、Robot時代」に、他人ゴトから、自分ゴトへ転換しませんか?
「価値創造」で、共に、隆々とした日本の新しい文化、市場を創り出しましょう。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
価値創造とは何か