2018年11月15日 風姿花伝の「花」とは、「価値」のことである。
2014年新春に、NHKの「100分de名著」という番組で「世阿弥 風姿花伝」が放送されました。
そこでの土屋惠一郎さんの解説が、現代の問題や「イノベーション&マーケティング」に参考となるとても刺激的な内容でした。
それは、前職・パイオニア社での革新活動ともマッチングするものであり、現職のコンサルティングにも活用できるものでした。
放送の一部を加筆引用します。
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ドラッカーはその代表作『マネジメント』の中で、イノベーションとは
・「物事の新しい切り口や活用法を創造することだ」
と語っています。
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一方世阿弥は、
・「人々を感動させる仕組みとして新しいものや珍しいものこそ花である」、
すなわち「珍しきが花」
ということを語っています。
これは文字通り、「珍しいものに人は感動する」ということです。
この「珍しきが花」が腑に落ちた時、そうか、これこそがドラッカーの語るイノベーション理論なのではないかと気づいたのです。
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世阿弥の言葉は、現代の競争社会を生きる私たちにとっても有効なメッセージを伝えてくれる。私はそう感じています。
世阿弥が生きた室町時代も、のちに戦国時代へと突入する不安定な時代でした。能を取り巻く環境も、安定した秩序を重んじるものから「人気」という不安定なものに左右される競争に移っていった時代です。
そのような時代を生きた世阿弥の言葉は、同じように不安定な現代を生きる私たちにたくさんのヒントをくれます。
しかも、世阿弥の言葉は驚くほどわかりやすいのです。注釈や現代語訳がなくとも、大意はそのままつかむことができます。
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『風姿花伝』は、世阿弥が父から受け継いだ能の奥義を、子孫に伝えるために書いたものです。
それは、能役者にとってのみ役立つ演技論や、視野の狭い芸術論にとどまってはいません。世阿弥は、能を語る時に世界を一つのマーケットとしてとらえ、その中でどう振る舞い、どう勝って生き残るかを語っています。つまり、『風姿花伝』は、芸術という市場をどう勝ち抜いていくかを記した戦略論でもあるのです。
そこには、イノベーションとマーケティング心得と方法のヒントがいっぱい詰まっています。
さて、この「価値創造の知」連載で綴ってきましたように、
「工業・情業時代→脳業(AI)・興業時代(第109夜、第169夜)」
へとパラダイム(枠組み)が大きく変わる不安定な時代を私たちは生きています。
是非、多くの方達に「能&世阿弥」を体感して欲しいと想っています。
そして前夜にも記しましたが、自分の解釈では、『風姿花伝』の『花』とは、「価値、及び、価値創造」のことを指している、と云い切ります。
その切り口で読み解くと、「世阿弥」が「風姿花伝」が頭と心身に入ってつながって現代に甦ってきます。
さてさて、世阿弥は「能」にとってもっとも大切なものを「花」という言葉で象徴しました。
「花と、面白きと、めづらしきと、これ三つは同じ心なり」
・秘すれば花(価値)
・珍しきが花(価値)
・新しきが花(価値)
謡、踊り、囃子、装束、物語、舞台のどこかしこに「花(華)」が見え隠れしています。
もし、可能であれば、幽玄の能舞台で世阿弥と対話してみたい。
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ