2018年12月11日 パイオニア社のリオリエンテーションの道筋
「パイオニア、香港・投資ファンドの完全子会社化へ」
という前職・パイオニア社のとっても残念なニュースが 先週12月7日に飛び込んできました。
本年5月中旬の第147夜に、
『真の企業再生・創生』とは? 「①リストラではなく、リ・オリエンテーション」
というテーマで、パイオニア社のことに触れました。
---------
・・・
経営は、縦の事業部に権限委譲していますが、経営の真の力は、将来ビジョンをイメージメントして、外部とそれらを横串して新文化を創る「プロデュース能力」です。
それを行うには、「深い知・高い知・広い知」を伴った企業の“ミッション・ビジョン・イノベーション”の明確化が絶対必要なのです。
そう、新しい経営陣には、「①リストラクチャリング」に安易に走るのではなく、“ミッション(錨)・ビジョン(北極星)・イノベーション(羅針盤)”と、真の企業再生・創生「③リオリエンテーション」が求められます。
真正面から取り組んでほしいですね。
・・・
---------
「次の一手」「次の柱」の用意と卒意はできたのでしょうか?
同時に、「真の企業再生のための3つの切り口」についても触れました。
-----------
「行き詰まりの打破や、新たな成長を目指して、企業再生に取り組む切り口は3つあります。
①リストラクチャリング
「構造」の見直しを意味しますが、企業を縦串で見た時に必要のない部門を削除するものです。
②リエンジニアリング
「機能」の見直しを意味しますが、企業を横串で見た時に必要のない仕事を削除するものです。
③リオリエンテーション
「進むべき方向」の抜本的見直しを意味します。
-----------
多くの会社が①②でお茶を濁していますが、上記①②は誰にも判りやすい「オペレーション」です。
12月7日の同日に、ニッサンのゴーンさんもニュースになっていましたが、ゴーンさんの得意なことも①②です。それも行き詰まりを見せましたね。
現在の多くの会社が①②が得意だった経営者の方達です。
ところが現在は、時代の変化・進化(第109夜、第169夜参照)の踊り場で、①②だけでは対応できなくなっていますね。
そのことは、経営者の方達はもう十分に承知しています。
今は、「③リオリエンテーション」の時代の踊り場であり、そのベースは、常識を逸脱しながら顧客満足価値を創造する「イノベーション」を開拓するパイオニアカンパニーが活躍する時代です。
さて、連載してきた『芭蕉』はその様な「踊り場」を生きて「俳句界」を開拓した、まさしくパイオニアでした。
この開拓で重要な視点は、芭蕉が生きた時代(1600年代後半)の背景をセットで視る必要があります。
そう、芭蕉が生きた時代と現在の状況には踊り場としての共通点がいくつかあるので、芭蕉がどの様な舞台でイノベーション(革新)をしたのか、を自分ゴトとして置き換えることで、今の経営に役立てていただければ幸甚です。
それでは、100分de名著:おくの細道 松尾芭蕉(長谷川櫂)から加筆引用します。
---------
江戸幕府がもたらした太平の時代の前には応仁の乱(1467~77)から130年以上続いた戦乱の時代がありました。
戦乱は今日の都を発火点にして日本全土に広がりました。この戦乱が日本の社会や文化に与えた影響は想像を絶するものがあります。
日本の歴史を眺めると、この戦乱の時代を境にして、それ以前の日本と以降の日本はまるで別の国であるようにみえます。
いいかえると、応仁の乱が巻き起こした戦火の中でそれまでの古い日本はいったん滅んでしまった。そして、戦火の中から新しい日本が生まれたということです。
このとき誕生した新しい日本が修正を加えられながらも現在まで続いているのですが、この新しい日本の最初の大詩人が芭蕉だった。
さらに踏み込んでみると、130年も続いた戦乱の時代に都だけでなく地方の都市も戦火で焼け、荒れ果てました。これによって貴族や大名や自社が保管していた多くの古典文学の文献が消失したり散逸したりしてなくなってしまいました。いつの時代でも戦乱は文化の破壊をもたらします。
その後の1600年前半に、本阿弥光悦・俵宗達・北村季吟等の日本の古典復興(ルネッサンス)がありました。芭蕉が生きた1600年代後半は、それらの古典復興を創作に生かした時代だった。
つまり、芭蕉は絶好の時代を生きたことになります。芭蕉が日本最大の詩人とされる背景には、こうした時代の力が働いています。
・・・
---------
さて、「蕉風開眼の句」と呼ばれる古池の句以前の俳句はどのようなものだったのでしょうか?
俳諧の本来の意味は「滑稽」や「戯れ」といった意味でした。それは、連歌を面白おかしく、親しみやすくしたものです。
それを簡潔に表わすと、古池の句以前のそれはずっと「言葉遊び(滑稽や戯れ)」の俳句でした。
それは「駄洒落」のようなものだったのです。
古池や蛙飛こむ水の音
はるか古代から日本文学の主流は和歌でした。その和歌は発生以来、一貫して心の世界を詠んできました
人の心を詠み続けてきた和歌に対して。言葉遊びの俳句が低級な文芸とあなどられていたのは当然です。
そうしたなかで芭蕉が古池の句を詠んで俳句でも人の心が詠めることを証明したのです。
そこに、「現実(実)と心の世界(虚)という次元の異なる合わさった『現実+心』の句」を開拓しました。
芭蕉の革新ポイントは、
・新しい舞台をつくる
・土俵を変える、逸脱する
・新しい目的をつくる
ことにあります。
上記については、次夜に、第177夜「老子の道(タオ)」と関連付けて綴ります。
さてさて、ここからパイオニア社が、「どの様な新しい道を開拓するのか」が肝要です。
ヒントや構想は、幾つかありますが、先ず二つアップします。
1.価値創造の将来は、「中心にはなく、周縁に」あります。
→「オーディオの未来は?」を参照ください(2017年5月14日 オーディオの定義を革新する)
2.「顧客に囲まれる」には?
「顧客に囲まれる時代」(第20夜、第72夜、第108夜)の新しい交差、新文化を創り、そのエコシステム(生態系)を創造する
ことにあります。
それは、「ハードウェア」だけではできません。
それができれば、仕上げの「第3ステップのイノベーション・レボリューション」に進むことができます。
やはり、それらはこれまでの①②「オペレーション」ではできません。
③「リオリエンテーション」から、開拓(パイオニア)しましょう。
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ