橋本元司の「価値創造の知・第199夜」:「理解の秘密:指図・段取り」④

2018年12月26日 前職パイオニア社の設計時代

ここで再度、いったい「インストラクション」とは何かについて「監訳者あとがき」から加筆引用します。
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・・・インストラクションとは、そこに大なり小なりのスコープを現前させることだ。
いい訳語がないのだが、日本では江戸期に使われた「指図」とか「段取り」という言葉がほぼそれにあたる。
指図は、普請現場のための図面のこと、段取りは建築や芸能の勧進(プロデュース)のための手順表をいう。
インストラクションは、命令や指示ではない。「説明」である。人が行動をおこす前に、その行動を円滑にし、しかも充実させるための説明だ。
面と向かって口頭で説明できない場合は、マニュアルやハンドブックのような説明書になる。そのため、インストラクションでもっとも重要なことは相手をできるかぎり理解させることである。
そこに、「理解の情報学」あるいは「情報の理解学」とでもいうべきコツが必要になる。・・・

われわれの日々のコミュニケーションの大半を占めているのは、相手に何かを伝えるための会話である。
「わかったね?」「ええ、わかりました」というやりとりは必ずあるのだが、いっこうに理解して貰えなかったということが多い。
それでも日常生活だけなら、まだいい。これが仕事のためのコミュニケーションとなると、取り返しがつかなくなる。
だいいち、「早とちり」「聞き違い」「一知半解」「勝手な解釈」によるコミュニケーション・ロスは、重ねてみればあまりにも厖大になる。
組織変革のためのリストラクチャリングや資源節約をするより、まずインストラクションの仕組みを変えたほうがよほど効果的であるとすら思えるのは、そこだ。・・・
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インストラクションは、命令や指示ではなく、「説明」である。
作曲家がわれわれに提供してくれるのは、音楽そのもではなく、音楽を演奏するインストラクションである。これは誰にでもわかる表現手段でこと細かに書かれています。
バッハは、プレリュードやフーガではなく、それを演奏するためのインストラクションを後世に遺しました。
前夜(第198夜)に、前職パイオニア社で、自分が「設計」に従事していたことを記しましたが、そこでは、「企画」からの仕様を受けて、「構想」し、「設計図」を作成していました。
そこでは、最終製造現場で製品を組立てるための部品製造のインストラクションを八年間していたことになります。

20代前半に、添付写真のKP-77G・GEX-90等、ロンサムカーボーイ(コンポーネント・カーステレオ)という大ヒット商品の設計担当者となり、後半は国内、海外の大手自動車メーカーのOEM設計の立ち上げに関わりました。
そこでは、「指図」「段取り」「構想」の大基本を身につけることができました。その時のインストラクション経験が今の仕事の基礎になりました。

そのインストラクション(設計図)の出来、不出来がたくさんの関係者に影響を及ぼします。設計ミスしたらたいへんなのです。
さて、当時は、年末年始やゴールデンウイークの直前に、「本社・企画」や「自動車メーカー」から、「大きな変更(設計変更)」が入ることが日常茶飯事でした。
それまでの段取りが滅茶苦茶になりますね。その変更対応のため、超超過勤務と「連休」の半分以上は出社していました。

そう、上流の段取り(インタラクション)が悪いのですね。そのことによる現場のロスは計り知れないものがあります。
・設計にいれば、上流の「企画」「開発」
・「企画」にいれば、上流の「研究所」「経営」
のインストラクションの問題が否が応でも目につきます。

上流が、いいタイミングで有効な「指図」を出せないと、「段取り」を示せないと、現場は大混乱します。
それを革新することができれば、インストラクションの仕組みを変えることができれば「働き方改革」になります。逆に、それができないと取り返しがつかなくなります。
(リストラクチャリングの道に進みます)

そうやって、「設計」「技術企画「開発企画」「ヒット商品」「研究所」「新事業開発」と上流に異動していきました。
「インストラクション」の重要性が、会社経営、会社生活、夫婦生活、人生設計にも関わってくることがわかりますね。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

理解ロンサムカーボーイ