2019年2月21日 超AI時代のトピア
前夜(第208夜)は、AIの進化に伴う「農業→工業→脳業」という時代の変化を綴りました。
「脳業」の次は何か、ということはどこかの夜に綴ろうと想いますが、そのような本気の「仮説」を持つことで、下記の『脳業』の意味が観えてきたりします。
さて本夜は、「超AI時代の生存戦略」(落合陽一著)のエピローグに記されているAIという『テクノフォビア』からの『ユートピア&ディストピア』をキーワードにして『オモテナシトピア』(橋本元司の造語)という世界をご案内しようと思います。
(『テクノフォビア[technophobia]』とは、【心】科学技術恐怖症.テクノ恐怖症.コンピューターの操作やメカニズムに慣れないため,心身が拒絶反応を起こすもの:現代人のカタカナ語辞典引用)
産業革命以降、それまでの自分たちの職業・仕事が「機械」に取って代わられることで歴史的に大きな反発がありました。日本でも第一次産業の農業等中心だっだ地方の次男坊、三男坊が都会に移動しました。自分の父親もそうでした。ある意味、集まった都会に受け皿の仕事があることで高度成長にも繋がりましたね。とてもラッキーなことでした。
さて、農業から工業に転換した時と、似たような同じような変化が今起こりつつあります。
それは、単純労働やホワイトカラーの仕事が、AIをまとった「ロボット」や「ソフトウェア」で代替される時代が到来しているのです。製造業も新サービス産業に変わっていきます(第77夜)。自動車産業もそこに向かっています。
問題は、
・それが従来の「機械(マシーン)」の様に「実体」がみえない、インビジブルなこと。
・物質から実質(バーチャル)へ、キュービタルへ
・シンギュラリティ:“人工知能(AI)が人間の能力を超える時点”を意味する言葉
・等々
つまり、第109夜に綴った『3Cの時代』
①C: Computer=脳(AI)
②C: Communication=神経系(IoT)
③C:Control=手足等(Industry)
の①C: Computer=脳(AI)に肉薄してきたからです。
それまでは、③C:Control=手足等(Industry)という工業時代だったのです。
上記①②③が出揃い、AIを纏ってくるのが、『脳業』環境という生態系(エコシステム)です。
自分もそうですが、皆さんの中にも「ターミネーター」「トータルリコール」「マイノリティリポート」等の映画で近未来を脳にインプットされて一種の恐怖を感じている方達も多いと思います。
「超AI時代の生存戦略」から加筆引用します。
-----------
「ああ、やっぱりテクノロジーに適応した人類は今より悪くなっている」
と言いたい気持ち、そういった感情をなぞることで頭の中だけテクノフォビアになる。
(原爆や化学兵器でも痛い目をみましたね)
—ケヴィン・ケリー氏の著作である『インターネットの次にくるもの』の中で、ケリー氏はユートピアとディストピアとは違った未来に「プロトピア」という名前を付けている。
(ギリシア語の ou (否定詞) と topos (場所) に由来し,どこにも存在しない場所,転じて,理想的社会,空想的社会の意。「無何有郷」などと訳される。ディストピアとは、「ユートピア(理想郷)」とは逆の社会である。反理想郷。暗黒世界)
人間が目指すところは、ユートピアでもディストピアでもなく、あるいは現状維持でもなく、「プロトピア」だと思う。
プロトピアとは、ほんのわずかであっても、昨日よりも今日よりもよい状態である。プロトピアを視覚化することはきわめて困難だ。なぜならば、プロトピアは新しい利益と同数の新しい問題を含んでいる。このような有用と崩壊との複雑な相互作用を予測することは非常に難しい。
プロトピアは、技術革新を繰り返す流動性によって徐々に良くなっていく世界観であり、自己組織化した画一的でない「まともなディストピア」の姿でもある。—
—今起こりつつある変化、真実ではなく意見の時代、これを一言で表すなら「人類の適応」と言えるだろう。
この変化をフラットに受け入れられるかどうかが、「ポスト真実(Post-Truth)客観的な事実や真実が政治的な選択において重要視されないという意味)」後の踏み絵になっている。この踏み絵はこの世界のいたるところで起こっていて、これを受け入れられない人々は発達したテクノロジーから感じる漠然とした異物感を
「それによってコミュニケーションの問題が生じているとくくりつける。
しかし私たちはもはやこの変化に適応して生きていくしかないのだ。あるべきだった世界は存在せず、皆が見た正義も存在しない。真実と虚構のバランスは等しくなった。いや虚構のほうが強いかもしれない。—
---------
それは、「技術」だけではなく、「政治」「経済・金融」等、さまざまな「トピア」(場所)に問題を起こしています。
それには、「物質」と「実質(バーチャル)」の間にある『本質』を共有することが肝要だと洞察します。
それには、人々の『心』が鍵(キー)になるのではないでしょうか。
大胆に云えば、それは主客一体の『おもてなし』(第2夜、第93夜)
「おもてなし」とは、下記の三位一体です。
①しつらい=ハードウェア
②ふるまい=ソフトウェア(メニュー・プログラム等)
③心づかい=ハートウェア(ヒューマンウェア)
「おもてなし」の代表格のお茶事の世界には「リアルとバーチャル」が融合していますね。
『趣向』を何にするのか、どこに向かうのかが問われます。
「AIの趣向」、方向づけが重要です。
さて第9夜に、「三つのエコロジー」(フェリックス・ガタリ著)を綴りました。
「人間は下記3つの世界(エコゾフィー)の中に生きている。
①地球環境 :物の公害
②人間社会環境 :社会の公害(テロ、離婚等)
③心の環境 :ストレス
これを別々に切り離すのではなく、三位一体で直視して展開すること」
「AI・AIoT」と「三つのエコロジー」は、切り離せない将来のテーマです。
この二つを融合することで、新しい価値や世界が見えてきます。。
『心(心のエコロジー)』を鍵にして、『おもてなし』を鍵穴にするのが「思考の補助線」「解決の型」になるように想います。
その解決のトピア(場所)が、「ユートピアとディストピア」の間にある『オモテナシトピア』(橋本元司の造語)
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ