橋本元司の「価値創造の知・第222夜」:「ICHIRO: ビジネスと野球の共通項 」⑥

2019年3月29日 どの記録よりも、自分の中で誇りを持てたこと

野球人生というキャリアの中で一番印象的だった場面を聴くことで、ICHIROさんの野球に対するスタンスや想いを知ることができます。

引退会見の中で、それを下記の様に答えています。

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Q.キャリアの中で一番印象的だった場面はありますか?

A.時間が経ったら今日が一番真っ先に浮かぶことは間違いないと思います。
今日を除けば、MVPやオールスター出場、10年200安打は小さなことに過ぎない。

今日のあの舞台に立てたことは…。
去年の5月以降のゲームに出られない状況にあって、チームと一緒に練習を続けてきた。
それを最後まで成し遂げられなければ、今日という日はなかった。

残してきた記録はいずれ誰かが抜いていく。
でも去年の5月から今日までの日々はひょっとしたら誰にもできないかもしれないと、ささやかな誇りを生んだ日々だった。

それがどの記録よりも、自分の中ではほんの少しだけ、誇りを持てたことかと思っている。—

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上記の10年200安打というのは、凄まじい記録です。

ビジネスと野球の共通項は、「競争」ということもあるのですが、「完成形がない、終わりがない、それは諸行無常」 ということがあります。

昨年10月の未詳?楽部で、特別ゲストで来られた「佐藤優」さんの言葉が上記に関係しているので下記に加筆引用します。

becomingのスーパースターがICHIROさんということです。

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今の能力や知識で最高のものを出したとしても、研究され時間が経ったり、新しい技術やデータや知識を得ることで変わっていきます。

「体性、知性」や「ビジネス」そのものに変化して発展していく内在性があるからです。それだから、学知・体系知は、beingではなく、becomingの性質のものです。

我々の勉強は、ヘーゲル的に言えば、生成の過程にあって永遠に終わりません。

「わかった」「できた」と思っていること自体は体系知で整合性がとれていますが、当然のことながら状況は変わり新しい知見が出てくるので、またやり直しをして、結論をださなければなりません。

このやり直しは延々と続いていくけれど、—

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そのような中での首記の引退会見です。

『でも去年の5月から今日までの日々はひょっとしたら誰にもできないかもしれないと、ささやかな誇りを生んだ日々だった。』

記録や希望、保証があるわけでなく、見えないところで黙々とこれまで積み重ねてきた準備、鍛錬を行う。

その積み重ねについては、『第217夜・ICHIRO: 積み重ねでしか自分を超えられない』に綴りました。

神様が、そのギフトを3月21日の引退試合にくださいました。

・beingからbecoming

・積み重ねでしか自分を超えられない

それは、ビジネスの最重要事項と再認識しました。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
ICIRO06