2019年3月30日 体系知とは大きな物語である
第217~222夜に亘り、「イチロー引退会見」と「価値創造」の関係について綴ってきましたが、その内容は心に突き刺さり、読めば読むほど、根源的で哲学的なのでした。
そして、それを読み解く時に思い浮かんだのが、昨年10月に未詳?楽部の特別ゲストであった「佐藤優」さんの混迷する世界をとらえるための『知の使い方』でした。
そこで一冊の著書『知の操縦法』から引用加筆させて貰って、「価値創造」との関係を綴っていこうと思います。
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◆体系知とは大きな物語である
ヘーゲルの哲学体系を示した「エンチュロクロペディー」は、円環をなしている「知の体系」という意味で、通常、百科事典と訳します。ある時代のある時点での知を輪切りにし、基盤を示すことが重要だ、とヘーゲルは考えていました。
『ヘーゲルの哲学体系』とは体系知のことですが、別の言い方でいうと、「大きな物語としての哲学や世界観」という考え方です。
ポストモダン以降は、小さな差異が強調されましたが、これを追求していくと、小さな差異からどうやって価値を生み出していけばよいのかという話になり、貨幣に転換されてしまいます。
いま、東大法学部を卒業しても、一昔前みたいに官僚にもならなければ司法試験も受けず、投資銀行に行ったり、デイトレーダーになったりしますが、エリートが自分の能力を「社会において何をなすべきか」ではなく、いかに金銭を稼げるかという方向に発揮するようになったのは、ポストモダンがいきついた必然だと思います。—
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20世紀後半のビジネスは、成長から成熟に向かい、決められたレールの上で、「小さな差異」で価値を生み出している時代でした、1990年前後から成熟から衰退に向かい始めました。成熟の延長線上に「未来」はありません。
21世紀の日本では、「人口減少と人工知能」が大きな要素となり、
「オペレーション&マネジメント」<「イノベーション&イメジメント(構想)」
が肝要な時代になりました。
「オペレーション&マネジメント」では、「小さな差異」では太刀打ちできずに、「大きな物語」が求人軸となります。
その「大きな物語」は、受験勉強や今の大学・大学院からは生まれてきません。明治以降の「知の型」が支配していてそこから脱皮できていません。
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人間は「心」で「つながり」をつくる生き物なので、
人間は、「物語」を介在させないことにはつながり合うことができません。
物語とは、新しい現実を受け入れる形にしていく働きです。(第54夜)
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新しい現実を受け入れるには、新しい世界と世間に対応した「大きな物語」が必要なのです。もう、その「物語」は明滅しています。
新価値創造研究所も「体系知」(第57夜)と「物語」を明確にして活動しています。
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ