橋本元司の「価値創造の知・第224夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」②体系知と大きな物語

2019年3月31日 『粗悪ではない、良質でシームレスな大きな物語(本来と将来)づくり』

前夜(第223夜)は、「体系知と物語」の輪郭を綴りました。

本夜は前夜に引き続き、「知の操縦法 」(佐藤優著)を引用して、混迷する世界をとらえるために、「物語」と「価値創造」について記そうと思います。

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—百科事典を読んで知識を体系的に身に付けることで、「知識の枠組み」を知ることができるのです。

重要なのは、あくまで体系的でなければいけないということです。非科学的だけれど合理的な議論に対しては、体系的からの反論をしなければなりません。

例えば、「自分の子どもが感染症にかかってしまった、これは誰かが呪いをかけているに違いない」というような主張は、それ自体では筋が通っていて合理的ですが、他分野との連関からみるとナンセンスです。

個別の枠内にいると見えないことが、複数の枠-体系知があれば見えてくるのです。

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混迷する現代は、縦串の「業界」という世界の枠組みが壊れています。

それは、「情業」「脳業」と「新ライフスタイル」という世間の横串で、新しい枠組みが創られているからです。

それ故に、「単独の枠内」や「個別の枠内」にいると世間がみえないのです。

自分ゴトになりますが、その様なことを30年前に敏感に感じて、業界を超える枠組みや「異業種コラボレーション」に挑戦してきました。

さて、現在はどうでしょうか?

様々な業界や地域が、そして日本自体が「単独の枠内(鎖国)」でのうのうとしていることができなくなりました。「複数の枠-体系知」を持つことがマストなのです。

そして、そこには「複数の枠を超えたシームレスな物語」が必要になってきます。

再び、「知の操縦法 」を加筆引用します。

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—通史として、きちんとした物語の歴史を作らないと、最近の書店の歴史書コーナーのように、箸にも棒にも掛からない言説が市場で流通してしまう。

『人間は物語を作る動物なので、大きな物語を作ることをしなくなったら、粗悪な物語が流通するようになってしまいます』

だからこそいま、『知』の土台作りをしていかなければならないのです。—

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成熟から衰退期に向かっている会社や地域のご支援に伺う時に、

①「未来を変える」ことに重点を置く
②「現在の枠組み」の革新に重点を置く
③「現在の枠組み」を改善することに重点を置く

の様に、トップのスタンスはだいたい上記の3つに分かれます。

③「現在の枠組み」を改善すること、ではもう間に合わないことがほとんどなのですね。
それでも、①②に向かうことに、TOPの躊躇があります。

ポイントは、『粗悪ではない、良質でシームレスな大きな物語(本来と将来)』を創るコト。そして、それに向けて規模に合った挑戦を積み重ねて、実績をつくる。

上記をトップと社員が共通認識して、ベクトルを一つにして邁進する。

『粗悪ではない、良質でシームレスな大きな物語(本来と将来)づくり』

には、新しい時代の「体系知」「知の型」が求められます。そして、ここにコンサルタントの出来、不出来があります。

まだまだ多くのコンサルタントが「古い体系知=粗悪な物語」を使っています。それが、コンサルタントのレベルを落としています。

この「良質な物語」から、新価値が創造されます。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
佐藤優02