橋本元司の「価値創造の知・第226夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」④「現実の出来事を見るために古典を読む」

2019年4月8日 古典を読むことで観えることが多くある

第176夜に、古典「ヘーゲルの知」を綴りました。
きっかけは、昨年10月の仙台方面の「知の旅」への出遊でした。松岡正剛師匠が亭主の「知の倶楽部」(第26夜)です。
「佐藤優さん」というとびきりのゲストが来られて、「知の巨人」と「知の怪人」が語り合う2日間の秘密倶楽部は、間違いなく格別・別格の時空間でした。

師匠は、「松岡正剛の千夜千冊」において、すでに1700夜を超えていますが、その松岡師匠へ「知の旅」の終盤で相談をしました。

その相談とは、この連載中の「価値創造の知」のことです。

「価値創造の知の執筆で壁にぶち当たることがある」

という悩み事でした。

師匠から迅速な回答がありました。それは、

「古典を読むことで観えることが多くあるものだ」

という助言でした。

(それから、内外の『古典』に踏み入り、そこからの多くの気づきを綴ってきて今に続いています)

さて、その「知の倶楽部」では、佐藤さんから「知(インテリジェンス)の使い方」の徹底指南がありました。
佐藤さんの著書である「知の操縦法」を読むと、後半の多くが、古典ヘーゲルの知「精神現象学」に割かれているのでした。
その一部を加筆引用します。

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なぜヘーゲルのように難しくて、資格や語学みたく人生に直接的に役立たない面倒くさい本を読み解いていかなければならないのかと思う人もいるかもしれません。

しかし『ヘーゲルのような古典こそ現実の出来事を具体的に見ていくうえで役に立つ』のです。

すでに述べましたが『実用的なノウハウは使える用途が限られるので、その様な断片的な知識をいくら身につけても、長期的には役立ちません。

根源的な知を身につけ思考の土台を作り、実際に役に立つところまで落とし込んでいくこと』が求められています。

逆に云えば、実際に役立つところまで落とし込むことができないのならば、ヘーゲルを読む意味がありません。---

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ポイントは、

・『実用的なノウハウは使える用途が限られるので、その様な断片的な知識をいくら身につけても、長期的には役立ちません。根源的な知を身につけ思考の土台を作り、実際に役に立つところまで落とし込んでいくこと』が求められているコト。

・『ヘーゲルのような古典こそ現実の出来事を具体的に見ていくうえで役に立つ』

にあります。

若い時にそれを云われても、おそらく頭には響かず、今になると「肚にストンと落ちる」のです。
特に、自分のように、「新価値創造」をミッションとしている身としては尚更です。
上記には、何回か『役に立つ』という言葉が出てきますが、

『価値=役に立つこと』

なのです。

それは、第75夜(価値創造とは何か)に記しています。
・「価値」とは、世の中に役立つこと。
・「創造」とは、未来を先取りすること。
・「価値がない」とは、世の中に役だたないということ

特に、前夜に綴った

・「鉄道の時代(第141夜、第150夜)から「航海の時代(第156夜)」

・「農業⇒工業⇒情業⇒脳業の時代」(第109夜)

の様に、大きく時代が変化する時(=現在)には、それまでの実用的なノウハウでは使える用途が限られるので、その様な断片的な知識をいくら身につけても、役立たないということです。そこで役立つのは「根源的な知」です。

どう使うのかということですが、自分の使い方は、「色即是空 空即是色」(第85夜、第6夜)です。
(「色即是空」というのは、「現実=色」に問題・課題があるのなら、先ず心を無にして、「大元=空=大切なこと=真心」に戻りなさいと教えてくれているように思います。
そして、「空=大元=真心」に戻って従来のしがらみや常識から解き放たれて、その本質(=コンセプト=核心)を把えてから「現実=色」を観ると新しい世界(=現実=色=確信)が観えるということではないでしょうか。その確信を革新するのがイノベーションであり価値創造です)

空=大元=真心=根源の知

という「源」を豊かにすることで、新しい現実に向き合うことができるようになります。それは「温故知新」です。

『根源的な知を身につけ思考の土台を作り、実際に役に立つところまで落とし込んでいくこと』

皆さんも「古典」に触れるコトをお薦めします。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
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