橋本元司の「価値創造の知・第227夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」⑤「理性による分析では表せないもの」

2019年4月10日 大切なものは目にみえません

第78夜で、「創発とは?」について綴りました。それは、「価値創造」の肝(きも)となるキーワードです。

「創発」(emergence)とは、「部分の単純な挙動が全体の高度な秩序を生み出す」というプロセスで、言葉を変えれば、「個の自発性が全体の秩序を生み出す」というプロセスです。

前職パイオニア社での異業種コラボレーションによる連続「ヒット商品」創出(第13夜、第14夜)は、まさに「創発」でした。それは、第78夜に詳細を記していますが、

「新オーディオ・オルタナティブビジョン」の元に、全てを異業種コラボレーションの創発により、足し算では到底発現しない『新しい性質』『新しい物語・ライフスタイル・文化』を紡ぎ出してヒット商品になりました。

“人間”を事例にすると、人間の要素をバラバラに分解すると、目、鼻、耳、脳、心臓、手、足、神経・・・となりますが、それらが集まることで、“命”が生まれます。それと同じ構図です。

『新価値創造研究所』は、多くの方達のより良き将来と幸せを目的にして「新しい性質、新しいライフスタイル、新しい文化、新しい命」づくりを皆さまと創発で実践してきました。

本夜は、上記とクロスする内容を「佐藤優: 知の操縦法 」より加筆引用します。

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— 解剖学では、心臓、腎臓、筋肉といった部分だけを議論しても、人間がどういうものかわかりません。

ところが、哲学では、「存在とは何か」、「概念とは何か」といったいろいろなカテゴリーの知見を寄せ集めることで全体が分かる、となっています。

これはカントの系譜の考え方なのですが、それに対して批判的な意見が述べられています。

「体系知」についての考えにも通じているのですが、部分と全体との関係において、全体が有機体として機能していないといけないという発想が、ヘーゲルにはあります。従って要素ごとに分けていく工学的な解析にも批判的でした。

たとえば、光をプリズムによって7つに分けるというような解析をすると、トータルな「光」から抜け落ちてしまうものが必ずあって、同じように理性による分析には抜け落ちるところがあると、ヘーゲルは考えるのです。—

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「命」というものは目にみえません。価値創造というのは、新しい「命」が生まれるのと似ています。私自身は、「ヒット商品」をプロデュースするときに、「二つの間に生まれる目に見えない命・文化」というものをいつも意識していました。

佐藤優さんは次の様に語っています。

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目に見えるものだけではなく、目にみえないものを把えることができるかが重要です。見えるものは個別の問題にしか当てはめることができず、思考に制限が出てしまいます。

目に見えないもの、いわばメタ的なものを把えることができるかどうかにより思考の幅が広くなります。—

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大切なものは目にみえません。そして、「メタ的なものを把えることができるかどうか」により思考の幅が広くなります。

星の王子さま サン・テグジュペリの名言に、
「いちばんたいせつなことは、心で見なくてはよく見えない」とあります。
そう、価値創造には、「心で見る力」を身につける必要があるのです。(第63夜)

ここが価値創造の難しいトコロ(負)なのですが、一番魅力的なトコロ(正)でもあるのです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
佐藤優05