橋本元司の「価値創造の知・第236夜」:松下幸之助のことば「自己観照」⑧

2019年7月8日 自省の強い人

  やるべきことが分かっている場合は、「HOW:どのように」のテクニックでいいのですが、
それが不明確、不確実なモノゴトが対象の場合は、「WHY:深い何故?の追及」がなければ始まりません。
 それは、人にとっても、会社、地域にとっても同じコトです。
 前職パイオニア社の「オーディオ」を例にしてみましょう。
日本のオーディオ業界は、1989年をピークとして30年右肩下がりを続けました。
過去の成功している時のやり方、考え方を基準にしていては状況を変えることはできません。
 ナゼ、ナゼを繰り返すことにより、「オーディオ」という単体のハードウェアから把えていたのでは、新しい楽しみ、新しい価値観、新しい文化に届かないことが分かります。
それを自分が検討していたのが、ピークから3年後の1992~3年のことでした。
 従来の「①性能→機能→効能」ではなく、「②効能→機能→性能」の様に、
「効能」から把えて、それが新文化に転換する、という切り替えが必要でした。
 つまり、質問や設問を従来の価値観で行うことが誤りの元になります。
「いったい、自分の会社は何のために存在しているのか」
従来の成功体験を捨てて、ナゼ、ナゼを繰り返すことで、良き質問や設問が浮き彫りになります。
 そこには、前夜(第235夜)の『素直な心』が必要です。
・私心なくくもりのない心というか、一つのことにとらわれずに、物事をあるがままに見ようとする心
・そういう心からは、物事の実相をつかむ力も生まれてくる
 と松下幸之助さんは話されています。
 内省している人、自省している人と話をすると会話の奥行が深く、広いことが直ぐに分かります。
本夜は、前夜(第235夜)の『素直な心』と関係の深い『自己観照』について引用します。
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『自己観照』
 自省の強い人は、自分というものをよく知っている。つまり、自分で自分をよく見つめているのである。
私はこれを“自己観照”と呼んでいるけれども、自分の心を一ぺん自分の身体から取り出して、外からもう一度自分を見直してみる。
これができる人には、自分というものが素直に私心なく理解できるわけである。
 こういう人には、あやまちが非常に少ない。
・自分にどれほどの力があるか
・自分はどれほどのことができるのか
・自分の適性は何か
・自分の欠点はどういうところにあるのか
 というようなことが、ごく自然に、何ものにもとらわれることなく見出されてくるからである。
 出典「その心意気やよし」
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 言うは易し、なかなか難しいことではあるのですが、現在の不確実な時代に必要なのは、自分を見直して、
・ごく自然に、何ものにもとらわれることなく見出す心
・物事の真実を見きわめて、それに適応していく心
 にあると思います。
 それは、前夜の「禅(ZEN)や瞑想の世界」と通じるところがあります。
それをメタファー(たとえ)としてチームやプロジェクトでも『チーム観照』『プロジェクト観照』に持ち込むことを実践して成果につなげています。
自省・内省は、ちくっとした『痛み』を伴うことが必ずあるのですが、それを共通認識して超えることで新しい世界に踏み入ることにつながります。
価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ
松下幸之助ことば⑧