橋本元司の「価値創造の知・第237夜」:松下幸之助のことば「人間はダイヤモンドの原石」⑨

2019年7月9日 「構想/舞台づくり」

前職パイオニア社では、39歳の時に新社長に直訴して、ヒット商品緊急開発プロジェクト(第14夜)のリーダーとして異業種コラボレーションによる連続ヒット商品をプロデュースしました。
先ず異なるスキルを持った社内人材を9名集めて、異なる業種との新結合(イノベーション)により、ヒット商品と新文化創造を実現しました。

 そこでは、明確な思想/構想を持って、ヒト・モノ・カネを集めて、集まったメンバーが磨かれ輝ける舞台を用意しました。
重要なことは、トップの後ろ盾と構想(情熱)と舞台づくりが出揃うことです。
これまでの常識を超えた新しい挑戦をする時に、トップの後ろ盾がなければ、横やりを入れる反対役員がいるのでスタートラインにも立てません。
ただ、実際にはその後ろ盾があってもいろいろな妨害がありました。まだ形になって見えていない「新構想」が自分たちの持つ常識とは違うからです。

「新構想」を提示して、「このゆびとまれ」で人を集め、新舞台を明示することで、メンバー才能が大きく花開きました。
そこでは、「入口の構想/企画(価値)から、出口の売り(対価)」まで一気通貫で実践しました。この一気通貫というのがキーワードです。社内の横やりが入ることで失敗する事例を多く見てきたからです。

さて、時代の変化に適応する「構想/舞台」を用意することで、それぞれの役割に責任を持って、人は燦然(さんぜん)と輝きを放ちます。
本夜は、上記と関係する人材/人財に光をあてた「松下幸之助さんのことば」を引用します。

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『人間はダイヤモンドの原石』

私は、お互い人間はあたかもダイヤモンドの原石のごときのものだと考えている。
つまり、ダイヤモンドの原石は磨くことによって光を放つ。しかもそれは、磨き方いかん、カットの仕方いかんで、様々に異なる燦然とした輝きを放つのである。

それと同じように、人間はだれもが、磨けばそれぞれに光る、さまざまなすばらしい素質を持っている。だから、人を育て、活かすにあたっても、まずそういう人間の本質というものをよく認識して、それぞれの人が持っているすぐれた素質が生きるようは配慮をしていく。それがやはり、基本ではないか。

もしそういう認識がなければ、いくらよき人材がそこにあっても、その人を人材として活かすことはむずかしいと思う。

出典「人を活かす経営」
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・それぞれの人が持っているすぐれた素質が生きるようは配慮をしていく。それがやはり、基本ではないか。

そう、その配慮の一番地が、才能が発揮できる「構想/舞台づくり」です。
そのような「舞台を用意する」「舞台を変える」ことが「働き方改革」「生産性改革」の本丸ではないでしょうか。それが経営陣の役割です。
そういう認識をトップが持つことが肝要です。

そうすることで「用意と卒意」(第4夜)が動き始めます。

さてここで、女性の活かし方について、自分が関係した二つのエピソードをご紹介します。
1.ヒット商品緊急開発プロジェクト
上記の4つ目のヒット商品は、「お風呂×音楽(オーディオ)」でした。
ちょうど、ベネッセの役員の方と懇談する機会があり、「たまごクラブ・ひよこクラブ」(「たまひよ」はベネッセ(Benesse)が運営する、妊活・妊娠・出産から子育て中のママ・パパを応援する情報メディア)の誕生について語ってくれました。

「感性は高いのだけれど、まだ仕事の完成度を低い女性と、仕事の完成度は高いが、感性が低い男性をペアにすることで双方を活かしていく(=新結合:第32夜))」ことで新しい事業になったそうです。
そこに、「たまひよ」で大きく成長された女性も来られてお話しを伺いましたがその内容に感動しました。

この仕組み、物語を「ヒット商品緊急開発プロジェクト」にも応用できないかと想いを巡らし、プロジェクトメンバーのベテラン男性と感性の高い女性をペアリングしました。
そこに、お客様相談センターにお願いして、若い女性6名を組込んだヒットプロジェクトとして発足しました。
結果、その商品は、若い女性向けの新しいライフスタイルを提案し、これまでにない店舗を開拓して新ジャンルのヒット商品となりました。

その時に思ったのは、無理やりに女性を男世界の管理職に組込むではなく、彼女たちの才能を開花させる「舞台/仕事/事業」をつくることでした。
そうすれば、生き生きと目を輝かせて仕事に向かってくれます。
人類の半分は女性なのですから、開拓の余地はまだまだいっぱいあります。それに貢献したいと思っています。

2.新事業開発プロジェクト
「サービス業~製造業、ベンチャー~老舗企業」と成長経営、事業開発のご支援を多様にしてきました。
その際に、社員の方達を入れたプロジェクトチームをつくってもらうのですが、必ずトップの方にお願いすることがあります。

それは、最低でもひとり、プロジェクトチームに女性を入れていただくこと。

それを必ず実行していただき、プロジェクトの「価値創造の3本の矢(第56夜)」から参加してもらって、一番才能が開花して伸びるのがその女性です。
周りの男性では出てこない目を見張るような具体的なアイデアを発表したり、女性ならではの見方や意見が飛び出てきます。
(もちろん、才能開花のメソッドを用意して環境等の整備をする必要はあります)
それから、男性陣の女性を見る目が尊敬に変わります。
その後、いろいろな資格を取られたり、部署が変わられてステップアップして活躍している多くの嬉しい事例を見てきました。

さてさて問題は、時代の変化に、男性も女性も、老若男女が置いてかれて磨かれていないのです。
それは、「サービス業~製造業、ベンチャー~老舗企業」問わずです。
今は、前夜、前前夜に綴ったように、小手先のHOW(どうやって?)ではなく、WHY(深いナゼ?の追及)の時代です。
そこを掴んでから 「HOW:この会社をどういう方向に進め、どのような姿にしていくのか」に向かうことをお薦めします。

・人間はだれもが、磨けばそれぞれに光る。
・もしそういう認識がなければ、いくらよき人材がそこにあっても、その人を人材として活かすことはむずかしいと思う。

その通りだと思います。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ

松下幸之助ことば⑨