2019年7月10日 縦串と横串
今から自分のやってきた仕事を振り返ると「衆知を集める」ことが大きなウエイトを占めていたように想います。
それは、第1現役のパイオニア社であり、早期卒業後の新価値創造研究所による会社、地域のご支援でも同様でした。
さて皆さん、「サイロ(英: silo)」という言葉をご存知でしょうか。
農産物、家畜の飼料を蔵置・収蔵する倉庫、容器等のことですが、企業の現場では、「サイロ化」という言葉をよく使っていました。
それは、「企業のある部門が、他の部門と情報共有や連携などをせずに独自に業務を遂行し、孤立した状態」を表す言葉です。
サイロ化について、「weblio辞書」から引用します。
「サイロ化した部門では、業務プロセスが縦割りで進行するため、他部門との連携を図ることはない。例えば、商品開発部門においては、顧客からの要望や意見などの情報を有している営業部や、機材の調達、管理をする機材管理部、製作費の管理をする経理部といった重要な部門との連携も取られない。
部門がサイロ化する原因には、社員同士の競争や派閥、部門間のしがらみなどが挙げられる」
日本の行政を見ても「縦割り行政」と言われるように「サイロ化」していて弊害が相変わらず目立ちますね。
大病院や企業も同様に弊害があります。それを『立串(たてぐし)』の弊害と呼んでいました。
縦割りにすることで責任が明確になり、集中して効率があがることはあるのですが、その縦割りを維持することが目的となって弊害が顕在化します。
縦割りが永遠に続けばいいのでしょうが、世の中の変化はその安逸とした状況を許しません。悪化が顕著になると、その『立串し』の事業部はリストラになります。
(詳しくは、「真の企業再生のための3つの切り口」として、A.リストラ、B.リエンジニアリング、C.リオリエンテーションについて、第45夜(自らハシゴを創る&リオリエンテーション)に綴っていますので、そちらをご覧ください)
行き詰まりを打開する方法として有効なのが、「横串(よこぐし)」です。横串の自分の体験の一部を時系列に綴ります。参考になれば幸いです。
①労働組合・書記長の経験(第13夜、第38夜))
自分は30歳の時に、それを2000人規模の労働組合・書記長として経験しました。
全組織(部門)を「横串」にして組合員と対話しました。それは上司の部門長よりも、多くの情報と本音と知恵を得るころができた瞬間でした。
そこで磨くことができたのが、対象事業の「本来と将来」でした。
日々生じる、問題と課題に「本来と将来」を検討し、整理して経営陣と議論しました。
30~31歳でそのような体験ができたことが、それからの活動の本源になりました。
②ヒット商品緊急開発プロジェクト(第14夜、第106夜)
前夜(第237夜)にも綴りましたが、39歳の時に、ヒット商品緊急開発プロジェクトのリーダーになりました。
社長直轄のそのプロジェクトでは、社内横断で9名の異能のメンバーを集めました。
新しい時代の舞台を用意して、それぞれの才能をフル稼働して、一気通貫で連続ヒット商品を創出することができました。
③新価値推進センター(第175夜:価値創造とは何か)
49歳の時に、総合研究所のトップに呼ばれて、研究所の5年後、10年後の方向性、研究テーマをシナリオプランニング(第15夜)でまとめました。
研究所の各研究室からメンバーを選出していただきましたが、これも横串です。
2006年、その創発(第78夜)で、縦串では生まれない10年後の4つの将来世界をまとめることができました。
それを、10年後の2017年の物語にしてビデオにまとめました。それは、10年後をまるまる言い当てていました。
それは、前夜(第237夜)に綴ったように、『人間はダイヤモンドの原石』です。
磨き方いかん、カットの仕方いかんで、様々に異なる燦然とした輝きを放つ横串の成果です。
④全社横断・事業創出プロジェクト(第175夜)
56歳の時に、全社横断の事業創出プロジェクトのリーダーになりました。
社内横断で15人のメンバーを集めて、パイオニアの「次の柱」となる新事業企画をプロデュースしました。
研究所・企画・デザイン・営業の横串の精鋭メンバーが集まり検討を行いまとめあげました。事業部を横断した『パイオニア社再興』となる核心・確信の企画提案でしたが、経営には採用されませんでした。
自分はその企画案を採用しないという会社の方針を確認して、早期退職の手をあげました。
ここで学んだことは、企業には、判っていること(既知)を効率的に将来するオペレーションが得意な人と、次の柱、新しい価値(未知)を生み出すイノベーションが得意な人がいます、
残念ながら、オペレーターには、衰退時の大事な「イノベーション」「次の一手」を判断できない人が多いのです。
⑤新価値創造研究所のご支援(2013年~)
これまで「サービス業~製造業、ベンチャー~老舗企業」という多種多様な業態をご支援してきました。
成長経営を実現する「深い知、高い知、広い知」という物事の本質を見きわめて、それに適応していく「3本の矢」はどの業種でも万能だからです。
そのご支援の多くが「社内横断の横串プロジェクト」を立ち上げて、課題解決と人財開発の両輪で成長経営を実践・実現されています。
そのプロジェクトチームの人数は、3名の少人数もあるし、20名くらいの場合もあります。
社内横串と外部の視野・視座が入ることで、プロジェクトは燃える集団となる「次の一手」「次の柱づくり」にむかいます。
そう、横串には、縦串ではできない新しいモノゴトを生み出す力があるのです。
そしてそこには、「プロデュース」するパワーが必要です。
さてさて、ここで上記と関係する松下幸之助さんのことばを引用します。
---------
「衆知を集める」
会社の経営はやはり衆知によらなければなりません。何といっても全員が経営に思いをいたさなければ、決してその会社はうまくいかないと思うのです。
社長がいかに鋭い、卓抜な手腕、力量を持っていたとしても、多くの人の意見を聞かずして、自分一人だけの裁断でことを決することは、会社の経営を過つもとだと思います。
世間一般では、非常にすぐれた一人の人がワンマンで経営すれば、事がうまくいうということをよく言いますが、社長一人で事を遂行することはできませんし、たとえできても、それは失敗に終わるだろうと思います。
やはり全員の総意によって、いかになすべきかを考えねばならないと思うのです。
出典「わが経営を語る」
---------
AIoT対応、第2の創業、多角化経営、事業承継、ヒット商品、副業、働き方改革、生産性改革、リオリエンテーション等々、時代激変の中、社長一人で事を遂行することはできません。
「衆知を集めること」そして、「対象の本質を把えて、燃える集団をつくること」
そこから成長経営は始動します。
価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ