橋本元司の「価値創造の知・第244夜」:松尾芭蕉と松下幸之助

2019年7月24日 不易流行

関西圏の知の旅(本年の3/17~3/19)で、大阪パナソニックミュージアム、PHP研究所を訪問しました。
そこの歴史館でいただいた「松下幸之助さんの言葉」30編を抜粋して、第229~243夜と15夜に亘って、価値創造の知を綴ってきました。
その30編を通して、とてもいいコラム交流をさせてもらえました。

第229~243夜の途中から、「松下幸之助のことば」が深いところで誰かの知と共通していることに気が付きました。
いったい、誰だと思いますか?

「松尾芭蕉」(第190~195夜)です。
40夜前の「価値創造の知」で6夜綴りました。

共通点では、松尾芭蕉・松下幸之助と「松つながり」ですね。
きっと何か意味があるのでしょう。

そして、御二人ともモノゴトの根源に身をおかれて究めた『道』の人です。
・松尾芭蕉は、「俳句道」(第195夜:道を究める)
・松下幸之助は、「商道」(第229夜:自分に与えられた道)

更に、モノゴトの根源(不易)に立脚した変化(流行)を具体化、実践されました。
つまり、『不易流行』という共通点です。

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—不易流行の「不易」とは、時が流れても変わらないということであり、逆に「流行」とは、時の流れとともの変わることです。これは、「奥の細道」の旅でみてきた宇宙の姿そのものです。

月が満ち、太陽が沈み、星がめぐるように宇宙は変転きわまりないということが流行であり、それにもかかわらず不変の「閑さ」に包まれているということが不易です。
芭蕉は、みちのくの旅で歌枕の廃墟をたどり、時間の無常迅速(流行)とみえる宇宙がじつは永遠不変(不易)であることに気づいた。
つまり、不易流行とは、芭蕉がたどりついた宇宙観だったのです。—

出典「おくのほそ道・100分de名著」
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一方の「松下幸之助さんのことば」から引用します
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『素直な心』

素直な心とはどういう心であるのかといいますと、それな単に人に逆らわず従順であるということだけではありません。
むしろ本当に意味の素直さというものは、力強く、積極的な内容を持つものだと思います。

つまり、素直な心とは、私心なくくもりのない心というか、一つのことにとらわれずに、物事をあるがままに見ようとする心といえるでしょう。
そういう心からは、物事の実相をつかむ力も生まれてくるのではないかと思うのです。

だから素直な心というものは、真理をつかむ働きのある心だと思います。物事の真実を見きわめて、それに適応していく心だと思うのです。

出典「素直な心になるために」
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訪問した松下幸之助歴史館の入り口には、『道』という字がすぐに飛び込んできます。
それが、一番の求心軸です。

物事の実相をつかむ力、真理をつかむ働きのある心を説いています。
物事の根源、本質に立脚して、見きわめて、そして変化に適応していく、それがパナソニック社の会社づくり、人づくりの根底に流れています。
それが、流行に廃れていく「商術」ではなく、宇宙につながる「商道」となりました。

世界はたえず変化する。しかし永遠不変である。

それを実践して「カタチ」にして魅せてくれました。
これに、私たちは何を学び、今に活かしていけばいいのでしょうか。

それをこの連載では、第226夜(現実の出来事を見るために古典を読む)に綴りました。
『実用的なノウハウは使える用途が限られるので、その様な断片的な知識をいくら身につけても、長期的には役立ちません。
根源的な知を身につけ思考の土台を作り、実際に役に立つところまで落とし込んでいくこと』

さて、松下幸之助歴史館に伺った時に、現役のパナソニックの社員の方たちの来館人数が減っているというお話をOBのかたにお聴きしました。
是非、今の時代に、将来に置き換えて、多くの方たちに置換して活かしていただけると嬉しいですね。

共によき将来を創りましょう。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ
松下幸之助ことば⑯