2019年11月4日 『人間の安全保障』
先週の10月29日、僕が尊敬する「世界で最も尊敬された日本人」緒方貞子さんがご逝去されました。
「SDGs(持続可能な開発目標)」と緒方貞子さんの生き様は深い関係にあります。本夜は、是非それを皆さまにお伝えしたいと思いました。
先ず、2000年に国連欧州本部の会議場でスピーチされた言葉(https://bunshun.jp/articles/-/15058?page=2)を引用します。
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難民問題で必要なのは、3つの『リスペクト(尊厳)』です。
①まず、家を追われて最も貧しい境遇にある人々を守らんとする国々の献身に、尊厳を。
②次に、各国の協力体制の下で難民に寄り添い、第一線で人道支援に従事する者たちに尊厳を。
③そして一番大事なのは、難民に対する尊厳です。
会場の人たちは総立ちになって、拍手を送ったそうです。日本では難民を「助けてあげる」という発想ですが、それは違う。
自分の手に負えない原因で不幸な境遇に置かれているのだから、難民の人権は絶対に尊重しなければならない。「それは近代国家の義務ではないですか」と緒方さんは言います。
国際協力では、その活動のトップの人生観が大切です。
10年にわたって務めた国連難民高等弁務官時代には、予算や職員の数を2倍にしました。歴代の国連事務総長はみな緒方さんの人柄に魅せられ、全面的にバックアップしたのです。
何せ緒方さんは防弾チョッキを着込み、イラクやサラエボ、ルワンダなどの紛争地帯へ率先して出かけて行くのですから。—
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生前緒方さんは、「自分達の正当性ばかりを掲げ、弱い人々を排斥する世界の現状」に警鐘をならされていました。
「正義だけ追求すれば、全部そこで相争った民族の間で共存ができるかと言ったらそうはいかなくて、やはり何らかの形での「許し・和解・理解」こういうものが必要で、そういうものと「正義」のバランスがやっぱり「平和」ということを考える時に必要じゃないですか。
従来の「国家主体の軍事力による安全保障」ではなく、紛争や貧困等、「あらゆる脅威から人びとの安全や尊厳を守る人間の安全保障」という理念を掲げ世界に訴えられました。
その結果、2012年の国連総会では、「人間の安全保障」を重視する決議が全会一致で採択されました。
「軍事力による安全保障」ではなく、『人間の安全保障』へ
「大事なのは、“人びと”です。“人間”です。
“人びと”というものを中心に据えて、安全においても、繁栄についても考えていかなきゃならない。
“人びと”というものを頭に置かないで、威張って国を運営できる時代ではないのです」
そう、「人びと」「人間」を中心に置いているのです。
さて上記の内容は、SDGsの下記ゴールズに深い関係があることがお分かりいただけるとわかります。
①貧困をなくそう
②飢餓をゼロに
③すべての人に健康と福祉を
④質の高い教育をみんなに
⑩人や国の不平等をなくそう
⑫つくる責任、つかう責任
⑯平和と公正をすべての人に
⑰パートナーシップで目標を達成しよう
「SDGs17ゴール」の半分近くがターゲット(開発目標)です。そう、「SDGs」は「環境領域」だけではないことがわかりますね。
そのために、本連載の「価値創造の知」第252夜に「三つのエコロジー」(第9夜:フェリックス・ガタリ)をアップしました。
“従来のエコロジー運動がいわゆる「環境問題」(自然環境を中心とした)に限定されてきたことに疑問や不満を感じ、それだけでは現代世界の全面的危機に対処しえないとして、「環境のエコロジー」に加うるに、「社会のエコロジー」と「精神(心)のエコロジー」の三位一体理論を提唱する”
図の様に、「心」「人間が中心にいるのですね。そして、「心(人)×社会×地球環境」を三位一体で把えることが肝要です。
さらに、緒方貞子さんにとっての重要は、
「抽象的な議論では意味がない。できない、やらない理由をあげるのではなく、『let’s do it(やりましょう」)』
そうなのです。
私たちに求められているのは、「人間×SDGsシフト」を通して、緒方貞子さんの素晴らしい活動と遺志をも継ぐことにあると思っています。
価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ