2019年12月16日『二つでありながら一つ』
「SDGsを実現するための一番のポイントは?」という同じ質問が先週・今週と続きました。
・「『①ありたい姿と②自分ゴト』の二つを高めてワンセットにすること」
と答えました。
「①ありたい姿」には、統合力と構想力(想像力と創造力)が必要です。
「②自分ゴト」には、響感力と当事者意識が必要です。
この二つは、心性・感性・知性が絡んでくるのでなかなか手ごわそうに見えるのですが、それを手に入れることでSDGsシフトの道筋が観えきます。
SDGsの本質は、「今よりも、地球・社会・一人ひとりの将来を良くしたい」という世界中の想い(ニーズ)に応えることにあります。
それを立脚点として、その社会価値と経済価値(利益)を統合していくこと。ボランティアでは長続きしませんから、持続可能にすることが必要です。
世界ニーズ、社会ニース、顧客ニーズに応えられれば、対価が巡ってきます。
いま、これまでのやり方、考え方の延長上に「ありたい姿」が観えていて、社員が「自分ゴト」として、やりがい・生きがいをもって働いているのであれば素晴らしい経営です。
ところが多くの場合は、現在と変化の激しい10年後に「これまでのやり方・考え方」では成長が見込めなくなっているのが見えているのが実情です。
しかし、「(経営)危機はチャンス」でもあります。
その時に、
1.「世界のニーズ」であるコト
2.「国・行政・金融・顧客」が後押しがあるコト
3.「各目標との有機的なつながり」の中に価値が発現するコト
この「SDGsの国際的枠組み」を上手に使って「自社の経営体質」を変え、「将来の経営危機」を乗り越えるツール(手段)・ロール(役割)として実践されてみてはいかがでしょうか?
「国際的枠組み」の参考事例として、「ベトナム(共産党による一党支配体制)のTPP(環太平洋パートナーシップ)参加」をみてみましょう。
ベトナムはTPPを、WTOよりも高度かつ広範な義務を伴い、将来の自由貿易協定のモデル構築を狙う「新世代の自由貿易協定(FTA)」と位置付けています。
・国有企業をなくす(非商業的援助の禁止や他締約国の企業や物品・サービスに対する無差別待遇の付与など)
・強権的なディールはいけない
・賄賂はいけない
・労働者の諸権利
・知的財産
等々、
社会主義の国でありながら、上記の決断は容易なものではなかったはずです。
それでも、「自力ではできないことをTPPの国際的な枠組みの中で自らを変えてゆく」
ことに舵をきりました。隣国の中国の脅威も勿論あったのでしょう。
・「自力・自社ではできないことをSDGsの国際的な枠組みの中で自らを変えてゆく」
と置き換えてみましょう。
その時の重要なポイントが、
「『ありたい姿と自分ゴト』の二つを高めてワンセットにすること」
にあります。
『ありたい姿と自分ゴト』は、コインの裏表なのです。
響感・共感できる「ありたい姿」がなければ、社員は「自分ゴト」になりません。
SDGsが「自分ゴト」になっていなければ「ありたい姿」には到達できません。
第264夜の吉野彰さん絡みで“二つでありながら一つ”について綴りましたが、
重要な心得であり方法なので引用します。
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第33夜(禅と価値創造③)で、“二つでありながら一つ”を綴りました。
イノベーション(新結合)の本質もここにあります。(第17夜)
『禅(ZEN)』の修行で一番大切なコトは何だと思いますか?
それは、「二つ」にならないということにあります。
座禅の姿勢は、「結跏趺坐(けっかふざ)」という右足と左足を組んでいますね。
この姿勢は、『二つではない、一つでもない』という「二元」性の「一者」性を表わしています。
これが、もっとも大事な教えです。(引用:禅マインド)
もし私達の心と身体が二つである、と考えるとそれは間違いです。心と身体が一つである、と考えるとそれも間違いです。私達の心と身体は、“二つでありながら一つ”なのです。
私達は普通、もし何かが一つ(単数)でなければ、それは二つ以上(複数)であると考えます。けれども実際の人生の経験に照らしてみましょう。
私達の人生は、複数であるばかりではなく、単一です。私達は、互いに支え合うと同時に自立しています。
「色即是空」というのは、「現実=色」に問題・課題があるのなら、先ず心を無にして、「大元=空=大切なこと=真心」に戻りなさいと教えてくれているように思います。
そして、「空=大元=真心」に戻って従来のしがらみや常識から解き放たれて、その本質(=コンセプト=核心)を把えてから「現実=色」を観ると
新しい世界(=現実=色=確信)が観えるということではないでしょうか。その確信を革新するのがイノベーションであり価値創造です。
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SDGsという枠組みを活用して、自社経営を大元(=空)で把えて、『ありたい姿と自分ゴト』を同時に実現(=色)する。
登る山(ありたい姿)の輪郭が観えて、その山に登ることに響感・共感できれば、やる気が芽生えます。
登る山を描くことに最初から参画していれば尚更です。
また、「強烈な危機感、自分ゴト化」を持っていれば、自立(外的)・自律(内的)の独り立ちにより、『ありたい姿』に早く近づく可能性が高まります。
そのような社風、社員を醸成されていることが有効です。
先週、長女が1歳2か月の孫を連れてきました。
色々なものを認識して、「あっ」「うっ」と対象を指刺して盛んに声に出していましたが、その真っ最中にお付き合いするのは、自分にとっては至福の時間です。
統合して言葉になっていくのは、『ありたい姿』を描くのに似ているところがあります。最初は、「まねぶ」から入って「まなぶ」のですね。
最初に、「SDGsの枠組み」を使って真似ていく、なぞっていく方法があります。
そこからではなくて、いきなりSDGsと将来事業の本質を把えて、ある補助線や欠けたピースを迅速に埋めることで一つ上のレベル、構想に到達する方法もあります。
多様なアプローチのグラデーションの中で、『ありたい姿と自分ゴト』をあざなえる縄のように、自在にナビゲートして、成長経営(SDGsシフト)に到達していただくことが私たちの役割です。
価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ