2020年2月11日 「バロック思考」×「SDGs成功の秘訣」
本夜は、「SDGs」を検討し、展開するのに不可欠な「バロック思考*」を綴ります。
*baroque(バロック)とは、ポルトガル語「barroco(ゆがんだ真珠)」が語源。6世紀末から18世紀に欧州で流行した芸術様式。
均整と調和のとれたルネサンス様式に対し、自由な感動表現、動的で量感あふれる装飾形式が特色です。
この「バロック」の本質を松岡正剛師匠主宰の未詳俱楽部(第26夜)で下記の様な表現を師匠がされていて、
その意味するところがとても印象的で、現在の「価値創造思考」の重要なイメージと方法になりました。
千夜千冊1181夜から加筆引用
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— 一つの世界しかあらわさなかったルネサンスを脱却したのが(複焦点的な対比性、二焦点的な楕円の)バロックであった。
ルネサンスが円の一つの中心をめざしたのに対して、バロックは楕円の二つの焦点のように、複数の中心をもちかかえることを選んだ。—
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典型的で皆さんに判りやすい現代事例として「iPhone」を取り上げます。
「iPhone」が登場する前は、「iPod」「デジカメ」「ネット」「電話」の一つ一つが市場を持っていました。
前職パイオニア社のオーディオもその一つでした。オーディオという一つの世界を追求すれば良かったのが20世紀後半でした。
上記それらは、一つ一つがルネサンスの様に、性能機能を追求する一つの世界でした。
ここに、一つだけではない「複焦点な楕円」を統合して、一段階上の「バロック世界(新市場・新文化)」を生み出したのがスティーブジョブズ(第157夜~)です。
これが代表的な『イノベーション』の実例です。
自分ゴトでは、この連載で何回か取り上げましたが、
前職パイオニア社で、社長直轄でプロデュースした、異業種コラボ・ヒット商品群(第14夜)の実例です。
・ウィスキー×音楽: ピュアモルトスピーカー
・ファッション×音楽: ループマスター
・インテリア×音楽: ハッピーチューン
・お風呂×音楽: ハッピーアクア
それまで、「性能・機能」を中心に成長してきた「ルネサンス」では限界が見えてきて、
上記の様に、自社だけではできない動的な、バロック世界をつくり、新市場、新ライフスタイルを生み出しました。
さて、バロック的に「SDGs」を体感する方法に、普及が進んでいる「SDGsカードゲーム」があります。
ここでは、『経済・環境・社会』という3つの要素がいったいどうつながりがあって、そのゲームの自分たちのやり取りの中で、世界の状況が変化する様子を実感しながら、未来を良くしていくための気づきを参加者全員に与えてくれます。
これも複焦点(経済・環境・社会)の楕円統合です。一つ一つをバラバラにやっていては、世界をより良い方向に導くことに無駄な時間と労力を費やしてしまいます。
最近のイギリスのEU離脱が象徴的ですが、グローバルを推進してきたアメリカ・イギリスがグローバルの限界を感じて、ポスト・グローバルに向かう世界の潮流の中で、「地球よし、未来よし」を実現するときに、
『SDGsの果敢な国連推進』
の可否がより意味を持つものになってくるのは間違いありません。
SDGsの成功の秘訣は、「①本業(経済価値)×②SDGs(社会価値)×③価値創造(成長価値)」の統合にあります。
ここでは、「バロック思考」が不可欠です。。
通常のSDGs勉強会、研修、講座は、②の理解の入門であり、①②③統合には踏み込みません。踏み込めないといった方が適切な表現かもしれません。
一番重要なことは、①②を認識しながら、一段階上の③をバロック的に生み出すことにあります。
それが、2030年にむかった「個人、企業、地域、国の成長の源」になります。
価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ