SDGsシフト㊾「価値創造の知・第294夜」:『つながっている、生かされている』

2020年7月12日 「21世紀に生きる君たちへ」のメッセージ

私たちの目の前に、コロナ禍と異常気象が猛威をふるっています。
しかし、私たちはそれらに文句を言えず、以前よりも“自然の畏れ”を感じています。

ここで俄然、司馬遼太郎が子供のために書いた「21世紀に生きる君たちへ」のメッセージが心に響いてきます。
その肝心なところを引用します。

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—もっとも、私には21世紀のことなど、とても予測できない。
ただ、私に言えることがある。それは、歴史から学んだ人間の生き方の基本的なことどもである。

昔も今も、また未来においても変わらないことがある。
そこに空気と水、それに土などという自然があって、人間や他の動植物、さらには微生物にいたるまでが、それに依存しつつ生きているということである。
自然こそ不変の価値なのである。なぜならば、人間は空気を吸うことなく生きることができないし、水分をとることがなければ、かわいて死んでしまう。

さて、自然という「不変のもの」を基準に置いて、人間のことを考えてみたい。
人間は、--繰り返すようだが--自然によって生かされてきた。古代でも中世でも自然こそ神々であるとした。このことは、少しも誤っていないのである。
歴史の中の人々は、自然をおそれ、その力をあがめ、自分たちの上にあるものとして身をつつしんできた。

この態度は、近代や現代に入って少しゆらいだ。

「人間こそいちばんえらい存在だ」

という、思いあがった考えが頭をもたげた。21世紀の現代は、ある意味では、自然へのおそれがうすくなった時代といっていい。

—「人間は、自分で生きているのではなく、大きな存在によって生かされている」
と、中世の人々は、ヨーロッパにおいても東洋においても、そのようにへりくだって考えていた。
—この自然へのすなおな態度こそ、21世紀への希望であり、君たちへの期待である。そういうすなおさを君たちが持ち、その気分をひろめてほしいのである。

—鎌倉時代の武士たちは、
「たのもしさ」
ということを、たいせつにしてきた。人間は、いつの時代でもたのもしい人格を持たねばならない。人間というのは、男女とも、たのもしくない人格にみりょくを感じないのである。

もう一度繰り返そう。さきに私は自己を確立せよ、と言った。自分には厳しく、相手にはやさしく、とも言った。いたわりという言葉も使った。それらを訓練せよとも言った。
それらを訓練することで、自己が確立されていくのである。そして、“たのもしい君たち”になっていくのである。

以上のことは、いつの時代になっても、人間が生きていくうえで、欠かすことができない心構えというものである。—

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さて、「SDGs」とは何でしょうか?

それは、「人類の未来を変えるため」に掲げられた世界共通の目標です。
貧困や不平等や環境破壊・・・・・深刻化するさまのざまな社会問題を解決しなければ、「地球に未来はない」と世界中の国々が危機感をもっています。
そこで2015年9月、国連は、SDGs(Sustainable Development Goals : 持続可能な開発目標)「誰一人取り残さない」という理想を掲げ、17の目標を2030年までに達成しようとしています。
学校や企業や団体、私たち一人ひとりがSDGsに関心を持って挑戦することで人類の未来が変わるのです。—

と学校の場で、上記の内容を生徒たちは学習しています。

・自分たちの未来がえぐり取られているのではないか?

と若い人たちは様々な情報から感じています。
20世紀を生きてきた私たちは、これまでの考え方や生き方を変容していくことが求められていますね。

さて、コロナ禍と異常気象を身近なところで、SDGs17の目標と紐づけてみましょう。
◆コロナ禍
・不要不急のおでかけをしない
・自粛によって売り上げがとまった
・イベントができない
・観光客がこなくなった
・固定費、家賃等の支払いができない
・経営悪化
・リストラが大々的に
・自粛によって、1~2か月で倒産に追い込まれた

・保育所閉鎖
・介護施設閉鎖
・病院経営悪化

・テレワーク
・オンライン授業
・オンライン診療
others

そのことで一体何が起きたのでしょうか?
目標1.貧困
目標3.健康的生活、福祉促進
目標4.公正な質の教育
目標5.ジェンダー平等
目標8.持続可能な経済成長、雇用
目標10.各国間の不平等是正
目標12.持続可能な消費生産形態
目標16.説明責任のある包摂的な制度
目標17.グローバル・パートナーシップ

◆異常気象
⇒もう異常気象ではなく、ニューノマルですね。
目標1.貧困
目標2.持続的な農業
目標3.健康的生活、福祉促進
目標4.公正な質の教育
目標6.水と衛生の利用可能性
目標7.持続可能なエネルギーアクセス
目標8.持続可能な経済成長、雇用
目標9.強靭なインフラ構築
目標11.強靭な人間居住
目標12.持続可能な消費生産形態
目標13.気候変動の緊急対策
目標14.海洋・海洋資源の保全
目標15.陸域生態系の保護、回復
目標17.グローバル・パートナーシップ

さて、ご覧になっていただければ、コロナ禍、異常気象のそれぞれが単独で課題を解決すればよいのではなくて、各目標1~17を横断し、つながっていることがよくわかります。
このコロナ禍、異常気象で、ほとんどの目標を網羅していますね。

SDGsの到達目標は、「経済・環境・社会」の3側面にわたっています。
コロナ禍、異常気象が、「経済・環境・社会」を横断して大打撃を与えていることは皆が体験してきたことです。
その解決の中で、政治・行政がリーダーシップを発揮できずに、都内では10万円給付が2か月過ぎても届かないことや、教育や企業の現場等でIT化が遅れていること等、数えきれない事象があります。
今も続くその遅れと仕組みに私たちががっかりしているのです。先手を打たないで、「先送り」ばかりしてきたツケが回ってきたのです。そのことについては、第287夜「懸命と賢明」に綴りました。
(—新型コロナウィルス有事対応の問題は、
「政府・行政・専門者会議は、国民に向かって、『頑張り・一生懸命』を求めていますが、様々な場面で政府・行政・専門者会議に『賢明』が大不足していることです」
それを私たちは目の当たりにしています—第287夜「懸命と賢明」)

近い将来を洞察したときでも、教育現場のIT化の遅れ等も問題ですね。それらについては、以前このシリーズで記しました。

さて、メインテーマの一つは「つながっている」ということでした。
「コロナ禍、異常気象」の問題も「命」「自然との共生」に行きつきます。

⇒「人間は、自分で生きているのではなく、大きな存在によって生かされている」

その前提で、

・「エコロジーとエコノミー」の両立
・「社会価値と経済価値」の両立

つまり、それぞれを別にしないで、デュアル(二つでありながら一つ:第32夜、第82夜)に包摂することが肝要です。
その二つをつなげる(=デュアル思考)ことによって、多くの人々が『賢明』になることがポイントです。

最近、学校の先生から、「小中学校では、儲けることを教えない」との発言を聴いて思ったのは、「儲ける」というとらえ方ではなくて、「価値を生み出す」ことを生徒が主体者・当事者となって創発することが重要ではないかということでした。
そうすると、「決まった答えを早くだすことから、未確定な課題にどう立ち向かうか」という日本の成長を引っ張る人財が生まれてきます。

・「価値」とは何か?
・これから何に「価値」があるのか?
・どうすれば「価値」を生み出せるのか?

コモディティ化(高付加価値の製品の市場価値が低下し、一般的な商品になること)から、格別・別格な価値化が求められています。

そう、日本は「格別な価値」を生み出すことで輝ける国だと確信しています。
この非常時に、以前に後戻りするのではなく、横断的につながりながら、「経済・環境・社会」の3側面の格別な連携価値を生み出すことにシフトする。
どこかで綴りますが、SDGsシフトで未来を変えるための最善の道は、横軸の「LOVE」と縦軸の「POWER」をデュアルに革新していくことです。
それが、政治・行政・教育・企業、そして一人一人に望まれています。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ
SDGsつながっている