SDGsシフト㊿「価値創造の知・第295夜」:『Transforming Our World』

2020年7月22日『おまえは、男じゃないか』

本夜は、「SDGsシフト」をテーマにした節目の50夜にあたります。
それゆえに、SDGsの根本・本質の内容を少し濃い目に綴ろうと思います。

さて、日本中・世界中が、昨今のコロナ禍、異常気象というキツイ、ツライ体験をすることで、ますます「SDGs」の理想・存在についての意味を納得し関心が増しています。
それらの災禍は、従来のやり方や考え方では手に負えずに、SDGsの17ゴールである「貧困」「社会(医療)インフラ」「地球環境」と深くかかわっています。

具体的に見ていきましょう。
①毎年、毎季節に訪れる天災(気候クライシス)により人間の生活のための場所が次々と消失しています。
⇒命が奪われれ、また復興のための経済的損失は大きいものがあります。
⇒従来の基準・対応ではパッチワークとなり、これらの常態の災禍(さいか)に全く適応できません
②コロナ禍に対して、「社会(医療)価値」と「経済価値」の両輪を回すことが上手にできていません
⇒第2波や違う種類のウィルスが発生する可能性も高いことが予想されています
⇒スムーズな経済再開ができず、倒産・貧困が増大することも現実の課題です

上記の①気候クライシス、②コロナ禍、更には、③少子高齢化、
等々の大課題は、以前の状態に戻りたいという願いは強くとも、引き返すことはできません。

「①気候クライシス」で云えば、「想定外の雨量(記録的豪雨)」という新常態が当たり前(常識)であるとしてとらえれば、それを克服するために、都市やまちづくりの基準や取組みも大きく変わってきます。
『変革』を通してそれを克服できれば、社会共同体の大向上をはかることができます。そのBeforeとAfterの様相は大きく異なりニュースとなります。
「異常気象が世界中に起きること」は常態化していますから、その変革の内容は世界が注目して、地球共同体に役立ちます。

同様に、②コロナ禍、③少子高齢化も、その課題克服は世界に役立ちます。
そして、それらへの変革は即『日本の新成長産業』へとつながることは間違いありません。

それは、新しい価値創出(=イノベーション)であり、持続的な雇用を生み出し、世界の幸せにつながります。
そして、それはSDGs17ゴールの幾つかの成果に直結します。

必要な認識は、「復興(元に戻す)することではなく、再興すること」です。
必要なことは、「新常態を認識して、持続化社会の理想を描くこと(=ビジョン)」です。

それに関係して、日本の癖を「連塾・方法日本Ⅲ」(松岡正剛著)から引用します。
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—これも前回お話したように、日本は「制定法」を知っていながら多くは「判例法」を中心にしてきたということも関係していると思います。
制定法というのは、アメリカがそうですが、理想があればその理想に応じて法を作って、その法そのものが現実になるという考え方です。
ところが日本は、たとえば北朝鮮の船が新潟にきているのだから、「あれをまず止めよう」というために、あとから法を作る
低年齢化した少年犯罪がふえると、それを取り締まるには18歳以下の犯罪法を作りましょうというふうになる。
現実が先にあって、つねに法がそのあとについていく。シーレーンが専守防衛になるのも、こういうところがあるせいです。—

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新型コロナウイルスの対応で、日本政府や行政が、後手後手になってしまうことと関係していると想いませんか?
「GO TO トラベル」キャンペーンも場当たり的で、私たちは、日本の政府と行政の「ビジョンとオペレーションの欠如」を目の当たりにしています。

それは、理想の姿を描くこと、つまり、『ビジョン』を描くことの欠如にあります。
その点において、大阪府知事は情報収集して、現時点での理想の姿・様相を決めて実行するというところがメディアや国民から支持されているところです。

上記の①気候クライシス、③少子高齢化、についても、復興ではなく、再興(新成長)に向けた同様のビジョン(理想の姿、様相)を描くことが肝要です。
さて、ビジョンを描くにはその前段でコツがいります。それはリーダー(実行者)の「心得・心構え」です。

ということで、本夜はここからが本題です。

「SDGsとは何か?」

というテーマで、講演やセミナー等で参加される経営者の皆さんの「SDGs取組みの魅力ベスト3」を第279夜に綴りました。
要約すると、
1.成長市場・成長経営への期待。(社会変化、ゲームチェンジ)
2.グローバルスタンダードである。(大きい潮流であり、世界市場に直結している)
3.求人、就職のアドバンテージ。(選ばれる会社になる指標)

そうなのですが、これは「SDGsの入口」です。
SDGsに限らず、事業・会社が成長・成功に向かうかどうかは、経営者のマインド(心得・志・本気)が大きく影響するのを経験してきました。

「SDGs」のおさらいをすると、
SDGsとは、人類の未来を変えるために掲げられた世界共通の目標です。ここには、『2030年に向かうビジョン』があります。
貧困や不平等や環境破壊・・・、深刻化するさまざまな社会問題を解決しなければ、「地球に未来はない」と世界中の国々が危機感をもって、2015年9月に採択されました。

その採択された文書の表題は、

「Transforming Our World」(私たちの世界を変革する)

⇒これが最も重要な「心得・志」です。

このTransformingは、変革や変容とも訳されます。

⇒人類の未来をよりよいものに変えるために「もう後戻りしない・覚悟する」ということ

よく「Transforming」のイメージを理解してもらう例えとして、
・オタマジャクシがカエルになる
・蛹(さなぎ)が蝶になる
がよく使われます。

質が変わる、形態・状態、生態が変わって、「変態」しています。
「変態」することで、社会・環境・経済を好転換していくということです。

さて皆さん、これまでの延長線上(10年後)に、会社・地域の成長を描けますか?

その上で、「Transforming」するために経営者に必要な「心得・志」を綴ります。
それは、「志」「本気」を基盤にした『意識の転換・変容』です。
その『志・意識の転換・変容』が先にあって、後にビジョン(理想の姿、様相)が創られるという順番です。

ここで恥ずかしながら、「変容(Transforming)」についての自分の体験を綴ります。
(この頃、SDGs勉強会でお伝えして少なからず反響があったのでお伝えします)

それは、前回の東京オリンピック(1964年)が開催された自分が小学4年の時の父兄参観日のことです。
最初の参観授業から私の母が着物姿で背筋を伸ばして、教室の後ろに立っていました。

友人が背中をつっついて
「おまえのお母さんがきてるぞ」と。

その時まで、恥ずかしがり屋で、勉強もそこそこで、

先生からの「誰かわかる人いるかな?」

の全4時間の授業で手を上げることはできませんでした。

家に帰ると、母が座って待っていて、

「おまえは、一度も手をあげなかった」
と小さな妹がいる前で、泣き崩れました。衝撃でした。
そんな母を一度もみたことがありませんでした。

そして、明治時代の気質を持っていた母は、

「おまえは、男じゃないか」

と泣きながら迫ってきました。

その日を境にして、自分の意識は大きく変わり、変容しました。
・予習をすること
・授業中は先生の目をみること

そのことで、小学校5年の時には、好きな理科と算数の成績が最高の「5」になり、
都会の小さな小学校でしたが、卒業するときは首席になっていました。

自慢をしているわけではありません。
自分の姿は変わらないように見えるかもしれませんが、
中身の意識が変わり、本気のモードになったのです。
あたかも、動きの悪いさなぎが蝶になったように。

前職パイオニア社勤務で、ホームオーディオ事業が急激な右肩下がりになった時(1992年)に、
「これは拙い」
と思いました。

仲間たちと検討し、13年後の2005年にオーディオ事業の大きな転機・転換が訪れることが洞察できました。そしてビジョンを打ち出しました。
その時系列を経営会議(1992年)で発表しました。それに対して役員からは大きな反発がありました。(実際の13年後、大きな転換が業界を襲い、オーディオ事業は変容に向かいました)
その後、社長直轄で「ヒット商品緊急開発プロジェクト」のリーダー(1995年)として、異業種コラボで連続ヒット商品をプロデュースして、新しいビジネスの型を会社に、世の中に提示しました。

経営会議では、「これがダメだったら、会社辞めます」

と社長に伝えました。
その時も、役員からパワハラがありました。
(こちらの将来ビジョンと従来の価値観の役員とぶつかるので、それはそれはたいへんなのですが、将来を担う若い人たちからは大きな励ましと支持がありました)

この関連の詳細は、下記をご覧ください。

・第11夜:イノベーションの心得「本気・本質・本流」編
・第13夜:倒産、そして新価値創造
・第14夜:社長直訴そしてヒット商品緊急プロジェクトへ
・第15夜:危機意識、不確かな時代を読み解く方法

前職で、「将来の大事」が起きることが予想できたときには、
母の「おまえは、男じゃないか」が自分を奮い立たせ、必ず背中を押します。
その「意識・志・ビジョン」があるかないかで、将来は大きく変わってきます。

もちろん、やぶからぼうに前にすすむのではなく、
その事業・会社・地域の「本来と将来」を深く・高く・広く読むことがとっても重要です。
(後手後手にならずに、先手を打つこと)

・第15夜:危機意識、不確かな時代を読み解く方法
・第126夜:未来は既にここにある

さてさて、「Transforming」には、イノベーションが必要ですね。

・第31夜:アイデアのつくり方
・第32夜:イノベーションの真髄
・第33夜:禅と価値創造

そのため、「SDGs×イノベーション」ということがセットになります。

整理すると、「Transforming(変革・変容)」のためには、
1.意識の変容=ミッション
2.意識の表出=ビジョン
3.意識の現出=イノベーション

の段階を進むことがお分かりいただけると嬉しいです。(新価値創造研究所のHPに記載しています)
「ミッション(本来・志)・ビジョン(将来)」の経営者の本気がなければ、「Transforming(変革・変容)」にはなかなか届きません。

経営者の「SDGs取組みの魅力ベスト3」を上記で上げましたが再度記します。
①成長市場・成長経営への期待。(社会変化、ゲームチェンジ)
②グローバルスタンダードである。(大きい潮流であり、世界市場に直結している)
③求人、就職のアドバンテージ。(選ばれる会社になる指標)

それらは、『SDGs成長経営』の分子(上半身)の部分です。
「Transforming(変革・変容)」を見据えて、本気の意識で、志を持って、会社・事業の「本来と将来」をとらえることが「分母」(下半身)になります。
分母をしっかりさせることが、成長への本筋です。
・第27夜:志(こころざし)

参考に、この連載の第67夜に上記成長への道筋を体系的にまとめています。
1.自分を変える:危機意識・情熱力
2.他者を愛する:幸せ想像力
3.余白をつくる:本質創造力
4.舞台をつくる:仕組構想力
5.関係をつくる:伝える力・伝わる力
6.信頼をつくる:巻き込む力・巻き込まれる力
7.成功をつかむ:すぐやる力・やり抜く力

これが本道です。

そして、共に、五方良し(第276夜)の持続的世界と世間を創りましょう。
『五方よし』
1. 売り手よし
2. 買い手よし
3. 世間よし
4. 地球よし
5. 未来よし

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ

SDGsTransforming Our WorldPPT