SDGsシフト52「価値創造の知・第297夜」:『地球・自然は、人間のことを考えてくれない』

2020年7月27日 世阿弥: 目前心後(もくぜんしんご)

地球・自然は、人間のことを考えてくれていると思いますか?

2011年3月11日に日本を襲った東日本大震災、津波被害、そして福島第一原発の問題。
9年前、日本の国内政治の混乱、巨額の政府債務、国際競争力の低下等々、国中が「憂い」を共有しました。

あの時に、自分が一番強く感じたのは、「自然への畏れ」でした。
わかってはいるのですが、『地球・自然は、人間のことを考えてくれない』と。

近代以前の科学や技術が進んでいなかった人類は、その「畏れ」をやるせなく、もっと身近に強く感じていたのでしょう。

その言葉から、「畏れと慎み」という貝原益軒(江戸時代の儒学者)の「養生訓」の一節が思い浮かびます。

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身をたもち生を養ふに、一字の至れる要訣あり。是を行えば生命を長くたもちて病なし。おやに孝あり、君に忠あり、家をたもち、身をたもつ、行なふとしてよろしからざる事なし。
其の一字なんぞや。畏の字是なり。畏るるとは身を守る心法なり。事ごとに心を小ににして気にまかせず、過なからん事を求め、つねに天道をおそれて、つつしみしたがひ、人欲を畏れてつつしみ忍にあり。
是畏るるは、慎しみにおもむく初めなり。つつしみ生ず。畏れざればつつしみなし

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「常に天道(天の理)を畏れて、慎みに従って、人欲を畏れて慎み忍にあり」

これからは、きっと「天道(天の理」の時代です。
「畏れと慎み」は、「地の理(不調和・競争・複雑)」の時代から、「天の理(調和・共創・シンプル)」への移行期に必要な心得でなないでしょうか。
前夜(第296夜)にも綴りましたが、「資本主義経済の中で、これまでの私たちの生き方は「力(成長・自己実現)」に集中しがちであり、それがどこかで行き過ぎた結果生じたひずみが、現実社会に問題をもたらしているともいえるでしょう。
個々の成長や自己実現に駆り立てられるあまり、競争や格差によって人間同士が分断され、自然とのつながりも断たれてしまう。
そんな状態から、今、つながりを取り戻し、調和へと導く「愛(分断したものを和合)」への揺り戻しが、地球規模で起きているように思います。私たちはそんな変化の流れの中に生きているのではないでしょうか」(アダム・カヘン監訳者まえがき)

私たちは、コロナ禍・気候クライシスの痛い体験を通じて、エゴイズム(我見・利己主義)から、エコイズム(畏れ・共生主義)へと振り子を戻すことが求められています。

この図式は、以前綴った世阿弥の「離見の見」にある『目前心後(もくぜんしんご)』(第88夜、第188夜、第193夜)を想起させるので、一部加筆引用します。

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—世阿弥(118夜)は『花鏡』に我見と離見をくらべ、「我が目の見る所は我見なり。見所より見る所の風姿は離見なり」と説いて、場における「離見の見」をみごとに集約してみせた。
世阿弥にとっての「離」とは“見所同心”なのである。自分だけでは離にならない。「離見の見」は場とともにある。心はその場の見所のほうにおいていく。

<目は前を見ているが、心は後ろにおいて置け>

世阿弥はそのことをすでに指摘した。この見方を「目前心後」(もくぜんしんご)とも言った。—

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今までの状況は、<目は前(経済)を見ているが、心(なし)は後ろにおいて置け>

後ろに、「何も置いてない」のが現代ではないでしょうか。

大事なことは、
<目は前(経済)を見ているが、心(地球環境)は後ろにおいて置け>

否、畏れと慎みが必要ないま、本当に大事なことは、
<目は前(地球環境)を見ているが、心(経済)は後ろにおいて置け>
でしょう。

その心構えで、「3つエコロジー(環境・第9夜))とエコノミー(経済)」を融合させる。
そこに、ミッションとビジョンが生まれ、各企業・地域の「本業」と「SDGs」の融合があります。

その融合を検討する時に、目の前のハードルが高く感じられることが多いのですね。それは次の一手、チャレンジが必要になるからです。
しかし、ミッションとビジョンを自分たちで再定義することを通して、「夢中・ワクワク」が生まれてきます。
そのステージに辿りつけることが、SDGs成長経営のポイントです。私たちは全力でサポートします。

融合した構想を実践のレヴェルに引き上げるのが、「SDGs×バリューイノベーション」のステージです。
解決のアプローチで、あきらめずに踏ん張ってやり抜くことで光が見えてきます。
『地球・自然は、人間のことを考えてくれない』ことを共通認識して、「連携(横軸)して、自立・自律(縦軸)すること」、「愛(志・Will)と力(Skill)を統合すること」が未来への道筋です。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ

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