SDGsシフト61「価値創造の知・第306夜」:『物事の前提を見直す』  

2021年1月4日 深い知&クリティカルシンキング

皆さま、あけましておめでとうございます
本年もよろしくお願い申し上げます。
 年末年始の日本の第3波のコロナ感染が右肩上がりを続け、政府の再びの緊急事態宣言の検討が行われています。
A.「医療崩壊」の前提は
 欧州は、日本の10倍くらいの感染があるのに「医療崩壊」という言葉が伝わってきません。この国では「医療崩壊」と「緊急事態宣言」がリンクしているように思います。
なぜ、感染数十分の一の日本が、「医療崩壊」になってしまうのでしょうか?
ここを突き詰めて、メディアが伝えないことに問題があるのではあにでしょうか。
 根本は、一部の大きな病院だけが「コロナ治療」をしていて、手持無沙汰のその他の多くの病院がそれに対応しない差によるもの、というファクトによる見立てです。
B.「エネルギー政策」前提の見直し
 同様に、日本のエネルギー政策の見直しに関する、昨年7月の小泉進次郎環境相のメッセージを引用します。
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—今後のエネルギー政策の見直しでは、あらゆる選択肢をファクトベースで大いに議論すべきだと考えています。石炭政策の見直しもファクトに基づく議論をしたから動いた。
エネルギー分野の技術革新のスピードは速く、数年前は当たり前だったことが圧倒的に変わることもある。
再生可能エネルギーの価格が高い印象がありますが、海外では安くなっている。12年度の電源構成で再生エネの割合約22~24%の達成は当然であり、さらに全力で比率を引き上げるべきです。—
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C.2050年カーボンニュートラル
 上記B.を要因として、10月26日・菅首相の所信表明演説があり、抜粋引用します。
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・我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。
・もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではありません。積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要です。
・鍵となるのは、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした、革新的なイノベーションです
実用化を見据えた研究開発を加速度的に促進します。規制改革などの政策を総動員し、グリーン投資の更なる普及を進めるとともに、脱炭素社会の実現に向けて、国と地方で検討を行う新たな場を創設するなど、総力を挙げて取り組みます。
環境関連分野のデジタル化により、効率的、効果的にグリーン化を進めていきます。世界のグリーン産業をけん引し、経済と環境の好循環をつくり出してまいります。
・省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進めることで、安定的なエネルギー供給を確立します。長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換します。
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 上記A.B.C.では、「物事の前提を検証し、その事象の本質を見極めていき、抜本的転換をすること」の重要性がわかります。
「A.コロナ禍の医療崩壊」云々は、「攻めの手」と「受けの手」の対応がありますが、その双方が整っておらず、「受けの手」のほうを一年間放っておいたツケが回ってきただけです。これは人災です。
 お伝えしたかったのは「政府対応への批判」ではなくて、主題の『物事の前提を見直す』にあります。
 自分ゴトになりますが、関連する内容について、30年弱前(1992年)の前職パイオニア社の経営会議の内容を第29夜(未常識と非常識)に綴っていますので引用します。
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—1.第10夜詳細:「オーディオのイノベーション」
 1992年の経営会議で、
「2005年前後を境にして、オーディオはCDの時代から、超高密度メディア(USBメモリ)や通信の時代に移行する可能性が大きい。その為の準備を2000年までに行いたい」
という旨のプレゼンテーションを委員会メンバーを代表して行いました。
当時はCD全盛の時代ですから、すぐに担当部長に呼ばれて、
「橋本よ、そんなことは起きるはずがない」と。
その報告は非常識に思えたのでしょう。
その担当部長が退職されるときに、私のところにきました。
「お前が云うとおりになったな」
その時に、返答したのが、 「それは未常識だっただけです。超高密度メディア委員会メンバーのシミュレーションをただ図解してお伝えしただけです」と。
2.第14夜詳細:「社長直訴そしてヒット商品緊急プロジェクトへ」
 1990年移行、ホームオーディオは衰退期に入っていました。
そこで、「『性能・機能』ではなく、『効能としてのライフスタイル』をベースにして、異業種コラボレーションでヒット商品を生み出す」
という提案を1995年の経営会議で行いました。
その後に、ある役員からお呼びがかかり、
「新社長がOKしても、こんな提案が上手く行くわけがないだろう。
一体、何を考えているんだ・・・・」
次々に厳しい言葉が続いて浴びせられました。
 今、「目前にある課題・問題」に集中して、それを解決することを責務として事業を任せられている人からみたら、
そのように映ったのもわかります。
ただ、第13夜「倒産、そして新価値創造」を体験してきた自分からは、
「役員の人達が退職するまではそれでいいかもしれないけれど、その後に残った多くの若い社員や家族のためには、今ここで新しい目的のために行動に移さなければならない」
という熱い思い(志)がありました。
役員からみたら、良からぬ非業、非常識に見えたでしょう。
どちらも自分からの常識から見ていたのです。そして、私の方は「後になれば判る未常識」だったのです。—
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・これまでの延長線上に未来はない
 今のコロナ禍で、その様な業種業態があふれています。
 飲食業をみていただくとお分かりのように、「受け(待ち)の経営」と「攻めの経営」で結果は明らかです。
事務所の近くのウナギが美味しい「割烹・小料理屋」さんは、コロナ以前より、コロナ禍のほうが売り上げを大幅に伸ばしています。
待ちに入っていたら、倒産の可能性が高かったと思いますが、早々とテークアウトを行い、そこで新しいマーケティングを行っていました。
 前述の2050年カーボンニュートラルは、電力業界、クルマ業界、住宅業界等、全産業に大きなインパクトがありました。
それは、「大企業のコト」と思っていたら大間違いなのです。
 必要なことは、
・物事の前提を検証し、その事象の本質を見極めていき、抜本的転換をすること
 その能力を実装することが望まれます。
(それが、ピンチをチャンスに変える大きな一歩になります)
それは、
① 価値創造の知・第85~86夜「深い知」(トリニティイノベーション第一法則)
② クリティカルシンキング
 に方法が記してあります。
 日本の政治や産業界、そして、大学教育には、この能力が決定的に不足していることが大問題です。
ただ、いったん「C.2050年カーボンニュートラル」の様な大転換の方向性を示せたならば、それを実現する産業界の潜在能力は高いものがあると思っています。
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