橋本元司の「価値創造の知・第228夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」⑥「要約と敷衍(ふえん)」

2019年4月12日 ヘーゲルの弁証法

「未来をどう読むのか」というのが、「価値創造の知」第2法則(第二の矢:高い知)です。そこでの重要な方法が「ヘーゲルの弁証法」(第27夜、第87夜、第176夜)です。それを活用して、首記の「要約と敷衍(ふえん)」を行ったり来たりという繰り返しから新しい価値、新しい現実というものが洞察できます。写真の「知の巨人」「知の怪人」の二人はその別格の使い手であります。

それは普段から皆さんもきっと無意識のうちにされていることなのですが、「従来の常識を破る」という意識や熱意があるのか、覚悟があるのかということでアウトプットや人生が変わってきます。

それでは、「要約と敷衍」、「弁証法」を絡めながら、「知の操縦法」を加筆引用して、「価値創造の知」綴っていきます。

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—ヘーゲルの考え方は、「対立と矛盾」を弁証法で乗り越えていきます。(物のありようや関係を考えることによって問題を解決できるのが「矛盾」)

なにか相手と意見を異にした場合、自分には「対立」に見えているものが、相手には「矛盾」に見えているかもしれず、どのポイントでズレているのかを弁証法的に発展させて明らかにしていくことで、何らかの合意点が得られるかもしれません。援用することで物事を解決していくヒントが得られます。

弁証法的な訓練をしていくうえで重要になるのが「敷衍」というやり方です。物事をサマライズする「要約」の逆で、意味を広げていき、例などを挙げて説明することです。「敷衍」するには、かならず、どの部分が重要かを見極める要約の訓練が必要になります。

「要約」と「敷衍」は本来セットですが、私たちは要約には慣れていても、敷衍にはなじみがありません。この要約と敷衍が上手なのが、池上彰さんです。

学術的な用語や難しい世界情勢を、一般に理解できる説明をするので、池上さんのテレビの視聴率は高いし、本も売れるのです。こういう技術を身につけておけば、会社や学校であの人の話はおもしろい、わかりやすいと言われるようになります。

どうやって身につければよいかというと、要約したものを見て、もとを復元していけばいいのです。—

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この後に事例を紹介されているのですが、ここでは「要約」を簡単に記されていますが、TOYOTAのナゼナゼ分析の様に、深く深く本質を捉えることが重要です。何をどこまで要約したか、本質に迫れるかによって、「敷衍」も変わってきます。

「色即是空 空即是色」(第6夜)の「空」をどうとらえるかによって、「空即是色」のほうの「色=新しい現実}が変わってくるからです。ここ、とっても重要です。

弁証法は、自分の中で対話をしていくので、そこで要約することもあれば、敷衍していくこともあります。変幻自在にものごとを動かし、生成していくので、自分と相いれない意見が相手でも、途中で反論せずに、どういう理屈なのかをとらえて、わからないことがあったときは、話者に質問するのです。

相手が何を言っているのかを理解するための質問だから、

・ここがわかりづらいですが、こういう意味でしょうか
・具体例は~でしょうか

というように迎合的な質問をするのです。

—「反証」して、それに対して再反論して、というように批判的な論点を踏まえたうえで、自分なりにこの問題についての結論を出すのが、正反合の「合」のプロセスなのです。

会社・地域の中で、上記の「批判的な論点」を許さない雰囲気、環境があることが多いのですが、そのことによって、会社・地域が生成発展することを阻んでいることがよくあります。自分も前職やご支援先で多く経験してきました。将来を創れるか、ドボンして飲み込まれるかの分水嶺です。

特に、「AI・IoT・5G」が出揃った変化の本質を把えること、そして、「次の一手」を早く速く打つことが重要です。

危機の時代に、業界、自社を「深い知・高い知・広い知」で観れることが先決です。

上記の「正反合」を活用した「本来と将来の螺旋的発展物語」で多くの会社をご支援してきました。多くの方達(特に未来を生きる若い人達)に「深い知・高い知・広い知」を身につけていただきたいです。

そのためにも、「要約と敷衍」の能力を不断に磨かれることをお薦めします。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
佐藤優06

橋本元司の「価値創造の知・第227夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」⑤「理性による分析では表せないもの」

2019年4月10日 大切なものは目にみえません

第78夜で、「創発とは?」について綴りました。それは、「価値創造」の肝(きも)となるキーワードです。

「創発」(emergence)とは、「部分の単純な挙動が全体の高度な秩序を生み出す」というプロセスで、言葉を変えれば、「個の自発性が全体の秩序を生み出す」というプロセスです。

前職パイオニア社での異業種コラボレーションによる連続「ヒット商品」創出(第13夜、第14夜)は、まさに「創発」でした。それは、第78夜に詳細を記していますが、

「新オーディオ・オルタナティブビジョン」の元に、全てを異業種コラボレーションの創発により、足し算では到底発現しない『新しい性質』『新しい物語・ライフスタイル・文化』を紡ぎ出してヒット商品になりました。

“人間”を事例にすると、人間の要素をバラバラに分解すると、目、鼻、耳、脳、心臓、手、足、神経・・・となりますが、それらが集まることで、“命”が生まれます。それと同じ構図です。

『新価値創造研究所』は、多くの方達のより良き将来と幸せを目的にして「新しい性質、新しいライフスタイル、新しい文化、新しい命」づくりを皆さまと創発で実践してきました。

本夜は、上記とクロスする内容を「佐藤優: 知の操縦法 」より加筆引用します。

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— 解剖学では、心臓、腎臓、筋肉といった部分だけを議論しても、人間がどういうものかわかりません。

ところが、哲学では、「存在とは何か」、「概念とは何か」といったいろいろなカテゴリーの知見を寄せ集めることで全体が分かる、となっています。

これはカントの系譜の考え方なのですが、それに対して批判的な意見が述べられています。

「体系知」についての考えにも通じているのですが、部分と全体との関係において、全体が有機体として機能していないといけないという発想が、ヘーゲルにはあります。従って要素ごとに分けていく工学的な解析にも批判的でした。

たとえば、光をプリズムによって7つに分けるというような解析をすると、トータルな「光」から抜け落ちてしまうものが必ずあって、同じように理性による分析には抜け落ちるところがあると、ヘーゲルは考えるのです。—

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「命」というものは目にみえません。価値創造というのは、新しい「命」が生まれるのと似ています。私自身は、「ヒット商品」をプロデュースするときに、「二つの間に生まれる目に見えない命・文化」というものをいつも意識していました。

佐藤優さんは次の様に語っています。

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目に見えるものだけではなく、目にみえないものを把えることができるかが重要です。見えるものは個別の問題にしか当てはめることができず、思考に制限が出てしまいます。

目に見えないもの、いわばメタ的なものを把えることができるかどうかにより思考の幅が広くなります。—

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大切なものは目にみえません。そして、「メタ的なものを把えることができるかどうか」により思考の幅が広くなります。

星の王子さま サン・テグジュペリの名言に、
「いちばんたいせつなことは、心で見なくてはよく見えない」とあります。
そう、価値創造には、「心で見る力」を身につける必要があるのです。(第63夜)

ここが価値創造の難しいトコロ(負)なのですが、一番魅力的なトコロ(正)でもあるのです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
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橋本元司の「価値創造の知・第226夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」④「現実の出来事を見るために古典を読む」

2019年4月8日 古典を読むことで観えることが多くある

第176夜に、古典「ヘーゲルの知」を綴りました。
きっかけは、昨年10月の仙台方面の「知の旅」への出遊でした。松岡正剛師匠が亭主の「知の倶楽部」(第26夜)です。
「佐藤優さん」というとびきりのゲストが来られて、「知の巨人」と「知の怪人」が語り合う2日間の秘密倶楽部は、間違いなく格別・別格の時空間でした。

師匠は、「松岡正剛の千夜千冊」において、すでに1700夜を超えていますが、その松岡師匠へ「知の旅」の終盤で相談をしました。

その相談とは、この連載中の「価値創造の知」のことです。

「価値創造の知の執筆で壁にぶち当たることがある」

という悩み事でした。

師匠から迅速な回答がありました。それは、

「古典を読むことで観えることが多くあるものだ」

という助言でした。

(それから、内外の『古典』に踏み入り、そこからの多くの気づきを綴ってきて今に続いています)

さて、その「知の倶楽部」では、佐藤さんから「知(インテリジェンス)の使い方」の徹底指南がありました。
佐藤さんの著書である「知の操縦法」を読むと、後半の多くが、古典ヘーゲルの知「精神現象学」に割かれているのでした。
その一部を加筆引用します。

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なぜヘーゲルのように難しくて、資格や語学みたく人生に直接的に役立たない面倒くさい本を読み解いていかなければならないのかと思う人もいるかもしれません。

しかし『ヘーゲルのような古典こそ現実の出来事を具体的に見ていくうえで役に立つ』のです。

すでに述べましたが『実用的なノウハウは使える用途が限られるので、その様な断片的な知識をいくら身につけても、長期的には役立ちません。

根源的な知を身につけ思考の土台を作り、実際に役に立つところまで落とし込んでいくこと』が求められています。

逆に云えば、実際に役立つところまで落とし込むことができないのならば、ヘーゲルを読む意味がありません。---

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ポイントは、

・『実用的なノウハウは使える用途が限られるので、その様な断片的な知識をいくら身につけても、長期的には役立ちません。根源的な知を身につけ思考の土台を作り、実際に役に立つところまで落とし込んでいくこと』が求められているコト。

・『ヘーゲルのような古典こそ現実の出来事を具体的に見ていくうえで役に立つ』

にあります。

若い時にそれを云われても、おそらく頭には響かず、今になると「肚にストンと落ちる」のです。
特に、自分のように、「新価値創造」をミッションとしている身としては尚更です。
上記には、何回か『役に立つ』という言葉が出てきますが、

『価値=役に立つこと』

なのです。

それは、第75夜(価値創造とは何か)に記しています。
・「価値」とは、世の中に役立つこと。
・「創造」とは、未来を先取りすること。
・「価値がない」とは、世の中に役だたないということ

特に、前夜に綴った

・「鉄道の時代(第141夜、第150夜)から「航海の時代(第156夜)」

・「農業⇒工業⇒情業⇒脳業の時代」(第109夜)

の様に、大きく時代が変化する時(=現在)には、それまでの実用的なノウハウでは使える用途が限られるので、その様な断片的な知識をいくら身につけても、役立たないということです。そこで役立つのは「根源的な知」です。

どう使うのかということですが、自分の使い方は、「色即是空 空即是色」(第85夜、第6夜)です。
(「色即是空」というのは、「現実=色」に問題・課題があるのなら、先ず心を無にして、「大元=空=大切なこと=真心」に戻りなさいと教えてくれているように思います。
そして、「空=大元=真心」に戻って従来のしがらみや常識から解き放たれて、その本質(=コンセプト=核心)を把えてから「現実=色」を観ると新しい世界(=現実=色=確信)が観えるということではないでしょうか。その確信を革新するのがイノベーションであり価値創造です)

空=大元=真心=根源の知

という「源」を豊かにすることで、新しい現実に向き合うことができるようになります。それは「温故知新」です。

『根源的な知を身につけ思考の土台を作り、実際に役に立つところまで落とし込んでいくこと』

皆さんも「古典」に触れるコトをお薦めします。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
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橋本元司の「価値創造の知・第225夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」③「問題は、能力はないけれどやる気がある人」

2019年4月1日 「オペレーションからイノベーション」へ

4月に入りました。今朝の通勤電車には「新人」が初々しい顔をして乗り込んできます。船出ですね。

そして、元号が変わりましたね。『令和(れいわ)』でした。

万葉集からの編集で、「日本古来の本来の良さを以って、将来につなげよう」という想いをそこから感じました。
ニュースをみながら、「新元号」というのは、国民全体に『心機一転』を促す、誘う大きなパワーを持っているように感じました。

過去のことを棚卸しして、これまでの延長線上にではなく、何かの節目で「切り替える」というのはとても意味のあることです。

さて、とっても残念ながら先週に、前職・パイオニア社が上場廃止になりました。「倒産」もそうなのですが殆どが「人災」です。

本夜は、パイオニア社を事例にあげながら、多くの会社・地域が「心機一転、将来をどう切り拓くか」「どう切り替えるか」ということと絡めて綴ろうと思います。

その中心となる「負」や「行き詰まり」を乗り越えるための原因やヒントが、昨年10月の松岡正剛師匠主宰「未詳倶楽部」の特別ゲストであり「知の怪人」とも呼ばれる「佐藤優」さんの話がありましたのでそれを記します。

佐藤優さんは、日本の外交官でもありました。『知』と連関する「能力とやる気」についてのパートで、4つの分類をされたところから始まりました。

① 能力があり、やる気がある人
② 能力があるけれど、やる気が無い人
③ 能力はないけれど、やる気がある人
④ 能力がなく、やる気が無い人

佐藤さんから、「一番問題のある人は誰だと思いますか?何番でしょうか?」という問いがありました。

皆さんは、どう思われますか?考えてみてください。

その時、自分の中では、前職・パイオニア社のトップを含む役員の顔がすぐに振り分けられました。そして、すぐに分かりました。
多くの人は②「能力があるけれど、やる気が無い人」を選びますがそれは間違いです。 答えは、③「能力はないけれど、やる気がある人」です。

「外交」でこれをやられると取り返しのつかないこと、後始末が大変なコトになりますね。

会社や地域でも同じです。そのような人が権限を持つと、「とてもやっかいな人」になるのです。それが、事業や研究所や会社をも衰退の道に導きます。

問題は、その人たちは、敷かれているレールの上で、もうやることが分かっている過去の「成長」のステージ(鉄道の時代:第141夜、第150夜))では能力を発揮した「オペレーター&マネージャー」なのです。

しかし、成熟から衰退に向かうステージで、「次の柱」や「新しい本流(オルタナティブ・第148夜)」に舵を切る、乗り出す「航海の時代:第156夜」の「価値創造イノベーション&イメジメント」にはまったく不向きなのでした。

そう、それは違う能力なのです。いまは「航海の時代(イノベーション)」なのに、「鉄道の時代(オペレーション)」の能力では太刀打ちできません。

「過去の能力(オペレーション)で以って将来も切り拓けるだろう」と重要部門のリーダーに選出される。そして、その能力でやる気を発揮してしまうことが・・・。

それが失われた15年でした。

振り返ると、「パイオニア」という会社は、節目節目で「とびきりの外部からの知」を取り入れていました。①「とびきりの能力があり、やる気がある人」を迎え入れる。それで成長・成功してきた会社です。松本望創始者もそれを実践する器量の大きい方でした。

さて、行き詰まりを打破する方策について第45夜、第147夜に綴りました。

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「行き詰まりの打破や、新たな成長を目指して、企業再生に取り組む切り口は3つあります。
①リストラクチャリング
「構造」の見直しを意味しますが、企業を縦串で見た時に必要のない部門を削除するものです。
②リエンジニアリング
「機能」の見直しを意味しますが、企業を横串で見た時に必要のない仕事を削除するものです。
③リオリエンテーション
「進むべき方向」の見直しを意味します。
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①②がDeleteに向かうのに対して、③は「我々はどの方向にむかうべきか」
を問うものです。

2000年以降、自分や自分の部署は、③リオリエンテーションの「新しいパイオニア」の準備と実際の提案をしてきましたが、パイオニア社が選択したのは、①リストラクチャリング、②リエンジニアリングでした。そのため、自分は早期退職という卒業に向かいました。

さてさて、上記の体験の中で「イノベーション&イメジメント」を磨く努力と新提案、そして、創造型人財開発・育成を重ねてきたことで、その後の自分の進路や使命に大きな影響を与えました。

『人間万事塞翁が馬』ですね。

・第13夜: 倒産
・第75夜: 価値創造とは何か?
・第172夜: なぜ、倒産?

それは、自分の中の反面教師として、今の仕事の土台になっています。何事も無駄はないのですね。

パイオニア社は、上場廃止にはなりましたが、前夜・前々夜に綴った「時代を先取りした大きな新物語」を構想・実践できれば、『復活』はありえます。
社員の「悲しい顔」を笑顔にしましょう。

誰が、それを「価値創造イノベーション&ナビゲーション」できるかにかかっています。結局「人・構想」です。

さてさて、現在、多くの会社や地域が同じような場面に遭遇しています。その現場にいます。
先ず、大企業が率先しましょう。やはり、影響力が大きいのを実感しています。

そのためにも、「③能力はないけれど、やる気がある人」ではなく、「①能力があり、やる気があり、大きい物語を構想できる人」をリーダーに選ぶコトが必要です。

本日の新元号『令和』を契機として、私たちの将来(会社・地域・日本)を隆々とするために、ご一緒に「リオリエンテーション」に向かいましょう。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
佐藤優03

橋本元司の「価値創造の知・第224夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」②体系知と大きな物語

2019年3月31日 『粗悪ではない、良質でシームレスな大きな物語(本来と将来)づくり』

前夜(第223夜)は、「体系知と物語」の輪郭を綴りました。

本夜は前夜に引き続き、「知の操縦法 」(佐藤優著)を引用して、混迷する世界をとらえるために、「物語」と「価値創造」について記そうと思います。

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—百科事典を読んで知識を体系的に身に付けることで、「知識の枠組み」を知ることができるのです。

重要なのは、あくまで体系的でなければいけないということです。非科学的だけれど合理的な議論に対しては、体系的からの反論をしなければなりません。

例えば、「自分の子どもが感染症にかかってしまった、これは誰かが呪いをかけているに違いない」というような主張は、それ自体では筋が通っていて合理的ですが、他分野との連関からみるとナンセンスです。

個別の枠内にいると見えないことが、複数の枠-体系知があれば見えてくるのです。

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混迷する現代は、縦串の「業界」という世界の枠組みが壊れています。

それは、「情業」「脳業」と「新ライフスタイル」という世間の横串で、新しい枠組みが創られているからです。

それ故に、「単独の枠内」や「個別の枠内」にいると世間がみえないのです。

自分ゴトになりますが、その様なことを30年前に敏感に感じて、業界を超える枠組みや「異業種コラボレーション」に挑戦してきました。

さて、現在はどうでしょうか?

様々な業界や地域が、そして日本自体が「単独の枠内(鎖国)」でのうのうとしていることができなくなりました。「複数の枠-体系知」を持つことがマストなのです。

そして、そこには「複数の枠を超えたシームレスな物語」が必要になってきます。

再び、「知の操縦法 」を加筆引用します。

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—通史として、きちんとした物語の歴史を作らないと、最近の書店の歴史書コーナーのように、箸にも棒にも掛からない言説が市場で流通してしまう。

『人間は物語を作る動物なので、大きな物語を作ることをしなくなったら、粗悪な物語が流通するようになってしまいます』

だからこそいま、『知』の土台作りをしていかなければならないのです。—

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成熟から衰退期に向かっている会社や地域のご支援に伺う時に、

①「未来を変える」ことに重点を置く
②「現在の枠組み」の革新に重点を置く
③「現在の枠組み」を改善することに重点を置く

の様に、トップのスタンスはだいたい上記の3つに分かれます。

③「現在の枠組み」を改善すること、ではもう間に合わないことがほとんどなのですね。
それでも、①②に向かうことに、TOPの躊躇があります。

ポイントは、『粗悪ではない、良質でシームレスな大きな物語(本来と将来)』を創るコト。そして、それに向けて規模に合った挑戦を積み重ねて、実績をつくる。

上記をトップと社員が共通認識して、ベクトルを一つにして邁進する。

『粗悪ではない、良質でシームレスな大きな物語(本来と将来)づくり』

には、新しい時代の「体系知」「知の型」が求められます。そして、ここにコンサルタントの出来、不出来があります。

まだまだ多くのコンサルタントが「古い体系知=粗悪な物語」を使っています。それが、コンサルタントのレベルを落としています。

この「良質な物語」から、新価値が創造されます。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
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橋本元司の「価値創造の知・第223夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」①

2019年3月30日 体系知とは大きな物語である

第217~222夜に亘り、「イチロー引退会見」と「価値創造」の関係について綴ってきましたが、その内容は心に突き刺さり、読めば読むほど、根源的で哲学的なのでした。

そして、それを読み解く時に思い浮かんだのが、昨年10月に未詳?楽部の特別ゲストであった「佐藤優」さんの混迷する世界をとらえるための『知の使い方』でした。

そこで一冊の著書『知の操縦法』から引用加筆させて貰って、「価値創造」との関係を綴っていこうと思います。

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◆体系知とは大きな物語である

ヘーゲルの哲学体系を示した「エンチュロクロペディー」は、円環をなしている「知の体系」という意味で、通常、百科事典と訳します。ある時代のある時点での知を輪切りにし、基盤を示すことが重要だ、とヘーゲルは考えていました。

『ヘーゲルの哲学体系』とは体系知のことですが、別の言い方でいうと、「大きな物語としての哲学や世界観」という考え方です。

ポストモダン以降は、小さな差異が強調されましたが、これを追求していくと、小さな差異からどうやって価値を生み出していけばよいのかという話になり、貨幣に転換されてしまいます。

いま、東大法学部を卒業しても、一昔前みたいに官僚にもならなければ司法試験も受けず、投資銀行に行ったり、デイトレーダーになったりしますが、エリートが自分の能力を「社会において何をなすべきか」ではなく、いかに金銭を稼げるかという方向に発揮するようになったのは、ポストモダンがいきついた必然だと思います。—

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20世紀後半のビジネスは、成長から成熟に向かい、決められたレールの上で、「小さな差異」で価値を生み出している時代でした、1990年前後から成熟から衰退に向かい始めました。成熟の延長線上に「未来」はありません。

21世紀の日本では、「人口減少と人工知能」が大きな要素となり、

「オペレーション&マネジメント」<「イノベーション&イメジメント(構想)」

が肝要な時代になりました。

「オペレーション&マネジメント」では、「小さな差異」では太刀打ちできずに、「大きな物語」が求人軸となります。

その「大きな物語」は、受験勉強や今の大学・大学院からは生まれてきません。明治以降の「知の型」が支配していてそこから脱皮できていません。

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人間は「心」で「つながり」をつくる生き物なので、
人間は、「物語」を介在させないことにはつながり合うことができません。
物語とは、新しい現実を受け入れる形にしていく働きです。(第54夜)
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新しい現実を受け入れるには、新しい世界と世間に対応した「大きな物語」が必要なのです。もう、その「物語」は明滅しています。

新価値創造研究所も「体系知」(第57夜)と「物語」を明確にして活動しています。

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橋本元司の「価値創造の知・第222夜」:「ICHIRO: ビジネスと野球の共通項 」⑥

2019年3月29日 どの記録よりも、自分の中で誇りを持てたこと

野球人生というキャリアの中で一番印象的だった場面を聴くことで、ICHIROさんの野球に対するスタンスや想いを知ることができます。

引退会見の中で、それを下記の様に答えています。

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Q.キャリアの中で一番印象的だった場面はありますか?

A.時間が経ったら今日が一番真っ先に浮かぶことは間違いないと思います。
今日を除けば、MVPやオールスター出場、10年200安打は小さなことに過ぎない。

今日のあの舞台に立てたことは…。
去年の5月以降のゲームに出られない状況にあって、チームと一緒に練習を続けてきた。
それを最後まで成し遂げられなければ、今日という日はなかった。

残してきた記録はいずれ誰かが抜いていく。
でも去年の5月から今日までの日々はひょっとしたら誰にもできないかもしれないと、ささやかな誇りを生んだ日々だった。

それがどの記録よりも、自分の中ではほんの少しだけ、誇りを持てたことかと思っている。—

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上記の10年200安打というのは、凄まじい記録です。

ビジネスと野球の共通項は、「競争」ということもあるのですが、「完成形がない、終わりがない、それは諸行無常」 ということがあります。

昨年10月の未詳?楽部で、特別ゲストで来られた「佐藤優」さんの言葉が上記に関係しているので下記に加筆引用します。

becomingのスーパースターがICHIROさんということです。

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今の能力や知識で最高のものを出したとしても、研究され時間が経ったり、新しい技術やデータや知識を得ることで変わっていきます。

「体性、知性」や「ビジネス」そのものに変化して発展していく内在性があるからです。それだから、学知・体系知は、beingではなく、becomingの性質のものです。

我々の勉強は、ヘーゲル的に言えば、生成の過程にあって永遠に終わりません。

「わかった」「できた」と思っていること自体は体系知で整合性がとれていますが、当然のことながら状況は変わり新しい知見が出てくるので、またやり直しをして、結論をださなければなりません。

このやり直しは延々と続いていくけれど、—

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そのような中での首記の引退会見です。

『でも去年の5月から今日までの日々はひょっとしたら誰にもできないかもしれないと、ささやかな誇りを生んだ日々だった。』

記録や希望、保証があるわけでなく、見えないところで黙々とこれまで積み重ねてきた準備、鍛錬を行う。

その積み重ねについては、『第217夜・ICHIRO: 積み重ねでしか自分を超えられない』に綴りました。

神様が、そのギフトを3月21日の引退試合にくださいました。

・beingからbecoming

・積み重ねでしか自分を超えられない

それは、ビジネスの最重要事項と再認識しました。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
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橋本元司の「価値創造の知・第221夜」:「ICHIRO: 辛いこと、しんどいことに立ち向かうこと 」⑤

2019年3月28日 未来の自分にとって、大きな支え

ICHIROさんは、それまでの世間の常識や価値観を超える挑戦をしてきました。

知の連載では、第157~166夜のスティーブジョブズ編にそれを綴ってきましたが、そこには多くの壁や中傷、いやがらせ等があります。
レベルはぜんぜん違うのですが、自分も「ヒット商品プロジェクト、シナリオプランニング、事業創出プロジェクト」等で同様の体験をしてきました。

その真っ只中はたいへんなのですが、心と脳は集中してワクワクしていたりしています。
人にもよりますが、作用としてのプレッシャー(重圧)は、反作用としての「やる気や集中力」を倍加させます。

「不足」や「負の反動」(第3夜:負(マイナス)の美学、第206夜:落合陽一・負の想像力)が価値創造の重要な要素になります。

さて、引退会見の最後の質問にICHIROさんは下記の様に答えています。

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Q.孤独を感じながらプレーをしていると言ってたが、孤独感はずっと感じていたのか?

A.現在は全くその孤独感はない。それとは少し違うかもしれないけれど、アメリカに来て、メジャーリーグに来て、外国人になったこと。アメリカでは僕は外国人ですから。

このことは、外国人になったことで、人の心を慮ったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れた。

この体験っていうのは、まぁ、本を読んだり、情報を取ることができたとしても、体験しないと自分の中からは生まれないので。

「孤独を感じて苦しんだこと、多々ありました」

ありましたけど、その体験は、「未来の自分にとって、大きな支えになるんだろう」と、今は思います。

だから、

『辛いこと、しんどいことから逃げたいと思うのは当然のことなんだけど、エネルギーのある、元気な時にそれに立ち向かっていく。そのことはすごく、人として重要なことなんじゃないかと感じています』

締まったね?最後。

長い間ありがとうございました。—

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「辛いこと、しんどいことから逃げたい」という気持ちはよくわかります。

しかし、それを突破した先には「自分の成長」「人生の充実」が待ち受けています。

それを、「エネルギーのある、元気な時にそれに立ち向かっていく」

そのことはすごく、『人として重要なこと』なんじゃないか、と言っています。

そんな珠玉の話の数々を多くの人たちが聴けたことが、ICHIROさんからのギフトでしたね。

自分は昨日64歳になりましたが、まだまだ内側に沸々としたエネルギーがあることを感じています。
掲げたミッションとビジョンに立ち向かっていきたいと思います。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
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橋本元司の「価値創造の知・第220夜」:「ICHIRO: AIと野球 の将来」④

2019年3月27日 「体性」「知性」「心性」の魅力

現代バレーのトップカテゴリーではデータ分析が当たり前になっています。アナリストと呼ばれる専門家が、データバレーというソフトを駆使して、相手はもちろん自分のチームの分析を行い、戦略・チーム構成を練っています。

日本でも全てのV・プレミアリーグチーム、V・チャレンジリーグ等、アナリストがデータ解析を行っています。それを活用している様子はテレビで放映されています。

もっとドラスティックなのが MLB(メジャーリーグベースボール)です。MLB楽しみ方の新スタイルについて、新価値創造研究所「価値創造講座」で取り上げたのは2年前です。

それは、第36夜・第125夜、第147夜に記してきた「AIの進化」(①センシング②プロダクティング③コンサルティングの一気通貫)と深い関係があり、今の時代を大きく変動している『本質』です。

「MLB」の事例では、、
・球速
・ミットに届くまでの回転数(投手の疲れ等)
・球種、球筋

・守備位置

・フォーム、フォーメーション
・・・

等々、センシングがどんどん発達して、データ蓄積とデータ解析が進み、あたかも自分が司令塔になった気持ちになります。それが「茶の間」にまで届けられて『野球の楽しみ方』が変わりました。
野村元監督の「データ野球」は有名ですが、センシング・イメージングの進化が、それを大幅に前進・進展させました。
将棋にも「AI」分析で勝負のグラデーションが届きます。

現在のビジネスもそれまで「勘」に頼ってきたところを、事業の前段(ビフォー)をセンシングやビッグデータを使って可視化・イメージ化することで

・①センシング ⇒ ②プロダクティング ⇒③インテグレーティング(コンサルティング)
・①PREPARE(用意)⇒ ②PERFORMANCE(料理)⇒ ③PROMOTION(配膳)

という一気通貫ビジネスに変質・変態しています。時代を先取りして、その一気通貫の型をクライアント先に提示して、幾つかの企業・地域をご支援してきました。
その枠組みについては、第36夜・第125夜、第147夜で綴ってきました。

さて、②プロダクティングをメインとする製造業であれば、①~③を一気通貫することで、それまでの製造業から新サービス産業に脱皮することができます。
それは、蛹(サナギ)から蝶への脱皮と同じです。

さてさて、前置きが長くなってしまいました。
ICHIROさんは引退会見で語った珠玉をご紹介します。

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Q.野球の魅力はどんなところか?

A.団体競技なんだけど、個人競技でもあるところ。チームが勝てばそれでいいかというと、そういうわけではない。

個人として結果を残さないと生き残ることはできない。チームとして勝っていればいいわけではない。その厳しさが魅力であることは間違いない。

あとは、同じ瞬間がないということ。メジャーに来てから今に至るまで、全く違うものになった。

「頭を使わなくてもできる野球になりつつあるような、これがどうやって変化していくのか」
次の5年、10年。しばらくはこの流れは止まらないと思う。

『本来は野球というのは』、いや、ダメだな、これを言うと問題になりそうだから。

「頭を使わなきゃできない競技なんですよ、本来は」
でもそうじゃなくなってきているのがどうも気持ち悪くて。

ベースボールの発祥はアメリカだから、その発祥がそうなってきていることに、危機感を持っている人はけっこういると思う。日本の野球がアメリカに追従する必要は全く無い。

『やっぱり日本の野球は頭を使う面白いものであってほしい』

アメリカの流れは変わらないので、せめて日本の野球は大切にしなければならないものを大切にする野球であってほしい。---

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間違っていたら申し訳ないのですが、おそらく加速度的な「データ野球」の変質に危機感を持っているのだと思います。

これから重要なことは、

「人工知能(AI)にできないことは何か」を通して、人間とは何かを深く・高く・広く考えるというアプローチです。

そのためには、「身体の土台」「知の土台」「精神の土台」というものが、AI進化があることで、更に加速される時代になると思います。そのような変化に対応した「型」が求められてきます。
そのベースは、「体性」「知性」「心性」です。

上記については、またどこかの「夜」に綴ろうと思います。

ICHIROさんの革新は、

・ムキムキのキン肉マンではない「日本人の体型」でもMLBを凌駕できること
・「体性」「知性」「心性」に魅力があること
を実践されました。

『やっぱり日本の野球は頭を使う面白いものであってほしい』

「データ解析スポーツ」の流れは止められないと思うのですが、「体性」「知性」「心性」の型と創造に答えがあると洞察します。

ビジネスも同じです。
「AIot」「AIロボット」の流れは変えられません。人でなくてもAI機械ができることは、それに置き換わっていきます。
① AI転換への対応
② AIにできないことの価値創造

その①②を同時に進められる会社・地域・人が、日本の将来に必要です。
『本来と将来』を二つでありながら一つにとらえられることが肝要です。
(参考:第33夜・禅と価値創造③、第82夜・ビジネスで最も大切なコト)

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
ICIRO04

橋本元司の「価値創造の知・第219夜」:「ICHIRO: ファンの存在」③

2019年3月26日 ファン(FUN)がファン(FAN)になる

首記に「ファンの存在」と記していますが、「ファン(FAN)はファン(FUN)を通して、ファン(FAN)になってゆきます」
それは、「第108夜:ファン(嬉しい・楽しい)がファン(愛好者・熱狂者)を生む」に記しています。『良い目的』(第28夜、第107夜)を明確にしておくことが重要です。

ビジネスや地域創生に置き換えると、「ファン(FAN)」は「顧客」にあたります。
前夜・前々夜に引き続いて、イチロー選手の引退会見から、「価値創造」に密接に繋がる珠玉を綴ります。

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Q. ファンの存在はイチロー選手にとっていかがでしたか?

A. ゲーム後にあんなことが起こるとは想像してなかったけど、実際にそれが起きて。普段はなかなか日本のファンの方の熱量を感じることは難しい。

久しぶりに東京ドームに来て、ゲームは基本的には静かに進んでいくんだけれど、日本の人は表現するのが苦手だと思っていたけど、それが完全に覆った。

内側に持っている想いが確実にそこにあるということ。それを表現したときの迫力はこれまで想像できなかったものです。

あるときまでは自分のためにプレーすることがチームの為になるし、見てくれる人も喜んでくれるかなと思っていたけれど、
ニューヨークに行った後からは、「人に喜んでもらえることが一番の喜び」に変わってきた。

『ファンの存在無くしては自分のエネルギーは全く生まれない』と言ってもいいと思う。—

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前職・パイオニア社の「ヒット商品プロジェクト」のステージで、「ファン(FAN)とファン(FUN)」を意識することで、今までになかった「自分の内側からのエネルギー」が湧いてくることを実感してきました。

そのことと、ICHIROさんの云う
・「人に喜んでもらえることが一番の喜び」
・『ファンの存在無くしては自分のエネルギーは全く生まれない』
とは同じことと洞察しています。

その様に、「宇宙のルール」はできているのだと思います。

喜び・嬉しい・楽しいのFANが減少すると、愛好者・熱狂者のFUNが減少します。
そこに対応・適応できないと倒産(第13夜、第172夜)に繋がります。

同時に、自分の中に「喜び・嬉しい・楽しい」がないと長続きしないのですね。
それは、前夜の『できると思うから挑戦するのではなく、やりたいと思うなら挑戦すればいい』にも密接な関係があります。
下記、「少年へのメッセージ」もご覧ください。

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Q. 少年にメッセージを送ってほしい

A. 野球だけでなくてもいい、自分が熱中できるもの、夢中になれるものを見つけてほしい。夢中になれるものが見つかれば、自分の前に立ちはだかる壁に向かっていくことができる。

それが見つけられないと、壁が出てくると諦めてしまう。色んなことにトライして、自分に向くか向かないかよりも、自分が好きなものにトライしてほしい。—

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自分の「喜び・嬉しい・楽しい」と顧客の「喜び・嬉しい・楽しい」が繋がるといいですね。
それが、『事業』です。

そのような実践と体験をしてきました。
ただ、「諸行無常」という宇宙のルールがあるので、それは永遠には続きません。

それも、『事業』の宿命です。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
ICIRO03