橋本元司の「価値創造の知・第193夜」:「芭蕉の知:『軽み(かろみ・かるみ)』」④

2018年12月7日 『軽み』・『却来』・『色即是空・空即是色』

前夜は、「不易流行」について綴りました。
それは、時が流れても変わらない不易に心を置きながら、時の流れとともに変わる流行に目を置く。

それは、第88夜「世阿弥の知 離見の見」「目前心後(もくぜんしんご)」を想起させます。
「眼は前を見ていても、心は後ろにおいておけ」ということ。
その本質は、「我見(がけん)」と「離見(りけん)」にあります。

それと同時に、第6夜「空即是色」と「不易流行」は同じことを云っていることに気づきました。
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「色即是空」というのは、「現実=色」に問題・課題があるのなら、先ず心を無にして、「大元=空=大切なこと=真心」に戻りなさいと教えてくれているように思います。

そして、「空=大元=真心」に戻って従来のしがらみや常識から解き放たれて、その本質(=コンセプト=核心)を把えてから「現実=色」を観ると新しい世界(=現実=色=確信)が観えるということではないでしょうか。その確信を革新するのがイノベーションであり価値創造です。
・・・
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第190夜に、蕉風開眼の「古池や蛙飛こむ水の音」の世界を紹介しました。
それは、古池の句は現実の音(蛙飛びこむ水の音)をきっかけにして心の世界が(古池)が開けたという句である、と。
「現実(実)と心の世界(虚)という次元の異なる合わさった『現実+心』の句である」ということです。

それは、「現実(実=色)と心(虚=空)」の図式です。

俗っぽい俳諧から、「現実(色)から心(空)を想起し、その空から色を推敲した」様式を創ったのが芭蕉ではないでしょうか。

そこにある「心(空)」が「不易」に近づき、高まっていくと「高尚」になっていきますね。

・高く心を悟りて俗に帰るべし(=高悟帰俗)

「小林一茶」(丸山一彦著)は、これを「俳諧の本質は、現実から出発しながら、それを一旦突き放し、廻り道をしながら、再び現実に帰ってくるところにある」
と著しています。

これを、芭蕉は「軽み(かろみ・かるみ)」と云ったのではないでしょうか。
「高悟帰俗」としての芭蕉の表現を「軽み」とすると腑に落ちます。
それは、第4夜(用意と卒意)の「侘び、寂び」にもつながってきます。

同時に、それは、第183夜の「世阿弥の知 却来の思想」でもあります。
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・・・
「却来」の思想は、優れた風儀がつまらぬ「なりふり」を一挙に吸収していくことをいう。くだらなさ、つまらなさ、下品さを、対立もせず非難もせず、見捨てもせず、次々に抱握してしまうのである。
なるほど「能」とは、このようにして万象万障に「能(あた)う」ものだったのである。・・・
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「空即是色」(第6夜)、「世阿弥の知 却来の思想」(第183夜)と「芭蕉の知 かろみ」(本夜)とが一直線で繋がりました。

さてさて、それを現代に引き戻すと、「高尚なコンセプト」を「かろみ」にする方法として活用できます。
例えば、
・池上彰さんの分かりやすいニュース解説
・第28夜 旭山動物園「命の大切さ」→動物が生き生きしている展示
・会社の理念→ビジョン展開
・自分の生きがい、やりがい
等々です。

今は、この連載で何回か記しましたが、「社会に役立つこと」と「会社の理念・活動」が繋がることが不可欠な時代になっています。
是非、社会の在り様、会社の在り様を再検討してみてください。
それは、「人生」においても同様です。

そこに、「価値のイノベーション」「意味のイノベーション」(第130夜)という『お宝』があります。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
芭蕉かろみ

橋本元司の「価値創造の知・第176夜」:古典「ヘーゲルの知」

2018年11月2日 インテリジェンスとは?

仙台に、「知の旅」に出遊してきました。松岡正剛師匠が亭主の「知の倶楽部」(第26夜)です。
現在は不定期開催なのですが、今回は「佐藤優さん」というとびきりのゲスト。

「知の巨人」と「知の怪人」が語り合う2日間の秘密倶楽部は、間違いなく格別・別格の時空間でした。

メインテーマは、「インテリジェンス」

そのテーマを基盤として、松岡さんと佐藤さんが重なり合い、真と間を創発し、生成してゆきました。

多くの気付きと学びと更新がありました。
この倶楽部では、毎回「超一流」を体験して、それが自分の財産と精神になっています。
それらをより多くの方達に伝え、広めるのも自分の務めなのだと思います。

この「価値創造の知」連載もその一環です。

さて、「知の旅」の終盤で、自分の相談ゴトに松岡師匠からは、

「古典を読むことで観えることが多くある」

と、助言がありました。

今回の倶楽部では、佐藤さんから「知(インテリジェンス)の使い方」の徹底指南がありました。
佐藤さんの著書である「知の操縦法」を読むと、後半の多くが、古典ヘーゲルの知「精神現象学」に割かれていました。
そこには、古典と付き合う作法と心得が記されていました。

ヘーゲル思想の主線は、
①人間本質論つまり人間的欲望の本質論がおかれ、
②ここから、人間本質論がおかれ
③ここから人間関係の本質論が立てられ、
④さらにこれが歴史論に展開され、
⑤そして、近代社会の基本理念に達する
という仕方で進んでいます。

新価値創造研究所の価値創造三本柱の一本が「ヘーゲルの弁証法」を元に編集していますが、これまで本元の「ヘーゲル思想」に立ち入ることはしていませんでした。(他の二本は、「禅の思想」と「間の思想」です)

佐藤優さんは云います。
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「なぜ、ヘーゲルのように難しくて、資格や語学みたく人生に直接的に役立たない面倒くさい本を読み解いていかねばならないのかと思う人もいるかもしれません。
しかし、ヘーゲルのような古典こそ、現実の出来事を具体的にみていくうえで役に立つのです。
すでに述べましたが、実用的なノウハウは使える用途が限られているので、そのような断片的な知識をいくら身につけても、長期的には役立ちません。
根源的な知を身につけ思考の土台を作り、実際に役立つところまで落とし込んでいくことが求められています。・・・

ヘーゲルのような古典哲学を読み解いていくには、まず解説書を読み、全体像を掴んでからのほうが、頭に入りやすくなります。・・・
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実は、写真の「完全解説・ヘーゲル精神現象学」をなぜか10年前に池袋の本屋で購入していました。ところが、ぜんぜん頭に入らなかったのです。
今回の倶楽部で、インテリジェンスを多面的に学び、「知の操縦法」で古典哲学の読み解き方を知ることで、

完全解説・ヘーゲル「精神現象学」
第1章:意識
第2章:自己意識
第3章:理性
第4章:精神
第5章:宗教
第6章:絶対知

に分け入ることができるようになりました。

これも不思議で格別のご縁(第19夜)です。

このことで、自分の知が深まり、高まり、広がることで、更新した「知」を社会、世間に贈与、貢献したいと思います。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

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橋本元司の「価値創造の知・第161夜」:スティーブジョブズ編 ⑤ Meaning

2018年7月16日 新しい目的・頭の金型

A LOT OF TIMES, PEOPLE DON’T KNOW WHAT THEY WANT UNTIL YOU IT TO THEM.
(多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ)

上記は自分がミッションにしている『価値のイノベーション』のことを云っています。
そしてそれは、「新しい目的」「新しい意味」を紡ぎ出し、「価値の変換」を引き起こします。

技術が「どうやって?」を求めるのに対して、“新しい意味”は「なぜ?」を追求します。
その奥にある「意味のイノベーション」が求められる時代になっているということは第130夜に綴りました。
いまある「価値観」の延長線上に「改善」や「HOW(どうやって)」を考えるのではなくて、新しい目的・意味のために、「WHY(なぜ、何のために)」を先行する。
先に「WHY」があって、後にそれを実現するために「HOW」「改善」があるという順番です。

それは、今までにない“新たな意味(目的)”を提示することになるのですが、言葉だけではなかなか伝わらないのです。
「iPhone」が誕生する前に、その土台となる「iPod(アイポッド)」がありました。自分も初期モデルを購入しました。
当時日本では、「MDウォークマン」が売れていて、我が家も一人一台で4台保有していたのにです。
その時に、スティーブジョブズの頭の中には、「iPod」「iPhone」への展開を考えていたのですね。

さて、「iPod/iPhone/iPad」の「i」とは何でしょうか?
良く記されているのが、図の左側です。
1998年にスティーブ・ジョブズが最初のiのつく製品であるiMacを発表するときに説明しています。
「iMacはInternetの興奮とMacintoshのシンプルさの『結婚』から来ている」
そして、「i」に以下の5つの意味があります。

・INTERNET
・INDIVIDUAL
・INSTRUCT
・INFORM
・INSPIRE

個人的には、結果的に「インフォメーション(Information)から、インテリジェンス(Intelligence)への橋渡しの『i』」というように解釈すると腑に落ちます。
この『i』が、「深い知・高い知・広い知」(第89夜)の全てに絡んで、図にあるような「新しい価値・新しい市場・新しい文化」を創りました

自分ゴトでは、同様に「多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ」ということを実感・実践してきました。
新社長に直訴(第14夜)した時、異業種コラボ(第23夜)でヒット商品を連発した時、「新しい価値」は言葉ではなかなか伝わらなくて、実際に「形(料理)」にして「口の前まで運ぶ」ことが必要でした。
それは、人々の中にある確固とした『価値観』、つまり「頭の中にある金型」が影響しているように想います。
その価値観・金型を変える、変わるのを目撃するのが大数寄です。笑

さてさて、ジョブス氏は、自動車を普及させた立役者、ヘンリー・フォード氏の言葉を好んで用いていました。
「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは“もっと速い馬が欲しい”と答えていただろう」
交通手段が馬車だった時代、自動車を知らない人々は、馬車の改善を考えるので、「速い馬を求めるだけで、自動車をつくってくれ」とは云いません。

ここでは、手段の改善ではなくて、「速いとな何か」という目的を考えることがポイントです。
いまだったら、「車・飛行機」ではなく、「スカイプ」の方が速いのでそれで事が済むことが多くなりましたね。

『Fun to drive』『Fun to drive again』というトヨタのキャッチフレーズがありますが、AI自動運転の時代には、そのフレーズは使われているでしょうか?
そのような“視座”で物事を色々な場面で観ることが必要な時代です。それは、これから次々に「価値のイノベーション」が起こることが必然だからです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生へ」
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橋本元司の「価値創造の知・第154夜」:『真の企業再生・創生』とは? ⑧「面白い」こそ価値の軸

2018年6月9日 「早く気づくコト」

6月7日の文化経済研究会第1部は、面白法人カヤックの柳澤大輔・代表取締役CEOでした。
テーマは、「面白いこそ価値の軸、次代を創る空飛ぶ思考」

 その中で、二つの内容に焦点をあて、それを綴ります。

一つ目は、「早く気づくコト」
カヤック社は2012年に、それまで登り龍のように上手くいっていたゲーム事業が続けて6作が不振となりました。
社外取締役の指摘で、経営の立て直しに素早く着手して乗り切られたそうです。
そして、その一年半後に東証マザーズ上場がありました。

そう、経営の要諦は「早く気づくコト」にあります。
それは、
・事業の創生
・事業のコモディティー化
・事業の再生
経営の改善、革新等のあらゆることに通じます。

そして、「とにかく早く決断する」
それが、面白法人カヤック社長日記No.31に綴られています。
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意思決定の早さは、チームを勝利に導く上で、ものすごく重要です。
決断が遅いことによって致命的な危機が訪れることばかりでなく、早く決断することで致命的な危機が訪れることも、もちろんありますが、
どちらが多いかといえば、前者の方が多い気がしないでしょうか。僕はそう思っています。 ですので、まず心構えとして、とにかく早く決断することを意識しておかなければなりません。

問題を注視したくないから先送りにする。失敗したくないから、決断をしない。こういうことがないようにする。もちろん早く決断することが目的ではなく、決断によって成功をもたらすことが目的です。
だから、時にはじっくり時間をかけた方がいいこともある。けれども、自分の実力を磨いていけば、決断するスピードは必ず速くなりますし、過去に同じような問題が起きていたら、以前よりも決断は早くなるはずです。

そして世の中には、正解か、不正解か、いくら考えてもわからないことがある。であれば、最速で決断した方がいい。
決断には、失敗がつきものです。失敗をたくさん繰り返して、決断の精度をあげていく。経営者は日々そのサイクルを繰り返しているので、自ずと決断の達人になる。
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カヤック社も早く気づかなければ、そして決断して、素早く手を打たなければ経営危機になっていたかもしれないと柳澤氏は云われてました。
そこで、決断することで上場があり、その経験が一段と経営基盤を強くするのですね。

二つ目は、次代を創る空飛ぶ思考
カヤック社の経営理念は「つくる人を増やす」
“経営理念こそが、その法人の存在理由”と言い切られていました。

その為の手法として、本格的に「ブレーンストーミング」に取り組まれていました。
「ブレーンストーミング」とは、 ある問題やテーマに対し、参加者が自由に意見を述べることで、多彩なアイデアを得るための会議法です。皆さんも経験されていますね。

柳澤氏は、そのポイントを二つ述べられました。
① しっかりと仲間のアイデアに乗っかる
つまり、しっかりと仲間の云っていることを聴くということです。
効能として、そのことで、自分では考えも及ばないアイデアが出てくる。結果、チームワークが良くなる。
② とにかくたくさんの数を出す。
否定しないことが何よりも重要です。
効能として、そのことで、仲間(社員)の性格がポジティブになる

アイデアには2種類あって、
1.横軸:とにかくたくさん出す
2.縦軸:本質をつかむ

この「2.縦軸:本質をつかむ」ことができるヒトが少ないのです。
この二つを統合できるヒト、経営を意識的に開発、育成していることが、この会社の継続的な強みであり、経営理念「つくる人を増やす」につながっていますね。
応援したい経営者に出会いました。

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橋本元司の「価値創造の知・第116夜」『価値創造とイノベーションのあいだ』③インターネットの次にくるもの

2018年3月12日 ストーリテリング&知配

昨夜(第115夜)は、「インターネット」(世界)ではなく、「インターネット的」(世間)」(第80夜)を綴りました。
日本の経済成長が停滞しているのは、この不可逆な「インターネット」「インターネット的」に対応した産業に後れをとっているのが大きな原因の一つです。

そして、第109夜・第112夜で提示しました、3I(AI・IoT・Industry4.0)と3C( Computer・ Communication・Control)がシナジーを持って進展していくのは避けられません。
ここで重要に想うのは、二つあります。

一つ目は、①「インターネットの次にくるもの」を洞察するコト。
二つ目は、②「日本の方法」です。本来、日本が持っている方法(第47夜)を知り、上記の①「インターネットの次にくるもの」と②「日本の方法」を「かさね・あわせ・きそい・そろい」を想像・創造することで独自性を発揮するコト。
過去が豊かにあると、現在と将来が豊かになります。その①と②が不思議に相性がいいことがわかり、新結合(第17夜、第18夜)にして、有機的にストーリーにすることをお薦めしています。

それでは、①「インターネットの次にくるもの」の12章の一行要約(訳者あとがき:398p)から引用します。
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1.Becoming
ネット化したデジタル世界は、結果ではなくプロセスとして生成。
2.Cognifying
世界中が利用して人工知能を強化することで、それが電気のようなサービス価値を生じる。
3.Flowing
自由にコピーを繰り返し流れる。
4.Screening
本などに固定化されることなく、流動化(アップデート)して画面で読まれるようになる。
5.Accessing
すべての製品がサービス化して、リアルタイムにアクセスされる。
6.Shearing
シェアされることで、所有という概念が時代遅れになる。
7.Filtering
コンテンツが増えすぎて、フィルターしないと見つからなくなる。
8.Remixing
サービス化した従来の産業やコンテンツが、自由にリミックスして新しい形となる。
9.Interacting
VRのような機能によって、高いプレゼンスとインタラクションを実現して効果的に扱えるようになる。
10.Tracking
そうしたすべてを追跡する機能が、サービスを向上させるライフログ化を促す。
11.Questioning
問題を解決する以上に新たな良い疑問を生みだす。
12.Beggining
すべてが統合され、著者がホロスと呼ぶ次のデジタル環境へ進化する。
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ここでは、近未来の一日をストーリー仕立て(ストーリテリング)で編集されているのでわかりやすい本になっています。
(「ストーリーテリング」とは、伝えたい思いやコンセプトを、それを想起させる印象的な体験談やエピソードなどの“物語”を引用することによって、聞き手に強く印象付ける手法のこと)
世界各地で翻訳されていますので、貴社・貴地域の将来に関心のある方は是非ご覧ください。

 

さて、ポスト製造業の経営戦略「ミレニアル起業家の新モノづくり論」で著者の仲暁子さんは上記ストーリテリングについて次の様に記しています。
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ストーリーとは、要は「なりたい自分像」や「理想の世界の状態」のことを指す。それは例えば定量的な「体重がXkg」とかではなくて、数値では表せない定性的なもの。だから、ストーリーと言われる。
例えば、
・iPhoneを買う消費者は、別にiPhoneのスペックを購入しているわけではなく「iPhoneを持っている、イノベーティブでスマートなイケてる自分像を買っている。
・シェアハウスに住む若者は、単純にお金がないというだけでなく、(昨今の人気のシェアハウスは一人暮らしよりも高かったりする、「オープンに人と関わり合って進化していく自分像」を買っている。
・パタゴニアで人が働くのは、「品質の高いフリースをつくりたい」からではなく、「自然への敬意・情熱・愛を持っている人たちと一緒に世界環境をよくしていく自分像」を実現するために働いている。
安いとかバッテリーのもちがいいとか、給料が高い、だけじゃもう人は購入しないし、働かない。

ストーリテリング能力とは、こういった背景の物語を組み立てて言語化し、発信できる力のことを指す。

ストーリーはもの不足の時代からマーケティングでは必須だったが、ものが溢れる現代においては一層重要性が増している。
消費だけでなく労働者という観点においても、個々人の心情の変化やAI,ロボットの台頭という外的要因がストーリー重視の流れを加速している。・・・
--------------

多くの会社・地域に、ストーリテリングの力が不足しています。
その能力(背景の物語を組み立てて言語化し、発信できる力)を体得するが、「深い知(第85夜)と高い知(第87夜)」です。

本夜は昨夜(第115夜)を実践する時の補完として、重要な二つのこと(①インターネットの次、②ストーリテリング)を綴りました。
『気配』という言葉があります。
・「気配(けはい/きはい)」とははっきりとは見えないが周囲の様子から何となく漠然と感じられる様子

上記の対として『知配(ちはい)』という造語が浮かびました。
「様々な業種・業態や地域」、及び、上記「過去と未来の情報」等に触れるコト、考えるコトによって、想像・創造の『知配(ちはい)』が高まります。

さらに、「気配と知配」をたかめ、価値創造にフィードフォワードしたいと想います。

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橋本元司の「価値創造の知・第115夜」『価値創造とイノベーションのあいだ』③インターネット的

2018年3月11日 ③インターネット的(リンク、シェア、フラット)

アナログ的、デジタル的、総合的、実用的、恒常的、・・・
『・・的』とは、「そのような性質をもった意」「そのようなようすの、それらしい、などの意」を表しています。

 本夜は、糸井重里さんが著した「インターネット的」を参考にしながら、それを『価値創造とイノベーションのあいだ』に組み込んだ世界を皆さんに想像・創造していただきます。
できれば、第112夜(3C)と第114夜を下地にしていますので、事前に読んでおいていただければ幸甚です。

さて、「インターネット」と「インターネット的」はどう違うのでしょうか?
糸井さんは下の様に解説(引用&編集)しています。
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・「インターネット」は、「伝える仕組み」です。いわば、人間の生み出す情報という「料理」をすばやくどこにでも届ける「お皿」です。ほんとうは、一番面白いのは、お皿に何をのせるかということのはずです。
・「インターネット的」とは、インターネット自体がもたらす社会の関係の変化、人間関係の変化みたいなものの全体を思い浮かべてほしい。

もっとイメージしやすいたとえでいうなら、「インターネット」と「インターネット的」の違いは、自動車とモータリゼーション(自動車が発明され、社会に広く浸透していくようになってから変化していったすべてを含む)の違いに似ているでしょう。
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どうでしょうか、イメージできましたか?
「インターネット」が社会に、生活に進展・浸透する中で、私たちのビジネス環境やライフスタイルは大きく変わっています。『スマホ』ひとつをとってもその双方に影響を及ぼしていますね。

糸井さんは、「インターネット的」といった時に、3つの軸(①リンク、シェア、フラット)を提示しています。

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①リンク:従来の「ジョイント」的つながりは、いわば、「問いと答えのセット」のようなつながりですね。
しかし、「リンク」というつながり方は、「問い」のほうにも、「答え」のほうにも、たくさんの付属する情報があるのですが、それが有機的につながりあうというのが魅力的であり、「インターネット的」。
周辺情報だとか、リンクの先のリンクにまで延々と深くつながってゆくのです。これこそが、「インターネット的」の一番の鍵になるのです。

②シェア:個人でつくったもの、個人の力をみんなで分けと。あって楽しむというシェア(おすそわけ)は、クラブ活動などで体験しています。分け合うというのは、なぜかは知らねど、楽しい、と。
その「シェア」というよろこびの感覚が、「インターネット的」。情報はたくさん出した人のところに集まります。
おすそわけをたくさんしている人や企業には、「これも、あなたが配ってください」という新しい情報が集まる交差点のようになってゆきます。

③フラット:従来は、「みんなのプライオリティが一定している」ことが、社会が安定していることと考えられていました。
フラットというのは、それぞれが無名性で情報をやりとりするということと考えられます。そこでは、情報のやりとり自体やそこで交わされる意味や思いだけが存在しています。
価値の三角形は、バタンと倒れて、平ら(フラット)になり、そこではそれぞれの人が自分の優先順位を大事にしながら役割をこなしている。
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「インターネット」自体がもたらす「インターネット的」の鍵が揃いました。
第109夜、第112夜で提示しましたが、それは、3C『①C: Computer=脳(AI)②C: Communication=神経系(IoT)③C:Control=手足等(Industry)』の「②C: Communication=神経系」が発達したのです。
そして、「①C: Computer=脳(AI)」と③C:Control=手足等(Industry)」に変化をもたらして、「三位一体の世界の扉」を開けました。

その鍵の中心が、「リンク」と「シェア」であり、結果として、フラットな世界が生まれつつあります。
(因みに、「インターネット」が世界で、「インターネット的」が世間(第80夜)です)

さて、私たちの身の回りには、
・スマホ、Facebook、LINE、Instagram、・・
・住居やクルマのシェアリング、・・
・異業種コラボレーション、企業間連携、産官学連携、官民協働、・・
・COOKPAD、アマゾン、グーグル、メルカリ、・・
・・・

次々に、社会の関係の変化、人間関係の変化があり、従来のピラミッド型価値観が大きく崩れました。
社会関係、人間関係が変われば、貴社も貴地域も逸早く変える、再定義する必要があります。

さてさて、皆さんの会社や地域に、上記の3つの軸(リンク、シェア、フラット)は組み込まれていますか?
日本経済が長く停滞している原因の一つが、広義の意味のインターネット系の産業の遅れにあります。もう、インターネット的な社会・産業になっているのです。
早速、「インターネット的」を組込んでみましょう。
それを組込んだ時に、どのような変化が訪れるのかを想像してみてください。今までの制限を外すと、いきなり「余白」が生まれてきますね。
従来の枠を外し、隆々とした将来を想像・創造するのがコツです。

そして今は、「インターネット的」に加えて、「AI的」を組込む時代が迫っています。(もう、トラックでは一周遅れではないですか?)
別に、「インターネット」「AI」の中身・仕組みまで知る必要は全くありません。
上記の「お皿(インフラ)」側でなければ、「料理」関係を把えれば良いのです。しかし、第112夜で提示しました様に、舞台(Prepare⇒Performance⇒Promote)をプロデュースすることはお薦めします。

最後に、「インターネット的」とは『リンク・フラット・シェア』する生き方であり、考え方です。そのような環境を生きています。
それを貴社・貴地域に組み込んだ途端に「イノベーション」が始動しはじめます。

その時にすぐに下記が判ります。

「このままでは進めない。足りないものがある」と。

その時に必要なのが、貴社・貴地域の新機軸です。
それを明確にするのが、「広い知(ミッション)・高い知(ビジョン)・広い知(イノベーション)」(第82夜、第89夜)であり、それによる『確信と革新』となります。
そして、それを実現するのは「人財」です。

隆々とした将来のために、「3C」「3I」(第109夜)の時代に先手を打ちましょう。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

インターネット的

価値創造の知・第84夜 『違い』をつくる実践演習①

2017年11月17日 「物語・新しい命」を紡ぎ出す方法

前夜(第82夜)は、「広い知」により、『違い』をつくる「抽象化能力」の一つをご紹介しました。
本夜は、その組み合わせから昇華する「物語(新しい命)」を紡ぎ出す実践演習をお伝えします。

 これまでの過去の成功例やビデオをご覧いただいても、『違い』創出ワークショップで実際に自社や自地域の「新しい物語」を紡ぎ出そうと思っても手がとまり、頭が回らないのが通常です。
それは、それまでが「スタンドアローン(他に依存せず単独で運営する環境)」で、何とか自前の制約の中で答えを出そうとする習慣・慣習があり、逸脱とオープンな環境からの発想・構想を実践していないためです。

さて、私たちの生活環境を変えた「インターネット」の特徴を「インターネット的:糸井重里著」では下記3つを上げています。
①リンク
②シェア
③フラット
好むと好まざるとに関わらず、これらがライフスタイルや企業経営・地域経営の中に沁み込んできます。
第4次産業革命、AIoTがそれを加速させます。それは、従来の「スタンドアローン」の環境とは真逆です。

そこで、これからの時代の波に巻き込まれず、波に乗りこなすための能力が「広い知=抽象化能力①」です。
難しいことではありません。好きな人が出来た時に「何としてでもこの人とお付き合いたい、結婚したい」と想い、本気で行動するプロセスと同じです。
そのために考えることは、
①二人の共通項(嗜好、趣味、人生設計等々)は何か?
②二人でできる幸せの物語・世界観をどう語るか?
です。
これが、「大三角形・感動物語」の下方の「共通項」であり、上方の抽象化・昇華の「命・物語」です。
二人の間に赤ちゃんができれば、それは新しい命の誕生となります。

必要なのは、対象がワクワクすること(=恋心)であり、その対象との結合に「本気・情熱」があることです。(第51夜、第61夜)
さて最初は、統合・結合するための簡単だけれど重要な「3パターンの基礎演習」を挑戦していただいてから、添付図の応用に辿り着き、ここで頭が痺れるような「2~3時間ノック」をチームで創りあげます。
それは、事務局が事前に二つの山となるカード(トレンドワードとライフスタイルワード)を用意します。貴社・貴地域の「解決すべき課題」と上記の引いたカード(ワード)を組合わせて、10分間で物語を紡ぎ出し、発表し、何回か休憩を挟みながら2~3時間行います。

そうすると検討時間、まとめる時間もぜんぜん不足しているので、「エイヤー」と想いも寄らない発想・物語・構想の卵が出てきます。いつもの自分達の「常識・枠」からの逸脱が始まります。
このノックを「対象」毎に行うことで、「抽象化能力」が大幅に鍛えられます。
スポーツをする時に、ビデオを見ただけでは上達しませんね。それと同じように「知」も訓練しないとそのための筋肉がつきません。
ただ、自分一人で闇雲にやっても上手くいきません。やはり、その道のプロにナビゲートして貰うのが一番です。関係者がその「知の汗」を一緒に流すことで、信頼感とレベルの高い「知」が生まれてます。

ただ、前夜(第82夜)にも記しましたが、これは「対象」をもっと深く(深い知)、高く(高い知)を捉えてから行うのが有効です。
多くのコンサルティングは、これ(再定義)をやらないで行うので、ワクワクするものを創れません。つまり、『違い』のレベルが低いものになります。
「対象」をワクワクするためには、「対象を深く&高く再定義すること」がポイントになります。

それでは、次夜(第85夜)は、「深い知の『抽象化能力』」を綴ります。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

大三角形演習00

価値創造の知・第25夜 15年で3000冊を読む

2017年2月7日 「本」を読むとは?

萬巻の書を読むに非ざるよりは、寧んぞ千秋の人と為るを得ん。
昨日は東京世田谷の「松陰神社」を訪ねましたが、それは松下村塾聯(松下村塾の床の間に掲げられていた言葉)です。
直訳は「沢山の書物を読破するのでなければ、どうして長い年月にわたって名を残す、不朽の人となることができるだろうか。できはしない」

今夜は「本を読むこと」をテーマにしたいと思います。

35歳の時に、埼玉・川越工場から目黒本社に異動になりました。第14夜「社長直訴そしてヒット商品緊急プロジェクトへ」にもそれを記しましたが、エンジニア(技術)からプランナー(企画)への転身でした。
埼玉の自宅(鶴ヶ島方面)から、目黒本社までの片道通勤(痛勤)時間は、1時間45分なので往復3時間30分にもなったので、一念発起して一日一冊、本に集中して読破することを自分に課しました。
それで毎週金曜日の夜に乗換駅の池袋で下車して、ジュンク堂書店と東京旭屋書店のどちらかに行き、次週の5冊を購入することが週課となりました。

最初の頃は、通勤時間では足りなくて休日も使っていましたが、だんだんといいリズムができてきました。それは、幅広くプランナーの心得と方法を学ぶこともありましたが、
何よりも「他人の時間」ではなく、「自分の時間」を使っていることにあります。帰りの電車では熱中してしまい、降車駅をすごすことも多くありました。
さて、半年の100冊を過ぎると関心領域も広がってきて、本屋さんに行くと、あちらこちらから「本」が自分を呼ぶのです。これは今でも同じです。

いつの間にか、「知性・心性・脳性」が鍛えられたようです。
それが、異動から4年目の社長直訴(第14夜)に繋がっていきました。当時400冊の本達も自分の背中を押してくれました。
100社との異業種コラボレーションではそのための事前知識を身につけ、問題・課題が出る度に、それに適応した本を複数購入しました。
・「不確かな時代を読み解く方法」(第15夜)では、弁証法やシナリオプランニング関係。
・「100社の企業訪問フォーラム」(第23夜)では、訪問先関係。
・「文化経済研究会」(第24夜)では、150人のバリューイノベーター関係。

そのようにして、15年間で3000冊と積み重なりました。
「木」に例えれば、この本達が自分の「根っこ」になりました。
あちらこちらに根を伸ばし、また絡み合うものもあり、深く根を下ろすものもあり様々です。
これらが、自分の幹を支え、葉を生い茂らせてくれています。

そこから、自分(新価値創造研究所)の特徴である「トリニティ(三位一体)イノベーション」が形成されていきました。
①人を深く読む
②未来を高く読む
③全体を広く読む
まだまだ発育・発展途上にあります。

さて、目黒本社に異動になってから日課で800冊となった8年目に松岡正剛師匠との出会いがありました。それは代官山近くの事務所でした。
そこに一歩踏み入れた時に、その本の異常な多さと荘厳な佇まいに圧倒されました。逸脱した別世界が拡がっていました。

格別で別格なのです。

その後、赤坂事務所、豪徳寺事務所への移転がありましたが、日を増してその「輝き」「憧れ」は強くなっています。
嬉しいことに、豪徳寺の本楼で、「Editiz」のキックオフセミナー(写真)をやらせて貰いました。

次回は、松岡正剛師匠主催の「未詳俱楽部」に触れようと思っています。

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価値創造の知・第24夜 文化が発生して、その後に経済が起こる

2017年2月5日 バリューイノベーター150名を体験

価値創造・第24夜 文化が発生して、その後に経済が起こる

『おもてなし』とは、文明でしょうか、文化でしょうか?
それでは、『スマホ』は、文明でしょうか、文化でしょうか?

 いったい、『文化』とは何なのでしょうか?

私はそれを「特徴的な生活様式(ライフスタイル)を形成するソフトウェア・ハートウェア」と解釈しています。
よく比較される『文明』は、「科学技術に裏付けされた普遍的な価値を持つハードウェア」に置いています。

さて、21世紀の「心の豊かさ追求」の時代を牽引するのは「文化」です。
第20夜「新しい物差し」でも触れましたが、私は谷口正和師匠の主催する「文化経済研究会」の会員です。
そこでの重要な認識は、「文化が発生して、その後に経済が起こる」にあります。

前職では、「技術企画→開発企画→事業企画」と取組む対象が広がっていきましたが、どのステージでも大切にしていたのは、上記の「文化経済の認識」です。
「小手先の儲かることよりも、文化を発生させて新しい市場を創り経済を起こすコト」を重要視してきました。

その為に、自分の思考や行動が「新文化づくりのヒット商品(新ライフスタイル創造)」や「新市場/新事業開発」のほうに向かいました。
さて、当該事業の行き詰まりを突破するために、「新市場づくり、新文化づくり」を突き詰めて検討していくと、そこで観えてくる将来の風景・構想から、現在の「会社の本来」の見直しが必要とわかってきます。
この見直しの可否、及び出来不出来が次の成長に多大な影響を与えます。

スティーブジョブズが「iPod」を構想・創造したときに、そこでは、「ハードウェア・ソフトウェア(iTunes)・ビジネスウェア」の三位一体が浮かび上がりました。
そのことで、従来の音楽事業の『本来』というものが変わり、日本の音楽業界・オーディオ業界は顧客のライフスタイルが変わり大打撃を受けました。

旭山動物園の場合は、動物園の本来を「珍獣・奇獣で人を集めるコト」から「普通の動物の命を大切さを伝えるコト」に再定義したことで、新しい将来の風景が観えて、顧客が喜ぶ動物園スタイルに大きく変えていきました。

新しい音楽文化、新しい動物園文化の誕生です。

そうなんです。この「本来」を再定義できることが、将来構想、新市場/新事業創造にはとても重要になります。
「お客様が幸せになるライフスタイルを創造する」と、新しい文化が起きて経済が回り始めます。

現在、様々な業種業態をご支援していますが、行き詰まりから「改革」をご依頼される会社の場合には、それがB2Bであれ、B2Cであれ、
「お客様から喜ばれる新しい市場を創り文化を起こす」
ことを本気で目標にされるかどうかを時間をかけて話し合います。

それは、企業の大小とは全く関係ありません。
中小企業の場合は、お客様と響き合い、「この指止まれ」で同じ世界観を共感・共有し共に行動するコラボレーションパートナーを創ることができるかがキーになることが多いですね。

さて、谷口正和師匠が主宰の文化経済研究会は、2002年から2017年1月の間に、計75回開催されました。
http://www.jlds.co.jp/labo/
毎回、2名のバリューイノベーターが講師で来られるので、私はもう150名の方達のセミナーを体験したことになります。
これらの体験群も編集しながら、各企業に最適にカスタマイズして、研修・セミナーやご支援でお伝えしています。

是非、多くの方達に「文化経済研究会」の価値創造実例を体験していただきたいと思います。

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イベント

2016年4月6日
高機能素材ワールド・基調講演@東京ビッグサイト

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経済産業省・福島審議官の「日本が強みとする高機能素材をとりまく現状と将来展望」の講演等を聴いてきました。特に、「IoT社会における製造業の方向性」の中で、①日本を世界最先端のロボット・ショーケース化、②世界のIoTの潮流を睨んだロボットの国際戦略/体制整備、の「整理・方向性」が興味深かった。