価値創造の知・第23夜 100社の企業訪問と異業種コラボレーション

2017年1月31日 企業訪問フォーラム

35歳の時にパイオニア本社に異動となりました。それまでのエンジニアからプランナー、プロデューサーへの転身です。
暫くして、パイオニアOB(永田仁先生)の方から、「他社の優れたところを現場で学べる『企業訪問フォーラム』に参加しませんか」というお誘いがありました。

添付写真は2006年度版ですが、マーケティングで素晴らしい成果を上げている様々な企業に行き、
①現場で学ぶ、②実例に学ぶ、③相互に学ぶ、というように、直接企業風土に触れながら、事例研究をして、意見交換もできる研究会でした。
それは、1993年~2010年まで18年間続き、その殆どの100社をその先輩を通して訪問させて貰いました。

これはその後の自分にとって幸運であり、大きな財産になりました。
なぜならそれまで、このようにたくさんの秀でた企業を訪問できる機会はなかったし、現在ではもうないからです。
各々の企業のミッション、優れた仕事の流儀、風土、そして活き活きと働いている社員の方達との交流があり、その極意を吸収してきました。

違う業界のビジネスモデル、プラットフォームを参考にして、エレクトロニクス業界や自社にそれを組込むことによって今までにない価値創造できることを実感しました。
そのような体験が自分の中の自信になり、第14夜、第17夜、第18夜に記す、異業種コラボレーションによる連続ヒット商品の連発につながりました。
そこでは、チームで100社を超す企業と打合せを行いました。

さて、これまでの日本の企業や行政は、「縦割りの社会」です。
それは軍隊の様に上司が管理しやすいからです。企業の中の組織もサイロの様に壁で仕切られ、他の部署の人と話をすると実際に叱られる会社もあります。

しかし、第2夜「おもてなし」、第7夜「イメージメント」、第20夜「囲まれる時代」という21世紀型の時代となるとそれまでのやり方・考え方ではキャッチアップできません。
その為に、多くの企業が行き詰まりを見せているのです。業界をまたがる新しいライフスタイルを創ることで、新しい市場・文化が生まれます。
今、異業種コラボレーションが盛んなのはその為です。そして、その時に必要なのは、横串で捉える視点・視座であり、プロデューサー人財です。その方法は、第17夜の「間と創造」です。

セミナーやプロジェクトで、横串の演習を行いますが、企業戦士には絶対的に情報や体験が不足しています。
企業の中では、その企業や業界にだけ通じる「井の中の蛙」状態になっている方達が多いのが問題です。

企業はもっと若い人達を外に放って、広い視野と本質を捉える深い洞察を体験する場を用意してあげなければなりません。
(それは本当は若い人だけではないのです・・・)
そのような人を創らない会社に未来はあるのでしょうか?
どうしたら、そのようなプロデューサー型人財ができると思いますか?
日本の企業や学校は、そのような人財を輩出するような仕組み、環境があるのでしょうか?

そのような人財が日本に溢れるようにようになると輝かしい未来を創れるようになりますね。

さて、糸井重里さんが「インターネット的」という著書の中で、その特徴を
①リンク、②シェア、③フラット と記していますが、そう、上記の横串は同じことを言っています。インターネットと共存して時代は進展しています。

隆々とした日本を創るために、「企業訪問フォーラム」を復活させたいですね。これまでの経験を活かして、そのコーディネーターもやってみたい。笑

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価値創造の知・第22夜 「余白」が大数寄

2017年1月28日  高校時代が原点

「そのような発想や構想はどこから生まれてくるのですか?」
と昨日の仕事のインタビューで聴かれました。
その場では、「機械工学の出身で設計や技術企画、新事業開発をしていたので、パーツを組み合わせ、新しい全体を構想するのが得意なのかも」と答えたのですが、自宅に帰ってから、もっとその奥にあるものを考えていました。

ちょうどその時、高校時代の友人のFacebook記事が飛び込んできました。そこには、「高校の同級会と新年会」の写真が載り、「自分達の代で修学旅行が中止になった」ことが記されていました。世の中には迷惑をかけてはいないのですが、大人になると許されるコト体験が高校三年男子校のクラス単位の修学旅行で慣習になっていました。
そう、自分もその悪さをしたチームの一人でしたが、際(キワ)をはみ出すことのドキドキ感やワクワク感を早くから体験しました。ただ、そのせいで次年度から修学旅行が中止になったので、後輩には申し訳なく思っています。

この高校はW大学高等学院です。この高校が自分を育んでくれた環境は、自分の人生に大きな影響を与えてくれました。因みに、この高校は卒業できれば、全員W大学に入ることができます。(但し、成績順で入れる学部は制限されますが)
一つ目の影響は、「余白」です。
例えば、西洋史の先生は、自分が探究している中世の100年だけの授業を一年かけて熱く語っていました。
そこでは、暗記することが授業の目的ではなく、「学問とは何か?学問にどのように対するのか?」という姿勢や取組み方を教えて貰いました。そんな先生が多かったのです。

第2外国語(ドイツ語、フランス語、ロシア語選択)にも多くの時間を割き、早慶戦(大学野球)がずれ込めば休校になり、神宮に、新宿に、皆で繰り出して騒いでいました。高校の時から、大学を味わっていたのです。
クラブ活動では、中学からやっていたバドミントン部に入り、部活漬けの日々を送りました。

そう、ここでは自己責任なのです。通常の「全国大学入試」という枠から縛られることがなく、多くの教科を過剰に覚えることなく、「余白」があることで、学ぶことの本質を高校時代に気づくことができました。そして、自分の「数寄」や「楽しみ」を過剰にトライできる環境がありました。
例えれば、西洋絵画は隅々までフルに描いていますが、NHK美術画アンケート人気No.1の「松林図屏風」(長谷川等伯)は「余白」をとり、禅の境地とも、侘びの境地とも受け取れる閑静で奥深い表現をしています。フルに描かれると、こちらが入り込む余地はないのですが、「余白」があることで世界の幅と奥行きが拡がります。

どちらがいい、悪いというのではなくて、後述しますが、「余白」や「違う本流=オルタナティブ」を創れる人財を多く輩出することがこの時代に必要であり急務だと想っています。
何故ならば、価値創造・第7夜の「イノベーション&イメージメント」の時代だと確信しているからです。「分かっている答えに早く到達する」から「分からない答えを異なる視点・視座で創り出す」時代です。
そんな「余白」を早くから意識させられたのもこの高校の方針、環境だと思います。

二つ目の影響は、上でも触れましたが「常識」からの離脱・逸脱です。
目的・目標に向かう時に、この高校の先生方から、色々なポリシーやスタイルに触れることで、未来には「違う本流=オルタナティブ」があるということに早くから気づかされたことでした。
前職の会社に入ってからも、
・設計、研究開発、事業企画の各職務において視点、違う方法はないのだろうか?
・(価値創造・第13夜):このままの事業のやり方・考え方では危機を迎えるのではないか?

そして、現在は 製造業/サービス業、老舗企業/ベンチャー企業をご支援していますが、
皆さんに共通するのは「『現状を突破する構想力』が不足している」ことにあります。時代の先が読みづらい転換期に必要な力は、「構想力・行動力・更新力」の三つです。特に、行動を起こしてやり抜くためには、土台となる初めの構想力がとっても重要になります。

「構想力」とは、新しい時代に向けて大局を読み、想いを組み立て、立体化する力です。そして、その構想力の中心には、事業の目的である「顧客価値を生み出す力」が求められます。この「顧客価値」は、お客様を喜ばそうとするサービス精神から生まれます。
この「構想力」と「顧客価値創造力」は、常識を外すこと、逸脱することが重要なスキルとなります。

より多くの方達に、このスキルを活用していただきたいと思います。

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新たな事業で、成長を目指す経営者・役員の皆さまへ

2017年01月24日 Wizbiz主催セミナー

現状を打破する、新たな事業の「柱」のつくり方! NEW!
~異業種コラボでヒット商品を生み続けた講師が語ります~

「新しい事業の柱を築き、企業成長を果たす」
このように考えて、新規事業や新商品の開発に取り組む経営者は数多くいらっしゃいます。
しかし、
・画期的なアイデアが生まれない
・アイデアがあっても、具体的な事業立案が進まない
・具体的に事業を進める人材が不足している
・無事リリースできても、思ったように売れない
といった「壁」が立ちはだかり、多くの取り組みがとん挫してしまうのが現実です。

そこで、「壁」を乗り越え、新事業、ヒット商品、多角化経営を生み出す方法をお教えするセ
ミナーを開催します。

講師にお迎えする橋本元司氏は、パイオニア社に所属していた時期に、社長直轄の「ヒット商
品緊急開発プロジェクト」のリーダーとして活躍し、自社単独ではなく、異業種企業とのコラ
ボレーションによっていくつものヒット商品をリリースし続けてきました。
その経験を通じて得た、新事業・新商品の戦略立案、多角化経営、および人財開発の具体的な
ノウハウをもとにお話しいただきます。

■講師:橋本氏のご支援実績
・再生可能エネルギー&不動産業・・・1 年で売上 2.2 倍アップ!
・製造業(B2C)・・・事業の Before-After を統合。1 年間で売上 1.5 倍アップ!
・製造業(B2B)・・・自社製品開発を支援。1 年間で売上 1.3 倍アップ!
・出版/ソフト開発・・・問い合わせ件数が 4 倍に!

■セミナーでお伝えする内容
・常識を打ち破る価値創造の方法
・会社の強みと社会課題から商品イノベーション&事業開拓
・プラットフォーム戦略(顧客との価値共創)
・事業開発と人財開発を同時に達成する
・事業再生、新事業開発、多角化経営の実例

境い目

価値創造の知・第21夜 トリニティ・イノベーション

2017年1月21日 価値創造・第21夜 気立て・見立て・仕立て

この三つの「~立て」は何だと思いますか?
おそらく、この中の「仕立て」という言葉から浮かんでくるのは、衣類のできばえや料理の和風仕立てではないでしょうか。それらは、『目的』に合わせて創り上げることをいいます。

実は、「気立て・見立て・仕立て」の三つは新価値創造研究所が企業をご支援する時の重要な心得・指標を表しています。
その現場に行くと、これまで何回か現状突破に挑戦した後の行き詰まり感があり、淀んだ空気が流れて「横」に停滞していることが多いのです。原因は「構想」が立っていないこと、「行動力」に繋がらないことにあります。常識を疑い時代を突破するするためには、横のものを縦にしていく『構想力』(想いを組み立てる力)を体得していただいています。

ゴール(目標)は、クライアントの『目的』を再定義して、その『新しい目的』に向かって行動・更新し、やり抜き、創り上げ、成長・成功に導くことにあります。
なので、『発動』(行動・更新)するための「仕立て」が後方(三番目)にいます。

その前段階(二番目)には、現在の非常に不確実で不透明な時代を生き抜くための『仮説力』の体得が必要です。「見立て」とは、見て選び定めることです。選定です。
それでは、何を見れば(観れば)いいのでしょうか?成長&イノベーションにつながるのでしょうか?
多くの失敗や成功の体験から辿り着いたシンプルな方法が、写真にある「トリニティ・イノベーション」(商標登録済)になります。

すでに従来のやり方や考え方では発展が見込めない、右肩下がりになることを経営者や全メンバーは認識されています。ではどうやれば、そのやり方や考え方を破れるのでしょうか?
それは、
①深く人を読み
②高く未来を読み
③広く全体を読む
という三つのモノゴトの本質を突き詰めることです。
すると、仮説が浮かび上がり、選定ができて『構想』が立ってきます。
これが「見立て」です。
そしてそれは、今まで知られていない物事を初めて見いだすこと。つまり『発見』の体得です。

さて、その「見立て」・「発見」につなげるには、その前段(一番目)で社会(人)に役立ちたいという心の在り方・持ち方がとっても重要です。そこに集まるメンバー全員の心が奮い立っていてやる気があること、当事者意識があることが必要条件です。
このステージは横になっていた『気』を立てることであり、自ら心を奮いたてて大いに努力しようとする『発奮』に向かいます。
これが『気立て』であり、『発奮』です。

つまり、価値創造(=バリュー・イノベーション)には、
・気立て ➡ 見立て ➡ 仕立て

のように、現状突破するために「立て」るためには、
・発奮  ➡ 発見  ➡ 発動
という燃える状態、燃える集団の「発~」が求められます。

ここに、時代の変化に対応した「新しい物差し」「プラットフォーム」(第20夜)を私達が用意することで、
卒意(第4夜)につながり、市場創造と文化創造の道筋が観えてきて、成長と成功に向かいます。

ご支援した中でもスピードがあり、成長が速い企業は、企業の大きさ(大中小)には関係なく、経営者自らが価値創造メンバーの一員に入っているという気づきがありました。
(因みに、メンバーの方達はこのプロジェクトを『バリュー』という愛称で呼んでくれています)
何よりも、経営者自らの「気立て・見立て・仕立て」&「発奮・発見・発動」が成長の近道であり本筋です。

 

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女性醸造家 渾身のワイン!

2017年1月19日 文化時代のワイン造り

山梨県北斗市の中央葡萄酒が経営する「ミサワ ワイナリー」で働く 5代目三澤彩奈さんのお話を伺ってきました。20代でフランス・ブルゴーニュ、ニュージーランド、オーストラリア、チリでワイン醸造を学び、2014年デカンタ、ワールド、ワインコンクール金賞に輝きました。日本ワインでは絶対に獲れないといわれていた金賞です。
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「世界で一つしかない味わいを造る」ために、下記二つを上げていました。
①二段階の徹底した選果
②小仕込みによる丁寧で細やかな仕事
このことによって、唯一無比の味わい(違いの創造)を生み出しました。

女性の醸造家がいない中での海外での修業は大変な苦労があったようです。華奢な感じの彩奈さんが重労働に耐えられたのは、ワインへの愛情と情熱があったからでしょう。
今ヨーロッパで人気のロゼが紹介されましたが、『GRACE ロゼ』 を早速注文してしまいました。
http://iewine.jp/article/1123

価値創造の知・第20夜 囲まれる時代

2017年1月16日 価値創造・第20夜 新しい物差し

時代の波に飲み込まれず、時代の波に乗るためには、時代を観る新しい物差しが必要です。
写真の本「新しい物差し」は前夜(第19夜)に引き続き、谷口正和師匠が1997年に著したものです。
20年前の本なのですが、いま読んでも十分刺激的です。

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序文を引用します。

“これからの企業、これからの社会”
新しい物差しはお持ちだろうか。20世紀の使い古された、もはや次なる時代の価値観を計ることができない、古い物差しにこだわっていないだろうか。
パラダイム(=ある時代のものの見方・考え方を支配する認識の枠組み)が変われば価値観が変わる。計る物差しも変わるのだ。さあ、新しい物差しで新しい時代を計ろう。
企業を、人を、ニュールールで、ニュールーラーで計ってみよう。思いもかけない価値観が見えてくるに違いない。予想もしなかった市場が浮かんでくるに違いない。
そこに次なるサクセスを約束する価値観の度盛がある。
(中略)分割された業種業態の垣根を超えて、「新しい物差し」を共有し大いなる21世紀を我々のものにしていきたい。いま、生まれ変わるチャンスである。
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上記を洗練・更新してセミナーに展開されているのが、谷口師匠主催の「文化経済研究会」と思っています。
その44回目(2009年11月)のゲスト講師が、クックパッドの副社長でした。
テーマは、「家庭に”楽しみ”を創る料理サイトの戦略」でしたが、その内容(想いやビジネスモデル)には衝撃を受けました。
セミナーでは出てこない言葉だったのですが、

「囲い込む時代」から「囲まれる時代」

という「新しい物差し」が自分の中にパッ!と浮かび上がりました。
「おもてなし」(第2夜)と「クックパッド社」のモデルがつながり、そこに前職「パイオニア社」との異業種コラボレーションの風景が浮かびました。
セミナー直後に名刺交換をして、「是非貴社にご相談があります」と面会の約束をしました。

この「囲まれる時代」については、第2夜、第12夜に触れていますが再度引用します。
今回のコメント(ビジネスの高度化)に変遷を載せますが、私達のビジネスは、
モノ → コト → ヒト
に進化しています。
それを「おもてなし」に当てはめると、
①しつらい=ハードウェア
②ふるまい=ソフトウェア(メニュー・プログラム等)
③心づかい=ハートウェア(ヒューマンウェア)
を三位一体でプロデュースする時代になっています。

20世紀の「①ハードウェア+②ソフトウェア」は、
「顧客を囲い込む」
ことを主眼としていましたが、ここに留まる多くの企業が行き詰っています。

今、伸張している21世紀企業は、①+②+③をプラットフォームにして
「顧客に囲まれる」
という姿になっています。それは顧客が準社員のようであり、顧客同士が受発信する創発世界です。
そのような「新しい物差し」で見てみると、

「レゴ」「クラブツーリズム」「無印良品」「ハーレーダビッドソンジャパン」「スノーピーク」・・・・
という企業が、熱狂的なファンに支持されて輝いている理由がわかります。

その中でも、自分にとってのNo.1は「クックパッド」です。
インターネット時代に、「自分の情報を表現し参加できて、情報をシェアして、それを高度情報にしてB2B展開するプラットフォーム」です。
当時から理念は「毎日の料理を楽しみにする」で、「買い物の楽しみにも広げていきたい」と話されていました。
現在は「食を中心とするインフラ」への進化されています。

さて、その「クックパッド社」は現在恵比寿にあるのですが、当時はパイオニアの目黒本社近くの白金台にありました。
クックパッドが大好きで有料会員でもある妻と二人で、まだ同社がビッグになる前の副社長を訪問しました。

そこで、「クックパッド社」と「パイオニア社」の異業種コラボレーションの相談をしました。
A.ホップ、B.ステップ、C.ジャンプ
の3案を持っていったのですが、A.Bまでを説明しました。

顧客が、クックパッドを通して作った海外料理や日本料理を、それに合った「音楽」や「サウンド」がネットから流れてきて食事ができたら楽しいですね。
(第4夜に、ネットではないリアルなオーディオのヒット商品をリリースしていました)
その「音楽群」も「つくレポ」のように、レポートされシェアされることで、新しい文化ができてきます。
今まで聴いたことがないような音楽と触れ合い、五感が共感覚した世界です。副社長とも話しが盛り上がりましたがこちらの事情で残念ながら進めることができませんでした。
ここまでがA.ホップなのですが、B.C.はまたのお楽しみで。
ここに記した新文化の型を使えば、ホームでもカーでもスマホでも創れます。新文化が経済を引き連れてくるのです。それが価値創造でありイノベーションです。

多様な企業をご支援していますが、この「囲まれる」プラットフォームを創れるかどうかがポイントになることがよくあります。
それはその企業がお客様から選ばれる理由(プロポジション)であり、コンソシアムを創れるオリジナルの舞台でもあるからです。
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価値創造の知・第19夜 めったにないことが起こる幸せ

2017年1月15日 価値創造・第19夜 見えざる手

人知を超えた見えざる力を何回か感じたことがあります。
今夜は「本」を媒介にしたそれを記したいと思います。

「めったにないことが起こる幸せ」=偶有性(セレンディピティ)の話しを前回後半(第18夜)にしました。
「真&間(第17夜)」をギリギリまで突き詰め、覚悟を決めてやり抜く中でチャンスの神様が前髪(偶有性)を魅せてくれることがあります。

そのような偶有性が次々に起こるきっかけを創ってくれた二冊をご紹介します。
一つ目は写真にある「見えざる手」(谷口正和著 1991年初版)です。、

前職で目黒本社に異動になった36歳の時ですが、エンジニアからプランナーへの過渡期で、まだ自分の心棒が定まっていませんでした。
仕事帰りにふと渋谷駅で降りて、現在はありませんが大盛堂という当時は大きな本屋の3階に立っていました。
オーラを纏った厚さ2.5Cmのその本の外見と中身は異様でしたが、すぐに「買わねばならない」と背中を押されました。
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26年前の本ですが、「序文」を記します。
「見えざる手」。このようなタイトルを本書に冠した最大の理由は、我々の時代が見えるもの、顕在したものでは見えなくなってしまったということである。
我々は“見えないもの”をいかに認識していけるかという、その一点において時代を把握し、動向を察知し、そして世界を見ていく。
見えないものの力と存在を知り、それを活かすことができる。
「見えざる手」というタイトルに込めた最大のコンセプト、それは、“心の時代”ということである。心はまさに“見えない”がゆえに“見える”を超えるものである。
その心をさまざまな角度から照射し、“言い換え”、言い表わしていくうちに、我々はその中央に座る「無限の神」の力を借りて生きているということに目覚めていくのである。

未来の語り部として、語りかけるように私は皆さんに私の“気づき”を共有したい。同じ“気持ち”を交換したい。
私の“気づき”が皆さんに手渡されれば、それはまた皆さんの“気づき”として増幅され、広がっていくだろう。
(中略)明日、未来というものを信じ、強く肯定的に存在しようというあなたと本書を通じで出会えたことを感謝します。
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すぐに本に記されたジャパンライフデザインシステムズ社の情報誌「ファクスプレス」に申込み、主催されている「エコロジー研究会」に入門しました。
その縁で生まれたのが、第18夜の「ピュアモルトスピーカー」です。そして、第4夜、第9夜、第14夜で記した「ヒット商品群」も谷口正和師匠のバックアップがありました。
その一つの「ループマスター」というのは、「ファッションとオーディオ」の新結合(第14夜)です。
その試作品を谷口師匠にお見せしたら、「ファッションのメッカであるラフォーレ原宿でお披露目すると最大のニュースになる。すぐにラフォーレ原宿の館長を紹介します」
というつながりで、早速館長にお会いしたら、「ラフォーレ原宿のすべての階のマネキンに、ループマスターを掛けてもいい」という即答がありました。
これがヒット商品への突破口になりました。

これが自分が”見えないもの”を認識した時の「偶有性(セレンディピティ)」です。
現在も一年に六回ほど、谷口師匠主催の「文化経済研究会」に通って磨きをかけています。

もう一冊は、総合研究所で10年後のパイオニアの未来シナリオをプロジェクト(第15夜)でまとめていたときです。
神田駅方向に直進していたのですが、何かが降りてきて、何となく右折し行ったこともない細い路地を入ると小さな本屋さんがポツンとありました。
そこにると、何かオーラを纏った「本」がありました。その内容が解決へのヒント満載だったのです。
読み進むとそれまで行き詰っていた軸が浮かび上がりシナリオ策定につながりました。何かが導いてくれたと思わずにいられません。
ジグソーパズルのように最後のピースが見つかったのです。自分でもビックリでした。
なので何かを感じた時はそのまま導かれています。

さて、皆さんにも同じような体験があるのではないでしょうか?
自分の心が覚悟を決めてやり抜く時に、「見えざる手」がはたらいてくれことがあります。

そう、これまでヒット商品開発や未来シナリオ開拓や事業開発コンサルティングを推進してきましたが、自分の殻の中に安住していると偶有性の神様はぜんぜん音連れてくれません。
キワ(際)に出ていき、やり抜く心(Will)とやり遂げる方法(Skill)で邁進した末に、やっとチャンスの前髪が降りてくることを実感しています。

やはり、「本気・本質・次の本流」(第11夜)への傾倒が偶有性(セレンディピティ)を誘うのです。
より多くの人や企業に、偶有性(セレンディピティ)を体験していただけるように貢献していきたいと思います。
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価値創造の知・第18夜 情報は一人ではいられない

2017年1月14日 価値創造・第18夜 「間(ま)」から「ご縁」へ

第17夜(「間」と「創造」)では、間(ま)の成り立ちとイノベーション(新結合)の関係について随想しました。
今回はその実践例を演習事例と「価値創造ダイアグラム(第17夜添付))」を交えてお伝えするのでお付き合いください。

アイスブレークです。
皆さん下記のような「なぞかけ」はご存知と思います。

「ミニスカート」とかけて「結婚式のスピーチ」と解く。
その心は、
「短いほど喜ばれる」。
(3代目三遊亭遊朝の作)

「真(ま)」の二つの片(A「ミニスカート」とB「結婚式のスピーチ」)から共通項を見つける方法です。
この共通項を見つけることが魅力的な「間」を創るポイントです。
5~6人の演習では、最初に自分の好きなモノやコトを二つ上げて貰います。
(この二つは「野球」と「サッカー」のようにあまり近くないほうが好ましい)
例えば、「アート」と「宇宙」の二つを選んだ時に、二つの共通項を無理やり見つけて物語を創って貰います。

そうすると、その「取り合わせ」や「組み合わせ」で今までなかったようなコト(世界)が生まれてきます。
周りのメンバーがそのアイデアに相乗りすることで、さらにワクワクする世界が誕生してきます。
だんだん慣れてきたところで、自分(会社)が悩んでいるテーマをその一片(A)に入れていきます。

もう一片(B)には、トレンドキーワード(6種類)や生活キーワード(6種類)を入れることで思っても見なかった
世界が拡がってきます。これが常識の殻を破る3本の矢の中の一つです。

さて、実際にヒット商品に仕上げた「ピュアモルトスピーカー(写真)」で見てみましょう。
一片(A)には、ウィスキー樽材(サントリー社)が入り、もう一片(B)にはオーディオ(パイオニア社)が入ります。
さて、共通項は何でしょうか?

それは「響(ひびき)」です。

「人と自然と響き合う」を前面に出していた時代のサントリー社は「響」の文字をモチーフにしたロゴマークでした。
パイオニア社は「世界のステレオパイオニア」の「音響」がベースにありました。
この「響」を共通項として、「真」である「新しい樽物語・新しい命」を共に創っていきました。

ウィスキーの樽材は、樹齢100年のミズナラ材を使用しています。
それを10~15年使用すると、リグニン・タンニン等が染み出てきて、あのウィスキーの独特の芳香や色になります。
それを3~4回繰り返す(40年~50年)とウィスキー樽材の寿命となります。

ただ、100年の樹齢なのでまだ「木」としては50年の命が残されています。
それをスピーカーのキャビネットに活用したのが「ピュアモルトスピーカー」です。
バイオリンの「ストラディバリウス」はその木を塩漬けにすることによって、導管が通りあのような響きを奏でるそうです。
ミズナラ材も何も加工しない素材でスピーカーのキャビネットにしてもキンキンカンカン鳴って、スピーカーには不向きなのですが、
40~50年ウィスキー樽材であることで、導管が通り、ふくよかな味わいのあるスピーカーに生まれかわったのです。
まるで、スピーカーキャビネットになるためにウィスキー樽材として使われていたように。

これが「ものがたり」です。「新しい命」です。
人間でいえば、手足、頭、骨、神経、内臓等を合わせた時に必要なのは「命の誕生」です。
バラバラだったピースを紡ぐ「物語」「命」が価値創造には重要なのです。

このことによって、ヒット商品の基盤ができました。
さて、私はこのスピーカーを「ピュアモルトスピーカー」と名付けたかったのです。
でもサントリー社の承諾なしに、勝手に「ピュアモルト」というネーミングをつけるわけにはいきません。

実はその3年前に、パイオニアOBの方の紹介でお会いしたサントリー本社(経営企画関係)の方がいました。
京都を音連れた時に、わざわざ堂島から駆けつけてくれて、「一見さん」では入れない京都祇園の夜を案内してくれました。
彼は自分より若いのですが、互いの気持ちや考えがぴったりと一致してとっても楽しい時間を過ごすことができました。

それから3年後、すぐにその彼が頭に浮かび相談しました。すると、
・その試作品を堂島本社の役員に聴かせて貰えませんか。
・「ピュアモルトスピーカー」のネーミングについては社内で乗り越えなければいけないステップがあるのでそのあとに。

すぐに堂島に持参して高い評価が得られました。関係者とも素敵な交流がありました。
暫くして、赤坂オフィスで佐治敬三さんにプレゼンテーションする機会をいただき、その「場」でトップから「ピュアモルトスピーカー」のネーミングのお墨付きを貰いました。
帰り際に、創業100周年記念ウィスキー「響」をいただきました。我が家のお宝になっています。

これは「ご縁」そのものです。
偶有性(セレンディピティ)とは、偶然の幸運に出会う能力のことをいいますが、そのような意味で、「間(ま)とは良いご縁を創り、継続すること」と想っています。

さてさて今回は、「価値創造ダイアグラム(第17夜添付))」の下半分のエッセンスをお伝えしました。
その両サイドに、
①Problem: 問題・課題は?
②Insight: 大切なコトは?

があります。
ここでは、①は第14夜、②は第9夜に記してあります。
その①②の分母があれば、③を掴み取る可能性は高くなります。
その意識がないと、価値創造の神様の前髪(偶有性)はつかめないと確信しています。

なので、先ずプロジェクトで行うのは、①②の深堀と明確化です。

現在も「ピュアモルトスピーカー」は継続して商品化されていますが、自分は上記「②Insight」を深堀したもっともっと魅力的にした提案を用意しています。
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価値創造の知・第17夜 「間(ま)」と「創造」

2017年1月12日 価値創造ダイアグラム

「間(ま)」とは何でしょうか?

松岡正剛師匠の未詳倶楽部を通じて、一流の体験と講義を
織り交ぜて叩き込んでもらいました。そのエッセンスと自分の
価値創造の実践の一部をお伝えします。

 皆さん「間(ま)」という言葉は無意識に使われていますね。

間合い 間抜け 床の間 時間 空間 間際 間に合う 間違い
間にまに 世間 人間 仲間 間引き 間近 間奏 等々
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松岡師匠の講義では、

「間」は日本独特の観念です。ただ、古代初期の日本では
「ま」には「間」ではなく、「真」の文字が充てられていました。

真理・真言・真剣・真相・・・

その「真」のコンセプトは「二」を意味していて、それも
一の次の序数としての二ではなく、一と一が両側から寄ってきて
つくりあげる合一としての「二」を象徴していたそうです。
「真」を成立させるもともとの「一」は「片」と呼ばれていて
この片が別の片と組み合わさって「真」になろうとする。
「二」である「真」はその内側に2つの「片」を含んでいるのです。

それなら片方と片方を取り出してみたらどうなるか。
その取り出した片方と片方を暫定的に置いておいた状態、
それこそが「間」なのです。
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その時に、「はっ!」としました。
自分がプロデュースした「異業種コラボレーション」(第14夜)や「守破離」(第5夜)「弁証法」(第10夜、第15夜)という価値創造の方法が全く同じであることです。

一例では、サントリーとパイオニアが異業種コラボレーションで
「真」にしたヒット商品「ピュアモルトスピーカー」があります。
それはサントリーのウィスキーの樽材で造ったスピーカーなのですが空間上の片(樽材)と片(音響)の合体です。(=Gestalt)
勿論、そこに「ものがたり」の要素が必要なのですが、同様な「真」で次々にヒット商品が生まれました。

「弁証法」(正反合)とは、時間上の過去(片)と現在(片)でできる未来(真)を洞察する方法です。(=Foresight)
これは現在の行き詰まりを突破する「シナリオプランニング」の中で必須の方法です。

さて、自分のセミナーやプロジェクトで紹介する際の身近な事例は、
・縁側(内と外の境。内なのか外なのかわからない)
・黄昏(昼なのか、夜なのかわからない)
・「打ち合せ」とは
・グーテンベルクの活版印刷

つまり、内と外とを分けていてかつ両方に通じさせている。
どきどき交流する空間であったり時間についてです。

料理やDJもiPhone同じですね。
バラバラだったものを用意(Prepare)して、和えること(Performance)で新しい性質のもの(価値)が出来上がります。

つまり、境界線を外して新しい関係を創ることです。
価値創造のポイントは、片と片を体内(脳内)に入れて料理にして
吐き出す行為と同じです。

「イノベーション」を提唱したシュンペーターは、イノベーションで一番重要なことは、「新結合(New Combination)」と言いました。 なので自分にとっては、「真と間」=「イノベーション」なのです。

それで、セミナーでは空間上の「真」を「横の新結合」、
そして時間上の「真」を「縦の新結合」として説明しています。

ただ、何でも和えればいいものではありません。料理でもクラブDJでも上手いものと上手くないものがありますね。コツがいります。そのコツはどこかでお伝えしたいと思います。

ただ何れにしても重要なことは、多くの人々が共振し、幸せになることを心の奥底におきながら、常識(コモディティー)から離れ、「真と間」を追及して、「今までになかった関係を創るコト」にあります。
参考に、それを実現する新価値創造研究所オリジナル「価値創造ダイアグラム」を添付します。

さて、第3夜(「負」と「余白」の価値)で、「わびさび」について触れましたが、「日本流」松岡正剛著から「間に合わせ」について記します。

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ワビは文字通りの「侘び」です。すなわち「詫びる」ことである。まさに、貧相や粗相をお詫びすることなのです。なぜ詫びるかというと、そこに頂点を用意できなかったから詫びている。その姿が「侘び」なのです。そこから「侘び茶」の意識が生まれました。

村田珠光が試みたことは、それまでは中国渡来の唐物などの道具を持っていなければろくな茶数寄ができないと思われたところへ、たとえ名品や逸品をもたなくとも、なんとか手持ちの道具を心を尽くして用意すれば、そこに新たな茶の心が生じるはずだという試みだったと思います。

これは日本文化史における「間に合わせ」あるいは「取り合わせ」の発見だ、というふうに見るといいでしょう。
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「間に合わせ」「取り合わせ」から価値が生まれるのです。
実際の企業現場では、既存の技術やサービスの「間に合わせ」「取り合わせ」でご支援して成長に向かうことがよくあるのです。

さて、何か心が響くところがありましたでしょうか。
「間(ま)」と「価値創造」の関係に、皆様の関心が向かわれたら幸甚です。
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