SDGsシフト㊷「価値創造の知・第287夜」:『懸命と賢明』

2020年 『懸命(精神)と賢明(知)』

新型コロナウィルスの今般の日本政府対応の遅さについて、『懸命と賢明』という視点から綴ります。
その内容とSDGsシフトがどの様に関係があるのかは後述します。

新型コロナウィルス有事対応の問題は、
「政府・行政・専門者会議は、国民に向かって、『頑張り・一生懸命』を求めていますが、様々な場面で政府・行政・専門者会議に『賢明』が大不足していることです」
それを私たちは目の当たりにしています。

緊急事態宣言が出されて来月の5月6日まで、様々な自粛の中で多くの人が一生懸命に頑張っています。
国民に自粛要請があり、当事者意識を持って頑張ってもらうことは勿論重要なのですが、この自粛が5月6日では収まらずに、このままでは第2波、第3波が続くことを皆が早くから気づいていることです。

『懸命と賢明』について、前職パイオニア社・労働組合書記長時代の自分の経験を加筆引用します。

価値創造の知・第38夜(懸命と賢明、そして“働き方改革”)
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—就職から8年後に、(前職・パイオニア社の)2000人規模のセンター工場の労働組合の支部書記長になりました。(第13夜)

その前は、設計部門にいて、緊急の3か月連続120時間以上という徹夜連続の猛烈の超過勤務がありました。その3ヶ月連続後は心身が疲弊したことをいまでも心と身体が覚えています。
職種にもよりますが、自分の体験では、残業時間をMAX40時間にした方がいいと思います。それは、現状を放っておくと人間は「知恵・叡智」を使わないからです。

第1夜(創造性にる生産性向上と働き方改革)では、価値創造の「資質(WILL)と能力(SKILL)」について記しましたが、
集中が必要な100時間を超える連続超過業務は、「一生懸命」では無理があることを自ら体験しました。
そのような経緯も含めた支部書記長指名だったので、本格的に「残業(超超過勤務)問題」に取り組みました。
それはもう30年前の話になるのですが、今で云う「働き方改革」を断行しました。大局的に経営陣の意識を変える必要があります。
組織は何か大きな事故等がないとなかなか着手しないのですね。

残業に対する規制の新制度は、2年前に労組の先輩たちが創ってくれたのですが、ただ数値を規制するだけでは歪や悲鳴が出てきます。
自分が30歳の時に、会社との交渉で事前準備して使った言葉は今でも覚えています。

“もう私たち組合員は、通常のレベルを超えて十分以上に「一生懸命」に仕事をしています。
今必要なのは、足りないのは、「賢明」ではないでしょうか。
「懸命」を超えるには「かしこく明らか」にする賢明の知恵が必要です。

会社は組合員の「一生懸命という精神力」に頼ってしまうのではなくて、「賢明」という“知”で働き方を改革する必要があります。共創しましょう”

という提言をして、「懸命」と「賢明」を合わせた取組み、仕組み(システム)を会社と労組でタッグを組んで進めました。
叡智を集めて、仕組みを創ることがとても重要なのです—

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工場部門だけではなく、企画・マーケ・開発・生産技術も含め、関係部門の業務のやり方・進め方を見直すことでを働き方を変え、生産性も大幅に向上しました。

翻って、今の日本政府や多くの知事は、国民の「一生懸命という精神力」に頼っているように見えます。
もしも、5月6日以降に通常・定常に戻れない場合の責任は、「国民の頑張りが足りなかったのだ」と言っているように。

さて、台湾や韓国等の新型コロナ対応の中に「①検査」「②発熱外来」「③隔離」などの『賢明』のお手本がありますが、日本のワイドナショーでは2か月くらい前からその必要性が強く叫ばれていましたが、その実践の遅さ、鈍さは目を覆うばかりでした。

ぜんぜん遅いのです。
その様な中でも「大阪モデル」は先行していましたが、その有事モデルを知っていながら、多くの知事や政府の反応・対応は酷く鈍いものでした。この2か月の間に『賢明に仕組み』をつくり手をうっておけば良かったのです。

『賢明』の欠如がリーダーシップの欠如に繫がります。

そう、多くの人たちは2か月前からメディアで何をすればいいのかの情報(インテリジェンス)を理解していて、政府の後手後手に嫌気がさしています。

さてさて、上記の『懸命(精神)と賢明(知)』は、SDGs実践の2軸です。

新型コロナウィルスは、いろいろな課題を私たちに投げかけました。
・全世界パンデミック
・命と経済
・覇権と経済
・医療連携
・テレワーク
・サプライチェーン
・補償金と協力金
・・・

多くの命の危機(エコロジー)が差し迫れば、ロックダウン(エコノミー)するのです。
これまで地球危機・気候危機が叫ばれていますが、経済封鎖には及んでいません。

地球環境、社会環境が、取り返しのつかない状況にならないように『賢明』が必要です。
「エコロジー(生命)とエコノミー(生活)」の両立には『賢明』が必要です。

その世界的取り組みが「SDGs」です。

私たちには、早急で賢明な『SDGsシフト』が必要なのです。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ

SDGs賢明と懸命

SDGsシフト㊶「価値創造の知・第286夜」:『パラダイムコロナ』

2020年4月3日 新しい価値が生まれる

いま新型コロナによって、世界中が大きな試練の真っただ中にいます。
「社会」「経済」は、大混乱に陥っていますが、「地球(環境)」という視点からみれば、CO2排出等は改善されています。

そこでは、金子みすずの詩「大漁」が浮かんできます。
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大漁

朝焼け小焼だ、 大漁だ
大羽鰮(おおばいわし)の 大漁だ。

浜は祭りのようだけど、

海のなかでは 何万の、
鰮(いわし)のとむらい するだろう。
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「SDGs」は、地球・社会価値と経済価値という両輪をどう超克(困難を乗り越え、それに打ち克つ)するのかということが求められていて、それは、今回の「新型コロナ」によって突き付けられている課題です。

そう、私たちは「大局的な視点と生活(暮らし)の視点」の双方を複眼的に把えることが求められています。
同様に「新型コロナ」問題は、「医療崩壊と経済崩壊」をどう超克していくのかということが喫緊の課題です。

その様な「パラダイムコロナ」という世界的共同体験で、私たちは新たな価値観が次々に生まれてくることがはっきりと洞察できます。

一つ事例を上げると「テレワーク」があります。
学校、企業、自治体等で、授業や会議、コミュニケーション、コンテンツのあり方、仕事のやり方が変わっていくのは必然です。
高齢社会、医療体制の仕組に歪や課題がみえましたね。
今後の南トラフ巨大地震、関東大震災のことを考えれば、「都市(機能)と地方」のあり方を迅速に変えていく必要があります。

そして、「グローバリゼーション」の行きすぎ(過剰)による問題が眼前に露呈しました。

さて、その様な「コロナ環境」を超克して、『世界中の持続的なより良い暮らし、未来を実現する』ために、これまで以上に『SDGs』への取り組みが脚光を浴びるのは間違いありません。
『SDGsシフト』の本格的出番であることが見えている人、会社、自治体、国は、いまのこの時に次の一手の用意をしています。

『SDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)』とは、
「いまよりもっと良い未来を創りたい切実な国際目標・目線」であり、
その目標が「実現されることを待っている未来=世界ニーズ」です。

それは、地球環境・社会環境・心の環境の3つが繫がり合っています。

今は、時代の分かれ目(パラダイムコロナ)となると認識することが肝要です。
新型コロナの激震、世界的体験は「時代の分かれ目」と確信していますが、それにピントを合わせたかの様に、谷口正和師匠が次の時代の大ヒントを「何が資産か。」に上梓(先月3/26)されました。
これからの時代の視点、視座と練られたワードによるヒントが散りばめられています。

参考となる記述の3か所を引用します。
①<はじめに>
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今、暮らし方ではなく、生き方が問われている。
自らの生き方に問題意識もなく、甘い認識のまま過ごしていては、その意識を基準にした未来しか訪れない。
あなた自身が自らの手で未来を切り開き、夢や目標を成し遂げてきたわけではなく、ただ楽をして生きていきたいという甘えはもう捨てなければならない。—
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②「常識という呪縛の奴隷」
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—つまり、過去の価値観や認識を引きずっていると、一般的な常識に縛られてしまい、変化に対応しきれなくなる。当然ながら、過去の価値観から新しいアイデアは生まれることはない。だからこそ、常識の隷属状態から抜け出し、これまでになかった新しい選択肢や方策を創り出す必要がある。

昨今、自らが人生の主体であり、唯一無二の存在であるという認識によって様々なことをジャッジする時代。自らの考えや解釈を持たずに、慣例や先例ばかりを並べていても、それは旧社会の常識の中にあぐらをかいているに過ぎない。
変えられるのは、自分自身と未来だけであり、強い意志と意図をもって、昨日までの常識を超えていくことが求められてくるのだ。—
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③「ディレイドジャパン」
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—あらゆる場面で多様性が求められる現在、積極的に外に出て日本を見つめ直すことが必要だ。つまり、社会全体を地球規模で考える着想を持つことが重要となる。
日本にのしかかる課題は、一国の問題としてではなく、「地球社会構想力」として解決することが求められている。
にもかかわらず、自分たちにとって都合のいい話に終始し、批判的な意見に聴く耳をもたない内向的な姿勢では、固定観念を超えた新しい発想やイノベーションを生み出すことはできない。
世界はすでに日々変化が起こり、それをチャンスの発芽とする時代が到来している。—
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・暮らし方ではなく生き方が問われている
・昨日までの常識を超えていくことが求められる
・「地球社会構想力」として解決する

上記は吹荒れる「パラダイムコロナ」を乗り越えるための「心得と方法」ですが、それは「SDGsシフト」の精神そのものです。
「2030SDGs」を本格的に進展・実現する(=SDGsシフト)ために、今回の「パラダイムコロナ」の世界的体験が触媒となります。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ
SDGsパラダイムコロナ