2018年3月29日 将来洞察と価値創造
本夜は、「将来を洞察し、確信する価値創造の方法」を綴ります。
先ず、「二つの言葉」をあげます。
一つ目は、「未来は既にここにある。全ての人に均等に配分されていないだけだ」
“The future is here, it’s just not evenly distributed yet.”
ジャック・ドーシーやティム・オラオリーが好んで引用するウィリアム・ギブソンの言葉です。
二つ目は、『すでに起こった未来』
「政治、社会、経済、企業のいずれにせよ、およそ人間に関わることについては、未来を予想してもあまり意味がない。だが、すでに起こり、後戻りのないことであって、一〇年後、二〇年後に影響をもたらすことについて知ることには重大な意味がある。
しかもそのような『すでに起こった未来』を明らかにし備えることは可能である」
P.F.ドラッカー(経営学の巨人)の言葉です。
◆未来は既にここにあるコト
◆すでに起こり、後戻りのないことであって、一〇年後、二〇年後に影響をもたらすこと
について自分は大納得です。
ここのポイントは、本質となる「どれが」、「何が」なのかを抽出することです。その本質を取り出す感覚を多くの方達に体得していただきたいと思います。
前職(パイオニア社)の拙い自分の二つの体験をご案内します。
1.ヒット商品緊急開発プロジェクト
その構造は、第82夜(ビジネスで最も大切なコト)にあるので、それをご覧になってから下記を読み進めると理解が速くなります。
(『違い』をつくるのは、「技:イノベーティング」で、『共感』を生み出すのは、「心:マーケティング」です)
1990年代のオーディオの行き詰まりを打破することを考えていました。それは、それまでの「オーディオ世界」(縦串)に「オーディオ世間」(横串:ライフスタイル)を通すことでした。このイメージは、当時のフィギアスケートを見ていて思いついたものです。
その採点は、「テクニカルポイント(技術点)」と「アーティスティックポイント(芸術点)」の合算でした。その昔は、「テクニカルポイント」中心で、それが上手な人が「ゴールドメダル」をとれたのです。でも、上記の合算の時代に変わりました。質的転換です。
政治・経済も1940年体制から縦割りに限界を感じ、横串を模索しているところでした。今の行政がなかなかそこから脱皮できないで時代遅れになっていることは皆さんご存知のところです。
当時、周りを見渡すとそのような横串(生活発想)からの機運の高まりの兆候がありました。
現状突破のために、思い切って、新社長に直訴して緊急開発プロジェクトを承認して貰いました。
1995年、異業種コラボレーションを見かけない時代に「横串」による『新しい文化』をプロデュースしました。
・味覚:ウィスキー*オーディオ
・視覚:ファッション*オーディオ
・聴覚:インテリア*オーディオ
・触覚:お風呂ライフ*オーディオ
「異種がつなげる」「異種がつながる」ことで「新しい文化を創る」ことがキーワードです。連続のヒット商品になりました。
そのつなぎ方の秘訣については、「大三角形」第40夜、「広い知」第83~84夜に綴っています。ビジネスで最も大切な構造を当てはめることで、「質的転換」を実現しました。
2.2017年の将来パイオニア
研究所に呼ばれて、10年後(2017年)の将来パイオニアの世界と世間を研究者たちと創発してまとめました。
2006年に作成した10年後の4つの世界(ビデオ)は、ずばり2017年を言い当てていました。
それは、シナリオプランニングの第一人者のJオグルビー氏と紺野登氏からの直伝を日本流に編集した「苗代的(第119夜)シナリオプランニング」(第15夜、第86夜)を活用しました。
ポイントは、10年後の世界に影響を与える因子、軸を抽出することです。ここで出てくる「何を」「どれを」抽出するのかが成否を決めます。
ここで少し関係のある寄り道をします。これが『将来洞察、将来シナリオ』の「核心・確信」に繋がるきっかけを創ってくれました。
それは、2000年の松岡正剛師匠主宰の未詳倶楽部で音連れました。目から鱗が落ちた瞬間です。
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私は20世紀までは主題の時代だったが、21世紀は「方法の時代」であると考えてる。日本はいま、日本を語り、日本を考える方法を失っている。
日本の面影を取り出せなくなっている。面影とは、目の前のモノが去っても、なおそこに残るもののことである。
「面影」はうつろいゆくものである。「うつろい」の「うつ」とは、「移」であり「映」であり「写」でもあって、そして「空」でもある。
そのようにして変化していく面影をとらえ、うつろいを美意識にした方法が「数寄」である。「数寄」とは、「漉く」であり「透く」であり「鋤く」であり、「好き」でもある。
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「将来洞察」を確信する心得と方法が欲しかった時期でした。上記の「面影」と「数寄」のあいだに注目しました。
そこで、「将来の面影」を「数寄」で埋めていく道筋が見えました。「数寄」とは、「漉いて」「透いて」「鋤いて」「好いて」いくものです。「漉いて」「透いて」「鋤いて」「好いて」いくと観えてくるのです。
これは自分で知の大汗をかかないと分かりません。イチゴを食べたことのない人には「イチゴの美味しさ」は伝わりませんね。
そうやって、「10年後(2017年)のパイオニアの世界と世間」を2006年に作成しました。そして、「核心と確信」を持つことができました。第118夜に綴りましたが、「核心と確信」があれば、「革新」に向かえるのです。
それ以降、多様な業種・業態から依頼がくるようになりました。ご支援している数々のシナリオはお見せすることができないので、機密の問題のない、2007年に作成した「広告の将来シナリオ」をアップします。
2015年にご縁があって、丸善株式会社様からの依頼で、「harappa日本橋×丸善夜学」の講師になりました。
仕事と人生にいかす3つの力「プロのクリエイティビティー力」をみにつける、というのがメインテーマでした。
そこでは、会社も年齢も性別も全く異なる「日本橋ビジネスパーソン」が集まりました。
ここで、最初の三回で、「トリニティイノベーション」(第66夜、第21夜、第75夜)の「深い知・高い知・広い知」を習得していただいて、後半の3回で、「ワクワクする日本橋の将来シナリオ」を3チームで挑戦していただきました。
彼らは、異業種でありましたが休日も集まって熱く語り合っていました。夜学という限られた時間で仕上がるかどうか心配もありましたが、どこにでも誇れる「素晴らしいシナリオ」が出来上がりました。
そう「未来はもうここにあるのです。それは、全ての人に均等に配分されていないだけなのです」
その本質を把えて、「漉いて」「透いて」「鋤いて」「好いて」未来の面影を創るのです。
それは、「すでに起こった未来」として眼前に現れます。
もうお分かりの様に、「フィギアスケート」や「面影&数寄」がトリガーになっています。その様な「苗代的思考」(第119夜)が将来を引き寄せます。
多くの方達に、そのWillとSkillを身につけて欲しいと思います。少しでも皆様の参考になれば幸甚です。
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ


