2026年7月13日: 「顕密思考」誕生
1. 新たなパラダイム「顕密思考(けんみつしこう)」の誕生
-「問いを立てる」の、その先へ、その奥へ-
コラム第378~380夜では、AI時代において「答えを出すこと」の価値が暴落し、「問いを立てること」こそが人間の仕事になる、という話をしました。
(「立つ」という動詞がこれまで以上に意味を持ってきます)
しかし、最近学生たちと話していて、一つの壁にぶつかりました。
「先生、問いを立てるのが大事なのは分かりました。
でも、ChatGPTに『面白い問いを5つ考えて』と頼めば、それなりの問いを出してくれちゃうんです。
僕たちが立てる問いって、AIの問いと何が違うんですか?」
鋭い指摘です。そうなのです。
「問いを立てる」ことすら、すでに当たり前のスキル(顕在化されたテクニック)になりつつある。
AIにプロンプトを打ち込めば、それらしい「問い」が返ってくる時代に、私たちはその一歩先、一歩奥にある「問いの源泉」に触れなければなりません。
生成AIがあらゆる「答え」を瞬時に導き出す時代、私たちが日々目にする情報は平坦化し、表層的な最適化ばかりが加速しています。誰もが同じ正解にたどり着ける世界で、真の価値創造はどこから生まれるのでしょうか。
・ AIが絶対に真似できない、人間だけの「価値創造の入り口」はどこにあるのか?
という「問い」を立てました。
第378夜「AI時代の価値創造教育プログラム」をまとめている最中に、その「問い」に向けた強力なヒントをくれたのが、
①私の師である松岡正剛師匠の「編集工学」、
②師が遺した不朽の名著『空海の夢』、
③そして私の前職パイオニア社時代のヒット商品開発プロジェクト体験
でした。
その鍵は、
・「目に見える記号やデータ(顕)の背後に潜む、言語化されない本質や気配(密)を読み解く力」
にありました。
本夜は、これからの知性・感性・脳性のあり方を決定づける新たなパラダイムである
・「顕密思考(けんみつしこう)」誕生
を宣言します。
表層と深層を自在に往還するこの思考法こそが、
AI時代における「価値創造の新たな地平を切り拓く」
ことを綴っていきます。
2. 「編集工学」と『空海の夢』が教えてくれたこと
正剛師匠の「編集工学」の本質は、世界のあらゆる情報を「つなぎ、重ね、新たな意味を創り出す」ことにあります。そして師匠がその編集思想の究極のモデルとして生涯追いかけ続けたのが、1200年前の天才、空海でした。
空海は、仏教を「顕教(けんぎょう)」と「密教(みっきょう)」の二つに分けました。
- 「顕教(顕)」:言葉やテキスト、論理で明確に説明できる教え。
- 「密教(密)」:言葉では表現しきれない、身体の感覚、イメージ、実践そのもの。
正剛師匠は『空海の夢』の中で、空海が成し遂げたのは「言葉(顕)」の背後に、決して言葉では語り尽くせない広大な「シンボルや身体性(密)」の海が広がっていることを、両界曼荼羅(まんだら)という壮大なシステムで可視化したことだと見抜きました。
上図を見てください。
私たちが普段使っている言葉やデータ、テキスト(顕)は、巨大な海に浮かぶ「氷山の一角」にすぎません。その海面下には、言葉にできない「体験・身体性・実践」という、底知れない巨大な「密」の海、そして、「密」から生まれる未来の源・種が広がっています。
AIという存在は、人類が過去に生み出した「言葉(顕)」をすべて編集・足し算して作られた、いわば「氷山の一角のマスター」です。データ化されたロジックの編集なら、人間が逆立ちしても敵いません。
ですが、AIには絶対にアクセスできない領域があります。それが、海面下に沈む「密」――すなわち、私たちが日々感じている生々しい身体の感覚、痛み、喜び、そして現場の空気感という「ナマの感覚」です。
さて、私は35歳の時に、ビートルズにも影響を与えた「密」の世界である「マハリシ・ヨッギの超越瞑想」(第6夜、第235夜、第289夜)の門をご縁によりたたきました。生業としている「音・音楽」が人間に与える波動・影響を体感したかったからです。
そこに入門して驚いたのは、大手の企業経営者が多いことでした。彼らは、「(自分の)心を空にする」ことで経営の方向性や生き方を見出していました。(第33夜)
そう、そこでは雑念をなくす、私心をなくす引き算を体得して、
・大切なコトは何か?
・「密」の大元(おおもと)、大事なものにつながることを体験してきました。
その体性、知性、心性を研ぎ澄まし、磨いたことが自分の将来に大きな影響を与えてくれました。
→ 「禅(ZEN)」、「超越瞑想」は、「顕」と「密」を往還し、内省する優れた方法なので、是非、体感・体得することをお勧めします。
3. 氷山を90度回転させる「顕密思考」
正剛師匠はかつて、情報には「地(背景・文脈)」と「図(目に見えるデータ)」があり、この2つがダイナミックに入れ替わることで新しい意味が生まれると説きました。(参照:https://note.com/discover21/n/n4238e6e02702)
私は、この「編集工学」のエッセンスを、「AI時代の価値創造の『顕密思考』」に重ね合わせて、氷山の図を「左回りに90度」ゴロリと回転させてみることにしました。
ここに誕生したのが、私が提唱する「顕密(けんみつ)思考」のOSです。
左端の「過去」という原点(氷山の頂点)には、目に見える小さな「顕(言葉)」がある。しかし、その背後には常に膨大な「密(体験・身体)」が地続きで控えています。
「問い創造」とは、マニュアル(顕)を読むことから始まるのではありません。
自分の身体感覚や現場の違和感(密)にダイブ(深く入り込む)し、それを「編集」して言葉(顕)へと海上に引き上げる瞬間に、AIには絶対に真似できない「本物の問い」が誕生するのです。
4. 顕密思考を具現化する「基本」と「応用」
では、この「顕密思考」のOSを、私たちは日々どうやって駆動させればいいのでしょうか。学生の皆さんが今日から実践できる、具現化の「基本」と「応用」の一部を伝授します。
【基本編】自分の「モヤモヤ(密)」を言葉(顕)に翻訳する
基本は、日々の生活や学びの中で感じる「言葉にならない違和感(密)」を見逃さず、言葉(顕)の氷山として削り出す習慣です。
たとえば、大学の講義を受けているとき、あるいはSNSを見ているとき、「データ(顕)は正しいと言っているのに、なぜか胸のあたりがモヤモヤする、腑に落ちない(密)」と感じる瞬間はありませんか?
そのとき、AIに答えを聞く前に、自分の身体(密)にダイブするのです。
「私はなぜ今、心がざわついたのか? どの言葉に引っかかったのか?」
と内省する。
あるいは、最もわかりやすいのが、
「なぜ、この人(異性)をみると、ときめいたり、ドキドキしてしまうのか?」
そして、そのモヤモヤの正体に「自分だけの名前(言葉)」を付けてみる。(ラベリング)
これこそが「密」から「顕」への往来であり、AIには絶対にインプットされていない、
あなただけの「独自の問い」が誕生する基本のステップです。
【応用編】他者の「身体・感情(密)」にダイブし、社会の価値(顕)を創る
応用は、ビジネスやプロジェクトなど、社会の中で「新しい価値創造」を行うときの駆動法です。
「顕(ロジック)」のフレームワークをあえて捨て、
他者の「密(ナマの体験)」に深く共感し、
それを新しい仕組み(顕)へと昇華させます。
たとえば、ヒットしている新しいサービスを思い浮かべてください。
それらは「市場データ(顕)」の分析だけで生まれたのではありません。
・「夜遅く、一人で帰宅するときに感じる、言葉にできない寂しさと心細さ(密)」
・「育児中に、一瞬だけ社会から取り残されたように感じる孤独(密)」
といった、人間の生々しい感情や体験の深淵(密)に、開発者が自らの身体を通じてダイブしたからこそ生まれたものです。
[参考事例-1]
事例として、私のセミナーや研修でよく活用する「アルコールフリービール」を紹介します。
キリン(株)は、アルコールフリーという画期的な製品で新しいビール市場を開拓しました。
その女性開発者の“大切にした想い”を紹介します。
「2007年は、飲酒運転撲滅の雰囲気が世間にありました。いくつかの大きな事故があり、警察の取り締まりが強化されるなど、飲酒運転はダメという消費者の意識が強くありました。お酒が原因で悲しい事故が発生するのが嫌だったんです」
開発者の大切で切実な願いは、
・「飲酒運転がなくなる幸せ」(密)
でした。
その“あり方”(密)が土台にあることで、技術開発やマーケティングの“やり方”も変わって成功につなげました。
[参考事例-2]
私は、前職のパイオニア社時代、
・アナログレコード→CD
・FM放送→カセットテープ→CD-R
という「Hi-fi(忠実再生):顕」で成長してきたオーディオ業界が限界を迎えた「真っ只中(1993年)」にいました。その時、下図の様に、2005年に大きな変化があるコト(パッケージ系、通信系、放送系)をプロジェクトで予見、洞察しました。
その時(1995年)、音・音楽の「Hi-fi(忠実再生):図(ず)」ではなく、別流の「音・音楽の新しい楽しみ方:地(じ)」を社長直訴で提案して、連続して下記異業種コラボレーションによる「ヒット商品」を創出しました。(第126夜、第370夜:ヒット商品緊急開発プロジェクト)
同様に、「カラオケ」「CDJ」等の新しい文化の創造は、機械側の「Hi-fi(忠実再生)」(顕)ではなく、「人間の側の楽しみ・喜び(密)」を軸足にして企画開発したものです。
[参考事例-3]
事例の3つ目として、「北海道旭川市にある旭山動物園」(第28夜、第364夜)を上げます。
時は1997年にタイムシフトします。その頃、全国の動物園の来園者数は右肩下がりで減り続けていました。
当時、旭山動物園の獣医係長(その後、園長)の坂東元さんは、従来の“パンダやコアラという奇獣、珍獣で来園者を集めるやり方や動物の姿を見てもらうための「形態展示」(顕)”ではなく、“普通の動物の本来の行動や生活を見てもらう「行動展示」(密)”へと転換を図りました。
メディアにたびたび取り上げられ、国内外からたくさんの観光客がくるようになりました。
さて、坂東園長が転換を決意した“最も大切にした想い”は何でしょうか?
ここは大事なので、皆さん少し考えてみてくださいね。
⇒ 旭山動物園が掲げる永遠のテーマは、
「伝えるのは命」(密)
です。
そこには、坂東さんが獣医として“動物の命”の大切さにずっと寄り添ってきたことが込められています。そのテーマによって、これからの時代の主役になる子どもたちが、動物たちの未来や地球の未来を真剣に考える場所になっています。
ここで重要なことは、経営の“あり方(目的・縦軸):密”が変わることで、“やり方(手段・横軸):顕”が変わることです。
「経営」の“経”という字は、縦糸のことを表しています。“経”という縦糸(あり方:being)と“営(いとなむ:doing)”の横糸(やり方、行動)で織物が紡がれます。
いま、日本の多くの企業が[横軸のやり方(HOW)」でコモディティ化して行き詰っています。
経営が行き詰っている時は、それまでの横軸の“やり方(doing)”が行き詰っていることが多いものです。
是非、そのような時は経営の縦軸の“あり方”(目的、道理、意味、真善美:being)に目を向けて、再定義することにトライされてください。(第372夜詳細)
下図の「おおもと」が「経営のあり方」です。
旭山動物園は、それまでの「形態展示」から、「普通の動物の“行動展示”」というやり方に転換しました。そのことで、右肩下がりの来園者数が急激な右肩上がりになり、旭川市を含めて経済価値(利益)が上昇しました。
下図の 「色即是空」というのは、「現実=色」(顕)に問題・課題があるのなら、先ず心を無にして、「大元=空=大切なこと=真心」(密)に戻りなさい。
そして、「空=大元=真心」に戻って従来のしがらみや常識から解き放たれて、その本質(=コンセプト=核心)を把えてから「現実=色」を観ると新しい世界(=現実=色=確信)が観える(「空即是色」)ということです。(第85~86夜)
人々から喜ばれる「新しい現実」を創るコトが「価値創造/イノベーション」の狙いです。(第28夜、第364夜)
上記の3事例は、これまで業界が常識としていた「顕(ロジック)」のフレームワークをあえて捨てた物語です。
・アルコールフリーも、一番大事だと思っていた「アルコール」を捨てました。
・「Hi-fi(忠実再生)」を捨てて、「人間の側の楽しみ・喜び(密)」
・「形態展示」(顕)”ではなく、“普通の動物の本来の行動や生活を見てもらう「行動展示」(密)”へと転換
上図の「深い知」(第75夜、第364夜:3つの知)は、不要なものを削いで取り除いて『核心』に辿りつく方法(奥義)です。
それは、日本人が本来得意としてきたもので、禅、茶道、枯山水、わびさび、俳句・俳諧、おもてなし等に代表される奥義です。得意な「引き算の美学」(第6夜、第364夜詳細)です。
日本人が継承してきた「才能」(第340夜詳細)です。
それは、「ビジネスの大元(経営のあり方)」につながる重要なスキルです。
・そもそも何のためにビジネスをおこなうのか?
・いったい世の中の何を変えたいのか?
・何を大切にするのか?
という大変化の時代(第361夜)の経営者の心の根本レベルの“あり方の再定義”が、社内外から求められています。
そのために経営者は、下記の生活者ニーズの変化を先取り、深堀していくことが必要になります。
・所有(○○が欲しい)→使用(こう使いたい)→あり様(こうでありたい):密
「あり方、あり様」まで枠を超えられるかどうか(深堀)が、成長有無の分岐点になります。
ここで重要なことは、「いま自分(自地域、自社)が置かれた状況、局面」において、
①それは意味のあるコト(下図のmeaning)なのか
②それは必要性が高いコトなのか
という社会性、経済性、環境性を確認・確信しておくことが、結果的に持続性、成長性に大きく関わってきます。
さて、1997年、正剛師匠から私に、
これからの時代は、
・「性能<機能<効能」(第85夜、第175夜夜詳細)
の流れを深く考えなさい、
との指南がありました。
(20世紀は「所有」の時代でした。「所有」の時代の背景には、「モノの不足」があり、そこでは何馬力、何ワット、何デシベルというように『性能』が重視されていました。
それが満たされてくると、次の充足は『機能』に移りました。生活空間には、使わない機能でいっぱいの機器が溢れましたね。
「性能」自身の魅力が薄れていきました。魅力がなくなると、事業は廃れます。
現在は、「モノからココロ」へと、よりインナーへの欲求に移っています。
それを時系列で表現すると
⇒ 性能 < 機能 <効能
となります。
→性能は「顕」で、効能は「密」です。
いかがでしょうか?
これらの参考事例や「知」が少しでも心・魂に響いて、「顕密思考」理解・実践の参考になれば幸いです。
さてさて、学生の皆さん、データやマニュアル(顕)を並べるだけのプレゼンはAIに任せましょう。
皆さんは、ターゲットとなる人や社会(地域・顧客)の「日常の痛みや喜び(密)」の海に深く潜り、そこから「これこそが、あの人や社会が本当に求めていた価値だ」という新しい製品や言葉(顕)をすくい上げる。
これこそが、顕密思考の応用である「価値創造の編集」です。
5. 時と共に広がる「智慧と慈悲」のイノベーション
この「顕密思考」のOSを起動し、中心の水平な時間軸(現在から未来へ)を進むと、何が起きるか。
「顕密思考図」の右側を見てください。三角形の稜線が未来に向かって四方八方にダイナミックに広がっています。
「顕(論理)」だけで考えたビジネスは、一時的に流行ってもすぐにAIに模倣され、コモディティ化(陳腐化)してしぼんでしまいます。しかし、正剛師匠が『空海の夢』で描いたように、言葉(顕)を丸ごと包み込む巨大な宇宙の全OSとして「密」を捉え、そこから汲み上げられた問いは、時が経てば経つほど、より多くの人の心に響き、価値を大きく広げていきます。
空海が曼荼羅で示した宇宙の広がりは、現代でいう「価値創造の無限の可能性」そのものです。それは単に「儲かる仕組み」を作ることではありません。
物事の本質を見抜く「智慧」と、他者の痛みや社会の課題に寄り添う「慈悲」が、時間と共にどこまでも拡大していくプロセスです。(第369夜:両界曼荼羅)
空海の「両界曼荼羅図」は、「智慧」と「慈悲」を可視化(顕)して、その両立と実践を説いています。
■「顕密思考」大整理
A. 正解のコモディティ化と「情報の平坦化」
現代の情報環境は、空前の「最適化」を迎えています。AIの前に問いを投げかければ、数秒のうちに極めて論理的で、破綻のない「正解」が返ってきます。しかし、この圧倒的な利便性の裏側で進行しているのは、「知の激しいコモディティ化」です。
AIが導き出す回答は、人類がこれまでに記述してきた膨大な過去データの統計的パターンの集約にすぎません。つまり、誰もが同じ強力なAIツールを使うようになれば、必然的に行き着く結論やアイデアもまた均一化していきます。
世界から「ノイズ」が削ぎ落とされ、あらゆる知の輪郭が滑らかになります。この「情報の平坦化」が進む世界において、他者と異なる真の独自性、すなわち新しい価値を創造することは極めて困難になりつつあります。
B. 「顕(けん)」の世界と「密(みつ)」の世界
この閉塞感を打破するために、私たちはかつて日本仏教などが探求した「顕(けん)」と「密(みつ)」という、二次元の視座を現代の知性へと蘇らせる必要があります。
まず「顕」の世界とは、目に見えるもの、すでに言語化されたデータ、そして客観的なロジックで説明がつく領域を指します。AIがその処理能力を爆発的に発揮するのは、まさにこの「顕」の領土です。
一方で「密」の世界とは、未だ言葉にならない気配、数字に還元できない人間の情動、歴史や文化が重ねてきた文脈の重みなど、表層には現れてこない深層の領域を指す。
それは論理の網の目からこぼれ落ちる、隠された本質です。
C. なぜAIは「密」に触れられないのか
なぜ、どれほどLLM(大規模言語モデル)が進化しても、AIはこの「密」の領域に触れることができないのでしょうか。理由は、AIの存在本質が「記述されたものの処理」にあるからです。
AIが学習できるのは、すでに誰かが言葉にし、記号化し、インターネットの海に放流した「顕」のデータだけです。しかし、人間の営みや自然の摂理、ビジネスにおける真のインサイトの多くは、言語化される手前の「暗黙知」として深層に埋もれています。
データに還元できない「密(ひそ)やかなるもの」を感知し、その意味を察知するセンサーは、生身の身体を持ち、文脈を生きる人間にしか備わっていません。
AIは「顕」の王者ではあっても、「密」の探索者にはなれません。
D. 顕密思考の真髄 —— 表層と深層の「往還」
本夜、このコラムで提唱する「顕密思考」の真髄は、単に「密」という深層の世界に引きこもり、直感や神秘主義に頼ることではありません。真の価値創造は、表層の「顕」と深層の「密」をダイナミックに、かつ高速に「往還(おうかん)」するプロセスから生まれます。
深層に潜り、まだ誰も言語化していない社会の違和感や気配(密)を掴み取る。そして、それをただの感覚で終わらせず、AIをも巻き込めるような明晰な言葉やロジック、プロダクト(顕)へと変換して表層へと引き揚げる。
この往還のループを繰り返すことによってのみ、コモディティ化された「平坦な正解」を飛び越えた、圧倒的にユニークで深い価値がこの世界に誕生します。
E. 結び:顕密思考を実装する「問い」の作法
「顕密思考」を自らの知性・体性、感性・脳性として実装するために、私たちは「問い」の作法を変えなければなりません。
目の前のデータや、AIが提示したスマートな回答(顕)を見たとき、私たちは常にこう自問するべきです。
「この綺麗に整えられた言葉の背後で、削ぎ落とされた『密』なる気配は何だろうか」と。
「問い創造」の起点は次のような状況から始まります。(下図)
- 人(自分)の困りごと
- 社会の矛盾
- 逆境や受難
- 「このままでいいのか」という違和感
この「心の揺れ」を深く理解することが価値創造の原点です。
問いは「人間の切実さ、好奇心」から生まれてきます。
そして、「心の置き方」と「モノの見方」をフェーズアップすることが「価値創造」につながってきます。
効率性の網をすり抜けるノイズにこそ、次の時代の意味が眠っています。
表層の正解を疑い、深層への潜水を恐れない。
この「顕密思考」という新地平へ足を踏み出すことこそが、
AI時代を生きる私たちが創造性を失わないための、唯一の羅針盤となるはずです。
■ AI時代を生きる学生の皆さんへ
画面の中のロジック(顕)だけにこもるのをやめましょう。
正剛師匠が空海に見出したように、自分の身体、五感、そして現場の違和感(密)という巨大な海に飛び込んでください。
そこからあなただけの言葉を紡ぎ出す(編集する)とき、あなたの未来は、図の右側の三角形のように、未来に向かって無限に広がっていくはずです。
■ そして、「問い創造工学・価値創造工学」へようこそ
皆さんは、本夜の「顕密思考」を通して、「問い創造」の入り口にきました。
ここから先は、第378夜「AI時代の価値創造教育プログラム」をご用意していますので、下記をご覧ください。
このワークを習得することが、本格化するAI時代の波に飲み込まれずに、波に乗っていく秘訣です。
https://shinkachi.biz/2026/05/12/%E6%A9%8B%E6%9C%AC%E5%85%83%E5%8F%B8%E3%81%AE%E3%80%8C%E4%BE%A1%E5%80%A4%E5%89%B5%E9%80%A0%E3%81%AE%E7%9F%A5%E3%80%8D%E7%AC%AC378%E5%A4%9C%EF%BC%9A%E3%80%8C%E4%BE%A1%E5%80%A4%E5%89%B5%E9%80%A0/?fbclid=IwY2xjawTCrdRleHRuA2FlbQIxMQBzcnRjBmFwcF9pZBAyMjIwMzkxNzg4MjAwODkyAAEe4irP6BzVdnh2WLKyixlo6b-IrJap8dEQ2T8gt7rtZUSxYfedTpA1ZlD2Dws_aem_RSBCRZPCVhrdP5mfvXJN3Q
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ