橋本元司の「価値創造の知」第377夜:「価値創造の航海術 」-「問い創造」から「価値創造」へ

2026年4月7日: 知の連鎖が解き放つ未来への躍動

 これまで第370夜から第376夜にかけて、
・「価値創造」というAI時代に最も重要で、
・しかも目に見えない「切実→逸脱→別様」の営みを、
・いかにして再現可能な「知」 として体系化できるか

 を説明してきました。

 それは、「知の点(問い)」が一本の強力な「知の線」となり、
さらに立体的な「知の型(3つの知)」へと進化する「黄金のリレー」です。

さて、令和の地球沸騰環境(生命サステナブル)、ビジネス環境(AIデジタル等)等では、「立つ・立ち上がる・自立する・両立する」 という動詞が、これまで以上に経営事業創発のコア技術になります。

 事業が立ち上がる、経営・組織を立て直す、人財が自立する、経済価値と社会価値両立する、──これらはすべて、価値創造のプロセスをどう設計できるかにかかっています。

 価値創造とは、切実・驚きの『心のトリガー』が逸脱を呼び、『智慧の編集』が別様の価値を構築する」という、一種の“立ち上げ工学”です。

 上記を、大学生・ビジネスパーソン向けに、不確実な世界を自らの足で歩むための「実践的知性」及び、「自分のOS」としてインストールできるような道筋となるように提示してきました。
 
 ここで一旦、その道筋を区切りとして俯瞰し、それらがどのように響き合い、一つの大きな「うねり」となるのかを再整理・編集することが、「「きっと皆さんの役に立てるのではないか」と思いました。

1. 【起点】問い創造工学:「問い」がすべての起点となる(第372夜詳細)

 価値創造の第一歩は、正解を出すことではありません。
価値は「思いつく」ものではなく「立ち上げる」ものです。

すべての価値創造は「良質な問い」から始まります。
下図の「A.心のゆれ」を起点として「何を解くべきか」という問いそのものを設計することにあります。
そして、「問い」こそが「向かおうとする方向」を決めていきます。

 世の中に溢れる既存の延長線上にある課題(Problem)に埋没せず、
自らの「驚き・違和感」を「解くべき価値のある問い」へと工学的に純化させる。
この「問い」の強さが、プロジェクト(地域創生・事業創生・人財創生)の初速と深度を決めます。

2. 【拡張】シナリオプランニング:「不確実性」を地図に変え未来の「地図」を広げる(第373~374夜詳細)

 立てた「問い」に対し、未来は常に「複数の顔」を持って現れます。
一つの予測に固執することは、変化の激しい現代において最大のリスクとなります。

 これまでの競争環境が自分たちに不利な方向に大きく変化した時に、
その脅威の準備・適応ができていないことが、多くの企業の「破綻」の原因です。
それは、「国」「地域」「業界」も同様です。

 「心の置き方」と「モノの見方」のフェーズを上げることが重要です。(第373夜)

 シナリオプランニングとは、起こり得る複数の未来を可視化する技術です。
未来を「当てる」のではなく、複数の可能性を「拡張」「準備」しておくことで、
私たちの思考は硬直化から解放され、しなやかなレジリエンス(適応力)を獲得します。

 チャンスは、準備のあるところにやってきます。(ルイ・パスツール

3. 【触発】セレンディピティ:偶然を「追い風」に変える(第375夜詳細)

 「問い」を持ち、「複数のシナリオ」を描きながら行動を続けると、そこには必ず予期せぬ出会いや出来事——すなわちセレンディピティ——が訪れます。
それは単なる幸運ではありません。

「やってくる偶然(Outer)」「迎えにいく偶然(Inner)」が結びつく「格別な間(時空間)」を発見した時に、そこに大いなる不思議なエネルギーを感じます。
自分の内面的な意識や関心が、外の出来事と結びつく能動的で持続的な姿勢がそれを呼び込みます。

 そこでは「準備された心(Prepared Mind)」が、シナリオという地図を持っていたからこそ気づけた「意味のある偶然」「発見の力」です。
 この偶然を価値創造のエネルギーとして取り込むことで、当初の計画を超えたイノベーションが誘発されます。

4. 【深慮・羅針盤】3つの知:戦略に「魂」を吹き込む(第364夜、第376夜詳細)

 3つの知は、本体系における“判断の羅針盤”であり、
問いとシナリオによって広がった可能性の中から、
どの方向に進むべきかを決定する中核機能です

 令和の時代は、下図のように、
・「何のために創るか(①Why)」、
「何を創るか(②What)」を
「具体化する(③How)
 という「ひとつなぎ」を科学し、
工学の手法価値を設計するイノベーションの時代です。

  • 深い知(Why / ミッション / 気立て): 禅的思考で己の根源を掘り下げ、揺るぎない「志」を立てる。
  • 高い知(What / ビジョン / 見立て): 「過去と現在」から弁証法的に未来を統合し、ワクワクする「理想の姿」を描き出す。
  • 広い知(How / イノベーション / 仕立て): 新結合の視点で、既存の枠組みを超えた「別流の具体的な解決策」を具現化する。

この「気立て・見立て・仕立て」が揃ったとき、戦略は「逸脱の精度と力」を極め、独自の輝きを放ち始めます。

5. 【実装】価値創造工学:未来を「現実」へと定着させる「統合の知」(第370~371夜詳細)

「価値創造工学」とは、「人の役に立つ仕組みを考え、試し、社会に届けるための心得・思考・実践の方法論」です。
 そのために、「問い」「シナリオ」「セレンディピティ」「3つの知」をバラバラの点としてではなく、「点→線→面→立体」の一気通貫のシステムとして捉えるのが「価値創造工学」の特質です。

 「3つの知」で磨き抜かれた構想・戦略を「価値創造工学」という実行システムへとバトンタッチします。
人々に役立つ想い(想像)を構造化し、他者を巻き込み、社会に価値を実装(創造)していく。
ここに至って、思考は初めて「実体」を伴う成果へと昇華されます。

問いが方向を指し示し、(未来の行き先)
シナリオが歩むべき可能性を広げ、(未来の想像)
セレンディピティが加速を生み、(未来との遭遇)
3つの知が羅針盤をつくり、(未来の創造)
価値創造が未来を先取りする。(未来の戦略)

この連鎖を意識的に回し続けることで、価値創造は「一部の天才による閃き」から、「誰もが実践可能な知の技術」へと昇華されていきます。

■ 実践のフィールドへ

 ここで、「問い」から「実装」までを一気通貫で可視化し、戦略の精度を極めるための「価値創造の知・統合マップ(5ステップ版)」をご用意しました。
 このマップは、不確実な未来を自らの意志で切り拓くための「思考の航海図」として活用いただけます。

【価値創造の知・統合マップ:五位一体のプロセス】

  ステッププロセス名航海のメタファー役割と知のダイナミズム
 1問い創造工学
(気立て:切実・驚き)
航路の選定(起点)既成の目的地を疑い、自分たちだけの「別流の座標」を打ち込む。
 2シナリオプランニング
(見立て:未来の想像)
海図の作成(拡張)起こり得る複数の未来を可視化する。未来を予測するのではなく、不確実性を「可能性の束」として準備する。
 3セレンディピティ
(未来との遭遇)
潮流の感知(触発)海図にない「隠れ島」や「予期せぬ潮流」を発見し、チャンスとして捉えて推進力に変える。
 43つの知
(仕立て:未来の創造)
羅針盤(判断)【深い・高い・広い知】により、海図の中から「自分たちの進むべき別流の道」を構想して、新成長戦略の基盤・意思決定とする。
 5価値創造工学
(新成長戦略)
操船・実装(実践)磨き上げた戦略を、社会実装可能な形へと構造化する。想いやアイデアを、具体的な価値(仕組み)として現実に定着させる。

【統合マップの活用ガイド】

  • ステップ1〜3(探索フェーズ):

視野を広げ、枠を外し、未来の想像性の翼を広げて、外部環境(やってくる偶然)と自分の内部環境(迎えにいく偶然)が出会い、連想するフェーズです。ここでは「正解」を求めず、可能性を最大化させることが重要です。

  • ステップ4(戦略昇華フェーズ):

 集まった情報や偶然を、「ミッション(Why)」「ビジョン(What)」「イノベーション(How)」という3つのフィルターに通すことで、従来の常識を超える「本質的な違い」と「共感」を両立させた価値創造につながるステップとして位置づけです。

 3つの知は、本体系における“判断の羅針盤”であり、
問いとシナリオによって広がった可能性の中から、
どの方向に進むべきかを決定する中核機能です。

それが、誰の真似でもない、あなただけの「新成長戦略」へと進化させます。

  • ステップ5(完遂フェーズ):

研ぎ澄まされた知を、工学的なアプローチで社会へ繋ぎます。産官学の連携や、具体的なプロジェクト運営はこの段階で真価を発揮します。

この5ステップを回し続けることで、価値創造は「一過性の閃き」ではなく、再現性のある「体系的な知」へと進化します。大学での講座や、地域共創のプロジェクトを推進する際の共通言語としてぜひお役立てください。

フェーズ役割目的(大学・地域実装の視点)
1. 問い創造工学航路の決定「地域の困りごと」を「未来への問い」へ昇華させる
2. シナリオプランニング海図の作成不確実な未来を「リスク」ではなく「可能性の束」として捉える
3. セレンディピティ追い風の活用準備された心で、偶然の出会いをイノベーションへ転換する
4. 3つの知判断の羅針盤ミッション・ビジョン・イノベーションの視点から意思決定を導く
5. 価値創造工学操船の基盤(OS)上記をシステムとして回し、具体的な価値を社会に実装する

■ 大学生・ビジネスパーソンの皆さんへ
 ~AIは「答え」を出すが、人間は「問い」を創る~

 この「知の体系」は、机上の理論に留まっていてはその真価を発揮しません。
特に、次代を担う大学生や、産官学の最前線で地域・事業を「発想・構想・実装」する起業家・実務家たちにとって、これは「未来を切り拓くための航海術」そのものです。

 かつて、明治維新の日本は「立つ」時代でした。そこでは武士という階級は蒸発しました。
そして、AIが立ち上がった「令和」のいま、再び、日本・企業・地域・学校は、「立つ」時代に入りました。

(AIが「AIエージェント」「AIロボティクス」の先に、どのように進化していくかの複数のシナリオは、新価値創造研究所ではすでに「シナリオプランニング:AIの本来と将来」としてまとめていますが、どこかでご案内します)

 「問い創造工学」~「価値創造工学」は、「立つ」ための工学でした。
切実・驚きのトリガーが逸脱を呼び、智慧の編集が別様の価値を構築する」
という、一種の“立ち上げ工学”です。

 生成AIは、正解探索は得意ですが、問題設定は苦手です。
この「AI」が苦手の領域で、
「人間の側」の開拓領域である「問い」を自ら立てて、
不確実な未来に「シナリオ」を携えて飛び込み、
そこで起きる不思議な「偶然」を自分(たち)のものにして、
貪欲に「別流の価値」を創り上げていく。


生成AIは「答え」を出すが、人間は「問い」を創る
その様な時代の「幕」が2年前から上がっています。
このコラムの航海に例えれば、もう「船出」が始まっています。

 この第376夜のコラムから、自分ゴトとして始まるのは、
・皆さん一人ひとりが、自らのフィールドで「新たな問い」を立て、「別流の価値」をつかみ取るコト。
・そして、是非「実践」での素晴らしい実践と物語を紡いでいくコト。
 そのコトを切に願っています。

 参考に、新価値創造研究所の「価値創造の秘訣」(第82夜)をご紹介します。
 ここまでの多くの内容は、
1.自分を変える
2.他者を愛する
3.余白をつくる

 を説明してきました。

 これからの「実践モード」である
4.舞台をつくる
5.関係をつくる
6.信頼をつくる
7.成功をつかむ

 をできる限り早く体験モードに入って挑戦してください。

 応援・伴走支援します。


価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第376夜:「価値創造の3つの知 」-価値創造の「OS」を起動せよ

2016年4月5日 問い・シナリオ・3つの知の統合

  「価値創造の3つの知」は、本コラム「価値創造の知」の『大黒柱』であり、「人体」で言えば『背骨』、「航」で例えると「竜骨(キール)」です。

 この「3つの知」を成長経営の背骨にして、前職パイオニア社と現職(多業種業態、教育機関、自治体を支援伴走)で最大活用してきました。

 本夜は、下記「価値創造の4段階プロセス」の第3ステップに位置づけられる「3つの知」を「価値創造の全体の流れ」中で関連付けてお伝えします。

「3つの知」は、第364夜に詳述していますので、時代を、日本を、地域を、自分を、切り拓きたいと考えている「大学生・ビジネスパーソン」の皆さんは、下記、本コラムより先に、「第364夜」と「SDGs経営塾 第7回 世界観を持つ」をご覧いただくことをお薦めします。

■ 価値創造の4段階プロセス

新価値創造研究所が提唱する「独自のプロセス」は、以下の4つのステップで構成されます。

  1. 問い創造工学: 「何を解くべきか」という起点(ベクトル)を決める。
  2. シナリオプランニング: 不確実な未来を可視化し、可能性(地図)を広げる。
  3. 3つの知: 広げた未来を「自らの知」で濾過し、戦略の精度(逸脱)を磨く。
  4. 価値創造工学: 磨き上げた戦略を、社会実装可能な形へと構造化(バトンタッチ)する。

■「3つの知」:戦略に魂を吹き込み、精度を磨くフィルター

 第373~375夜でお伝えした「問い創造」→「シナリオプランニング&セレンディピティ」で未来の選択肢を広げただけでは、まだ「輪郭がぼやけている未来」に過ぎません。

シナリオプランニングの「未来の可能性の地図」を広げた後に、
 下図「3つの知」(第364夜)を活用して、他でもない、自らの
・深い知:「意志(Why?→気立て・ミッション)」
・高い知:「理想(What?→見立て・ビジョン)」
・広い知:「新結合(How?→仕立て・イノベーション)」
 というフィルターで濾過(ろか)することで、戦略としての精度(逸脱・別流の精度)を高める。
このプロセスこそが、価値創造を「自分(たち)ゴト(智慧×意志)」として着地させる羅針盤になります。
 ここで、成長戦略は「心と智慧」が統合した「唯一無二の価値」へと進化します。

 この流れを網羅して、本夜の「3つの知(深い知・高い知・広い知)」を綴ります。

① 深い知(Why?):ミッションと「錨(アンカー)」

  • 本質: 禅的思考により、「なぜ自分(自社)がやるのか?」「大切なことは何か?」という根源的な意義を問う。
  • 役割: 変化の激しい海の中で、自分たちが揺るがないための「錨」を下ろす。この「志」が、戦略に揺るぎない軸を与えます。

② 高い知(What?):ビジョンと「北極星」

  • 本質: 弁証法を用い、「正・反・合」「守・破・離」の先に「なりたい姿」を描く。
  • 役割: シナリオが示す複数の未来の中から、自分たちが目指すべき「北極星」を定める。「切実」の力やワクワクする「夢中・数寄」の力が、推進力の源となります。

③ 広い知(How?):イノベーションと「新結合」

  • 本質: シュンペーター的な新結合により、一見無関係な要素を「一つの視点」で結びつけて、別流の新しい化合物をつくる。
  • 役割: 自分たちの「得意技」(内側)と未来のニーズ(外側)を掛け合わせ、具体的な解決策を構想・設計する。ここで「一つ上の価値」が具現化します。

■ 逸脱の精度を磨き、価値創造工学へ

「3つの知」を通す(ろ過する)ことで、シナリオプランニングで描いた未来設計図は、「客観的な予測(智慧)」から「主観的な戦略(意志×智慧)」へと変貌します。

 『3つの知』は成長経営の羅針盤です。
それを習得・体得していただくために、下図の様に、「ドック」に入って、「心と智慧」「ミッション・ビジョン・イノベーション」をブラシュアップして、自社、自地域の「羅針盤」を作成します。

 参考ですが、このワークショップを通じて、「自分の未来の羅針盤」も作成することで、転職や大きく飛躍された方たちを見てきました。


 下図(切実→逸脱→別様)の様に、世の中の平均値からあえて「逸脱」し、そのズレを独自の価値として磨き上げること。この「逸脱の意志と智慧」を研ぎ澄ます精度こそが、イノベーションの成功確率を高めます。

こうして研ぎ澄まされた戦略のベースが、最終的に「価値創造工学」へとバトンタッチされます。ここでは、想いやアイデアが、具体的なビジネスモデルや社会システムとして「工学的」に設計され、現実の世界へと放たれていきます。

■ 大学生・ビジネスパーソンの皆さんへ

「問い」を立て、「シナリオ」で未来を広げ、「3つの知」で己を貫き、「価値創造工学」で形にする。

 この一連のプロセスを回し始めたとき、あなたは単なる「時代の傍観者」ではなく、未来を能動的に設計する「創造者」と変貌していきます。
 ○○大学から、○○企業から、そして○○地域から、この「知の型」を武器に新たな価値を創造するリーダーが生まれることを期待してやみません。


価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第375夜:「問い創造工学」と「セレンディピティ」

2026年4月4日: 「やってくる偶然」「迎えにいく偶然」

■ 要約:「問い創造とセレンディピティ」


・ 「問い」の創造が、セレンディピティ(偶然の幸運)を呼び込み、それが新たな価値を生み出す源泉になるコト
・ 「問い」の創造は、既存の前提を疑うことから始まり、それが偶発的な発見と結びつくことで、より本質的な価値創造につながるコト

 本夜の核心は、セレンディピティとは偶然ではなく、「二つの偶然の出会い」であるという点にあります。
そして、「偶有性:偶然の幸福に出逢う能力・場」について図解と共に、解き明かしていきます。
下図は、参考に図解したものです。

1.セレンディピティ偶然の幸福に出逢う能力の正体

セレンディピティは次の2つの結合で生まれる:

  • やってくる偶然(外からの変化・情報)
  • 迎えにいく偶然(自らの意図・問い・問題意識)

この2つが出会ったときに、はじめて価値ある発見が生じる。


2.「問い創造」の役割(核心)

「迎えにいく偶然」を成立させる「鍵」が、問い創造である。

  • 常に対象に対して
    • 疑問
    • 問題意識
    • 意図・意思
      を持ち続けること

これにより、
→ 偶然を“受け取れる状態”を準備する

つまり、
良質な問い=セレンディピティを引き寄せる「鍵」


3.シナリオプランニングとの関係

  • 「問い(鍵)」と「対象・情報(鍵穴)」を結びつける方法が
    シナリオプランニング
  • 不確実な未来に対して
    • 自分の問いを当てはめ
    • 意味を編集・再構成する

→ これが「価値創造のプロセス」


4.前提条件:「欠けたモデル」と「余白」

重要な認識:

  • 現実は常に 「欠けたモデル」
  • 自分の思考には 「余白」 が必要

これにより:

  • 新しい視点が入る余地が生まれる
  • 「やってくる偶然」を受け入れられる

5.「間(ま)」の創造=価値創造の場

セレンディピティは、

  • 「やってくる偶然」と「迎えにいく偶然」
  • 2つの“片”

が出会う 「間(ま)」 に発生する

→ この「間」

  • 思索の場
  • 実践の場
  • イノベーションの場

となる


6.価値創造=新結合(イノベーション)

  • 異なる要素(片と片)を
  • 組み合わせることで

新結合(New Combination)=価値創造

ただし重要なのは:

  • 何でも組み合わせればよいのではない
  • 「問いの質」と「意図・意思の強さ」が結果を左右する

■ 結論

 セレンディピティとは、
「問いによって準備された自己
(Inner)「外から来る偶然(Outer)」が、
「格別な間(ま)」

結びつくことで生まれる『価値創造』の醍醐味である。


■ 以下、本文

 前夜、前前夜(第373~374夜)に、「問い創造」と「シナリオプランニング」のつながりについて綴りました。要約すると、シナリオ「問いを立てるための舞台装置であり、問いその舞台で「新しい価値(物語)」を紡ぐためのエンジンである、という構造です。

 また、その二つを『鍵と鍵穴』に例えると、「問い」という『鍵』を使って、「シナリオプランニング」の4つの世界(象限)の『鍵穴』に入れて、「価値創造の扉」を次々に開けていくというイメージになります。
 あらゆる「問い」(鍵)には対応する背景や文脈や世界(鍵穴)が存在し、 AI時代には、それらを見つけ出し、つなぎ合わせるという「価値創造の知」を習得・体得する重要性が高まります。

 さて、これまでプロジェクトチームで挑んだ「シナリオプランニング」のナビゲーターの現場では、次々と偶然・偶発的なことが起きて不思議な感覚を覚えることがしばしばあります。
 そのような現象を「セレンディピティ」と言います。

 電話しようとした相手から、同時瞬間に電話がかかってくる。または、探していた「問い」にたいするヒントや答えが、突如、本やメディアから現れてくる「あの偶然の感覚」です。
 多くの方たちが、この摩訶不思議な「セレンディピティ」を経験してきているはずです。

 本夜は、その「問い」と「シナリオプランニング」の間(あいだ)で浮かび上がってくる「『やってくる偶然』『迎えにいく偶然』」の『セレンディピティ』を中心に綴ります。 

 その「セレンディピティ」について、松岡正剛師匠は、千夜千冊1304夜『セレンディピティの探求』で次のように記しています。参考に、その一部を加筆引用します。
---------
・・・セレンディピティは「やってくる偶然」「迎えにいく偶然」とがうまく出会ったときにおこっているというべきなのである。
 「やってくる偶然」は自分では律していない。向こうからやってくる。かつてメーテルリンクがさかんに強調したことだ(千夜千冊68夜)。
 一方、「迎えにいく偶然」には自分の意図や意思がいる。意図や意思の持続がいる。意図をもって偶然を迎えにいかなければならず、それゆえこれはふだんから準備していなければならない。

 その意図や意思には、「自分が何を求めているのか」ということを試行錯誤したプロセスをトレースしておくという努力がともなっている。これが「迎えにいく偶然」だ。このとき、ふいに「やってくる偶然」に出会って、格別のセレンディピティが生じる。・・・
---------

 キーワードは、「やってくる偶然」「迎えにいく偶然」です。

迎えにいく偶然」には自分の意図や意思の持続が必要で、これはふだんから準備していなければならない」
これが、「問い創造」の目に見えない「核心」「気立て」です。
言い換えると、「『迎えにいく偶然』には、ふだんから、対象に向かって『疑問・疑念や数寄』という強い意図、意思、問題意識を持ち続け、準備するることが肝要である」ということです。

 さて、私の家にはたくさんの購入書籍があります。
松岡正剛師匠にならって、本を読む時は、マーカーを手にして、たくさんのマークや書き込みを入れます。
数年経って、同じ本を読むと、前回はマークしていないところに、今の自分にとっては、重要なコトが書かれていることに驚くことがあります。

・今の自分の問題意識や「問い」
・今の自分がどんな出力を望んでいるのか?
・今の自分の将来に、何が不足なのか?何を考えたいのか?

それは、「時」を経て、自分の意図・意思が変化・進化しているからだと気づきます。

 読書では「著書(著者)」に表現されたことと、「自分の疑問・想像力・創造力」が「交じり合う・混ざりあう・のめり込む」格別の出会いの「場」になることを数多く経験してきました。
(その筆頭が、「松岡正剛師匠」「谷口正和師匠」の著書群でした)

 そこは、まさしく「やってくる偶然」と「迎えにいく」偶然の出逢いのまばゆい「場」になります。

その「思索の場」を「現実・実際の場」に移すときに、「やってくる変化・現実・偶然」と「迎えにいく自分(たち)の想像力・創造力」が交じり合う舞台が、「シナリオプランニング」です。
 つまり、自分(たち)の持つ知や関心(鍵)を、情報や対象(鍵穴)に当てはめて、「未来の複数の不確実な世界」を編集し、切り拓く『格別な場・舞台』なのです。 

 そこでは、「迎えにいく自分の『問い』」の『質』と『想いの強さ(切実・数寄)』が重要な『鍵』となることが感じられたならば幸いです。

 受動的で、「枠を外せない経営者」、「迎えにいく準備ができていないメンバー」が集まっても、想定以上の結果が出ない大きな原因・理由がここにあります。

■ 眼前の現実が「欠けたモデルである」

 シナリオプランニングに関わらず、すべての重要な認識は、今現在の「自分」「会社」「地域」「学校」「社会」の姿・状態は、「欠けたモデル」であることを出発点にすることにあります。

引き続き、松岡正剛師匠は、千夜千冊1304夜『セレンディピティの探求』を加筆引用します。
---------
・・・そもそも予測であれ、ひらめきであれ、シナリオの創造であれ、なんらかの先取りができるためには、自分がいま立っている発想や思索に多少の“ゆるみ”が生じる必要がある。

 これはどんな作業であってもブレイン・インベトリー(在庫、持ち物)な作業中のことだろうから、この途中で既存の分析に頼りすぎていたり、勝手知ったる解読に荷重をかけすぎているのでは、自分のブレイン・インベトリーに“ゆるみ”は生じない。そうではなくて、むしろ自分の“いま”に、不足や曖昧やまちがいや過度があることを許容したほうがいいはずだ。

 そうすると、進行中の作業や発想に、それをさらに進めるうえでの発想モデルや思考モデルが自分には“ない”ことに気がつく。これは自分の発想力や企画力や思考力に展望性や可塑性がないということだから、がっかりしてしまうこともある。

 しかし、がっかりしているのではまずい。なぜなら、自分に発想モデルや思考モデルがないということは、いいかえれば、ここが肝心なのだが、そこに「欠けたモデル」があったことに気がつけばいいということなのだ。

 このとき、この「欠けたモデル」に当たる“何か”が、向こうからやってくるときがある。これが「やってくる偶然」だ。これを「欠けたモデル」をもっている自分が「迎えにいく偶然」の鍵か鍵穴かの片われと出会えたらしいと思えたとき、そこにセレンディピティがおこるわけである。・・・
---------

 上記に関連して、松岡正剛師匠は、
・「自分の中に『余白』(第50夜、第89夜、第207夜詳細)を意識的に持つことが重要なのだ」
・「自分に余裕がないとき、いっぱいいっぱいになっている時に何かが入る余地がなくなる。そんな時にこそ、『余白』が必要なのだ」

 という指南がよくありました。(SDGs経営塾 第6回「大切なことは何か」参照)

 上記の「欠けたモデル」と「余白」は同じことを云ってます。

 参考に、SDGs成長経営セミナー等で、過去の成功体験、栄光から逃れられない「経営陣・社員」の方たちにお伝えするスライド2枚をアップします。

・常に会社は「倒産する方向」に向かって進んでいるコト
・眼前の現実が「欠けたモデルである」と共通認識するコト


「第 148 夜:『真の企業再生・創生』とは?」では、「再考・再興」の方法と心得の詳細を綴りましたが、
「3つの切り口・心得」を引用します。
①「未来から逃げない」こと
② 眼前の現実が「欠けたモデルである」と共通認識すること
③ 現状から「逸脱」すること


■ 格別な間(ま):価値を創造するセレンディピティ

 上記を綴っている最中に、「やってくる偶然」「迎えにいく偶然」を図解したいと思い始めました。
このワーク自体も、脳内で高速に「やってくる偶然」「迎えにいく偶然」が出会うセレンディピティで仕上げたのが下図になります。

 それは、「『間(ま)』の創造」(第17夜)と「イノベーション(ツープラスワン)」(第308~第313夜)の出会いです。これをまとめた時に、「○○成長セミナー」で具体例と共に、多くの方たちにお伝えできると直感しました。

 さて、「間(ま)」という言葉は、私たちは無意識に使っています。
間合い 間抜け 床の間 時間 空間 間際 間に合う 間違い
間にまに 世間 人間 仲間 間引き 間近 間奏 等々
 「間(ま)」とは何でしょうか?

 ここで、再度松岡正剛師匠の講義録を記します。
-----
・・・「間」は日本独特の観念です。ただ、古代初期の日本では
「ま」には「間」ではなく、「真」の文字が充てられていました。

真理・真言・真剣・真相・・・

その「真」のコンセプトは「二」を意味していて、それも
一の次の序数としての二ではなく、一と一が両側から寄ってきて
つくりあげる合一としての「二」を象徴していたそうです。
「真」を成立させるもともとの「一」は「片」と呼ばれていて
この片が別の片と組み合わさって「真」になろうとする。
「二」である「真」はその内側に2つの「片」を含んでいるのです。

それなら片方と片方を取り出してみたらどうなるか。
その取り出した片方と片方を暫定的に置いておいた状態、
それこそが「間(ま)」なのです。・・・
-----

 「やってくる偶然(片方)」「迎えにいく偶然(片方)」が出会う格別な『時間・場』がセレンディピティであり、シナリオプランニングです。
 上図の二つの絶妙な「出会い」「間合い」が、偶然を必然に変えていきます。

 あらためて、そのために必要なことは、
『迎えにいく偶然』には、ふだんから、対象に向かって『疑問や疑念』という強い意図、意思、問題意識を持ち続け、準備することです

 それを具体化するのに最適な、「問い」(鍵)と「シナリオプランニング」(鍵穴)」を是非活用されてみてください。

■ 「間(ま)」「セレンディピティ」「価値創造ダイアグラム」

 「価値創造(=イノベーション)」とは、「境界線」を外し、「枠「を超えて、交じり溶け合い、、「一段上の新しい関係・果実」を創ることです。

 片方と片方が交じり合う身近な例を上げます。
・空間: 縁側(内と外の境。内なのか外なのかわからない)
・時間: 黄昏(昼なのか、夜なのかわからない)
 私は、この交じり溶け合う「時間」「場」が大数寄です。
そのような境界がなくなる状態・状況が、何かが生まれる「価値創造=イノベーション」の「時空間」です。

 さて、「価値創造」は、上図のように「片方と片方を体内(脳内)」に入れて料理にして創出する行為と同じです。

「イノベーション」を提唱したシュンペーターは、イノベーションで一番重要なことは、「新結合(New Combination)」と言いました。 なので自分にとっては、それは「真と間」=「イノベーション」なのです。(第309夜、第361夜)

 そのうえで、セミナーや支援伴走では
・空間上の「真」を「横の新結合」
・時間上の「真」を「縦の新結合」

 として「3つの知」(第361夜、第364夜)の中心メソッドとして説明しています。(第75夜、第361夜詳細)

 ただ、何でも和えればいいものではありません。料理でもクラブDJや建築でも上手いものと上手くないものがあります。コツがいります。それは、絶妙な「間(ま)」にあるですが、それは「AI」ではなく、「人間の側」が保持・革新していきたいものですね。

 ただ何れにしても重要なことは、「多くの人々が共感・共振し、幸せになること」を心の奥底(気立て)におきながら、当たり前、常識(コモディティー)から離れ、逸脱して、「真と間」を追及して、「今までになかった格別な関係を創るコト(見立て)」が「価値創造(仕立て)」につながります。

 参考に、それを展開・実現する新価値創造研究所オリジナル「価値創造ダイアグラム」(第54夜)を添付します。下図の「発見・偶有性(=セレンディピティ)」がイノベーションの核心です。
本コラムでは、事例と共に、何回かご案内してきました。
使いこなすと、絶対にいいことがあります。ww

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第374夜:「問い創造工学」と「シナリオプランニング」後編

2026年4月1日: 『緑茶の本来と将来』を「問い」でシナリオプランニングする

本夜は、「問い創造工学」(第372夜)の第3部(3部作)です。

先日、妻が購入してきた「透明醤油」が食卓に並びました。
私には、「醤油とは黒いモノ」という先入観がしっかりとあることに気づき、目の前の「透明醬油」の発現によって、「既知」という自分の中に覆っているフィルターの向こう側にある、「未知」の広がりに「驚き」がありました。
「価値創造」の始まりは、このような「心の揺れ(驚き・切実・数寄)」から始まります。

“当たり前(既知)を疑えるかどうか”

 私たちは、「驚き・切実・数寄」を契機として、様々な「問い」を浮かび上げることが重要です。その中に「価値創造」の種が潜んで待ってくれているからです。
 それを「価値創造工学/問い創造工学」(第370~373夜)で図解とともにお伝えしてきました。

・「問い創造」「価値創造」は、目前の“あたり前”に驚ける人から始まりコト
未来は「待つ人(受動)」ではなく、価値創造者(能動)によって『創り変えられる』コト

 重要な認識は、
新しい価値や問いは、特別な出来事から生まれるとは限らないコトです。
 むしろ、普段見慣れている“あたり前の世界”の中にこそ、
たくさんのヒントがあることです。

 大切な心構えは、
『なぜこれが当たり前なのか?』
・『本当は違う形もあり得たのではないか?』

と疑い、目の前の現実を当たり前でないもの”として見ることです。
そのとき初めて、
驚きや違和感、好奇心が生まれ、
そこから『問い』が生まれ、
新しい『価値創造』につながってくることです」

 上記に関連して、九鬼周造「驚きの情と偶然性」より参考引用します。 
---------
 ・・・「驚き」という「情」は、偶然的なものに対して起こる「情」である。
偶然的なものとは「同一性」から離れているものである。同一性の圏内に在るものに対しては、当たり前のものとして、驚きを感じない。
 同一性から離れているものに対して、それはあたり前でないから驚くのである。・・・
--------- 

 上図の左側が「同一性圏内のあたり前」で、右側が「同一性から離れているもの」です。
「価値創造」「問い創造」が扱うのは、この右側の「人々の驚き」の領域です。
それを実現するのが、「イノベーション」(第364夜)です。
*イノベーションとは、『内側に異質なものを導入して新しくする(新結合:Innovare)こと』を実行(:-tion)して、経済や企業が発展すること。

 私の前職パイオニア社の連続ヒット商品プロデュースや、企業・教育機関・自治体の支援伴走のこれまでは、この『驚き創造』のイノベーション領域を相手にしてきました。

■ 「問い」によるシナリオプランニングの出力の違い

  それでは、この領域をターゲットにして、「緑茶の本来と将来」について、
・入門編(-X)
・基礎編(-Y)
・応用編(-Z)

 を用意しましたので、三つの「問い」・「問いの質」の違いによって「方向性、アウトプット」が大きく変わる「シナリオ(-X.-Y.-Z)」をご覧ください。
 
 さて身の回りのテーマとして、「緑茶」が“ 伝統 × 健康 × 技術 × グローバル化”が刺激的に交差するように見えるので、これまでの“あたり前(既知)”を書き換えてくれるシナリオプランニングに最適なテーマではないかと洞察しました。

 それでは、緑茶シナリオプランニングの「入門編」「基礎編」「応用編」の順番で提示しますので、複数の「問い」がどのような役割・活躍をするのかを意識しながらご覧ください。

■ 入門編シナリオプランニング-X: 緑茶の本来と将来

1.問い創造(Why)
 まずは「本質に迫る問い」を設定します。

ベースの問いから(学生への提示)
問い「緑茶とは何か?」


深めたい問い
問い:緑茶は「飲み物」なのか「文化」なのか?

  • なぜ現代人は緑茶を飲まなくなっているのか?
  • 緑茶の価値はこれからも続くのか?
  • 緑茶は未来にどんな意味を持つのか?

2.ForcalQustion = “焦点をあてる問い
(→ある問題や意思決定において、「何が最も重要な課題か」「何を解決すべきか」を明確にするための核心的な問いのコト)
ForcalQustion問い「緑茶はこれからの社会でどのような価値を持ち続けるのか?」

3. シナリオプランニング(What)

STEP1:変化要因
例(学生がポストイットを使って描き出す+補助)

  • 健康志向の高まり
  • カフェ文化の拡大
  • ペットボトル飲料の普及
  • 海外市場の拡大
  • 若者の嗜好変化
  • 茶農家の減少
  • AI・スマート農業
  • サステナビリティ
    ・・・

STEP2:2軸の選択(重要)

横軸健康・機能価値

低 ←→ 高

縦軸:文化・体験価値

低 ←→ 高


STEP3:4つの未来(世界)


4象限のシナリオ

・A世界:ウェルネス文化としての緑茶

  • 健康 × 文化
  • 高級・体験型
  • 茶道・マインドフルネス

・B世界:伝統文化としての緑茶

  • 文化は高いが健康価値は限定
  • 観光・文化保存
  • 一部の人のもの

・C世界:機能性飲料としての緑茶

  • 健康 × 低文化
  • サプリ・機能性飲料化
  • 日常消費

D世界:衰退する緑茶

  • 低健康 × 低文化
  • 消費減少
  • 代替飲料へ

4. 戦略(How)

問い 共通戦略:どの未来でも必要なことは?

  • 若者への再定義
  • ブランド価値の再構築

問い 最も起きそうな未来は?
  →仮に「C世界(機能性)」とすると

  • 科学的価値の強化
  • 健康マーケティング

問い 最も望ましい未来は?
 →多くの場合「A世界」

  • 文化 × 健康の融合
  • 体験型価値の創出

■ 基礎編シナリオプランニング-Y: 緑茶の本来と将来

 「寿司」が世界の食文化(ヘルシー、クール、職人技)を書き換えたように、次は「お茶・緑茶」が、単なる飲料を超えた「別流・別様の文化経済」を創れるか?

1. 現状の「切実・違和感」の発見

違和感: なぜ、私たちは「マインドフルネス」を求めながら、同時に「エナジードリンク」で自分を追い込み続けるのか?

不条理: 現代社会は「タイパ(タイムパフォーマンス)」を追求し、常に脳が覚醒・疲弊している。一方で、リラックスのための手段(アルコールや嗜好品)は健康を害したり、集中力を削いだりする。

2. 本質的な「問い」への変換

上記の不条理を、ライフスタイルと産業を変える「問い」に変換します。

  • ① ライフスタイルに関する問い:

「『飲む』という行為を、水分補給ではなく、『脳のOSを切り替える儀式(モードチェンジ)』へと再定義できるか?」

  • ② 世界的な産業の変化に関する問い:

「茶葉という『物質』の販売から、『時間と空間の質を制御するテクノロジー(バイオ・デジタル連携)』へと産業の境界線を溶かせるか?」

3. 価値創造のシナリオシミュレーション

これらの「問い」から導き出される、2030年代の「お茶・緑茶」が創り出す新しい世界線です。

【シナリオ:Social Zen Infrastructure(社会的「禅」インフラ)の誕生】

① ライフスタイルの変化: 「デジタル・デトックスの日常化」

  • 価値: お茶を淹れるプロセス(蒸らす時間、湯温の調整)が、Apple Watchの心拍数データと連動した「強制的なマインドフルネス・タイム」として生活に組み込まれる。
  • 具体像: 都市部のオフィスや家庭に、かつての「コーヒーメーカー」に代わり、AIがその時のストレス状態に合わせて最適なテアニン量を抽出する「スマート茶室ユニット」が普及。飲むだけでなく、その「香り」と「所作」が、仕事モードから休息モードへのスイッチになる。
  •  

② 産業の変化: 「ウェルビーイング・テックへの変容」

  • 価値: 農業としての「茶業」が、製薬・バイオ・ITと融合した「精密バイオ産業」へ進化する。
  • 具体像:
    • パーソナライズ茶葉: 個人の遺伝子や腸内細菌叢に合わせ、免疫力を最大化する特定の成分を強化した「機能性茶葉」のサブスクリプション。
    • 空間産業: 抹茶の「点てる」所作をVR/ARでガイドし、世界中の誰でも「茶人」としてコミュニティを主宰できるプラットフォーム。
    • 不動産・都市開発: 寿司が「カウンター越しの対話」を生んだように、緑茶を媒介とした「静寂を共有するサードプレイス(現代版・茶屋)」が、世界中の大都市の「孤独」を解消するインフラとして投資対象になる。

小まとめ:新価値創造流「別流の価値」

このシナリオにおける「別流の価値」とは、
・お茶を「喉を潤すもの」から「精神の調律(チューニング)デバイス」へと転換
 することにあります。

寿司が「生魚を食べる」というタブーを「高付加価値な体験」に逆転させたように、緑茶は「手間のかかる抽出」という弱点を「自分を取り戻す贅沢な時間」という強みに変換することで、世界的な新市場を創造します。

■ 応用編シナリオプランニング-Z: 緑茶の本来と将来

 お茶・緑茶が「世界のライフスタイルと産業を塗り替えるシナリオ(Y)」を、
さらに、
「不確実な未来の推進力(ドライビングフォース:DF)」と掛け合わせて深掘りしてみる。

1. 鍵となる3つのドライビングフォース(DF)

現在の社会潮流の中で、お茶の未来を決定づける「不確実だが強力な力」を3つ特定します。

  • DF①:Z世代を中心とした「ソバーキュリアス(あえて飲まない)」の加速
    • アルコールによる「酩酊」ではなく、クリアな意識で「整う」ことを選ぶ層の拡大。
  • DF②:AI・自動化による「余暇の質」への問い直し
    • 作業が効率化され、余った時間をどう「豊かに過ごすか(Being)」という価値へのシフト。
  • DF③:メンタルヘルス・パンデミック(孤独とストレス)
    • デジタル過剰社会における、精神的な「避難所」や「リアルなつながり」の欠乏。

2. 「別流の価値」を生み出すシミュレーション

これらのドライビングフォース(DF)が、先ほど立てた「本質的な問い」と衝突したとき、どのような新しい価値が生まれるでしょうか。

【未来線 A:パフォーマンス・ティ(機能的進化)】

  • DFの作用: 「ソバーキュリアス」×「AI社会での集中力維持」
  • 価値の変換: お茶は「リラックス」のためではなく、「脳のパフォーマンスを最大化する精密飲料」へ。
  • 具体像:
    • シリコンバレー、本郷バレーのエンジニアが、エナジードリンク(覚醒)ではなく、緑茶のテアニン(集中とリラックスの共存)を「スマート・ドラッグ」として常用。
    • 産業の変化: 茶葉の成分をナノカプセル化し、経皮吸収や超音波抽出で「即座にゾーン(集中状態)に入る」ためのバイオテック製品が、サプリメント市場を席巻する。

【未来線 B:ソーシャル・リチュアル(社会的儀式としての進化)】

  • DFの作用: 「メンタルヘルス」×「余暇の質の追求」
  • 価値の変換: お茶を「淹れるプロセス」が、「孤立を防ぐコミュニティのOS」へ。
  • 具体像:
    • 世界中のスターバックスが「茶室(ティー・サロン)」併設型へ転換。寿司屋のカウンターが「板前との対話」を生んだように、ティー・バリスタが客の体調に合わせた茶を点て、「静寂と対話を売るサードプレイス」として不動産価値が再定義される。
    • ライフスタイルの変化: 朝のコーヒーが「ONへの強制起動」なら、夕方のお茶は「自分と繋がるログアウト」という社会的な儀式(リチュアル)として定着。

3. シナリオの統合:価値創造工学が導く「お茶の未来」

これらを統合すると、お茶は単なる農産物から、以下の3層構造を持つ「ウェルビーイング・プラットフォーム」へと進化します。

  1. レイヤー1(物質): 高機能バイオ茶葉(パーソナライズされた成分)
  2. レイヤー2(体験): センシング茶器(心拍や脳波に合わせた抽出)
  3. レイヤー3(文化): デジタル禅コミュニティ(茶を媒介とした繋がり)

 「価値創造工学」の「問い」への回帰

ここで、私たちが立ち返るべき「本質的な問い」はこれです。

「私たちは、お茶を売りたいのか? それとも、過剰なデジタル社会に『立ち止まる自由』を実装したいのか?」

後者であれば、競合はコーヒーショップではなく、瞑想アプリやメンタルクリニックになります。これが、「別流・別様の価値」の創出の一つになります。

■ 参考: 「価値創造工学の『問い』」と「シナリオプランニング」を繋げる「ドライビングフォース」

「未来を創るためのOS」という観点で、「価値創造工学の問い」と「ドライビングフォース(DF)」には、以下の3つの本質的な共通点があります。

1. 「当たり前(既成概念)」を揺さぶる破壊力

  • 問い: 「そもそも、なぜこうなのか?」と現状の不条理を突き、既存の枠組みを無効化します。
  • DF: 政治、経済、技術などの大きな変化の潮流(PESTなど)を捉え、「今の延長線上に未来はない」ことを突きつけます。
  • 共通点: どちらも「現在の延長線上にある予測」を否定し、思考のロックを外すためのトリガーとして機能します。

2. 「不確実性」をエネルギーに変える構造

  • 問い: 正解がない(不確実な)状況だからこそ、独自の問いを立てることで「新しい意味」を創出します。
  • DF: 未来を左右する「不確実な要因」を特定し、複数の可能性を分岐させます。
  • 共通点: 不確実性をリスクとして排除するのではなく、「別流(オルタナティブ)な価値」を生み出すための余白(チャンス)として活用します。

3. 「客観的な変化」と「主観的な意志」の交差

  • 問い: 社会の不条理(客観)に対し、自分の「志(主観)」をぶつけて問いを立てます。
  • DF: 世の中の大きな動き(客観)を分析し、それが自分たちに何を強いるのか、どう動くべきかという戦略的意志を導き出します。
  • 共通点: 「外の世界で起きていること」と「自分たちが成すべきこと」を接続するための触媒となります。

■ まとめ
 上記の流れを見ていただくと少しお分かりいただけてきたかと思いますが、

「シナリオプランニングで描いた複数の未来(ドライビングフォースの掛け合わせ)に対し、それぞれの世界で通用する『本質的な問い』を立てることこそが、価値創造工学の実践である」

・つまり、シナリオ「問いを立てるための舞台装置であり、問いその舞台で「新しい価値(物語)」を紡ぐためのエンジンである、という構造です。

 さて、上記の3つのシナリオ(入門編・基礎編・応用編)に驚きはありましたか?
それらの予兆は現在に点滅しています。その予兆の本質を見極め、見通すことが重要です。

 いまから、15年前が現在と違っているように、10年後、15年後の未来は、「地球サステナブル・AIデジタル・日本流コネクタブル」(第359~361夜詳細)の進展で間違いなく現在と大きく違ってくると核心・確信しています。。

 「変わっていく原動力・求心軸の見極め」と先ほどの「予兆の本質」とを先取りして洞察することが、AI時代に、「人間の側に与えらえているフロンティア」です。
 それを本夜は綴ってきました。

 さてさて、ビジネスで一番大事なことは、「違い(驚き・想定外)と共感」(第82夜、第364夜詳細)の二つを両立させることです。「違い(驚き・想定外)」がなければ、コモディティ化して低価格合戦に陥り、顧客との「共感」(コト発想)がなければ対価を受け取れません。

 AI時代には、その「違い(驚き)と共感」の両立の出来不出来の格差が明確に顕在化してきています。
だからこそ、AIが苦手な領域で、人間の側が能力を発揮できる、発揮すべき「価値創造工学」「問い創造工学」「シナリオプランニング」を連載してきました。

 これからは、どちらかを選択(OR)するのではなく、両立(AND)して高みにジャンプする「価値創造=イノベーション」の時代です。二つの焦点を両立させる「新バロックの時代」(第278夜、第360夜詳細)です。

本夜もシナリオプランニングの「二つの軸(ドライビングフォース)」を提示・展開してきました。
最初は難しく感じますが、数回トライしていると慣れてきて、各人の持ち味も滲み出てきて、「問い」の使い方、シナリオプランニングの出力が上がってきます。
 是非、挑戦してみてください。
腕のいい、ファシリテーター、ナビゲーターを選ばれ、伴走されることを助言します。

 私の持ち味である「五感ビジネス(視覚・聴覚・触覚・味覚・臭覚)」を上記のシナリオに放り込むと、数々のヒット商品や文化の創出が目に浮かびます。
 このように、自分の数寄、強味、弱みがあると、その異質がフィルターになって、新しい価値を創造することができるようになります。

 さて、ここまでの三部作で「私の極意」を綴ってきました。学生・ビジネスパーソンのの皆さんは、下図の流れ、体系を把えながら、不確実な時代をわがものにして、日本の未来を切り拓いていって欲しいと思います。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ