2026年4月4日: 「やってくる偶然」と「迎えにいく偶然」
■ 要約:「問い創造とセレンディピティ」
・ 「問い」の創造が、セレンディピティ(偶然の幸運)を呼び込み、それが新たな価値を生み出す源泉になるコト
・ 「問い」の創造は、既存の前提を疑うことから始まり、それが偶発的な発見と結びつくことで、より本質的な価値創造につながるコト
本夜の核心は、セレンディピティとは偶然ではなく、「二つの偶然の出会い」であるという点にあります。
そして、「偶有性:偶然の幸福に出逢う能力・場」について図解と共に、解き明かしていきます。
下図は、参考に図解したものです。

1.セレンディピティ(偶然の幸福に出逢う能力)の正体
セレンディピティは次の2つの結合で生まれる:
- やってくる偶然(外からの変化・情報)
- 迎えにいく偶然(自らの意図・問い・問題意識)
この2つが出会ったときに、はじめて価値ある発見が生じる。
2.「問い創造」の役割(核心)
「迎えにいく偶然」を成立させる「鍵」が、問い創造である。
- 常に対象に対して
- 疑問
- 問題意識
- 意図・意思
を持ち続けること
これにより、
→ 偶然を“受け取れる状態”を準備する
つまり、
良質な問い=セレンディピティを引き寄せる「鍵」
3.シナリオプランニングとの関係
- 「問い(鍵)」と「対象・情報(鍵穴)」を結びつける方法が
シナリオプランニング - 不確実な未来に対して
- 自分の問いを当てはめ
- 意味を編集・再構成する
→ これが「価値創造のプロセス」
4.前提条件:「欠けたモデル」と「余白」
重要な認識:
- 現実は常に 「欠けたモデル」
- 自分の思考には 「余白」 が必要
これにより:
- 新しい視点が入る余地が生まれる
- 「やってくる偶然」を受け入れられる
5.「間(ま)」の創造=価値創造の場
セレンディピティは、
- 「やってくる偶然」と「迎えにいく偶然」
- 2つの“片”
が出会う 「間(ま)」 に発生する
→ この「間」が
- 思索の場
- 実践の場
- イノベーションの場
となる
6.価値創造=新結合(イノベーション)
- 異なる要素(片と片)を
- 組み合わせることで
→ 新結合(New Combination)=価値創造
ただし重要なのは:
- 何でも組み合わせればよいのではない
- 「問いの質」と「意図・意思の強さ」が結果を左右する
■ 結論
セレンディピティとは、
「問いによって準備された自己(Inner)」と「外から来る偶然(Outer)」が、
「格別な間(ま)」で
結びつくことで生まれる『価値創造』の醍醐味である。

■ 以下、本文
前夜、前前夜(第373~374夜)に、「問い創造」と「シナリオプランニング」のつながりについて綴りました。要約すると、シナリオは「問いを立てるための舞台装置」であり、問いはその舞台で「新しい価値(物語)」を紡ぐためのエンジンである、という構造です。

また、その二つを『鍵と鍵穴』に例えると、「問い」という『鍵』を使って、「シナリオプランニング」の4つの世界(象限)の『鍵穴』に入れて、「価値創造の扉」を次々に開けていくというイメージになります。
あらゆる「問い」(鍵)には対応する背景や文脈や世界(鍵穴)が存在し、 AI時代には、それらを見つけ出し、つなぎ合わせるという「価値創造の知」を習得・体得する重要性が高まります。

さて、これまでプロジェクトチームで挑んだ「シナリオプランニング」のナビゲーターの現場では、次々と偶然・偶発的なことが起きて不思議な感覚を覚えることがしばしばあります。
そのような現象を「セレンディピティ」と言います。
電話しようとした相手から、同時瞬間に電話がかかってくる。または、探していた「問い」にたいするヒントや答えが、突如、本やメディアから現れてくる「あの偶然の感覚」です。
多くの方たちが、この摩訶不思議な「セレンディピティ」を経験してきているはずです。
本夜は、その「問い」と「シナリオプランニング」の間(あいだ)で浮かび上がってくる「『やってくる偶然』と『迎えにいく偶然』」の『セレンディピティ』を中心に綴ります。


その「セレンディピティ」について、松岡正剛師匠は、千夜千冊1304夜『セレンディピティの探求』で次のように記しています。参考に、その一部を加筆引用します。
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・・・セレンディピティは「やってくる偶然」と「迎えにいく偶然」とがうまく出会ったときにおこっているというべきなのである。
「やってくる偶然」は自分では律していない。向こうからやってくる。かつてメーテルリンクがさかんに強調したことだ(千夜千冊68夜)。
一方、「迎えにいく偶然」には自分の意図や意思がいる。意図や意思の持続がいる。意図をもって偶然を迎えにいかなければならず、それゆえこれはふだんから準備していなければならない。
その意図や意思には、「自分が何を求めているのか」ということを試行錯誤したプロセスをトレースしておくという努力がともなっている。これが「迎えにいく偶然」だ。このとき、ふいに「やってくる偶然」に出会って、格別のセレンディピティが生じる。・・・
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キーワードは、「やってくる偶然」と「迎えにいく偶然」です。
「迎えにいく偶然」には自分の意図や意思の持続が必要で、これはふだんから準備していなければならない」
これが、「問い創造」の目に見えない「核心」・「気立て」です。
言い換えると、「『迎えにいく偶然』には、ふだんから、対象に向かって『疑問・疑念や数寄』という強い意図、意思、問題意識を持ち続け、準備するることが肝要である」ということです。
さて、私の家にはたくさんの購入書籍があります。
松岡正剛師匠にならって、本を読む時は、マーカーを手にして、たくさんのマークや書き込みを入れます。
数年経って、同じ本を読むと、前回はマークしていないところに、今の自分にとっては、重要なコトが書かれていることに驚くことがあります。
・今の自分の問題意識や「問い」
・今の自分がどんな出力を望んでいるのか?
・今の自分の将来に、何が不足なのか?何を考えたいのか?
それは、「時」を経て、自分の意図・意思が変化・進化しているからだと気づきます。
読書では「著書(著者)」に表現されたことと、「自分の疑問・想像力・創造力」が「交じり合う・混ざりあう・のめり込む」格別の出会いの「場」になることを数多く経験してきました。
(その筆頭が、「松岡正剛師匠」「谷口正和師匠」の著書群でした)

そこは、まさしく「やってくる偶然」と「迎えにいく」偶然の出逢いのまばゆい「場」になります。
その「思索の場」を「現実・実際の場」に移すときに、「やってくる変化・現実・偶然」と「迎えにいく自分(たち)の想像力・創造力」が交じり合う舞台が、「シナリオプランニング」です。
つまり、自分(たち)の持つ知や関心(鍵)を、情報や対象(鍵穴)に当てはめて、「未来の複数の不確実な世界」を編集し、切り拓く『格別な場・舞台』なのです。

そこでは、「迎えにいく自分の『問い』」の『質』と『想いの強さ(切実・数寄)』が重要な『鍵』となることが感じられたならば幸いです。
受動的で、「枠を外せない経営者」、「迎えにいく準備ができていないメンバー」が集まっても、想定以上の結果が出ない大きな原因・理由がここにあります。
■ 眼前の現実が「欠けたモデルである」
シナリオプランニングに関わらず、すべての重要な認識は、今現在の「自分」「会社」「地域」「学校」「社会」の姿・状態は、「欠けたモデル」であることを出発点にすることにあります。
引き続き、松岡正剛師匠は、千夜千冊1304夜『セレンディピティの探求』を加筆引用します。
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・・・そもそも予測であれ、ひらめきであれ、シナリオの創造であれ、なんらかの先取りができるためには、自分がいま立っている発想や思索に多少の“ゆるみ”が生じる必要がある。
これはどんな作業であってもブレイン・インベトリー(在庫、持ち物)な作業中のことだろうから、この途中で既存の分析に頼りすぎていたり、勝手知ったる解読に荷重をかけすぎているのでは、自分のブレイン・インベトリーに“ゆるみ”は生じない。そうではなくて、むしろ自分の“いま”に、不足や曖昧やまちがいや過度があることを許容したほうがいいはずだ。
そうすると、進行中の作業や発想に、それをさらに進めるうえでの発想モデルや思考モデルが自分には“ない”ことに気がつく。これは自分の発想力や企画力や思考力に展望性や可塑性がないということだから、がっかりしてしまうこともある。
しかし、がっかりしているのではまずい。なぜなら、自分に発想モデルや思考モデルがないということは、いいかえれば、ここが肝心なのだが、そこに「欠けたモデル」があったことに気がつけばいいということなのだ。
このとき、この「欠けたモデル」に当たる“何か”が、向こうからやってくるときがある。これが「やってくる偶然」だ。これを「欠けたモデル」をもっている自分が「迎えにいく偶然」の鍵か鍵穴かの片われと出会えたらしいと思えたとき、そこにセレンディピティがおこるわけである。・・・
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上記に関連して、松岡正剛師匠は、
・「自分の中に『余白』(第50夜、第89夜、第207夜詳細)を意識的に持つことが重要なのだ」
・「自分に余裕がないとき、いっぱいいっぱいになっている時に何かが入る余地がなくなる。そんな時にこそ、『余白』が必要なのだ」
という指南がよくありました。(SDGs経営塾 第6回「大切なことは何か」参照)
上記の「欠けたモデル」と「余白」は同じことを云ってます。
参考に、SDGs成長経営セミナー等で、過去の成功体験、栄光から逃れられない「経営陣・社員」の方たちにお伝えするスライド2枚をアップします。


・常に会社は「倒産する方向」に向かって進んでいるコト
・眼前の現実が「欠けたモデルである」と共通認識するコト
「第 148 夜:『真の企業再生・創生』とは?」では、「再考・再興」の方法と心得の詳細を綴りましたが、
「3つの切り口・心得」を引用します。
①「未来から逃げない」こと
② 眼前の現実が「欠けたモデルである」と共通認識すること
③ 現状から「逸脱」すること
■ 格別な間(ま):価値を創造するセレンディピティ
上記を綴っている最中に、「やってくる偶然」と「迎えにいく偶然」を図解したいと思い始めました。
このワーク自体も、脳内で高速に「やってくる偶然」と「迎えにいく偶然」が出会うセレンディピティで仕上げたのが下図になります。
それは、「『間(ま)』の創造」(第17夜)と「イノベーション(ツープラスワン)」(第308~第313夜)の出会いです。これをまとめた時に、「○○成長セミナー」で具体例と共に、多くの方たちにお伝えできると直感しました。

さて、「間(ま)」という言葉は、私たちは無意識に使っています。
間合い 間抜け 床の間 時間 空間 間際 間に合う 間違い
間にまに 世間 人間 仲間 間引き 間近 間奏 等々
「間(ま)」とは何でしょうか?
ここで、再度松岡正剛師匠の講義録を記します。
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・・・「間」は日本独特の観念です。ただ、古代初期の日本では
「ま」には「間」ではなく、「真」の文字が充てられていました。
真理・真言・真剣・真相・・・
その「真」のコンセプトは「二」を意味していて、それも
一の次の序数としての二ではなく、一と一が両側から寄ってきて
つくりあげる合一としての「二」を象徴していたそうです。
「真」を成立させるもともとの「一」は「片」と呼ばれていて
この片が別の片と組み合わさって「真」になろうとする。
「二」である「真」はその内側に2つの「片」を含んでいるのです。
それなら片方と片方を取り出してみたらどうなるか。
その取り出した片方と片方を暫定的に置いておいた状態、
それこそが「間(ま)」なのです。・・・
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「やってくる偶然(片方)」と「迎えにいく偶然(片方)」が出会う格別な『時間・場』がセレンディピティであり、シナリオプランニングです。
上図の二つの絶妙な「出会い」「間合い」が、偶然を必然に変えていきます。
あらためて、そのために必要なことは、
「『迎えにいく偶然』には、ふだんから、対象に向かって『疑問や疑念』という強い意図、意思、問題意識を持ち続け、準備することです。
それを具体化するのに最適な、「問い」(鍵)と「シナリオプランニング」(鍵穴)」を是非活用されてみてください。
■ 「間(ま)」と「セレンディピティ」と「価値創造ダイアグラム」
「価値創造(=イノベーション)」とは、「境界線」を外し、「枠「を超えて、交じり溶け合い、、「一段上の新しい関係・果実」を創ることです。

片方と片方が交じり合う身近な例を上げます。
・空間: 縁側(内と外の境。内なのか外なのかわからない)
・時間: 黄昏(昼なのか、夜なのかわからない)
私は、この交じり溶け合う「時間」「場」が大数寄です。
そのような境界がなくなる状態・状況が、何かが生まれる「価値創造=イノベーション」の「時空間」です。
さて、「価値創造」は、上図のように「片方と片方を体内(脳内)」に入れて料理にして創出する行為と同じです。
「イノベーション」を提唱したシュンペーターは、イノベーションで一番重要なことは、「新結合(New Combination)」と言いました。 なので自分にとっては、それは「真と間」=「イノベーション」なのです。(第309夜、第361夜)
そのうえで、セミナーや支援伴走では
・空間上の「真」を「横の新結合」
・時間上の「真」を「縦の新結合」
として「3つの知」(第361夜、第364夜)の中心メソッドとして説明しています。(第75夜、第361夜詳細)
ただ、何でも和えればいいものではありません。料理でもクラブDJや建築でも上手いものと上手くないものがあります。コツがいります。それは、絶妙な「間(ま)」にあるですが、それは「AI」ではなく、「人間の側」が保持・革新していきたいものですね。
ただ何れにしても重要なことは、「多くの人々が共感・共振し、幸せになること」を心の奥底(気立て)におきながら、当たり前、常識(コモディティー)から離れ、逸脱して、「真と間」を追及して、「今までになかった格別な関係を創るコト(見立て)」が「価値創造(仕立て)」につながります。
参考に、それを展開・実現する新価値創造研究所オリジナル「価値創造ダイアグラム」(第54夜)を添付します。下図の「発見・偶有性(=セレンディピティ)」がイノベーションの核心です。
本コラムでは、事例と共に、何回かご案内してきました。
使いこなすと、絶対にいいことがあります。ww

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ