橋本元司の「価値創造の知・第156夜」:『真の企業再生・創生』とは? ➉「不快感」「疑い」「不足」

2018年6月12日“「余白」を見つけて、新しい世界を創る”

決められた「枠の中」で考えるコト、頑張るコトが、日本人は得意です。
その「枠」から逸脱して「別の枠を創る」ことは、日本人は得意ではありません。

しかし今は、「枠の外」を考えるコト、逸脱するコトが当たり前の様に求められてきています。
工業時代と違って、情報時代、脳業(AI)時代は、世の中の枠組み(パラダイム)と速度が大きく変わってきますね。

世の中、そして、人生は「諸行無常」なので、無常迅速に移ろい変わっていきます。
糸井重里さんが「インターネット的」という本で記している中で、自分が好きな箇所を引用します。

“ある固定した考え方を続けていくと、鬱血(うっけつ)が起こってきて、床ずれし始めます。その始まりのサインは軽い不快感です”
先人達が決めた先入観、常識を疑い、この床ずれに気づくのが「問題の発見」になります。

・「何か」おかしい
・「何か」変だ
・「何か」欠けている

これまでの「ものさし」「メガネ」に合わない事象が会社/地域のあちらこちらで生じています。それまでの「Know How」が通用しなくなっているのですね。

「Know-How」から、「Know-Why」への転換が必要です。
「Know-Why」とは、“なぜ、そうなる(する)のか?”と疑問を持ち、その理由・原理・目的・動機などを知ることです。
モノゴト、事象の「根幹、原理原則」にアプローチ(接近)することになります。それは「深い知」(第75夜、第85夜)の内容と同じです。

それは、「航海」で云えば、『錨(いかり)』の役割となります。
「何かおかしい、変だ」というのは、船が漂流し始めていることに似ています。時代は、次代は、レールのある鉄道の時代ではなくて、レールのない航海の時代です。
漂流しないように、依ってたつところ、拠り所、基盤が持てているのか、いないのかは大きな違いがあります。

それは、変化する事象の“本質”を把えることです。
その本質の把えかたについては、第85夜、第86夜に綴ってきました。

「いったい、何故なのか?」

それを会社としての習慣としている代表が『TOYOTA』です。
前職・パイオニア社では、ビジネス上の関係から、「TOYOTA(5回の)ナゼナゼ分析」で十分に鍛えさせて貰いました。
それは、「改善・改良」ではなく、「革新」にむかうものです。

さて、“問題(社会)の本質を「知る」だけでは意味はありません。なによりも、その問題(社会)の現実を、より良いものへと「変える」ことが大切なのです”
「知る(把える)」と「変える(変わる)」を繋いで実践することが重要な時代です。

事前認識としては、
・顧客からみて、「魅力」がなくなっているコト(第136~140夜)
・眼前の現実が「欠けたモデルである」コト(第136夜、第145夜)
を冷静に分析していることが助けになります。

「欠けている」「不足である」ということを“創造のチャンス”として前向きに把えられるかどうかです。そこには「余白」があるということです。
その「余白」(第22夜、第89夜):「余白」が大数寄)を使って、「どうしたら、社会/顧客を幸せにすることができるだろうか?」
と想像して創造することです。

だいたい、現状の事業/地域の延長線上の将来を考えると普通の感覚なら『深刻』になりますね。それが通常です。

それは「視野・視座」が狭いと思ってください。未来/将来の「視野・視座」を拡げるにはどうしたら良いのでしょうか?
この『深刻を解放する』有効なツールの一つが前夜(第155夜)に綴った「シナリオプランニング」です。
何故でしょうか?
チームによる「創発」で、「複数の打つ手」がみつかるからです。
(通常は、ドライビングフォース(推進力)の2軸でできる4象限の世界が拡がります)
つまり、3~4つの象限からなる「新しい世界」が立ち現れます。羅針盤の一歩手前です。
そこで、立ち止まってもいいのです。急いでも焦ってはいけません。「深い知」と「高い知」を往復することで「大局観を身に着けること」が重要です。

新しい世界(象限)に気付いたライバルが先に手を打っていたり、予期していない異業種が参入していることもあります。その「地(分母)と図(分子)」(第105夜)を観ることが戦略策定の一助になります。
「バリュープロポジション」(第37夜)をもう一度見渡して確認してくださいね。
異業種コラボレーションという手も見えてきますね。行政や大学と手を組むこともありです。
その辺りは、第90夜~99夜にわたって、『価値共創進化(価値共創1.0~5.o)』で綴っていますので関心のあるかたは参考になさってください。

「新しい象限に挑戦」するには、今までにないリソースと決断が必要になります。大変なのですが当然ですね。
選択と集中をして効率化してきたので、その用意ができていないのが通常です。その上で、この「壁」を乗り超える“覚悟と勇気”が必要になってきます。
それが、『真の企業再生・創生』に繋がります。

そして、そこで「深く・高く・広く」頑張った人/会社/地域には、ご褒美が巡ってきます。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
シナリオプランニング②

橋本元司の「価値創造の知・第155夜」:『真の企業再生・創生』とは? ⑨チャンスは備えあるところに訪れる

2018年6月11日 シナリオプランニングの効能

本夜は、“チャンスは、用意・準備しているヒト/会社/地域にこそ訪れる”その為の心得と方法について綴ります。

フランスの細菌学者、ルイス・パスツールのスピーチに
「… par hasard, direz-vous peut-etre, mais souvenez-vous que dans les champs de l’observation
le hasard ne favorise que les esprits prepares …
(… 偶然だと仰るかもしれませんが、思い出しましょう、観察の分野では“機会は準備のできている精神だけを好む”のです、…)」
があります。

 日本語では、パスツールの言葉として、以下(ウィキペディア引用)のように様々な言い回しが用いられています。
・幸運は用意された心のみに宿る
・偶然は準備のできていない人を助けない
・チャンスは備えあるところに訪れる

この言葉が、これまで以上にメディアに引用されることが増えると洞察しています。
それは、20世紀後半の「工業時代」に比較して、21世紀の「AIoT時代」には、政治・経済・社会・技術の変化が激しく、「不確かな時代」が加速してゆくからです。

天災、テロ/戦争、宗教問題、エネルギー危機、食糧危機、地方衰退、人生100年時代(年金、就労、教育等)、WEBの進化、・・・

“想定外”を東日本大震災を始めとして多く経験してきました。
ゲイリー・ハメル(ロンドンビジネススクール教授)は、「問題は、未来が現在と違うことだ。もし、これまでと違う考え方ができなければ、必ず未来に驚かされるだろう。」と述べています。
“あらゆる産業が、将来に対して不確実というリスクを抱える現代”において、未来についてますます予測が重要な時代になっている。一方、精度の高い予測が困難な時代でもある。・・・

これまでの『やり方・考え方』が通用しなくなっていることを意味しています。

そのために、『将来を洞察すること』そして、『戦略を構想すること』がより重要となっています。
それでは、『戦略』とは何でしょうか?

戦略とは、
1.自分たちの「ゴール」はどこか?(=目的)
2.自分たちの「居場所」はどこか?(=ポジショニング)
3.自分たちは「どのようなルート」で進むのか?(方法)

の3つでできています。

・“2.自分たちの「居場所」はどこか?(=ポジショニング)”が不安定ではありませんか?
・業界/地域が右肩下がりになっていて、危機の兆候が現実化していませんか?
・同様に“1.自分たちの「ゴール」はどこか?(=目的)”が揺らいでいませんか?

いったい、どうしたらいいのでしょうか?
そのために、早く原因に気づいて手を打つコト、決断することの重要性を前夜(第154夜)に綴りました。
そして、一つの分野に限るのをやめる。分野をまたぐ「RHIZOME:リゾーム/地下茎」発想について第153夜に綴りました。

不確実な時代を洞察する最も有力な方法に、「シナリオ・プランニング」があります。
「シナリオプランニング」については、第15夜、第86夜、第126夜に綴ってきました。その使い方を失敗すると手が出しづらいメソッドです。
それはメソッド側ではなくて、「乗りこなす人」の側に問題があります。だいたい「設問(問い)の仕方」が間違っているコトが多いのです。。

2004年に、「シナリオプランニング」の第一人者J・オグルビー氏の直伝を受けて、それを成果が出るように『日本流の知』メソッドを融合しました。「和魂洋才」への変換です。
そして、それを駆使して、社内外の複数のご依頼を解決する中で発見したことがあります。

それは、「シナリオプランニング」の前(Before)には深刻だった課題が、将来を拡張してテームで検討する中で、後(After)には複数の『次の一手』を見出すことで深刻から解放されることです。
チームのネガティブな雰囲気が、ポジティブになり、全員が「クリエイティブ・イノベイティブ」な人財群に変わることです。つまり、「将来洞察」と「人財開発」の良成果がセットになることです。
ただ、そこには「質の高いナビゲーター兼ファシリテーター」が必要です。
「ナビゲート機能のないファシリテーター」のみの「シナリオプランニング・プロジェクト」を見聞きしてきましたが、成果に辿り着く可能性が低いことをお伝えしておきます。
その真因は、ファシリテーターは“結果に責任を持たない”からです。

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一般的に予測とは、業界や事業の構造が現状の延長線上にあるということを前提として、将来を決めるのですが、
「シナリオプランニング」は、「現在の延長線ではない変化が起こると仮定した複数のシナリオ」を想定し、未来への対応策を考察する「思考シミュレーション」なのである。
例えば企業であれば、不確実な未来であることは当然と考え、環境変化に関する複数のシナリオを想定し、それらの変化に耐え得る戦略を検討すること、
さらにその思考方法を組織に埋め込むことにより、想定外の将来の変化にも柔軟に対応できるようになる。携帯電話業界、TV業界やパソコン業界のような変化の激しい業界では、なおさら予測が難しいことは当然だ。
シナリオ・プランニングは、単に複数の未来を予測しようとしているのではなく、このような思考法を組織に埋めこみ、どのような状況にあっても対応できることを重要視していると思う。・・・
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さてさて、本テーマは、“チャンスは備えあるところに訪れる”でした。チームで、「深く・高く・広く」気づき、備えることが、「シナリオプランニング」の真骨頂です。
そして、プロジェクトでは「シナリオプランニング」⇒「成長シナリオ」⇒「BSC」で経営戦略をまとめます。
チームを“燃える集団”にして、“戦略策定・実践”できる人財に変えます。

将来を洞察して、共に、創発して、気づき、備えて、チャンスを掴むことが、『真の企業再生・創生』には不可欠です。
そこには、偶有性(第19夜:セレンディピティ= めったにないことが起こる幸せ)が音連れます。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
シナリオプランニング

「建築とアートの融合、ライゾマが切り開く世界」

 6月7日 「RHIZOME:リゾーム/地下茎」発想

文化経済研究会第2部は、ライゾマティクス代表取締役の齋藤精一氏でした。
テーマは、「建築とアートの融合、ライゾマが切り開く世界」

 その中で、二つの内容に深く共感したのでそれを綴ります。
一つ目は、「アリとキリギリス」
・「前例がない」と聞いて「だからやらない」アリと「だからやる」キリギリス
・ブランドや権威に弱いアリと気にしないキリギリス
・知識をため込んだ人が偉いと思うアリと知識も「使ったらすぐ捨てる」というキリギリス
・「常識」と聞いて、身につけるべき当然のものとして絶対視するアリと全く気にしないキリギリス
・「ばらつきは悪である」と考えるアリと「バラつかないならロボットがやった方が良い」と考えるキリギリス
・ベストを尽くしてもうまくいかないのは組織や環境のせいだと思うアリと自分で環境まで変えてしまおうとするキリギリス
・本流にいることを良しとするアリと傍流に生きがいを見出すキリギリス
・規則に人を合わせさせようとするアリと、人に合わせて規則を変えようとするキリギリス
・専門家が多数集まれば良い結果が出ると考えるアリと、人が集まれば集まるほど結果が凡庸になると考えるキリギリス……

日本では、圧倒的に多数の「アリ」ですが、21世紀は「キリギリス」的発想と行動が経営に求められると思いませんか?
塩酸(アリ)をいくらかきまぜても、塩酸(アリ)ですが、塩酸(アリ)に硫酸(キリギリス)を混ぜると化合物ができます。
それがイノベーション(=価値創造)です。さまざまな価値観を組合せ、新しい価値を生み出す時代です。

工業社会の反転軸として未来社会を構想してみてください。
従来のオペレーションから、イノベーションにシフトしてみると様々な気づきがあります。
それには、「キリギリス」的発想と構想が求められます。

どうしたらいいのでしょうか?
「巣の常識が全てである」というアリの前提を変えていく必要があります。
それに方向性と着地点を示していくのがリーダーであり、リーダーシップです。

私は「経営品質」のプロですが、そこには、「事業戦略」と「組織戦略」がバランスされています。
その仕組みを取り入れられては如何でしょうか。

二つ目は、非分野主義(Anti-Disciplinary)です。
これは、MITラボの伊藤穣一氏が、「逸脱からはじまる学びの実践」で話されていました。
「MITメディアラボではAnti-Disciplinaryという理念を掲げており、単一の学問に収まるような研究は行いません。
また、研究者や学生といった垣根はなく、指導よりも創造を重視しています。異分野の人々が試作と対話を
重ねていくことで新しい価値を生み出し、世の中に投げかけています。
・・・
AIの時代になり、世界中の人々とコラボレーションするためのコストは劇的に低下しました。
今後はそれと同様に、ハードウェアの開発や生産、物流などにおいてもコストが劇的に下がっていくと思います。
そして、教育や学びも今後は大きく姿を変えていくでしょう。MITメディアラボが行う活動の焦点はここにあります。
内外の異質な人々を柔軟に組み合わせ、創造と対話を繰り返しながら、次代の学び方を模索しているのです。」

ライゾマティクスの齋藤氏は、一つの分野に限るのをやめる。分野をまたぐことの必要性を述べられていました。
「RHIZOME:リゾーム/地下茎」という発想をされていました。
頭に残りました。

「固定化した発想を覆す提案って、業界外の視点を持っているからできるんです」
領域をはみ出す、逸脱する異端児です。

これって、上記の「アリとキリギリス」ですよね。
齊藤氏は、ご自身のことを「キリギリス発想、構想と行動をもったアリ」と言われました。

「アリギリス」ですね。

始めに必要なのは、「キリギリス」的発想・構想です。
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橋本元司の「価値創造の知・第154夜」:『真の企業再生・創生』とは? ⑧「面白い」こそ価値の軸

2018年6月9日 「早く気づくコト」

6月7日の文化経済研究会第1部は、面白法人カヤックの柳澤大輔・代表取締役CEOでした。
テーマは、「面白いこそ価値の軸、次代を創る空飛ぶ思考」

 その中で、二つの内容に焦点をあて、それを綴ります。

一つ目は、「早く気づくコト」
カヤック社は2012年に、それまで登り龍のように上手くいっていたゲーム事業が続けて6作が不振となりました。
社外取締役の指摘で、経営の立て直しに素早く着手して乗り切られたそうです。
そして、その一年半後に東証マザーズ上場がありました。

そう、経営の要諦は「早く気づくコト」にあります。
それは、
・事業の創生
・事業のコモディティー化
・事業の再生
経営の改善、革新等のあらゆることに通じます。

そして、「とにかく早く決断する」
それが、面白法人カヤック社長日記No.31に綴られています。
--------
意思決定の早さは、チームを勝利に導く上で、ものすごく重要です。
決断が遅いことによって致命的な危機が訪れることばかりでなく、早く決断することで致命的な危機が訪れることも、もちろんありますが、
どちらが多いかといえば、前者の方が多い気がしないでしょうか。僕はそう思っています。 ですので、まず心構えとして、とにかく早く決断することを意識しておかなければなりません。

問題を注視したくないから先送りにする。失敗したくないから、決断をしない。こういうことがないようにする。もちろん早く決断することが目的ではなく、決断によって成功をもたらすことが目的です。
だから、時にはじっくり時間をかけた方がいいこともある。けれども、自分の実力を磨いていけば、決断するスピードは必ず速くなりますし、過去に同じような問題が起きていたら、以前よりも決断は早くなるはずです。

そして世の中には、正解か、不正解か、いくら考えてもわからないことがある。であれば、最速で決断した方がいい。
決断には、失敗がつきものです。失敗をたくさん繰り返して、決断の精度をあげていく。経営者は日々そのサイクルを繰り返しているので、自ずと決断の達人になる。
------------
カヤック社も早く気づかなければ、そして決断して、素早く手を打たなければ経営危機になっていたかもしれないと柳澤氏は云われてました。
そこで、決断することで上場があり、その経験が一段と経営基盤を強くするのですね。

二つ目は、次代を創る空飛ぶ思考
カヤック社の経営理念は「つくる人を増やす」
“経営理念こそが、その法人の存在理由”と言い切られていました。

その為の手法として、本格的に「ブレーンストーミング」に取り組まれていました。
「ブレーンストーミング」とは、 ある問題やテーマに対し、参加者が自由に意見を述べることで、多彩なアイデアを得るための会議法です。皆さんも経験されていますね。

柳澤氏は、そのポイントを二つ述べられました。
① しっかりと仲間のアイデアに乗っかる
つまり、しっかりと仲間の云っていることを聴くということです。
効能として、そのことで、自分では考えも及ばないアイデアが出てくる。結果、チームワークが良くなる。
② とにかくたくさんの数を出す。
否定しないことが何よりも重要です。
効能として、そのことで、仲間(社員)の性格がポジティブになる

アイデアには2種類あって、
1.横軸:とにかくたくさん出す
2.縦軸:本質をつかむ

この「2.縦軸:本質をつかむ」ことができるヒトが少ないのです。
この二つを統合できるヒト、経営を意識的に開発、育成していることが、この会社の継続的な強みであり、経営理念「つくる人を増やす」につながっていますね。
応援したい経営者に出会いました。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
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「面白い」こそ価値の軸

2018年6月8日 次代を創る空飛ぶ思考

6月7日の文化経済研究会第1部は、面白法人カヤックの柳澤大輔・代表取締役CEOでした。
テーマは、「面白いこそ価値の軸、次代を創る空飛ぶ思考」

 その中で、二つの内容に焦点をあて、それを綴ります。

一つ目は、「早く気づくコト」
カヤック社は2012年に、それまで登り龍のように上手くいっていたゲーム事業が続けて6作が不振となりました。
社外取締役の指摘で、経営の立て直しに素早く着手して乗り切られたそうです。
そして、その一年半後に東証マザーズ上場がありました。

そう、経営の要諦は「早く気づくコト」にあります。
それは、
・事業の創生
・事業のコモディティー化
・事業の再生
経営の改善、革新等のあらゆることに通じます。

そして、「とにかく早く決断する」
それが、面白法人カヤック社長日記No.31に綴られています。
--------
意思決定の早さは、チームを勝利に導く上で、ものすごく重要です。
決断が遅いことによって致命的な危機が訪れることばかりでなく、早く決断することで致命的な危機が訪れることも、もちろんありますが、
どちらが多いかといえば、前者の方が多い気がしないでしょうか。僕はそう思っています。 ですので、まず心構えとして、とにかく早く決断することを意識しておかなければなりません。

問題を注視したくないから先送りにする。失敗したくないから、決断をしない。こういうことがないようにする。もちろん早く決断することが目的ではなく、決断によって成功をもたらすことが目的です。
だから、時にはじっくり時間をかけた方がいいこともある。けれども、自分の実力を磨いていけば、決断するスピードは必ず速くなりますし、過去に同じような問題が起きていたら、以前よりも決断は早くなるはずです。

そして世の中には、正解か、不正解か、いくら考えてもわからないことがある。であれば、最速で決断した方がいい。
決断には、失敗がつきものです。失敗をたくさん繰り返して、決断の精度をあげていく。経営者は日々そのサイクルを繰り返しているので、自ずと決断の達人になる。
------------
カヤック社も早く気づかなければ、そして決断して、素早く手を打たなければ経営危機になっていたかもしれないと柳澤氏は云われてました。
そこで、決断することで上場があり、その経験が一段と経営基盤を強くするのですね。

二つ目は、次代を創る空飛ぶ思考
カヤック社の経営理念は「つくる人を増やす」
“経営理念こそが、その法人の存在理由”と言い切られていました。

その為の手法として、本格的に「ブレーンストーミング」に取り組まれていました。
「ブレーンストーミング」とは、 ある問題やテーマに対し、参加者が自由に意見を述べることで、多彩なアイデアを得るための会議法です。皆さんも経験されていますね。

柳澤氏は、そのポイントを二つ述べられました。
① しっかりと仲間のアイデアに乗っかる
つまり、しっかりと仲間の云っていることを聴くということです。
効能として、そのことで、自分では考えも及ばないアイデアが出てくる。結果、チームワークが良くなる。
② とにかくたくさんの数を出す。
否定しないことが何よりも重要です。
効能として、そのことで、仲間(社員)の性格がポジティブになる

アイデアには2種類あって、
1.横軸:とにかくたくさん出す
2.縦軸:本質をつかむ

この「2.縦軸:本質をつかむ」ことができるヒトが少ないのです。
この二つを統合できるヒト、経営を意識的に開発、育成していることが、この会社の継続的な強みであり、経営理念「つくる人を増やす」につながっていますね。
応援したい経営者に出会いました。

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橋本元司の「価値創造の知・第153夜」:『真の企業再生・創生』とは? ⑦アリとキリギリス

2018年6月8日 リゾーム(地下茎)の発想

r昨日(6/7)の文化経済研究会第2部は、ライゾマティクス代表取締役の齋藤精一氏でした。
テーマは、「建築とアートの融合、ライゾマが切り開く世界」

 その中で、二つの内容に深く共感したのでそれを綴ります。
一つ目は、「アリとキリギリス」
・「前例がない」と聞いて「だからやらない」アリと「だからやる」キリギリス
・ブランドや権威に弱いアリと気にしないキリギリス
・知識をため込んだ人が偉いと思うアリと知識も「使ったらすぐ捨てる」というキリギリス
・「常識」と聞いて、身につけるべき当然のものとして絶対視するアリと全く気にしないキリギリス
・「ばらつきは悪である」と考えるアリと「バラつかないならロボットがやった方が良い」と考えるキリギリス
・ベストを尽くしてもうまくいかないのは組織や環境のせいだと思うアリと自分で環境まで変えてしまおうとするキリギリス
・本流にいることを良しとするアリと傍流に生きがいを見出すキリギリス
・規則に人を合わせさせようとするアリと、人に合わせて規則を変えようとするキリギリス
・専門家が多数集まれば良い結果が出ると考えるアリと、人が集まれば集まるほど結果が凡庸になると考えるキリギリス……

日本では、圧倒的に多数の「アリ」ですが、21世紀は「キリギリス」的発想と行動が経営に求められると思いませんか?
塩酸(アリ)をいくらかきまぜても、塩酸(アリ)ですが、塩酸(アリ)に硫酸(キリギリス)を混ぜると化合物ができます。
それがイノベーション(=価値創造)です。さまざまな価値観を組合せ、新しい価値を生み出す時代です。

工業社会の反転軸として未来社会を構想してみてください。
従来のオペレーションから、イノベーションにシフトしてみると様々な気づきがあります。
それには、「キリギリス」的発想と構想が求められます。

どうしたらいいのでしょうか?
「巣の常識が全てである」というアリの前提を変えていく必要があります。
それに方向性と着地点を示していくのがリーダーであり、リーダーシップです。

私は「経営品質」のプロですが、そこには、「事業戦略」と「組織戦略」がバランスされています。
その仕組みを取り入れられては如何でしょうか。

二つ目は、非分野主義(Anti-Disciplinary)です。
これは、MITラボの伊藤穣一氏が、「逸脱からはじまる学びの実践」で話されていました。
「MITメディアラボではAnti-Disciplinaryという理念を掲げており、単一の学問に収まるような研究は行いません。
また、研究者や学生といった垣根はなく、指導よりも創造を重視しています。異分野の人々が試作と対話を
重ねていくことで新しい価値を生み出し、世の中に投げかけています。
・・・
AIの時代になり、世界中の人々とコラボレーションするためのコストは劇的に低下しました。
今後はそれと同様に、ハードウェアの開発や生産、物流などにおいてもコストが劇的に下がっていくと思います。
そして、教育や学びも今後は大きく姿を変えていくでしょう。MITメディアラボが行う活動の焦点はここにあります。
内外の異質な人々を柔軟に組み合わせ、創造と対話を繰り返しながら、次代の学び方を模索しているのです。」

ライゾマティクスの齋藤氏は、一つの分野に限るのをやめる。分野をまたぐことの必要性を述べられていました。
「RHIZOME:リゾーム/地下茎」という発想をされていました。
頭に残りました。

「固定化した発想を覆す提案って、業界外の視点を持っているからできるんです」
領域をはみ出す、逸脱する異端児です。

これって、上記の「アリとキリギリス」ですよね。
齊藤氏は、ご自身のことを「キリギリス発想、構想と行動をもったアリ」と言われました。

「アリギリス」ですね。

そう。始めに必要なのは、「キリギリス」的発想・構想です。
そのことを、この「価値創造の知」では連載してきました。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
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橋本元司の「価値創造の知・第152夜」:『真の企業再生・創生』とは? ⑥“使命感”の不思議

2018年6月3日 パッション→ミッション→アクション

『真の企業再生・創生』の実行の大元には、“使命感”の存在が必須です。
逆に言えば、“使命感”のない『企業再生・創生』は本物ではありません。

『真の企業再生・創生』を前職・パイオニア社で挑戦・実践し、新価値創造研究所として独立してからは、それを多業態/業種でご支援してきました。
そこには“使命感”という目にみえない「気付き・はたらき」が重要な役割を担っていることを実感・痛感してきました。

自分自身の体験では、“使命感”は「気づき」とともに音連れ、その奥には、“自分(達)が何か大きなものにつながっている、生かされているという感覚”を伴っていました。
なにか『X』という大きな課題がやって来る。それを受けて、深く・高く・広く考え、実践して、次に渡していくのが使命。遺伝子も同じことをやっているのでしょうか。
“使命感”は、自分のために使うのではなくて、人のため、世の中のために「命を使う」というのが道筋に想います。

・吉田松陰の使命は?
・坂本龍馬の使命は?

“使命感”は不思議です。
「負」を背負うけれども、心の中はワクワク。生きがいに直結しているから、世界と繋がるからです。
「負」があることで、『イノベーション』・『真の企業再生・創生』に繋がります。
そのことで、前夜(第151夜)の“一線を超える”のです。
・第3夜:「負(マイナス)」の美学
・第4夜:用意と卒意
・第50夜:「欠けたモノへの熱い想い」

何よりも、“使命感”は“生きがい”とともにあるのです。ここがとっても重要です。
“生きがい”をもって目を輝かせて働かれている社員の方達がどの位おられますか?
それは、「強制」ではもたらされなくて、「共生」が中心にあります。

お医者さんは、どんな状況下でも「人を助けるのが仕事」という使命感が元にあります。
・ソフトバンクは、“情報革命を通じた人類と社会への貢献を”
・ユーグレナ(出雲充)は、“ミドリムシで世界を救うことに決めた”
・私(橋本元司)の“使命”は、“「新価値創造」で人々を幸せにしたい”

さて、皆様の“使命”“使命感”はいったい何でしょうか?
皆様の会社の、地域の“使命”は何でしょうか?

立ち止まって考えてみてください。
それに“気付く”ことが“再生・創生”の始まりです。その時の気持ちは、大きな何かにつながる“感謝”です。
そして、“一線を超えていく”のです。変革の体験です。

それは、皆様の“生きがい”と強く繋がっていますか?

“使命感”は“生きがい”がともにある時に、疲れを感じませんね。
その繋がりが薄れてきた、欠けてきたときには注意が必要です。

第56夜に綴りましたが、諸行無常に時代は変化するのであり、「自分・事業・地域の使命(ミッション)を再定義」をする必要があります。
そう、薄れてきた、欠けてきた“使命”を再定義して再生・創生することが必要なのです。

時代は、一人ひとりの仕事が世の中にどう役立っているのか、「使命」は何か?「志」は何か?を明確に持っていることが求められるようになりました。
それを促進・増幅させているのが、「Facebook」を始めとするSNSです。
20世紀に比べて、今は、様々な選択に“自由度”が拡がりましたね。

“自由度”が拡がるということは、同時に「不安」「リスク」も高まるということです。
「不安」「リスク」が高い時代になってきました。そのままでいることが「リスク」になっています。

だからこそ、共感できる、共感される「本気の存在理由/存在意義」をオープンに明確にすることが必要です。
今、問題となっている「日大・アメフト部の悪質タックル」に関わる経営陣(理事会)が問われている本質はそこにあるように思います。

『真の企業再生・創生』の為の「使命と価値創造」の関係については、
・第75夜:『深い知(本来)・高い知(将来)・広い知(縁来)』
・第89夜: ミッション→ビジョン→イノベーション
・第125夜: 「質」が変わる、「世界」が変わる
にありますので、是非ご覧ください。

パッション(本気)により、ミッション・ビジョン(本質)が生まれ、アクション(次の本流)に繋がります。
“使命(ミッション)”は、“本気”“志”“当事者意識”“生きがい”とともにあります。そして、人間を超えた何か大きなものに生かされているということの「発見」でもあります。
その発見は、何かに必要とされているという使命感につながります。

さてさて、最後に“使命感や志だけでは経営は成立しない”についての「松下幸之助氏の言葉」を引用します。
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使命感半分、給料半分

人間には、“欲と二人連れ”という言葉もあるように、自分の利によって動くという面と、使命に殉ずるというか、世のため人のために尽すところに喜びを感ずるといった面がある。

だから人を使うにしても、給料だけを高くすればいいというのでなく、やはり使命感というものも持たせるようにしなくてはほんとうには人は動かない。

もちろん使命感だけで、給料は低いというのでも、これはよほど立派な人でない限り不満を持つだろう。

普通の人間であれば、使命感半分、給料半分というところだと思う。

そのようなあるがままの人間性に則した処遇をしていくところに、適切な人の使い方があると言えよう・・・。
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価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

使命感の不思議